コロナ禍以降さらに勢いを増しているデリバリー市場。その市場拡大を支えているのが、膨大な配達依頼に対応するデリバリー管理システムだ。なかでも、エニキャリが提供する配達管理システム「ADMS(アダムス:エニキャリデリバリーマネジメントシステム)」は、日本マクドナルドもクルーによる自社配達で「ADMS」を導入。デリバリーに関わる従業員の満足度向上など、さまざまな効果が表れているという。
記事では、前半にデリバリー市場の概況を解説。後半に「ADMS」の特徴、デリバリーと流通の展望について、エニキャリの小嵜秀信氏(代表取締役)と、日本マクドナルドの水品壮二郎氏(デリバリー推進室上席部長)にインタビューした。
コロナ禍を契機に一大市場へ成長した 国内デリバリー市場の概況
古くから出前文化が根付いている日本でも、コロナ禍は特に大きな契機となり、デリバリーサービスの需要は急拡大。クロス・マーケティングの「食品宅配サービス・フードデリバリーに関する調査」によると、新型コロナウイルス感染拡大後の消費者のフードデリバリー利用経験率は、約4割にのぼった。
クロス・マーケティングの「食品宅配サービス・フードデリバリーに関する調査」資料から編集部が抜粋
また、日本政策金融公庫が2020年10月に行った「飲食店のテイクアウト・デリバリーサービス等に関する消費者調査」においても、コロナ収束後も飲食店のデリバリーサービスの利用頻度が「増えると思う」と回答した消費者が2割超、「変わらないと思う」が6割超となった。消費者の間でもデリバリーサービスの利用の定着が進んでいることがわかる。
日本政策金融公庫の「飲食店のテイクアウト・デリバリーサービス等に関する消費者調査結果」から編集部が抜粋
フードデリバリーに対応する店舗の急増と、消費者の日常にデリバリーサービスが溶け込んだことから、コロナ禍の一過性にとどまらない市場の成長が今後も見込まれる。
ICT総研が実施した「2021年フードデリバリーサービス利用動向調査」では、フードデリバリーの市場規模は2021年に5678億円、2023年には6821億円に達するとの予測が出ている。
ICT総研の「2021年フードデリバリーサービス利用動向調査」から編集部が抜粋
日本マクドナルドとエニキャリの対談に学ぶデリバリー市場拡大の裏側
配達管理システムと配達代行を提供するエニキャリを、2019年に設立した小嵜秀信氏。日本よりも先進的にデリバリーが普及した中国の都市部で流通小売業を手掛けてきた小嵜氏は、中国で流通が変化した流れと日本を照らし合わせると、2019年から国内のデリバリー市場がより伸長すると予見していたという。
想定外のコロナ禍による上振れはあったと考えられるが、「コロナ禍がなくともデリバリー市場は伸びていただろうし、コロナ禍が収束した後も引き続き伸びていくだろう」(小嵜氏)と話す。
エニキャリ 代表取締役 小嵜秀信氏
こうした小嵜氏の考えに、日本マクドナルドの水品氏も賛同する。日本マクドナルドは2010年に自社配達を開始して以降、対応店舗を順調に拡大しているほか、世界各地のマクドナルドの成功事例を日本市場にも取り入れ、2017年以降「ウーバーイーツ」「出前館」「Wolt(ウォルト)」などの配達代行サービスも導入。
これまでも店舗での飲食やテイクアウト、ドライブスルーなど、顧客のニーズに合わせてチャネルや利用方法を揃えてきた日本マクドナルドにとって、デリバリーの開始・拡大も当然の流れだったという。
水品氏は「当社のデリバリービジネスはかねてから伸長してきた。コロナ禍は1つの大きな契機になったものの、これからも伸びていくことは自信を持って言える」と話している。
日本マクドナルドのデリバリー推進室上席部長 水品壮二郎氏
自社デリバリーをトータルで支援するエニキャリ
デリバリー市場が拡大するなか、デリバリー事業者で導入が進んでいるのが、“IT×自転車配送”のシェアリングデリバリーサービス「anyCarry(エニキャリ)」だ。
エニキャリは、店舗やECに注文が入った商品を、エニキャリの配達員が自転車で配送するデリバリー配達委託/当日宅配配送委託や、独自の配達管理システム「ADMS」の提供を手がけている。
