DtoCブランドとしてインテリア雑貨の総合通販サイト「Hinata Life(ひなたライフ)」を2017年にスタートし、創業3年で月商1億円という急成長を遂げたひなたライフ。2023年1月時点でSNSフォロワーは60万人超、約1000人のインフルエンサーを抱えており、他社とは似て非なるインフルエンサーマーケティング戦略でビジネスを拡大している。
ひなたライフ代表取締役社長の江戸氏と、同社が導入するビジュアルマーケティングプラットフォーム「visumo」を展開するvisumo取締役の井上氏が、コロナ禍でもビジネスを拡大させたソーシャルコマースのサクセスストーリーについて語った。
インテリア業界でDtoC事業を始めたきっかけ
江戸氏は2017年9月にひなたライフを設立、2018年1月にECサイト「Hinata Life」をオープンした。インテリア雑貨を中心に厳選されたメーカー商品やオリジナル商品を販売し、商品の価値訴求やライフスタイル提案を丁寧に行うことでファンを増やしている。
2022年1月に毎日放送(MBS)と資本提携し、同年2月からテレビ通販事業「カチモ」を新たに開始。現在は「Hinata Life」と「カチモ」を主軸に事業を展開している。
同社は早い段階からD2C事業を展開しているが、江戸氏はもともとアパレル業界のEC事業を手がけてきたキャリアを持つ。アパレルEC事業について江戸氏は「粗利が低く、流行り廃りが激しくサイクルの早い商材だったため、商売を成り立たせるのが正直難しかった」と話す。
インテリア雑貨市場の調査をしたところ、はやり廃りがそこまでなく、長く使えて長く販売できる商品が多かったので、1つひとつのコンテンツに魂を入れることができると感じた。アパレルで培ったノウハウをインテリア雑貨にシフトしていけば、うまくいくのではないかと思った。(江戸氏)
あえて値段の高い商品をラインアップする
現在の「Hinata Life」は、比較的高価格帯の商品を中心に扱っている。インテリア雑貨のなかでも、あえて値段の高い商品を選定・販売するねらいは何だろうか。
価格が安い消耗品はリピートされてよく売れるが、価格が低い分1人の顧客が購入する金額も安くなる。必要なものは価格競争に陥りやすいが、本当に欲しいものは高くても購入する。「必要」以上に「欲しい」というマインドで購入してもらえるような商品を揃え、コンテンツも作っている。(江戸氏)
価格が高めの商品でも、コンテンツで「そのモノの良さ」をきちんと見せることで、顧客に納得して購入してもらえる流れを作っているという。
ひなたライフの商品ラインアップ
メーカーとのコミュニケーションは「信頼してもらうこと」が重要
今では多数のメーカーとの取引があるひなたライフだが、事業開始当初は仕入れで苦労したという。
最初は「実店舗を持たない、インターネット上のEコマースだけで販売するところには商品を卸せない」と言われて、非常に衝撃を受けたのを覚えている。(江戸氏)
当時、インテリア業界のECはモール出店が中心で、価格を勝手に下げられてしまうこともあり、メーカーは「ブランドを毀損(きそん)される」というイメージを抱いていた。
そこで、「すべての商品において、独自のコンテンツで販売していく」という、他サイトとの差別化ポイントをきちんとメーカーに伝えていったところ、最初は断っていたメーカーも、「面白そうだから話を聞いてみたい」と商談が進むようになり、取り扱いが決まったという。
江戸氏はメーカーとの会話やコミュニケーションのなかで、売り上げや取引金額だけでなく、まずはとにかくコミュニケーションを密にして、信頼関係をきちんと作ることを大事にしてきたという。
まず取引してもらえるかどうかで言うと、自分たちのサイトに対する思いやコンセプトをきちんと理解していただくことは必要。作り手は商品に対するこだわりや確固たる思いがある一方で、「どうやって自分たちの商品を世に出すか」「もっと広めていけるか」に悩んでいるところもある。
商品を売るだけでなく「こんなやり方はどうか」といった提案を含め、双方向のコミュニケーションを取って、メーカーとの関係を築いてきた。(江戸氏)
広告なしでフォロワー数60万人になるまでの集客戦略
それまで特に広告を打ってこなかったひなたライフだが、Googleアナリティクスを見ると、Instagram経由のエンゲージメントが一番高かった。そのため、まずはInstagramに注力してみた。
SNSは、見る人にとって有益な情報をきちんとコンテンツとして作っていくことが大前提だ。その上で量と質を担保する運営をめざした。
