ECサイトでは入荷するとすぐに完売、実店舗でも売り切れ続出の鎌倉銘菓「クルミッ子」。製造・販売しているのは神奈川県鎌倉市に本社を置く鎌倉紅谷だ。「クルミッ子」を求めてECサイトに訪問する消費者の買えないというストレス を少しでも軽減するため、買い物体験の改善に奮闘する。できる限り買いやすいECサイト作りを――。こんな思いでECサイト運営に取り組むダイレクト・マーケティング部 マネージャーの長野功一氏、ダイレクト・マーケティング部 スーパーバイザーの吉田裕子氏にインタビューした。
売り切れ続出の看板商品「クルミッ子」などを実店舗とECで展開
鎌倉紅谷は1954年に鎌倉市雪ノ下に創業。初代は和菓子職人で、2代目は洋菓子職人。その系譜を受け継ぎ、現在は和洋にこだわらず“おいしいお菓子”を取り扱う。
鶴岡八幡宮前にある八幡宮前本店(写真は鎌倉紅谷提供)
鎌倉という土地柄もあり、以前は生菓子も多く扱っていたものの、今では焼き菓子を中心に製造販売している。
鎌倉紅谷は現在、神奈川・東京・大阪に直営店10店舗のほか、ECサイトを展開する。顧客層は40~50代の女性が大半を占めており、自分用に加え、ギフト需要も多い。また、鎌倉の八幡宮前本店では修学旅行生からも購入されているようだ。
八幡宮前本店の店内(写真は鎌倉紅谷提供)
「クルミッ子」は、歯ごたえの良いクルミをふんだんに使い、甘みと苦みが合わさった自家製キャラメルをクルミと一緒にバター生地ではさんだ焼き菓子。鎌倉紅谷の菓子職人の手によってこだわって作られた「クルミッ子」は、クルミ・キャラメル・生地が絶妙な味や食感を生み出している。
商品のパッケージには鎌倉紅谷のシンボルキャラクターであるリスのマーク「リスくん」があしらわれており、このキャラクターもファンから人気を集めている(写真は鎌倉紅谷提供)
「Amazon Pay」の導入で買い物体験を向上
鎌倉紅谷がEC事業に着手したのは2001年。ECサイト運営はもともと、直営の実店舗を補うためのものという位置づけだった。
ただ、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、無店舗で販売ができるECサイトの重要性を改めて実感。2020年10月にECサイトをリニューアルして、ECサービスの強化や機能の充実などに着手した。
鎌倉紅谷が運営するECサイト
以前の注文方法は、電話での受注がメイン。コロナ禍でネット経由の受注が大幅に増加したため2022年11月末で電話受注を終了し、ネット経由での受注に絞った。もっとも、内製のコールセンター機能は維持しており、受注ではなく「お客さま対応」含め問い合わせ対応の役割を担う。受注はECに集約する一方、手厚いサポートができる対応は継続している。
鎌倉紅谷ではEC強化の取り組みの一環で、2022年8月にECサイトの決済機能を拡充し、「Amazon Pay」を導入。同じタイミングで、「Amazon Pay」だけでなく、他社が提供するID決済も実装した。浸透するID決済を充実することで、買い物体験を向上させるアプローチだ。
ECサイトの決済機能は、以前からあった代引きはなくし、その代わりに「Amazon Pay」などID決済を複数増やしました。その結果、ECサイト全体の使い勝手はお客さまに好評です。(吉田氏)
ダイレクト・マーケティング部 スーパーバイザーの吉田裕子氏
入荷するとすぐに完売する「クルミッ子」、続く売り切れ状態が課題に
鎌倉紅谷の実店舗・ECサイト共通の課題がある。それは、「クルミッ子」がすぐに売り切れてしまうということだ。
「クルミッ子」は年間で3000万個以上を生産している。職人が1つずつ手作りする工程が多く、量産が難しい。メディアで取り上げられる機会も増えて商品の需要が拡大、そこにコロナが重なりECでの注文が大幅に増加した。
その結果、消費者はそれまで以上に入手しにくい状況が発生。職人が手仕事で作る「クルミッ子」は限られた量しか製造・販売できないため、どうしても増える需要に対して供給量が追い付かない状況が続く。
「クルミッ子」は1つずつ職人が手仕事で作る(写真は鎌倉紅谷提供)
オンラインの商品に関しては毎日、在庫を補充しますが、「クルミッ子」は基本的に入荷するとすぐに完売してしまいます。機械の導入も進めていますが、“美味しさ”に直接関わる工程はクラフトマンの手仕事によって作り上げられているので、量を増やすのは難しいです。(長野氏)
「Amazon Pay」導入で買い物体験が改善
消費者が「クルミッ子」をなかなか購入できないという状況に対して、鎌倉紅谷のECサイトは決済面を改善の1つに選び、取り組んだ。
これまでECサイトでの購入には会員登録が必須だったが、2022年8月に「Amazon Pay」を導入するタイミングでゲスト購入に対応、会員登録をしなくても購入できるようにした。ECサイトの利便性を高め、特定の人だけでなくさまざまな消費者が買える仕組みを整えた。
非会員が購入する場合、「Amazon Pay」を使うことで住所登録など面倒な個人情報などの入力作業を省略、簡単な3ステップで購入が完了する。これによる成果はすぐに現れた。実際に「Amazon Pay」を使って購入した消費者から喜びの声が届くようになったのだ。
鎌倉紅谷のカート内。「レジへ進む」ボタンの下に「Amazon Pay」のボタンを設置し決済方法の視認性を高めている
「『Amazon Pay』を使うことで初めて買えた」という反応が
鎌倉紅谷によると、ECサイトでの決済時に「Amazon Pay」を使った消費者の反応として、コールセンターに「すぐに完売してしまうため買えなかった商品が買えた」という声が届くようになったという。