エニキャリはITと自転車配送を組み合わせた物流代行サービスを提供する
店舗から消費者へのクイックデリバリー(短時間配達)を必要なときだけ利用でき、利用した分だけ料金が発生するオープン型配達インフラ「DeaaS(Delivery as a Service=デリバリー・アズ・ア・サービス)モデル」が多くの企業のニーズを捉え、デリバリーを委託する企業・店舗数は年々増加。飲食店だけでなく、化粧品ECや家電量販店など、デリバリーの利用シーンの広がりに貢献している。
こうしたエニキャリの柔軟かつ効率的なデリバリーを叶える上で、肝となっているのが「ADMS」だ。リアルタイムに入る配達依頼データに対し、配達員の位置やデリバリーの起点・終点の情報をもとに最適な振り分けを自動で行うほか、蓄積したデータから効率的な配達ができる機能などを搭載。「ADMS」は自社で配達員を抱えてデリバリー事業を手掛ける事業者も利用でき、日本マクドナルドの自社デリバリーにも採用されている。
配達効率を大幅にアップさせるシステム「ADMS」
配達効率を大幅アップさせるエニキャリの配達管理システム「ADMS」
――エニキャリが提供する配達管理システム「ADMS」の特徴を教えてください。
小嵜秀信氏(小嵜氏):「ADMS」は、①ランダムに次々と入る注文に対して自動配達アサインを行い、業務を効率化 ②配達員の個人のスキルに依存しない、スマホアプリによるナビゲーション ③エンドユーザーの満足度向上のための、お届け時間の自動計算――の3つの特徴を持つ配達管理システムです。
デリバリー業界では全世界的に、ギグワーカーの配達員とオーダーをマッチングさせるサービスが多く、マッチングできなければそのオーダーをロストする形がよく見られます。ですが、当社は配達員のシフトなども考慮してエンドユーザーのお客さまに正確な配達時間をお伝えし、満足度を高めながらいかにオーダーをロストさせないかということに重点を置いています。
また、たとえば配達先に大きなオフィスビルや商業ビル、高層マンションなどが指定された場合には、単に地図上で建物の真ん中にピンを立てるのではなく、入館時に通る防災センターの場所にピンを立てたり、入館の際の施設裏導線のナビ表示などを行い、配達効率を上げることが可能です。
置き配をする場合には置き配の写真撮影を指示したり、画像の管理をスマホで一元管理できるようにするなど、配達員の利便性と均質な配達品質を実現する機能にも力を入れています。
小嵜氏は「ADMS」について、配達員の利便性とエンドユーザーの満足度向上に役立つ配達管理システムだと説明する
デリバリーは大きなビジネスチャンス
――日本マクドナルドのマックデリバリーサービスの特徴や社内での位置付けを教えてください。
水品壮二郎氏(水品氏):日本マクドナルドのいつものおいしさとクルーのホスピタリティをお客さまにお届けすることをコンセプトに、国内では2010年に日本マクドナルドの自社配達の宅配サービス「マックデリバリーサービス」をスタートしました。
日本マクドナルドでは、ドライブスルーやテイクアウトと同様に、デリバリーをお客さまの幅広い選択肢の一つとして位置付けておりましたので、以降「ウーバーイーツ」や「出前館」「Wolt」など、外部配達パートナーとも連携し、デリバリーサービス全体として拡大してまいりました。
特にコロナ禍以降は、「非接触」や「なるべく家で食事をしたい」といった需要の高まりによってこれまで以上の勢いで伸長し、配達を外部委託しているケースも合わせると、2020年12月時点で46都道府県の約2200店舗に到達。自社宅配に絞っても、2022年12月時点で全国の967店舗で対応するに至っています。
日本マクドナルドの水品氏によると、デリバリーはお客さまの新しいマクドナルドの楽しみ方として見ているという
――自社で配達を手掛ける理由やメリットはどのようなものですか。
水品氏:1つは、街で走っている日本マクドナルドのバイクを目にしたお客さまから、日本マクドナルドがデリバリーを行っていることを認識していただけること。
