※前編「いくつもの変遷を経て自社の想いを伝えるサイトへと進化したオウンドメディア」については、こちらから!
カンパニー制におけるマーケティング・コミュニケーション体制とは
――日立製作所が導入しているカンパニー制において、全社コミュニケーションと事業部のコミュニケーションをどう連動させているのか、非常に興味深いのですが。
デザインのテンプレートなど日立グループ共通の指針はいくつかありますが、プロモーションの大きな方針についてはグループ全体というよりも、事業部ごとの方針で動くことが多いですね。
カンパニー制という組織体制の中で、我々が意識しているのは役割分担です。情報・通信システム社の中で、当事業部は、日立グループが推進する社会イノベーション事業をインフラ面から支えるITプラットフォーム事業を担っています。そのため当事業部として伝えるべきこととして、止まることのない・止めてはいけない社会活動を確かな品質で支えているという点があります。
当社の工場見学会でよく驚かれるのが、全工程のうち約9割をテスト工程に費やしているという点。その品質へのこだわりから、日立の製品は故障率がかなり低いという評価もいただいています。そういった面も、開発者インタビューなどのコンテンツで伝えていきたいと思っています。
――情報・通信システム社のマーケティングコミュニケーション体制や、プロモーションセンタの役割についてお聞かせください。
情報・通信システム社の下にITプラットフォーム事業や業種別システムソリューション事業などを行う各事業部があります。情報・通信システム社には、情報・通信事業全体のビジネス戦略や広報・宣伝などを統括する経営戦略室があり、各事業部の中にも広報やプロモーション部門があります。
その中で当プロモーションセンタの役割としては、広報や戦略を立案する部門の方針をもとに製品の見せ方や売り方を考えていく、どちらかといえば販売促進に近い役割を担っています。具体的には、新製品が出るタイミングで広報部門が出すニュースリリースの情報を製品情報サイトなどで紹介し、その後は販売部門などと連携しながら製品をPRしていくという、二段構えの形ですね。
(写真左)日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 川畑 律子様
――製品プロモーションという観点から、広報部門や販売部門などの各部門をつなぐ立場として機能していると。
はい。ITプラットフォームという製品の性質上、広報部門や設計部門から発信される情報はどうしても専門性が高くなりがちで、日立発のオフィシャルなニュースリリースで紹介した内容を、我々が漫画や小説などコンテンツの見せ方を工夫しながら情報を噛み砕き、幅広い方々へわかりやすく伝えています。
企業イメージとギャップのあるコンテンツで大きな話題化に成功
――新しいコンテンツをリリースしたものの、なかなか認知が広がらないと悩む企業も多いと聞きます。ソーシャルメディアやニュースリリースなど情報発信のパターンはいろいろありますが、御社の場合はいかがですか?
基本的に、プロモーションセンタで配信するメールマガジン、FacebookやNews2uリリースを活用して展開しています。あとは、展示会出展やセミナーを開催して製品の理解促進を行うなどデジタル・リアル両方の場で認知拡大を目指しています。
News2uリリースについては、新規のお客様に対する情報発信が主な目的です。事前登録が必要なメールマガジンやセミナーなどは、興味のある方前提になりますが、News2uリリースやFacebookなどのソーシャルメディア、外部のニュースサイトなら、まだ当社のことを知らない方や一般の方とも接点を設けることができます。
――御社のソーシャルメディア(Facebook・Twitter)の活用状況についてお聞かせください。
当プロモーションセンタで運営しているソーシャルメディアの一番の目的はセミナーの集客ですが、全体的に弊社の製品・ソリューションに興味をもっていただく為に、「ITフェアリー シン&しん」などのコンテンツ紹介や展示会の告知など、多彩な情報を掲載しています。それらの記事に興味を持っていただいた方々に時折セミナー情報を出すと、すぐに応募があったりしますね。やはりFacebookなどは興味のある方しかファンになっていただけないので、インターネット上の不特定多数に情報発信するよりも反応がいいと感じています。
特に「ITフェアリー シン&しん」は、多くの方々の興味を惹くことができたコンテンツです。我々の製品や取り組みに愛着を持ってもらいたいという目的で企画したキャラクターですが、日立のイメージと大きなギャップがあるためか、最初は正直反対もありました。しかし、いざリリースしてみると、多くの方々からソーシャルメディア上で話題にしていただき、自社の社員からも「ノベルティがほしい」という声が相次ぐなど予想以上の反響がありました。
サーバーに関する情報をマンガ仕立てで紹介するオウンドメディアのコンテンツ「ITフェアリー シン&しん」
――話題になりやすそうなコンテンツを出すことで話題の伝搬を狙う、という点は意識されていたのですか?
