EC事業者など優れているECサイトのポイントとは? EC事業者などがECサイトを審査して評価するアワード「第15回 全国ネットショップグランプリ」(一般社団法人イーコマース事業協会主催)の表彰店舗5サイトの評価ポイントには、他のECサイトも参考にできる成長のヒントがある。サイトのUI・UX、顧客対応、商品の探しやすさ・選びやすさなどのポイントを表彰式のコメントなどからまとめた。
第15回を迎えた「全国ネットショップグランプリ」は自薦・他薦含めて146店舗の応募があり、関係者がそのなかから優秀店舗5サイトを表彰した。
イーコマース事業協会(EBS)の会員による投票、専門家・学識経験者・有識者を交えた審査委員会にて審査し、表彰店舗を決めた。主な審査基準は次の通り。
- アイデアのユニークさ、目新しさ
- 一般の顧客ユーザー(利用者)への情報提供の適切さ
- PC・スマホ、各デバイスでのデザイン性の高さ・操作性、動作確認
【グランプリ】
モロゾフオンラインショップ(モロゾフが運営)
https://shop.morozoff.co.jp/評価ポイント
- PC、スマホの共通で、ブランドの世界観が画面から伝わってくる。
ブランドの世界観が伝わるサイト作り(画像は編集部がキャプチャ)
- 特別な商品に関しては特設ページでコラムの掲載などを実施している。また、目的・予算・種類などから商品を探す導線が設けられている点も好印象。
コラムも充実している(画像は編集部がキャプチャ)
- 商品の魅力をビジュアルで伝えるさまざまな工夫が盛り込まれており、購入者の購入ニーズに合わせた情報提供を行っている。
- 商品のネーミングやサイト上の配置も顧客視点が徹底されている。見るだけで楽しくなるサイト。
- ギフトを利用する際の購入者の不安を解消しやすい設定となっている。今後、拡大が予想されるギフトサービスの参考にできるサイトと言えそう。
サイトでは贈り方のマナーまで網羅(もうら)している(画像は編集部がキャプチャ)
受賞者コメント
「モロゾフオンラインショップ」は11年前に立ち上げ、試行錯誤を繰り返してきました。2022年11月にECサイトをリニューアル。実店舗と異なり、お客さまのニーズを直接聞くことができないオンラインショップで、求められていることをどれだけ実現できるかがリニューアルの大きなポイントでした。
リニューアルで一番大切にしたポイントは、お客さまが「商品を買いやすい」「買いたい」「見ていて楽しい」と思ってもらえるサイトにすること。また、受賞ではギフトについて評価いただいたこともとても嬉しいです。
バックオフィスでは、疑問点が生じた時、トラブルが起きた時に、スピーディーかつ丁寧に対応・伴走するパートナー企業を探していました。今回、フューチャーショップ(ECプラットフォームの「futureshop」を提供する企業)さんに手伝っていただき、導入から運営まで手厚いフォロワーをいただいた。そのおかげで、日々安心した運営ができています。
モロゾフ 営業本部 市場開発部 第2課 村岡扶実氏
【準グランプリ】
YOUKA(ヨウカ)公式オンラインストア(トリニティが運営)
https://youka.site/評価ポイント
- 高齢者向けのサイトデザインは、高齢者トーンが強いと対象者から避けられるため、一般的にトーンやデザインの工夫に苦慮するECサイトが多い。そのようななか、「YOUKA(ヨウカ)公式オンラインストア」は高齢者・シニア層が見やすいサイトになっている印象がある。
高齢者向けのトーンが強すぎないサイトデザイン(画像は編集部がキャプチャ)
- スマホサイトのタブバー・メニューバー、サイト内のテキスト、画像など、各要素が大きめに設定され、シニア層に寄り添った設計になっている。
見やすく選びやすいサイト設計となっている(画像は編集部がキャプチャ)
サイト内検索も見やすい設計に(画像は編集部がキャプチャ)
- ターゲット層に対し、魅力を「アパレルやアクセサリーでどのように引き出すか」という視点でデザインされている。
- ギフトでは、「季節ごと」「素材ごと」にあらかじめ候補が出ているので選びやすく、特にビジュアルの使い方に工夫が散りばめられている。
受賞者コメント
「YOUKA(ヨウカ)公式オンラインストア」について構想段階では、サイト設計など全てイーコマース事業協会でつながった友人に相談して一緒に作ってきました。つながりはすごく大事だなと感じています。
受賞について、私たちのやりたいことを評価していただいた。新規事業のため、これから一気にアクセルを踏んでいきたい。
ECサイトではわかりやすさを重視しています。「年齢を重ねるのをポジティブに捉えてほしい」という思いがあり、商品の説明画像ではターゲット層と同じ年代のモデルを起用するなど、こだわっています。「あのおじいちゃん、おばあちゃんがかっこいい」といった世界観を作りたいなと思い、このオンラインストアを立ち上げました。
トリニティ 代表取締役 添田優作氏
【特別賞(ECのミカタ賞)】
SEKIMIKI Online(セキミキ・グループが運営)