そしてもう1つは、出来たてに近い状態でお届けするための包装や袋詰めなどの細かなところまで自社で追求できることです。お客さまにより良い体験をしていただけるよう、「デリバリー推進室」という専門チームを設立し、さまざまな改善に取り組んでいます。
実のところ、世界のマクドナルドの中では、自社配達をする国は少数派です。日本は昔からそばや寿司の出前文化が根付いており、配達というと地域の店舗地域のブランドに直接注文をすることを想起するお客さまもまだまだ多いです。そこに日本のマーケットニーズがあるからこそ、クルーによる自社配達をしていこうというのが、私たちの考えとなっています。
考え方の共通点が両社のシナジーに
――自社配達で「ADMS」を導入していますが、数ある配達管理システムの中から「ADMS」を選んだポイントを教えてください。
水品氏:昨年、日本マクドナルドのデリバリーアプリを刷新し、公式アプリへの統合を行ったのですが、その際、日本マクドナルドに合ったデリバリーシステムはないかと探し続けていたなか、エニキャリさんと出会いました。それまでも国内外の数社と話をしていたのですが、エニキャリさんは当社とビジネスやお客さまに関する考え方が一致する面が多いと感じたことが一番の理由となり、導入を決めた形です。
――具体的にはどういった点に考え方の一致を感じたのでしょうか。
水品氏:当社の場合、かつてはお客さまが店頭やドライブスルーで注文され、そのタイミングで商品を作るというシンプルなビジネスだけでしたが、今ではモバイルオーダー、デリバリーの登場によって、家や道にもレジがあるような複雑な状態になっています。
もし私たちがデリバリーのことだけを考えて、デリバリーだけを優先させるような仕組みを作ってしまえば、店頭やドライブスルーのお客さまにご迷惑をお掛けしてしまう。そのため、大前提として、最も優れたバランスを実現できる企業とパートナーシップを組みたいと考えていました。
エニキャリさんとはいろいろな点で考え方が合致していましたが、たとえば先ほど小嵜さんが仰ったキャンセルの判断についてもそうです。オーダーを運ぶことができる配達員がすぐに見つからないという状況が発生することはどうしてもありますが、単にキャンセルしてお客さまをがっかりさせてしまうのではなく、時間を変更して出来る限りお届けするなど、最善の方法を提案するのが私たちのめざすところです。
また、自社配達をする上で従業員の休憩時間なども細かな配慮が必要です。その辺りも単にシステムの合理性だけを考えるのではなく、従業員のニーズもくみ取った仕組み作りをしていただける点も非常に大きかったです。
日本マクドナルドがめざす配送システムはエニキャリと多くの考え方が一致していたという
小嵜氏:海外の場合、オーダーと配達員のマッチングの効率化が最優先されがちですが、日本の場合は出前という自社配達の文化があるため、「お客さまを大切にし、働く人がどれだけ効率的に働けるか」を事業者が重視する傾向は強いと感じています。
こうした日本マクドナルドさんのような考えは、自社配達に限らず配達代行においても必要ではないかと私は思います。マッチングの効率化を最優先すると、配達員によってオーダーが取れる件数に格差が生じかねません。
エニキャリの配達代行業務においても、従業員の効率的な働き方をめざした健全な仕組み作りを心掛けているので、「ADMS」も日本の事業者に受け入れられやすいシステムになっているのだと思います。
導入後の細やかな支援体制が安心感に
――「ADMS」の導入に際して、国内ベンダーならではの細かな対応や安心感など、どういったところが良かったと思いますか。
水品氏:これまでもさまざまなシステムを導入してきた経験からすると、システムの導入においてエラーの発生は、どうしても付き物なのだろうと感じています。ただ、そのときに最も重要なのは、原因と影響の範囲を速やかに追究し、リカバリーすること。システムエラーが発生すると、場合によっては全国の約3000店舗の従業員や、お客さまへの説明が必要になることもあるからです。
「ADMS」の導入時もやむを得ずエラーが起きたことがありましたが、エニキャリさんのリカバリープロセスは非常にスムーズでした。対応の素早さと丁寧さを見て、安心して任せられると思いました。
