コンサルティングや運営代行など、ECの支援サービスを幅広く提供するボトルシップ代表取締役社長の佐山陽介氏と、WUUZY代表取締役CEOの竹中星矢が「年商5億をめざす食品EC事業主」が考えるべきテーマをディスカッションします。食品ECの運営がほかのEC商材と異なる点や、顧客をひきつけ、支持を得るためのマーケティング手法について解説します。
楽天でコンサルティング業務を行った経験もあるボトルシップの佐山社長と、WUUZYの竹中社長が対談
食品ECのマーケティングは、ほかのEC商材と何が違うのか?
――早速本題に入っていこうと思います。まず1つ目のテーマです。ECで売るにあたって、食品と他の商材で売り方やマーケティングが変わるのでしょうか?
竹中:「ECのプロ」(編注:WUUZYが提供するEC専門の人材マッチングサービス)では、あるマーケティングの手法と、EC事業者をマッチングする際に一番重要になってくるのは、商材特性に対する経験の深さなんですよ。一見スキルだと思う人って多いんですけどね。
たとえば「SHIBUYA109」とかでアパレルブランドを展開しているようなアパレルショップさんがECを運営しているケースと比較して、店舗で販売している食品ブランドさんがECをやるケースは、売り方も、カルチャー文化圏も、全然違うんです。
適切なノウハウがないと食品ECの成功は難しい⁉
竹中:食品ECにおいては特に、適正な人が適正なノウハウを持って支援しないと、まるで効果が出ないということがございました。
違うのは、ECで一番大切になってくる「新規の顧客の集客方法」の条件設定にもなってくる「CRMの設計」です。つまり、既存のお客さまをいかにリピートさせていくのか、あるいはどうエンゲージメントを築いていくのか、です。
そのCRMを考える際に⸺経営的に言い換えるとPL(編注:Profit & Loss Statement。損益計算書のこと)とCF(編注:キャッシュフロー)を考える際に、商材ごとに利益率が違うんですよね。
利益率がまるで違ってくると、そこに対して使うべき販管費とそのバランス、あるいはフェーズに対するバランスの取り方っていうのが結構異なってきます。
リピート率やCRA向上のポイントは“商材に合わせた最適化”
竹中:ですから、リピート率であったり、CRA(編注:顧客獲得単価)も考えたら商品商材に対してしっかり最適化していくというのは何よりも大事なのかなというふうに思います。
私はここまで、1回しか購入したことない人と、2回以上購入してる人の二元論で話してしまいましたけど、そこの間にちょっとミドルユーザーという概念を置いて考えたら考え方はどういうふうに変わるのかについては佐山さんには聞いちゃっていいですか。
“どの顧客層をねらうか”を考えたアプローチを
佐山:そうですね。マーケティングのところについて、事例をもとに話させていただきます。コーヒーやワインなど飲料系のマーケットでよくある特徴的な部分のお話です。
簡単にご説明すると、一番人数が少ないのがヘビーユーザーですね。ちょっと高めのものとか、産地にこだわっているものとか、あのブドウの品種がこうとかっていうこだわりを持った人たちは一定数います。
自社商品はどのユーザー層にはまるのかを考える必要がある
佐山:人数だけで言えば一番多いのがミドルユーザーです。味がおいしければいいやとか、漫画に出てきたちょっと有名なものを購入している層ですね。
次に人数が多いのがライトユーザーです。「楽天市場」とか「Yahoo! ショッピング」とかでよく見られますが、たとえばワインだと金賞ボトル6本セットとか、名前はあんまりよく知られてないけど、賞を取ってますみたいな商品があります。ライトユーザーは、こういう「本当においしそうだ」という客観的な評価で購入する人たちです。
人数ベースだとミドルユーザーが一番多いわけですが、購入する金額でいうとヘビーユーザーが一番多くなっています。そのため、「どの層を狙うべきなのか」は、結構、プレーヤーやフェーズによって変わることが多いです。
自社商品は、市場のどのカテゴリーに入るのか?
