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WPPマーティン・ソレルCEOの辞任 コングロマリット経営の成り立ちとこれから<前編>

7 years 7ヶ月 ago

この話題もベムで触れない訳にはいかないだろう。読者の皆さんお待たせしました(笑)。なんとも謎だらけのままWPPのSir Martin Sorrell (73歳)がCEOを辞任するという、筆者個人としては残念なアナウンスが4月14日の週末土曜日に業界を駆け巡った。

 このソレル氏の辞任に対する現在までの状況のおさらいと、WPPやOmnicom、等の「コングロマリット」としての意外な成り立ちについて紹介しつつ、今後の広告やマーケティング・コングロマリット行き先に触れてみたい。これらをまとめて語れるのも業界ベムならでは、の特集だ。

■ソレル氏のAmazon級の成長軌跡
 ソレル氏は1975年に英国の「Saatchi and Saatchi」社の初のファイナンシャル・ディレクターに就任し、その後独立して「Wire and Plastic Products(WPP)」という買い物かごの企業を1985年に買収することで広告事業の器とした。「買い物かご」だった企業が「企業の買収かご」の企業へと変身を遂げた瞬間である。

 それから32年後の現在WPPは総従業員数20万人、世界112カ国にオフィスを持ち、企業価値2.2兆円(200億ドル:150億ポンド)にまで成長した。Revenueの年平均成長率(CAGR)は何と29%である。これはAmazon級の成果で、初年度の売上を1として毎年前年比29%伸ばせば、ソレル氏の在任期間の32年で2,680倍の売上を作ったことになる(図1)。



■謎のままの、ソレル氏辞任の「理由」
 報道の通り、辞任の発端はWPPがソレル氏に対して「personal misconduct(個人の不適切行為)」「misuse of assets(WPP資産に対する不適切利用)」「financial impropriety(財務に関する不適切)」に対する内部監査を行った結果とされている。しかもその調査の結果は一切物質的な事象は何も公表もされないまま、ソレル氏自身に対しても「一切悪い行動はナシ」と判定され、調査は終了している。解任ではなく辞任であり、対応方法としては「引退」として、その後のストックオプションや残りの5年分の報酬なども支払いは継続される。ソレル氏のPR会社を通じたコメントは「自分の辞任がWPPにとって、取り得る最高の道」とした。

 まずはCEOを辞任に追いやる圧力となりうるのは株主と考えるのが妥当だろう。ところがWPPの大株主の上位は、ほとんどが米国系のファンドと一部の欧州系のファンドで構成されている。これらの株主であるファンドは全て「ソレル氏のファン」で構成されており、「ソレルCEOだからこそ保有していた」銘柄であったはず。よって株主からの単なる不信任によるCEO降ろしというシナリオは考えづらい。

 あるいは、日本で起こったセブン&アイの鈴木(前)CEOの辞任や、三越伊勢丹の大西(前)CEOのような経営陣の「内乱」であれば、その反対派が交代のCEOを立てるが、WPPは事実上CEO不在のままだ。現在の取締役議長が暫定CEOに「スライド」し、準備不足な役員2名が共同COOとしてスライド就任している。この状況から鑑みても、CEO継承プランがないままの突然の辞任であり、まるでソレル氏が事故にでも遭遇したような、緊急対応の様相だ。

 昨年、日本の電通(前)CEO石井氏が労働環境に対する責任を取って辞任をした際には、現山本CEOという後任がすでに予定されていたことと比べても、今回のWPPの一件は異次元の状態である。現在WPP「外部の」英国系の人材がスカウトの中心として名前が上げられている。

 ソレル氏への報酬が2015年には約110億円(1.07億ドル)に達し、それに関係した非難と推測した報道もあるが、ソレル氏は、特にWPPの企業としての財務行動に関しては自分の報酬の取り決めを含め単独(個人)では動けない(監査会社や、弁護士会社、PR会社を経由した行動を取る)はずで、秘密裏に何か不祥事を起こしたとは考えにくい。

 それでも「辞任」が、「最高の手段」であるためには、辞任と引き換えに何かがチャラになる、という事だ。憶測にすぎないが、ヒントは暫定CEOが財務発表時に述べた「a matter of privacy(個人のプライバシー)」の表現だ。「ソレル氏にとっての「非常に個人的な事」なので、調査結果の公開を控える」というセリフだ。法的な不正はWPP的にもソレル氏的にもあり得なく、それ以外のイエローカードが存在したという事だろう。この続きに興味のある方は、ニューヨークの榮枝に直接聞いてもらいたい。