従業員から喜びの声で成功を確信
――「ADMS」導入後の従業員からの反応や、実際に感じたメリットなどを教えてください。
水品氏:刷新前のシステムは、店舗にとってアナログな仕様になっていました。店舗では常に店頭やドライブスルーのお客さまに対応しており、その間にデリバリーの注文もお届け時間に合わせてオーダーを入れなければなりません。
しかし、以前のシステムはデリバリーオーダーを入れる最適なタイミングをシステムで弾き出せず、従業員が「そろそろこのデリバリーオーダーを入れるとちょうどいい」と判断しなければなりませんでした。この部分の仕組みも、「ADMS」によって新たに作ることにしたのです。
「エニキャリなら素晴らしいシステムを考えてくれる、成功する!」という信頼のもと、デリバリーオーダーを入れるベストなタイミングのロジックを徹底的に議論しながら進めてきました。
「ADMS」の導入後、店舗でクルーや店長といった実際にこのシステムを使う幅広い層から感想を聞いたところ、「システムに従えばいいから楽になってすごく良かった」といった声が多数寄せられました。これまでも従業員が本音で「良い」と言ったプロジェクトのほとんどが成功してきましたから、その瞬間「このプロジェクトは必ず成功する」と確信が持てたことを覚えています。
小嵜氏:デリバリーは単なる「お店とお客さま」という関係性ではなく、注文画面や配達員が基本的な顧客接点となります。特に、お客さまとface-to-faceで接する配達員の満足度がシステムには重要で、彼らの意見をいかに反映するかがポイントだと捉えています。
現場の声をキャッチアップしている日本マクドナルドさんの取り組みに私たちも感銘を受けましたし、「現場の皆さまから喜ばれているから成功する」という期待は、まさにその通りだと思います。
小嵜氏は、現場の声を重視している日本マクドナルドの考え方に共感している
水品氏:日本マクドナルドの運営はクルーやMGR(時間帯責任者)、店長など店舗スタッフによって支えられているので、現場の声を傾聴するよう、常に心掛けています。
また、法令やルールを守る上でも、従業員のシフトや休憩時間を考慮しながら、デリバリーオーダーを確実にお届けする仕組み作りを徹底しなければいけません。
私たちの考え方を1つひとつ具体的にシステムに落とし込むために、エニキャリさんにはさまざまな要望を伝えさせていただきました。やはり、両社の根本的な考え方が合致していなければ最適なカスタマイズはできなかったと思うので、本当に助かりました。
デリバリーは流通が変わる第一歩
――エニキャリの配達代行では、同じエリアにある複数の企業/店舗が、エニキャリの配達員をエリア共通の配達員として活用する共助モデルを掲げています。その理由や、独自の取り組みを教えてください。
小嵜氏:同じエリア内の人口は毎日ほぼ一定なはずで、つまり、パイが限られているということは、どこかの店舗がキャンペーンの実施などでデリバリーオーダーが増えれば、必然的にほかの店舗のオーダー件数は減少するものと考えられます。
それならば、自社配達だけでなく、配達員を共通化して活用しようという発想のもと、外部配達パートナーなどの利用が進んだのだと思います。
当社も同じく配達代行サービスを手掛けていますが、根本には「共助インフラ」を発展させたい思いがあります。配送は単にモノをお届けする行為ではなく、インフラそのものだと考えているからです。
当社は大手の配達代行業者よりもまだ小規模ですが、配達員を直接雇用することで、大手にはない独自性を磨いて「共助インフラ」を確立するよう努めています。独自性の1つが「配達員クオリティの均一化」です。
これまではレベルが飛び抜けて高いギグワーカーもいれば、まだ経験の浅い人もいるなど、配達員によってクオリティに差があったと思いますが、均一化すればエンドユーザーの安心感は高まります。また、配達員を最適なエリアと時間で配置することで、インフラとして欠かせない「安定性」も突き詰めています。
エニキャリの配達インフラは導入企業のニーズに広く対応する
これからはエニキャリの「共通インフラ」がスタンダードに?
