MA導入で商談獲得率が15倍! 成約率が2.5倍! MAツールのヘビーユーザーが明かす成功事例&失敗談
MA(マーケティングオートメーション)は、顧客のWebにおける行動を可視化し、見込み客をあぶり出すためのツールとして、年々その存在感を高めている。ただ、「オートメーション」という語感に引っぱられ、過剰な期待を集めがちとも指摘される。MAを活用して成功するためにはどういったことに気を付ければよいのだろうか。
「デジタルマーケターズサミット 2018 in 大阪」では、「現場マーケター本音トーク! MAツール導入の成功と失敗」と題し、ジャストシステムの庄子悟氏、ディーエムソリューションズの徳井ちひろ氏が登壇し、SATORIの相原美智子氏を聞き手として、座談会形式でセッションが開催された。
MA導入で架電が効率化、商談獲得率が15倍に
徳井氏は、ディーエムソリューションズでマーケティング室に在籍し、自社メディア、展示会、セミナーの企画運営などを担当している。同社の中核事業はWebマーケティングのコンサルティング、ダイレクトメールの発送代行などであるが、そのセールスにあたっては年数回の展示会出展が大きなウェイトを占めていた。
名刺交換をした相手に対し、電話をかける格好だが、どの連絡先から電話をするのか優先順位がある訳でもない。また、名刺が営業担当者個人によって管理されて部署内で共有されないなど非効率な状況が慢性化しており、これを打破するためにMAの導入に踏み切った。
導入したのはMAツールの「SATORI」だ。SATORIは、海外の大手ベンダーがしのぎを削る市場で、「国産」「サポートの充実」を売りに販売を拡大し続けている。
ディーエムソリューションズは、現在、オウンドメディアの閲覧者、展示会で名刺交換をした相手などを「SATORI」で管理し、見込み顧客のステージによって効率的な情報の出し分けを行っている。
たとえば、名刺交換をしただけだったり、まったくアクションを返してくれていなかったりする実名見込み顧客には、メルマガ配信などの施策を行い、Webサイトの閲覧履歴の把握に努める。一方、個人情報を特定できていない見込み顧客に対しては、資料のダウンロードや無料セミナーを誘導する等、個人情報開示(実名化)を目指してMAツール上で育成を行う。
実名化に成功した見込み顧客には、Webサイトの閲覧履歴から興味度合いを測り、業種ごとの事例資料やノウハウなどのコンテンツを提供。興味関心度の高いアクションを行っている見込み顧客に対して、ここで初めてインサイドセールスが電話をするというわけだ。
こうした流れで顧客を育成した結果、資料ダウンロード数は10倍、商談獲得率は15倍に達したという。
興味関心度の高まった見込み顧客には営業から電話してもらい、もし失注したら、そのあともその情報をリスト化。再度、ナーチャリング(育成)に回すといった取り組みをしており、これらをマーケティング室ですべて管理しています(徳井氏)
眠っていた顧客リストをMAで活性化
ジャストシステムの庄子氏も、同じく「SATORI」を日々の業務に活用している。ジャストシステムは個人向け・法人向けに大きく事業が分かれており、庄子氏はこのうち法人向けの市場調査サービス「Fastask」などを担当しており、そこへ「SATORI」を導入した。全社一斉導入という訳ではなく、法人向けの他部署では、某外資系MAツールも使っている。
MA導入前、庄子氏には明確な課題があった。営業対象となる見込み顧客のリストが長年蓄積されているにも関わらず、有効活用されていなかったのだ。
マーケティング部門が色々な施策で見込み顧客の連絡先を集め、それを元に営業から電話をかけてもらった。しかし先方が「今は忙しい」と断ったら、それっきり。営業は、アポが取れない、あるいはロストした案件は基本的に追いかけない。“先方はまだ興味があるはず”“保有リストの中に宝が眠っている”ということを、社内の営業に気付いてもらう必要がありました(庄子氏)
この「営業が1回電話をかけただけで次のフォローをしない」現象は、徳井氏にとっても悩みの種だったといい、「まさに“マーケティングあるある”」と相槌を打っていた。現場の営業の行動を、客観的なデータで後押しするのがMAの価値だと言えよう。