それまでは「カートに入れて、フォームに入力している間に完売してしまって買えなかった」という声がほとんどだったが、「『Amazon Pay』を使うことで初めて買えた」という声も届くようになったのだ。住所やクレジットカードの情報を登録している間に売り切れていた状況が、「Amazon Pay」を使うことでその工程がなくなり、簡単に素早く購入が完了できるようになったことが大きく影響しているようだ。
特に新規のお客さまにとって会員登録や住所の入力など手間を省けるのは、「Amazon Pay」の大きなメリットです。すぐに完売してしまうためこれまで購入できなかったお客さまから喜びの声をいただけるとすごく嬉しいです。(長野氏)
ダイレクト・マーケティング部 マネージャーの長野功一氏
ECサイトでは以前から、シークレットセールのような試みは行っていたものの、あくまでメルマガ会員限定だった。
また、即完売してしまうような人気商品を購入するには、事前の会員登録の準備など、購入までの時間がかかってしまうことから商品購入が難しかった。テレビなどのメディアで商品を初めて知り、アクセスした新規の消費者は、購入できないといった経験をすることが多かった。
しかし、今では「『Amazon Pay』で簡単に購入できます」(吉田氏)という状況が生まれている。
鎌倉紅谷のECサイトの消費者からは上記のような好意的な反応が多く、「Amazon Pay」導入初日から混乱は特になかった。消費者からは概ね、肯定的に受け入れられているようだ。
「Amazon Pay」の導入に際し、何らかの混乱や問い合わせが増えるなど心配していたのですが、いざ始めてみると、迷うことなく皆さまがスムーズに利用されていたので、さすがだなと感じました。世の中の認知度が高く、使い慣れている方が多いという印象です。(吉田氏)
「Amazon Pay」経由で簡単に会員登録が可能に
ECサイトへの注文状況をリアルタイムで分析すると、注文完了まではすでにクレジットカード情報を登録している会員がクレジットカード決済するケースが最も早い。その次が「Amazon Pay」だという。「『Amazon Pay』は他のID決済に比べてシンプルで、注文完了までスムーズに進むことができるのだと思います」と吉田氏は分析する。
現状、ECサイトの決済手段の内訳は、クレジットカードが45%、「Amazon Pay」が25%、他の2つのID決済で15%、後払い決済が15%だと言う。
決済手段の内訳
2022年8月に「Amazon Pay」を導入した段階では、「Amazon Pay」を使った消費者のうち、ECサイトに会員登録をする割合は15%だったが、「Amazon Pay」が浸透していった年末にはそれが20%にまで広がった。
背景には、会員でない消費者が「Amazon Pay」で決済をする際、以下の画像のようにECサイトでの会員登録が簡単にできるようになった点があげられる。
支払い方法で「Amazon Pay」ボタンを押した後の個人情報確認画面で、新規の会員登録がデフォルトオンで設定されている
このように、ゲスト購入に対応して会員登録なしで利用できるようにした後も、会員登録数の減少は見られないという。その意味では、「Amazon Pay」が会員登録にも貢献していると推測される。
鎌倉紅谷によると、新規顧客が簡単で楽に決済できるという点から「Amazon Pay」を使って購入しているだけでなく、既存会員のなかにも一定の割合で「Amazon Pay」を使って購入しているケースも見られるようだ。
「Amazon Pay」によってスムーズな買い物体験&機会ロスの低減を実現
鎌倉紅谷が「Amazon Pay」を導入したことで実感した魅力は、なんといっても購入時に住所情報などの入力の手間が省け、スピーディーに買い物ができることだという。
吉田氏はこう言う。「人気商品など数分で売り切れてしまう商品の場合、入力が省略されるのはお客さまのストレス軽減につながり、すごく便利です。多くの方がすでにAmazonアカウントを持っていますし、『Amazon Pay』を使い慣れている方は鎌倉紅谷が初めてでも迷わず簡単にお買い物いただけていると思います」
決済の選択肢に「Amazon Pay」を用意しておくことで、Amazonで購入経験のある消費者が鎌倉紅谷のECサイトを訪れた際に、ストレスなくスムーズな購買体験ができる。これによって、購買時の離脱を防ぎ機会ロスの低減が期待できる。
Amazonのお客さまが「Amazon Pay」を通じて私たちのECサイトに親和性を感じてくれるのは、とても有り難い。ITリテラシーが高い人や通販に詳しいお客さまが、スムーズにECサイトに来て購入してもらうという流れはすごく魅力です。(長野氏)
鎌倉紅谷の商品はギフトとして贈られることが多く、イベントに対応した限定品の販売にも力を入れている。そのため、予約機能や自動払い機能など「Amazon Pay」が提供している他の機能と商品との相性の良さも感じている。
鎌倉紅谷の本店は、鎌倉幕府の第2代執権だった北条義時の長男である北条泰時の小町邸跡地に建っている
多くの方にご愛顧いただいている「クルミッ子」ですが、2022年は2021年比で約10%増産しており、現在も引き続き供給量を増やす努力をしています。また、2025年には新工場の建設も予定しており、さらなる増産に向けて動いているところです。(吉田氏)
消費者の利便性向上のためにECサイトに導入した「Amazon Pay」が、鎌倉紅谷のような老舗企業のDX推進につながり、ビジネスにいっそう刺激を与えていくだろう。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:看板商品「クルミッ子」は入荷するとすぐに完売!鎌倉紅谷のECサイトが取り組む買い物体験向上&ストレス軽減のアプローチとは
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