――エニキャリが掲げる「共助インフラ」に対して、水品氏はどのような意見を持ちましたか。
水品氏:日本のマーケットでは、日本マクドナルドの自社配達も含め、デリバリービジネスがまだ成長過程です。なので、エニキャリさんのようにクオリティの均一化や安定性強化に努める姿勢はとても大事だと思いますし、長い歴史を持つレストランサービス以上に、デリバリーサービスは成長の余地が広がる分野だという期待も多くあります。
デリバリーを手掛ける事業者や配達員がどういう振る舞いをするのか、どういったホスピタリティをお届けするのかを考えていくことが、今後の業界のスタンダードにつながっていくかもしれません。
小嵜さんのお話を聞いて、お客さまの体験を向上させるためには業界全体で考えることが重要だと、改めて思いました。
――国内のデリバリー業界の今後や、拡大するデリバリー市場が与える影響について、考えをお聞かせください。
小嵜氏:私は上海を中心に、中国国内でリテールビジネスを手掛けてきました。電子決済が普及し、電子決済を媒介とするスーパーアプリが登場して流通が変わっていく流れを現地で体験してきたのですが、この過程におけるフードデリバリーの台頭は、流通が大きく変化する入り口に過ぎないと当時から思っていました。
そのため、私はフードデリバリーだけに着目していたわけではなかったですし、当社を創業した2019年は日本でもフードデリバリー企業が注目され始めた時期でもあったので、日本もこれから新しい流通の時代に入るのだろうと俯瞰(ふかん)していたのです。
中国では、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなど、生活に身近な領域のデリバリーが当たり前になり、その後、ロングテールであらゆるデリバリーが普及しています。ただ、これは単純にデリバリーを使う人が増えたから領域も広がったという話ではなく、消費者ニーズの多様化が生んだ必然性だったと考えています。
今までの流通は、基本的に小売店がお客さまと向き合ってきましたが、中国の新しい流通(ニューリテール)は、「お客さまと小売店」の関係ではなく、「お客さまと商品をどう結び付けるか」という概念になっている。
つまり、お客さまと商品をつなぐために、デリバリーや配達などの様式が多岐にわたったということです。急ぎでないものは今まで通りネットショップで注文しつつ、今すぐ必要なものはデリバリーを使うといったように、日本でもデリバリーの拡大は流通が変わる第一歩になるのだろうと思っています。
水品氏:「お客さまと商品をつなぐ様式が多岐に」とはまさにその通りで、私たち事業者としても、デリバリーでご注文していただくことが一番大切な訳ではありません。日本マクドナルドの体験をしていただくことが、何よりも大切なのです。
たとえば、当社のアプリや外部配達パートナーのサイトなどで新商品を知ったお客さまが、そのときにデリバリーをご注文されなくても、後日デリバリーや来店など、お客さまの好みの形で日本マクドナルドを体験いただくことは多いと思います。
コロナ禍で顕在化したニーズも含めて、消費者ニーズの多様化はますます進んでいるので、私たちはいろいろなチャネルを用意して、お客さまが日本マクドナルドを利用したい時にいつでも対応できるようにしておきたいですし、そんなブランドであり続けたいと考えています。
――流通の変化に伴い、既存の物流・配送や店舗の在り方にも変化が起きると考えますか。
小嵜氏:飲食から始まったデリバリーがスーパーやコンビニなどにも広がり、徐々に既存のEC物流とクイックデリバリー物流の差はなくなってきています。現に当社にも、「ネットショップの配送を手伝ってほしい」という声が多く寄せられている状況です。