はい。実際にその狙いは当たったと思っています。一般の方はもとより、ニュースサイト等でも取り上げていただきました。特に当社からの働き掛けはしていませんが、バナー広告などを見て取り上げていただいたようです。
良質なコンテンツを蓄積したオウンドメディアで、ユーザーとの長期的な関係を築く
――ブランディングやコミュニケーション強化、資産としてのコンテンツ蓄積など、オウンドメディアに求める役割は各社さまざまですが、御社の場合はいかがですか?
自社の資産として、コンテンツをストックしていきたいというのが一番ですね。今までバラバラなサイトで公開してきたコンテンツをITプラットフォームという括りで纏めて公開しました。
さらに、今回のリニューアルで採用した方式なら、カテゴリ別などユーザーの興味に合わせた情報を抽出できるため、単なるアーカイブではなく生きたコンテンツとして活用できます。そのため、今後はコンテンツを資産として蓄積できるオウンドメディアに注力していきたいと考えています。
――オウンドメディアやNews2uリリースも含め、ネットPRについては今後どのような目的を持って取り組んでいきたいとお考えですか?
まずは、情報発信リーチの強化が最大の目的です。News2uリリースのように興味の有無にかかわらずさまざまな人を呼び込めるよう、最初は入り口を広げていく。その受け皿として、多彩かつ信頼性の高いコンテンツの中から見たい情報を探せるオウンドメディアがある、という流れをより潤滑にしていきたいと思っています。
――オウンドメディアの重要性も、今後はさらに増してくると。
そうですね。情報過多の時代と言われるなか、これまで当社のサイトをご覧いただいていた方は膨大な情報の中から探し出されていたのだと思います。だからこそ、今後はよりお客様に届きやすい見せ方というのは工夫していきたいと考えています。
さらに拡散の先には、ITプラットフォーム企業としてお客様を手助けできるタイミングを逃さないように、長くお付き合いできる関係を築いていきたいという想いがあります。そのためにも、News2uリリースやソーシャルメディア、ニュースメディアなどお客様と出会えるきっかけはたくさん作っておきたいですし、その後はメールマガジンや日立ID会員サービスの登録を通して継続的なコミュニケーションを図っていけたらと考えています。
■インタビューを終えて(朝火)
今回、日立製作所様にオウンドメディアを軸に、情報発信によるブランディングやリード獲得を進める狙いや、具体的な推進方法について伺うことができました。大企業の組織の中で、製品事業部門との連携による情報収集~コンテンツ化~公開~効果検証の運用や、リード獲得による営業部門との連携など、マーケティング・コミュニケーション部門の役割をわかりやすく説明いただきました。オウンドメディアのリニューアルの目的や狙いも含めて日立製作所様のモノづくりに関するこだわり・想いをWebコンテンツにして情報発信していく重要性を認識できました。
日立製作所様は、自社の取り組みや製品について、アニメやクイズ形式など興味関心を持ってもらうための工夫を凝らしてオウンドメディアを中心とした情報発信をされています。また、Webだけではなく、イベント展示会・セミナー・生産ラインの見学会などリアルな施策もWeb・ソーシャルメディアと合わせて推進されており、組み合わせによる認知理解の促進が重要だと改めて感じました。これらの取り組みは他の企業の担当にとってもお手本になります。川畑様、ありがとうございました。
<今回お話いただいたのは…>
川畑 律子 (カワハタ リツコ)
株式会社日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 販売推進本部 プロモーションセンタ 主任
1998年に日立製作所 汎用コンピュータ事業部(現ITプラットフォーム事業本部)に入社。海外事業推進部署、メインフレーム設計部署を経て、2001年より販売企画部門にてWebサイト運営・メルマガ・SNSなど情報発信業務に携わる。
<インタビュアー紹介>
朝火 英樹(アサヒ ヒデキ)
株式会社ニューズ・ツー・ユー マーケティングコミュニケーション部 マネージャー
NEC、ソフトバンクモバイルを経て、2014年9月ニューズ・ツー・ユーに参画。
事業主側でWebマーケティングを推進してきた経験を活かし、現在、ニューズ・ツー・ユーにてネットPR(News2uリリース)を軸としたオウンドメディアによるマーケティング コミュニケーションの仕組みづくりを推進中。
※前編「いくつもの変遷を経て自社の想いを伝えるサイトへと進化したオウンドメディア」については、こちらから!