ひなたライフのInstagramアカウントとインフルエンサー
当初はスタッフが1日1ポスト投稿し、サイトにも1日1商品をアップする、InstagramとECサイトを連動する形式でスタートした。
Instagram開設から3か月後にフォロワーが1000人まで増加したが、ポストし続けているだけではフォロワーを一気に増やすのは難しいと考え、インテリアのインフルエンサーによる自社商品のPRを試した。
最初は代理店経由でインフルエンサーを集めた。流入数もフォロワー数も増え、商品も購入されたが、なかなかコストが合わなかった。
「自分たちでもできるのではないか?」と思い、実際に自分たちでインテリアや暮らし系のインフルエンサーを検索し、約10人に直接DMを送って声をかけた。最初は1、2人がOKしてくれたら良いと思っていたが、予想外なことに8、9人から「面白そうなのでやってみたい」という回答をもらえた。(江戸氏)
承諾を得られたインフルエンサーに商品をギフティングし、Instagramに投稿してもらったところ、早速消費者からの反応があったという。その後「Hinata Life公式アンバサダー」という名称でインフルエンサーを30人に増やしたことで運営が軌道に乗り、月に1万人から1万5000人ほどフォロワーが増えるようになった。
2018年8月頃にはフォロワーが約5万人になり、Googleアナリティクス上でもInstagramからしっかりと集客できていることが確認できた。
EC業界は黒字化させるまでに時間がかかると言われているが、設立から13か月目の2018年9月には自分たちで集客できるようになり、初めて単月黒字化を達成した。
当時は暮らし系のインフルエンサーは企業とのタイアップ・PRがほぼなかったと思う。しかし5年ほど経った現在ではフォロワーもPR・タイアップを見慣れてきているので、UGC的な考えでインフルエンサーや一般のお客さまがポストしてくれた素材をどう自分たちのサービスに展開していくかという、次のフェーズに移っている。(江戸氏)
現在は「visumo」を活用しUGCをECサイトやアプリにコンテンツ展開している。UGCをSNS上の拡散だけにとどめず、オウンドメディアで掲載することでコンテンツがより充実し、買い物をするときの接客にもつながる。
また、掲載されることはユーザーとのエンゲージメントを高め、さらにUGCが生まれる好循環を生んでいる。
SNS頼りにならない、顧客のコミュニティ化施策
ひなたライフは2020年に公式アプリをスタート。広告費をかけていないにもかかわらず、毎月1.5万人ペースで増えている。公式アプリを始めたのは、ファンときちんとコミュニケーションを取り、LTVを高めていく方向にシフトしたかったからだという。
Instagramのフォロワーは順調に増えていたが、やはりSNSやIT業界はスピードが早い。極端な話、昨日あったサービスが今日あるかわからない世界で、Instagramだけに頼るのは非常にリスクがあると感じていた。(江戸氏)
しかし、多くの消費者がスマホに何十個とアプリを入れているなかで、毎日使うアプリはおそらく数個。できる限り毎日使われるアプリにしたいと作り手は誰もが思うものの、正直、難しい。
アプリを使ってもらえるということは、一定のファンである可能性が非常に高い。自分たちがこれからやっていきたい新しいサービスを考えた時、アプリに主眼を置くことにした。
自分たちのアプリ上のプッシュ通知であれば、いくらでもパーソナライズしてコミュニケーションを取れるということが一番のメリット。アプリのプッシュ通知やトップページからの購入は通常のWebサイトからの購入よりも圧倒的にCVRが高い。(江戸氏)
ひなたライフの公式アプリ
リアルの接客をWebで超えるサイト運営をめざす
ひなたライフでは「リアルの接客をWebで超える」という目標を掲げている。同社のサイトやアプリでは、写真や動画を含めてコンテンツを作り込んでいる。
コロナ禍になる前はインテリア商品を実際に触って、質感や大きさを確かめたいというお客さまが多かった。
一方、リアルの接客は接客するスタッフによってどうしてもばらつきが出てしまう。これは恐らく、オフラインで一番の難点だと思う。(江戸氏)
オンラインであれば、商品に対するユーザーのメリット、どんな課題を解決できるのか、どんなシーンで利用できるかなどを徹底的に考えた上で、Webのコンテンツとして最大限表現することにより、接客レベルを保つことができる。
