ペイドメディア ~その「手売り」する価値~ | 業界人間ベム

業界人間ベム - 2011年8月18日(木) 18:03
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 広告会社のメディア部門は「取次ぎ業の原型」を残している。そもそもメディアの枠を売って、送稿する作業自体に価値があった時代の原型である。その昔、新聞原稿は凸版に製版して持っていかなければならなかったし、(同じ段数でも新聞社によって微妙にサイズが違うなどという製版業者保護政策があった・・・。)テレビCMも16ミリのフイルムをスポットであれば、一番本数の多い1日の本数分を各局に送らないと行けなかった。CMプロダクションはこのフイルムのプリント代が収入源だった。(もうこんな時代を知っている広告マンも少なくなっただろうが・・。)デジタル送稿によって、凸版やフイルムを持って届けることはなくなってきて久しいが、それでもパソコンに向かって送稿作業をやることでの「取次ぎ」のオペレーション価値がマージンをとる本質だ。また広告メディアを売るということは、ほぼ広告枠としての既製品を売ることであった。

 そしてネット広告にしても、いわゆる「手売り」がメインである。広告メニュー単位に、メディアプランをつくっては、実施してみて、次からはパフォーマンスの悪いメニューを落として、また別の「良さそうな」メニューを足してみて廻す。これがPDCAとされている。まあ掲載期間が1週間から2週間として、PDCAサイクルは短くても半月くらいで廻ることになる。
 さて、この「広告メニュー」なる掲載単位は、もちろんセルサイドが設定したものだ。これは従来メディアの習慣が強く残っているためにこういう「枠」の概念が強く意識される。広告会社の営業に売らせるには、分かりやすい「枠」モノにしてあげることが良いわけだ。確かにそうした「枠」に高い効果が認められ、広告主がその枠に出稿する価値を見出しているのなら、それで良い。しかし広告(ペイドメディア)は「枠」を買うものだという習い性でそうしている、ないし広告代理店の営業が「枠」でないと売りにくいという理由からそうなっているとしたら、バイイングサイドとしての広告主はもう少し考えた方がいい。
ネットでは、バイイングサイドの都合に合わせた買い方がかなり自由に出来る。アドネットワークであれば、特定の期間、時間に大量出稿も出来れば、特定のクッキーに長い期間ピンポイントで配信し続けることもできる。
 そもそも従来のメディアのほとんどが、買う側の理屈に合わせることがないがために、自由に買い付けることへの想像力が働かないというのもあるだろう。既製品を買う方が面倒臭くないというのも事実だろう。
 
 さて、特にデジタルメディアにおける広告メディア取引に起こることは、既製品の広告メニューを「手売り」する価値が、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)つまりバイイングサイドの都合に合わることが出来て最適化されるバイイングシステムによって、大きく揺らぐということだ。また今「メディアプランニング」と称している作業が、ほとんど価値を失うと考える。売り手の事情で設定された「広告メニュー」を売る作業において、どのメニューがいいか選択するのがメディアプランニングだとすると、基本掲載面の情報をベースにしているが、メディアプランニングはかなりの部分で配信先を選定することになり、掲載面の情報はあまり意味がなくなる。また、配信先クッキー、掲載面、配信曜日、時間帯、メッセージ内容ほか様々な変数を、それぞれのプライオリティで最適化していくシステムがDSPの真骨頂であるので、そもそも従前にターゲティングするということ自体がナンセンスになる。
こういう人がターゲットだと想定して広告を送るのではなく、反応する人がターゲットなのだ。この考え方はおそらく「広告をつくる」とか「プランニングする」という作業の意味を劇的に変えてしまうと思う。
 DSPは、システムを使うオペレータが要れば良い。メディアプランナーという人的スキルは、おそらくシステムには全く敵わない。1配信ごとに最適化しようとするシステムは人の作業では絶対出来ないことをしようとするからだ。
 つまり知見やスキルの価値がほぼなくなる人、要らなくなる人がいっぱい出てくるということだ。オペレータはオフショアでも十分だ。

 そうなったら、ネット広告のメディアプランナーは生き残るにはどうしたら良いか。この辺は、「続トリプルメディアマーケティング」にあたる次の本で書こうと思う。

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