佐山:次の図は、コーヒーを例に「楽天市場」で言うところのプレーヤーの違い・特徴みたいなところを細分化してカテゴライズしたものです。
どのカテゴリーで勝負していくのかによってマーケテイングの手法は変わっていく
佐山:こういうカテゴライズの仕方をすると、コーヒー1つにしても、競合がどこなのかとか、プレーヤーはどこが戦ってるのかがわかります。
たとえば、一番ボリュームがあるのがこの低単価コーヒーショップ。「澤井珈琲」とか「加藤珈琲」とかがランキングなどでたくさん出ていて、2キロで2000円とか、3キロ購入すると2500円から3000円とかめちゃめちゃ安いやつが結構増えているんですけど、はたまた、あまり利益は取れません。
右側に記載がある、いわゆるスペシャリティコーヒーとかちょっとハイエンドのものとかを販売してる会社さんでしたら、全然、そうとは限りません。
このように、商品がどこのカテゴリーに入るのかによって全く事情が異なるので、どのカテゴリーの商品を売っていくのかは大事になります。
こういった商材ごとの市場特性は、その商材に詳しい人が一番よく知っています。
最初の問いに答えると、こういった事情を把握した上でマーケティングに取り組むためにも、やはり食品なら食品の事情を前提にするので、マーケティングの内容は変わるというのが答えになりますね。
食品のうち「中食・お菓子・ギフト・定期通販」で販売方法はどれくらい違う?
スイーツは「商品の見せ方」。ギフトは年間スケジュールを踏まえて
⸺ありがとうございます。食品と他の商材で全く同じことをするべきではない、というのは分かりました。では、その食品の中でも細分化されることはあるのでしょうか?
佐山:中食・スイーツなどは、販売方法としては全く同じになってきますが、重要なのは写真の「おいしそうに見えるか」つまり「商品の見せ方」です。
ギフトに関しましては、大きく違ってくるので、こちらの方をご紹介しますね。食品においてのギフトで言うと、王道の年間スケジュールがございます。冬の時期でしたらおせちとお歳暮とクリスマスが佳境に入ってきてるような感じだと思うんですけど。年明けからは、バレンタイン・ホワイトデー・母の日などがございます。
ギフトは王道の年間スケジュールに合わせたイベントやキャンペーンが実施されていく
佐山:ギフトは包装紙とかのしとか水引きとか、あとラッピングも結構重要になります。単価も結構変わってきますし、各イベントで必ず相場というのがございます。実はもうご存知かもしれませんが、母の日が一番単価が高く、4500円から5000円ぐらいに上がります。平均の客単価は父の日が一番安いんですね。ちょっと悲しいですが(笑)。
それぞれの購入ユーザー層ですが、2980円ぐらいで買うお客さんの層、4000円ぐらいで買う層、3980円くらいでで買う層、あと4500円くらいで買う層と大きく分かれます。
大切なのは客層に合う商品づくりやギフトの提案
佐山:重要なポイントの1つが、それぞれの客層に合わせて商品を組みギフトを考えるということですね。
あとは、季節調整の大まかな施策として、スケジューリングが大事になってきます。必ず、当日から2か月前ぐらいにはスタートするのが王道です。母の日・父の日も大体2か月前から用意をしていきます。「超早割」のような形で先にお客さんを取り込んでいくんです。
駆け込み需要になるとやっぱりどうしても大変になってしまうので、できれば早め早めに注文いただくために、早割をスタートした後もまた3段階ぐらい、「早割」「超早割」「超超早割」みたいにやってる会社さんもいらっしゃいます。
「超早割」「早割」で段階的にポイントをつける割合をちょっと減らしていって、「早めに注文しといた方が得ですよ」っていうような作り方をしていくイメージとなります。
PVを稼ぎやすい特集ページで“いかに勝負するか”
佐山:あと、よく「楽天市場」「Yahoo! ショッピング」である形なんですけど、母の日でしたら必ず「母の日ギフト特集」という特集ページが組まれます。そしてそのキャンペーンページに対して広告を掲載するような形ができます。
ギフトの特集ページのイメージ(画像は「母の日」にひもづくページ)
佐山:どうしてもやっぱりそこに一番PVが集まりますので、そこでどう勝負していくかが、ギフトの販売方法では重要です。
――なるほど、同じ食品でも「ギフト」というだけでこんなに重要ばポイントが出てくるんですね。「同じ食品だから」というくくりにするのは危険と言うことが分かりました。細分化した目線でポイントを押さえてマーケティングを行うことが大切ですね。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:食品EC成功の秘訣とは? 元・楽天コンサルのボトルシップ佐山社長が語る効果的なマーケテイング手法 | 「ECタイムズ」ダイジェスト
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