庄子氏は、Webサイトで資料をダウンロードしてくれたユーザーに対し、さらに別の資料やセミナー案内などを効果的に提示するために「SATORI」を活用。成約率は2.5倍になったという。
MAツール選定の肝「どんな機能が必要か絞り込む」
MAツールは多くの製品がリリースされている。マーケターにとって「どのMAを選べばいいのか」は大きな問題だ。さらには、マーケターがMAツールを導入したくても、社内の上司を説得しきれないとの声も聞かれる。
徳井氏は以前、幹部の主導のもとで、SFAや名刺管理ツール、MAツールなどのマーケティング支援ツールを導入したものの、使いこなせず結局解約したトラウマがあるという。
これらのツールの性能が低いのではない。当時はマーケティングの専任担当がおらず、トップダウンでいきなり「MAは便利なツール。導入すれば自動で商談が増えるはずだ」と信じて導入された。当然ではあるが、導入しただけでは成果はでない。ツールを利用して何をしたいか選定時に明確になっていなければダメだった(徳井氏)
徳井氏はMAツールの導入にあたり、さまざまなMAツールの機能比較を綿密に行った。まずは下記のような項目に分類して解決したい課題を明確にし、オーバースペック気味なツールは選定から落としていった。
- 集客
- 誘導
- 育成
- 商談
- 運用支援
こうして選ばれたのが過不足のない機能を持ち、価格の安価な「SATORI」だったという。
この選定作業を、徳井氏は「車選びに似ている」と表現する。スポーツカーは美しいが、その馬力ゆえに操縦は難しい。ボディが大柄なら狭い駐車場には止めづらい。当然、利用者によっては小型車のほうが適切な場合もある。MAツールも同様で、会社の状況や運用体制を考慮して選ぶべきだと徳井氏はアドバイスする。
MAツールをネームバリューで選ぶと失敗する
庄子氏は、「MAツール選びはネームバリューに引っ張られるな」と安易な選定に警鐘を鳴らす。
有名なMAだからと深く考えず外資系のツールを導入すると、Googleの仕様が変わったり、入力フォームを微調整したり、サイトのhttps化をしたりといったちょっとした変更がある度に「工数がかかる、料金がかかる」ということがあった。また、導入の際に導入コンサルを通さないと契約ができず費用がかさんだり、問い合わせ対応が英語でしかできなかったりといった不満も尽きない。
MAツールを選ぶ時に、ネームバリューや市場シェア、ブランドにどうしても目がいくが、MAツールは入れた後のほうが重要。重視すべきはサポート体制(庄子氏)
庄子氏は、「SATORI」の国産ツールならではのユーザーインターフェイス、メールでの問い合わせに対するレスポンスが極めて迅速といった点も高評価したという。
MAで「アポの質が変わった」
SATORIの相原氏は、MAツール導入にあたって、ツールの月間利用料はもちろんのこと、運用するための人員、集客のための広告費、コンテンツ制作費など、付随コストが定期的に発生するため、長い目での予算措置が必要だと指摘する。
MAを導入する以上、その効果を会社・上司にしっかり理解してもらう事も重要になってくる。庄子氏、徳井氏ともに、部署ごとの数値目標に合わせ、「アポ率」「月次目標の達成に必要な架電数」などを把握するようにしている。
庄子氏は「SATORI」の導入によって「アポの質が変わった」とも語る。架電する対象を前もって絞り込めるため、製品説明などの前置きなく、いきなり本題に入れる可能性が上がったというのだ。
まったく見込みのない顧客に電話して、商材説明にいくまで5分も喋るなどといった無駄を減らせたのが実は大きいのかもしれない(庄子氏)
自社の課題を解決するための機能が本当に存在するか
講演のまとめとして相原氏は、「SATORI」に限らず何らかのMAツールを導入する際には「自社の課題を解決するための機能が本当にあるか」にこだわってほしいと強調した。
もしMAツール導入を検討しているのであれば、本当にこの機能で自社の課題解決ができるのか? 成果を出すための活用サポートはあるのか? そのような、突っ込んだ質問を相手の営業担当者にしてみるといい。弊社は「できないことは、できない」とハッキリ言う。ぜひこの機会に見直しやご検討いただきたい(相原氏)
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