ネイティブ広告はメディアを救うか〜消費者からの信頼失墜の危険も | ネットPR.JP

ネットPR.JP - 2014年1月8日(水) 11:10
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メディア業界で2013年に最も話題に上ったトピックのひとつが「ネイティブ広告」だった。印刷媒体の広告収入が激減し苦戦するパブリッシャーにとって、ネイティブ広告は新たな収入源として期待されている。

一方、“編集記事に見えるように作られた”ネイティブ広告は、一見して広告と分かりにくい。意図する、しないにかかわらず、消費者を混乱させるような広告は、パブリッシャーや広告主に対する信頼失墜につながる可能性がある。米連邦政府当局が消費者保護の観点からネイティブ広告に対する監視を強める中、メディア業界でもネイティブ広告の健全な発展を目指し、自主規制の動きが出ている。

パブリッシャーの9割が提供

ネイティブ広告とは、パブリッシャーのWebサイトのデザインと調和させ、編集コンテンツや記事に見えるように作られた広告を指す。しかし、メディア業界で合意した定義があるわけではなく、「スポンサー付きコンテンツ」「企業提供コンテンツ」などと呼ばれることもある。ネイティブ広告は、広告主の依頼を受けてパブリッシャーが作成する場合もあるし、パブリッシャーと広告主が協力して作ったり、広告主が独自に作成したりすることもある。

記事体広告やインフォマーシャルなど、記事の体裁をとる広告はこれまでもあったが、ネイティブ広告という場合、ツイッターのプロモーションツイートや、フェイスブックのニュースフィードに掲載される広告も含むことが多い。

企業にとってネイティブ広告を利用する利点は、広告を配信、または表示する消費者のターゲットを絞れること、広告効果をすぐに評価できること、そして、バナー広告に比べクリック率が高いことなどだ。バナーやディスプレイといった従来の広告には無関心、あるいはそれらを嫌悪する消費者でも、ネイティブ広告であれば、抵抗感なく読んでもらえる可能性がある。従来の広告だけでは難しいブランドの「ストーリー」を伝えることにより、ブランド認知度やエンゲージメント向上を図ることも期待できる。

広告収入を期待し、ネイティブ広告提供に乗り出すパブリッシャーは増えている。米オンライン出版社協会(OPA)が2013年7月に発表した調査報告によると、会員のメディア企業のうち73%がすでにネイティブ広告を提供しており、年内提供を検討中の企業が17%だった。2013年中に提供企業が最大90%に達した可能性がある。

ニューヨーク・タイムズは、2014年1月からオンライン版でネイティブ広告の提供を開始する。同社記事によると、コンテンツには広告であることを明記し、編集部門とは別の部門で作成する。記者が編集記事と広告の両方を手掛けることによって生じかねない、倫理的問題の発生を避けるための措置と考えられる。同社は、ネイティブ広告参入が各方面で議論を呼ぶ可能性を認めた上で、デジタル広告収入を再度成長軌道に乗せるため、必要な決断であったと述べている。

アトランティック事件

米国では現在、編集コンテンツや記事と区別するため、ネイティブ広告には「ネイティブ広告」、あるいは「スポンサー付きコンテンツ」「A社提供コンテンツ」などの表示が追加されることが一般的だ。しかし、例えば「ネイティブ広告」とは何なのか、また「A社提供コンテンツ」と書いてあっても、それが広告を意味するのか、「スポンサー付きコンテンツ」とは違うのかなど、一般の消費者には分かりにくいことが多い。

パブリッシャーは広告であることを情報開示しているつもりでも、消費者にその意図が正確に伝わっていなかったり、広告であることを示す表示そのものが見過ごされていたりする危険は常にある。