 いずれにしてもソレル氏は人的ネットワークも資金も潤沢に(!)保有されているので、32年前とは格段に違うエンジェル投資家としてやファンドとして再び活躍することも出来るだろうし、その方が新しいポートフォリオを作る近道と思えば個人的な道は広がるだろう。余談トリビアだがソレル氏は2005年の離婚では当時の英国史上最高額の財産分与を行い(株式売却分約67.5億円:4500万ポンド)、その後ダボス会議主催者のメディア・ディレクターと再婚し、2016年に女の子を授かっている。前妻との3人の息子はすでに40歳代前後で、全て金融業界で指揮をとる人材として自立している。ソレル氏の誕生日はバレンタインデー(2月14日)であり、本人の誇り(欧米では男性が女性に尽くす日)であるのは筆者が個人的に聞いた事がある。

■WPPが失った「ソレル・プレミアム」

 むしろ結果的に追い出した側のWPP社は、いわば「ソレル・プレミアム」を失った。この1年ほどで株価はすでに30%ダウンの傾向にあり、辞任発表後の週明けはさらに9%ほどのダウン。ところがその翌週にWPPの第1四半期の発表が予定通り開催され、ソレル氏抜きの初の財務発表会だったのだが、「予想より良かった」事で9%ダウン分を戻している。この復活発表はソレル氏が自身で発表したかった事だろう。

 今後のWPPは「ソレル・プレミアム」がなくなった割安感が継続するならば、Omnicom等の投資集団から受ける買収のリスクが高まる。あるいは利益を出している広告会社やPR会社、調査会社が単体で切り売りされる可能性もささやかれている。

 日本でも既に電通がWPP系列エージェンシーとの合弁であった「電通ワンダーマン」と「電通ヤング・アンド・ルビカム」の株を買い取って電通自社名に吸収し、完全にWPPとのネジレを精算した報道がされている。英語メディアでは逆の目線で上記の電通とのJVの「アジアの支社」をWPPが買い取った、という報道になっている。

 これも余談だが、ADKがベインと組んだ「脱WPP作戦」は「脱ソレル作戦」と言えるが、まさかWPPからソレル卿が居なくなることは想定していなかった作戦だった。ADKの施策に口出しがうるさいソレル氏が居なくなるのであれば、ADKは急いでベインと駆け落ちしてまで「WPPの持つグローバルリーチ」を手放す事も無かったのではないか、という後出しの考えが働く。

■コングロマリットが「所有」し「束ねる」価値は何か、切り売り分解した方が企業価値は高まる?

 さらに市場の分析では、WPPの現在の株価を元にしたWPPの企業価値が150億ポンド(2.2兆円)だが、現在傘下の企業や株を売れば、220億ポンド(3.3兆円)になりえるだろう、という予測がある。これはアクティビストを含む、今やコングロマリットは切り刻んだ方が資本効率はあがる、といういつもの理論が登場している。集団よりも分離した方が価値が上がるのならば、コングロマリットの形態の価値に非常に疑問が出てくる。

 この流れで具体的にWPPの傘下企業、投資株を売ればどうなるかの噂話が耐えない。WPP傘下の大きい企業での放出例が「調査・データ会社のKantar」、その次に「VICE株」「AppNexus株」等への投資解消の話がある。

 Kantarならば、例えばKantar自身がMBOを通じて独立するとか、あるいはデータ競合企業の「Nielsen」が買収するならば、35億ポンド(5,250億円)と見積もられ、WPPの現在の負債量51億ポンド(7,650億円)の 多くを返済できる。

 さらに「WPP Digital」は精鋭のテック企業の多くに投資しているがコンテンツ企業の「VICE」やアドテクの「AppNexus」の名前も上がっている。AppNexusはIPO前だが、推定20億ドル、WPPは15%保有しているので、ざっくり300億円強の価値がある。これらのエクイティー投資を合算すると帳簿上は25億ポンド(3,750億円)だが、今の株高で売れば60億ポンド(9,000億円)に相当すると言われている。すでに株式市場はリーマン・ショック直前をはるかに上回る市場価値を形成している。ソレル氏が作った価値を「売るなら今」という理論は十二分に納得できる。