最大限のコンテンツであれば、最大限の接客を維持できる。まずはお客さまに納得してもらい、「欲しい」と思ってもらえるコンテンツを作っていきたいという思いで運営している。(江戸氏)
ひなたライフでは、コンテンツを制作する上でのガイドラインを設けている。まずコンテンツを制作する前に、スタッフが商品のことをよく知ることが大事だという。実際に商品を手に取って、その良さをしっかり知る。
そのなかで「お客さまにとってどんなメリットがあるか」「どんな課題を解決してくれる商品なのか」「どんなシーンで使えるのか」「何とセットにしたらおしゃれになるか」といったことを考え、コンテンツや構成の準備をする。それをもとにカメラマンやライターがコンテンツを作っていくという流れだ。
こうしたガイドラインがあるからこそ、ユーザーがサイトでショッピングを楽しんだり、購入したりするきっかけや動機が生まれていくのだろう。
メーカーが作った商品に魂を吹き込むような形で販売促進しているが、お客さまの理解と接客がきちんとできていることが大事。そういった差別化はできていると創業時から実感している。(江戸氏)
コンテンツにおいて写真はとても重要だが、インテリアはスタジオを使った撮影が難しい。そのため、ひなたライフではスタッフの自宅で撮影することが多いという。自宅をスタジオにしてスタッフがモデルになり、コンテンツを作っている。これは起業した時から変わらない運用スタイルで、創業当時は江戸氏の自宅で撮影していたそうだ。
自宅で撮影した写真を使用した商品ページ
インフルエンサーとの新たな施策「MUSE LINK」
2023年4月、ひなたライフは新たに「MUSE LINK(ミューズリンク)」というサービスを開始。「インフルエンサーがPR・タイアップではなく、フォロワーにおすすめしたい、本当にいいと思う商品を忖度(そんたく)なく出品できるプラットフォームになる」と江戸氏は話す。今までSNS上でよくある「この商品は素敵だけど、PRなのか本当のおすすめなのかわからない」といったことが排除されるということだ。
「MUSE LINK」インフルエンサー(Cast)の投稿
企業が商品を提案するよりも、お客さまやフォロワーとより近い目線を持つインフルエンサーが提案することで、親密感や信頼感がある。(江戸氏)
まずはインテリア系のインフルエンサー15名が参加し、それぞれの得意なカテゴリーでおすすめしたい商品、本当に使って良かった商品をサイトに登録してアップする。インフルエンサーとオリジナルアイテムの開発なども進めている。
ひなたライフとvisumoは、2022年10月頃からこの「MUSE LINK」の取り組みを開始した。「visumoの提供するインフルエンサーがECサイトに直接コンテンツを投稿できる機能がなかったらこの短期間で『MUSE LINK』の立ち上げができなかった」(江戸氏)という。
visumoの井上氏も「昨今、インターネットにおける情報の透明性が問われるなか、『MUSE LINK』は次なるソーシャルコマースの形であり、visumoとしても事業拡大に求められるサービス開発を続け支援していく」と語る。今後の新たな取り組みからも目が離せない。
visumo 取締役 井上 純氏
ひなたライフが選んだvisumoとは
visumoはブランディングや商品訴求を強化するビジュアルデータを一元管理するビジュアルマーケティングプラットフォーム。導入実績は国内600社を超え、Instagram上のUGCを活用する機能やYouTubeなどの動画データをオウンドメディアで活用する機能、スタッフのリソースを活用してコンテンツ投稿を強化する機能など、事業者のWebサイトでのデジタル接客を強化するサービスを提供している。
- Instagram上のUGCや公式投稿、アンバサダー投稿などを活用する「visumo social」
- ECサイトの動画コマースを推進する「visumo video」
- アンバサダーやスタッフが投稿できる専用ツール「visumo snap」
- ノーコードで商品ページを充実させる次世代CMS「visumo comment」
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:DtoCブランド「ひなたライフ」が語る、Instagramフォロワー数60万人&創業3年で月商1億達成のカギとは
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