150年以上の歴史を持つ老舗雑誌アトランティック(The Atlantic)は2013年1月、新興宗教のサイエントロジー(Church of Scientology)に関するコンテンツをWebサイトに掲載した。実はこれは記事体広告であり、タイトルの上部には「スポンサー・コンテンツ」と書かれた黄色いバナーが表示されていた。しかし、体裁が編集記事とそっくりだったため、読者の多くが広告とは気付かず、特定宗教とその指導者を賞賛する内容に非難が集中した。

この事件は、ネイティブ広告に潜む問題をパブリッシャーに改めて意識させるきっかけになった。

透明性と情報開示

2013年11月にニューヨークで開催されたネイティブ広告に関する業界会議「OMMA Native」では、「透明性」と「情報開示」をキーワードに、パブリッシャーと企業の戦略が議論された。

パネル・ディスカッションに登壇したPR大手エデルマンのスティーブ・ルーベル上級副社長は、パブリッシャーと広告主はネイティブ広告の戦略策定にあたり、消費者が何を求めているかをより深く理解する必要があると指摘。また、コンテンツ開発能力があり、消費者(読者)を最も理解しているパブリッシャーこそ、ネイティブ広告分野では、広告主や代理店よりも重要な役割を果たすと予想した。さらに、優れたコンテンツ作成のためのパブリッシャーと広告主の間のまとめ役として、双方をよく理解したPR会社やPR専門家が活躍すると述べた。

OMMA Nativeのパネル・ディスカッションの様子。右から2人目がエデルマンのスティーブ・ルーベル上級副社長。

OMMA Nativeのパネル・ディスカッションの様子。右から2人目がエデルマンのスティーブ・ルーベル上級副社長。

規制当局が取り締まり警告

米連邦取引委員会(FTC)は2013年12月初め、ネイティブ広告に関するワークショップを開催した。FTCには消費者保護の観点から、虚偽あるいは違法と判断される広告を展開する企業を法的手段に訴える権限がある。訴訟を避けたい広告主やパブリッシャーは、ネイティブ広告の情報開示や透明性確保のための独自の取り組みを説明。また消費者を欺いた広告主やパブリッシャーは消費者の信頼を失うと述べ、情報の透明性確保を重視する姿勢を強調した。

エディス・ラミレスFTC委員長は「広告の目的は、ユーザーに関連あるメッセージを配信し、エンゲージメントを助長することだ。しかし、それと同じくらい重要なのが、広告によって消費者を欺かないこと。編集コンテンツに似せて作られた広告を提供することで、広告主は(消費者に対し、それが)偏見のない情報源からのコンテンツであると思わせるリスクをともなう。」と述べ、ネイティブ広告の規制に意欲をみせた。

業界自主規制の動き

一方、米ネット広告業界団体のインタラクティブ広告協会(IAB)を中心に、ネイティブ広告について業界自主規制の動きも進んでいる。

IABはFTCのワークショップ開催に合わせ、ネイティブ広告フォーマットのガイダンス「ネイティブ広告プレイブック(Native Advertising Playbook)」を発行した。ネイティブ広告のフォーマットをインフィード・ユニット、有料検索ユニット、レコメンデーション・ウィジェットを含む6つのカテゴリーに分類し、それらが有料広告であることを明確かつ分かりやすく情報開示することなどを盛り込んだ。

IABがリリースしたネイティブ広告プレイブック(Native Advertising Playbook)

IABがリリースしたネイティブ広告プレイブック(Native Advertising Playbook)

情報開示については、消費者が有料広告と編集コンテンツを明確に見分けられるようにするための原則を提示。さらに、前述の6つのカテゴリーごとに、ネイティブ広告であることを消費者に伝えるために最も一般的に使われる説明を紹介した。

IABは、このガイダンスをネイティブ広告フォーマット標準化のための議論の叩き台と位置付けており、2014年3月以降に、広告効果の測定や、倫理と情報開示などについて検討するワークショップを開催する計画だ。

寄稿者紹介

鶏内 智子(かいち ともこ)
フリーランスライター。ニューヨークを拠点に、ハイテク、メディア、ヘルスケア業界を中心に取材と記事執筆活動を行う。

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