パルグループホールディングスの自社EC「PAL CLOSET(パルクローゼット)」が、右肩上がりで成長を続けている。コロナ禍でのEC需要の高まり、主力雑貨ブランド「3COINS(スリーコインズ)」のEC開始などさまざまな要因があげられるが、継続的な成長を続けている根底には、顧客の利便性を向上させる取り組みが欠かせないようだ。特に決済面は買い物体験、顧客満足、新規顧客の獲得に大きく影響すると捉え、決済手段と機能の拡充に力を入れている。「PAL CLOSET」を運営するパルのWEB事業推進室マーケティングディビジョン長・高橋貴宏氏に、利便性を向上させる取り組みやその効果、今後の施策を聞いた。
顧客満足向上のために多様化する決済ニーズに対応
コロナ禍以降、ECの需要が高まり、パルグループは「PAL CLOSET」に訪れる顧客の利便性を向上させるための取り組みを強化してきた。なかでも特に力を入れたのが決済だ。
パルグループが力を入れている自社ECサイトの「PAL CLOSET」
「多様化する決済手段に対応していかなければ、ユーザーの満足は得られない」(高橋氏)と話す通り、利用できる決済手段を順次拡充してきた。クレジットカード、代金引換、後払い、「Amazon Pay」に代表されるID決済など、豊富な決済手段を用意。決済強化の一環として、2022年に「Amazon Pay」が提供しているさまざまな新機能を追加・実装した。
それは、「Amazon Pay」の機能を強化し、「PAL CLOSET」とAmazonとの親和性をより高めれば、ECのさらなる成長につながると考えたからだ。
AmazonアカウントのIDとパスワードを入力するだけで簡単に決済できる「Amazon Pay」は、顧客にとっての利便性と安心感が大きく、加えて、多くの顧客がAmazonアカウントを保有しているため、これまでも「Amazon Pay」は「PAL CLOSET」の新規顧客の獲得に寄与してきたという。
「ユーザーの満足度を高めるために決済面はとても重要」と考える高橋貴宏氏(WEB事業推進室 マーケティングディビジョン長)
「Amazon Pay」の機能強化が新規獲得や予約販売に効果を発揮
「PAL CLOSET」では、2022年5月に「Amazon Pay」をCV2へ移行し、翌月までにログイン連携(マイページへのログインなどにAmazonアカウントでログインできるログイン機能)に加えて予約機能を実装した。
「PAL CLOSET」は予約に力を入れており、アパレル・雑貨ECのなかで予約販売のニーズも高い。新たに予約機能を追加で実装し、予約商品の購入でも「Amazon Pay」を利用できるようにしたのだ。
以前はクレジットカード決済、代金引換、銀行振込のみが予約販売に対応していたが、今後は「Amazon Pay」による予約受注に力を入れ、代金引換による受け取り拒否などのリスクも軽減していきたいという。
注文から出荷まで30日を超える商品に対応できる「Amazon Pay」の予約機能
一般的にクレジットカード決済の与信保持期間が30~90日程度であるのと同様に、「Amazon Pay」も通常の与信保持期間は30日としているが、予約販売に対応した再オーソリの機能を実装すれば、与信を再度取り直すことで、注文から出荷までに30日を超える日数を要する受注にも対応できるようになる。
「PAL CLOSET」の予約商品は、注文から出荷まで17~18日程度の商品が多いものの、なかには30日を超えるケースもある。そのため、「Amazon Pay」の予約機能を実装する以前は、予約商品の購入に「Amazon Pay」が利用できなかった。
予約機能の実装後、2022年11月には「PAL CLOSET」の予約販売における「Amazon Pay」の利用率が6ポイント程度アップし、「『Amazon Pay』が予約商品のニーズと結び付いていると実感する数値だ」(高橋氏)と話している。
「Amazon Pay」の与信について
新規顧客獲得にも有効な「Amazon Pay」、アプリでも効果を発揮
主力雑貨ブランド「スリーコインズ」のアプリの決済手段にも「Amazon Pay」をラインアップした。2019年から店舗顧客のアプリによる会員化を進めているスリーコインズでは、会員数がまもなく1000万人に迫る勢いと、増加の一途をたどっており、そのアプリの利便性向上も重視した結果の判断だ。
その結果、「PAL CLOSET」の決済全体における「Amazon Pay」のシェアは、従来から6ポイント程度増加した。
「Amazon Pay」実装後の流通額の伸長率(2022年実績)は、前年比79%増で、その内「Amazon Pay」の実装改善効果だけを算出すると同60%増という。また、「Amazon Pay」で購入した顧客数の成長率も同様に算出すると同57%増。2022年の「Amazon Pay」利用者の顧客単価は同15~20%増で推移するなど、実装改善効果が随所に表れているという。その要因について、高橋氏は次のように話す。
「PAL CLOSET」は予約も盛んな為、予約商品を購入するお客さまのニーズと「Amazon Pay」の機能が合致したことが1つの大きな要因だろう。また、「PAL CLOSET」ではアプリからの売上シェアが年々増加しているため、「Amazon Pay」がアプリでも使えるようになったことも大きく影響したと考えている。顧客体験を向上させるための取り組みを、今後も強化していきたい。(高橋氏)
ここで特に注目したいのが、新規顧客の「Amazon Pay」の決済シェアだ。
新規顧客の「Amazon Pay」利用率は、実装改善後に12ポイント程度増加したという。この点からも、「Amazon Pay」の利便性向上が新規顧客獲得に大きく寄与していることがわかる。
「PAL CLOSET」における「Amazon Pay」決済の流通額は、今後も伸長していくと考えており、有効な機能を随時追加・実装していきたいという。
また、「Amazon Pay」による流通額のうち、アプリ経由の売り上げが約25%を占めていることから、2023年はアプリにおける機能強化にも力を入れていく考えだ。
自社EC売上高250億円に向けて、決済のさらなる拡充・強化は必須
「PAL CLOSET」は、今後も引き続き「Amazon Pay」の機能強化に取り組んでいく計画だ。その施策の1つとしてまず、アプリ上でもAmazonログインによる新規会員登録ができるようにすることをあげている。
「PAL CLOSET」のアプリ
Amazonログインによる新規会員登録が実現すれば顧客体験の向上に大きく寄与すると見られる。今後もアプリ会員数やアプリ経由での購入は増加していくと見込んでおり、アプリでの「Amazon Pay」の機能を強化すれば、新規顧客の獲得・エンゲージメント強化により効果を発揮すると考えられるためだ。
高橋氏は「利便性を高めるために決済手段を拡充しているのだから、アプリにおいても同等の利便性を提供したい」と話し、アプリ周りの課題解決にも力を入れていく考えだ。
コロナ禍ではECの需要と価値が一気に高まり、また、アプリへの「スリーコインズ」ユーザーの流入により、アプリの重要性もいっそう高まった。そして現在は、実店舗も再び賑わいを見せるようになっている。EC・アプリ・店舗の価値を掛け合わせて、コロナ禍前にはなかったような新しい発想のオムニチャネルを進化させていきたい。(高橋氏)
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オリジナル記事:「満足度の向上には決済面が重要」。3COINSなどのパルが取り組む自社ECサイトの買い物体験向上&新規顧客獲得事例
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