たとえば、店舗展開している企業様であれば、今までのEC物流では難しかった「注文後●時間での配送」や「当日配送」などが可能になります。また、店舗が無い企業様も当社の拠点や提携拠点などを活用し、同様の仕組みを導入することが可能になります。
さらにニーズとして大きいのが、自転車による配送「ゼロカーボン配送」が可能になるという点です。昨今、環境に関しての取り組み(SDGsやESGなど)が、企業価値や顧客好感度に大きな影響を与えています。
当社の配送は1配送ごとに「CO₂排出削減効果が●g」を計算し表示することが可能です。こういった取り組みも、多くのお声がけを頂けている要因なのだと思います。
流通が変化するなかで、店舗は今後、販売以外に次の3つの機能を兼ね備えていくと予測しています。
- 商品を購入する場所(既存店舗の価値)
- 商品と出会うエンターテイメントの場所(新たな感動)
- 商品をストックする場所(新たな利便性)
また、欲しい物がどの店舗にあるのか可視化できるようになれば、自分で買いに行くのか、デリバリーを頼むのか、宅配便で届けてもらうのかを消費者が判断する動きも進むはずです。
当然、手段によって値段は異なるため、事業者にとっては多様な消費者ニーズに対して多様な手段で応えなければならない、非常に複雑な時代に入ったと思います。
ただ、今の過渡期の先にはECの宅配とデリバリーの融合、配送リソースの最適化がよりいっそう進んだ未来があり、それこそニューリテールの真髄が見えてくるのではないかと考えています。
顧客の商品への“テンションが高い”ときに、いかに迅速に届けるか
――EC事業者からのエニキャリへの配達依頼で、「デリバリーとECの融合」や「ニューリテール」を象徴するような目新しい取り組みがあればお聞かせください。
小嵜氏:たとえば、化粧品会社のライブコマースがその1つです。SNSマーケティングを実施すると、その瞬間は注文が急増しますが、商品の配送が数日後になると、感動が薄れた頃に届いてしまうことになります。
それを注文の30分後や1時間後など、「この商品が欲しい」というテンションが高まっている間に届けられれば、お客さまの感動が維持できるのです。
「迅速な配送が顧客の満足度を高める」と小嵜氏は指摘する
水品氏:日本マクドナルドのデリバリーのご注文が特に多い時間帯は夜なのですが、これはエニキャリさんのライブコマースの配送と観点の近い事象なのかもしれません。
これまでは夜にCMを見て興味を持ってくださったお客さまも、お風呂に入って着替えた後であれば「今日はもう出かけられない」となっていたと思いますが、今は興味を持った瞬間にデリバリーでご注文いただけます。
コロナ禍が収まってくるとデリバリーのニーズが下がるのではないかと考えていましたが、予想に反してニーズが安定しているのも、それだけデリバリーがお客さまの生活の中で日常化した証拠です。
ライブコマース商品のデリバリーのように、今までになかったさまざまなシナジーが至る所で起きてくるのだろうと、事業者目線からも感じています。
水品氏はエンドユーザーによるデリバリーサービスの利用が定着しつつあると考えている
小嵜氏:今後は消費者ニーズの多様化に合わせた配送だけでなく、デリバリーが進化したからこそできるECの配送も広がっていくのではないかと思っています。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:エニキャリの配達代行システムが国内でヒットしている理由とは? 日本マクドナルドとエニキャリ小嵜代表が対談
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