https://sekimiki-online.jp/評価ポイント
- スマホサイト、PCサイト共通で、商材の利用シーンがよく伝わってくる。商品ページに商品写真が豊富に用意されていることもその要因の1つ。
商材の利用シーンが多用されている(画像は編集部がキャプチャ)
- スタッフコーディネートや骨格診断、サイズ診断など、消費者が商材を選ぶ際の助けとなるコンテンツが充実している。
スタッフコーディネートの例(画像は編集部がキャプチャ)
- スマホサイト、PCサイトの両方で、数多くあるコンテンツを探すためのチャット誘導、カテゴリー検索が行いやすい設計になっているので、利便性が高い。
商品カテゴリーごとの検索がしやすく利便性が高い(画像は編集部がキャプチャ)
受賞者コメント
約6年前に店舗の補填(ほてん)役として始めた「SEKIMIKI Online」。(ECプラットフォームの)フューチャーショップさんなど、さまざまな取引先企業の協力、当社の社員1人ひとりの努力やサポート、アイデアで、予想を上回る規模にまで成長できました。
今後も目まぐるしく変化するトレンドや情報に対し、セキミキらしくデジタルとアナログの“良いとこ取り”で、多くの人にファッションで幸せになってもらえるように精進していきたい。
セキミキ・グループ EC事業部 事業部長 嶋内一紀氏
【特別賞(日本ネット経済新聞賞)】
食の達人 森源商店(森源商店が運営)
https://www.rakuten.co.jp/morigen/評価ポイント
- 複数店舗を展開しているネットショップは多いが、「楽天市場」「Amazon」といった主要チャネルに売り上げが偏る傾向が多い。森源商店はそれぞれのモールの特性を理解し、各チャネルで売り上げを伸ばし、成長している。
- 限られた人員で効率的かつ効果的に販売するために、注力するべきことと、逆にやらないことを明確にしている。
「食の達人 森源商店」は多店舗展開で事業を拡大(画像は編集部がキャプチャ)
- EC業界は今後もチャネルの多様化が見込まれる。森源商店の高効率なネットショップ運営術は多くのネットショップの参考にると言える。
モールごとの特徴をとらえたサイト設計を追求している(画像は編集部がキャプチャ)
よくある質問を細部までまとめ、顧客対応を充実・効率化している(画像は編集部がキャプチャ)
受賞者コメント
森源商店は、動画やSNSの運用は行わず、自社ECサイトにも注力しているわけではありません。各モール、販売チャネルごとに自分たちで考え、独自路線を追求して運営しているのが強みです。
森源商店 取締役 水谷和弥氏
【特別賞(ネットショップ担当者フォーラム賞)】
卒塔婆屋さん本店(谷治新太郎商店が運営)
https://sotouba.net/評価ポイント
- 商品ページだけでなく、「卒塔婆」の歴史や保管方法など豊富な読み物コンテンツを展開し、「卒塔婆 通販」などEC購入につながるワードでの検索では検索結果の1位を獲得。加えて、関連したワードによるGoogle広告、Googleショッピング、Googleマイビジネスなどの露出により、ファーストビューを「卒塔婆屋さん」でジャックする状況を作り出し、新規顧客の利用につなげている。
ファーストビューをジャックする「卒塔婆屋さん」(画像は検索結果をキャプチャ)
- YouTubeで製造・製作過程の見える化、毎日のブログ更新などで鮮度の高い情報を提供、顧客の信頼を勝ち取っている。
ブログや公式YouTubeの情報をECサイトにも掲載(画像は編集部がキャプチャ)
- 「卒塔婆」に関する商品を探すと、安い商材は他のサイトにもある。「卒塔婆屋さん」では、商品の品質、納期スピード、ばら売りサービスなど付加価値で勝負しており、それが他社との差別化にもつながっている。
付加価値で勝負する「卒塔婆屋さん」(画像は編集部がキャプチャ)
- サイトのUI・UXに関し、スマホではトップページ上部に検索窓を置き、お坊さんをメインにした訪問者が目的商品をすぐ探せるようにしている。検索窓横に「購入履歴」ボタンを設置し、リピート訪問者がすぐに過去に購入した商品を確認できるように設計、そこからリピート購入できるようにしている。
スマホサイトでは検索窓の横に「購入履歴」ボタンを設置(画像は編集部がキャプチャ)
受賞者コメント
「新しい販路でやってみよう」と、オンラインショップを立ち上げたのは2013年。こ10年間、試行錯誤を続けてきました。
ECの世界にのめり込み、セミナーへの参加、本を読んで勉強しました。今でも一日中、年中無休でECのことを考えています。コロナ禍で売り上げが爆発的に伸びたということもあり認知が広がりました。
谷治新太郎商店 六代目当主 代表取締役 谷治大典氏
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:EC事業者らが評価するアワード「ネットショップグランプリ」受賞5店舗に学ぶ支持されるサイト作りのコツとは
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