 後半は、そんな株式市場の景気(株高の時に売り払う)がコングロマリットの成長と無縁では無かった話を紹介する。何と日本の89年バブルが関係している。


ベム

WPPマーティン・ソレルCEOの辞任 コングロマリット経営の成り立ちとこれから<前編>

7 years 7ヶ月 ago

この話題もベムで触れない訳にはいかないだろう。読者の皆さんお待たせしました(笑)。なんとも謎だらけのままWPPのSir Martin Sorrell (73歳)がCEOを辞任するという、筆者個人としては残念なアナウンスが4月14日の週末土曜日に業界を駆け巡った。

 このソレル氏の辞任に対する現在までの状況のおさらいと、WPPやOmnicom、等の「コングロマリット」としての意外な成り立ちについて紹介しつつ、今後の広告やマーケティング・コングロマリット行き先に触れてみたい。これらをまとめて語れるのも業界ベムならでは、の特集だ。

■ソレル氏のAmazon級の成長軌跡
 ソレル氏は1975年に英国の「Saatchi and Saatchi」社の初のファイナンシャル・ディレクターに就任し、その後独立して「Wire and Plastic Products(WPP)」という買い物かごの企業を1985年に買収することで広告事業の器とした。「買い物かご」だった企業が「企業の買収かご」の企業へと変身を遂げた瞬間である。

 それから32年後の現在WPPは総従業員数20万人、世界112カ国にオフィスを持ち、企業価値2.2兆円(200億ドル:150億ポンド)にまで成長した。Revenueの年平均成長率(CAGR)は何と29%である。これはAmazon級の成果で、初年度の売上を1として毎年前年比29%伸ばせば、ソレル氏の在任期間の32年で2,680倍の売上を作ったことになる(図1)。

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■謎のままの、ソレル氏辞任の「理由」
 報道の通り、辞任の発端はWPPがソレル氏に対して「personal misconduct(個人の不適切行為)」「misuse of assets(WPP資産に対する不適切利用)」「financial impropriety(財務に関する不適切)」に対する内部監査を行った結果とされている。しかもその調査の結果は一切物質的な事象は何も公表もされないまま、ソレル氏自身に対しても「一切悪い行動はナシ」と判定され、調査は終了している。解任ではなく辞任であり、対応方法としては「引退」として、その後のストックオプションや残りの5年分の報酬なども支払いは継続される。ソレル氏のPR会社を通じたコメントは「自分の辞任がWPPにとって、取り得る最高の道」とした。

 まずはCEOを辞任に追いやる圧力となりうるのは株主と考えるのが妥当だろう。ところがWPPの大株主の上位は、ほとんどが米国系のファンドと一部の欧州系のファンドで構成されている。これらの株主であるファンドは全て「ソレル氏のファン」で構成されており、「ソレルCEOだからこそ保有していた」銘柄であったはず。よって株主からの単なる不信任によるCEO降ろしというシナリオは考えづらい。

 あるいは、日本で起こったセブン&アイの鈴木(前)CEOの辞任や、三越伊勢丹の大西(前)CEOのような経営陣の「内乱」であれば、その反対派が交代のCEOを立てるが、WPPは事実上CEO不在のままだ。現在の取締役議長が暫定CEOに「スライド」し、準備不足な役員2名が共同COOとしてスライド就任している。この状況から鑑みても、CEO継承プランがないままの突然の辞任であり、まるでソレル氏が事故にでも遭遇したような、緊急対応の様相だ。

 昨年、日本の電通(前)CEO石井氏が労働環境に対する責任を取って辞任をした際には、現山本CEOという後任がすでに予定されていたことと比べても、今回のWPPの一件は異次元の状態である。現在WPP「外部の」英国系の人材がスカウトの中心として名前が上げられている。

 ソレル氏への報酬が2015年には約110億円(1.07億ドル)に達し、それに関係した非難と推測した報道もあるが、ソレル氏は、特にWPPの企業としての財務行動に関しては自分の報酬の取り決めを含め単独(個人)では動けない(監査会社や、弁護士会社、PR会社を経由した行動を取る)はずで、秘密裏に何か不祥事を起こしたとは考えにくい。

 それでも「辞任」が、「最高の手段」であるためには、辞任と引き換えに何かがチャラになる、という事だ。憶測にすぎないが、ヒントは暫定CEOが財務発表時に述べた「a matter of privacy(個人のプライバシー)」の表現だ。「ソレル氏にとっての「非常に個人的な事」なので、調査結果の公開を控える」というセリフだ。法的な不正はWPP的にもソレル氏的にもあり得なく、それ以外のイエローカードが存在したという事だろう。この続きに興味のある方は、ニューヨークの榮枝に直接聞いてもらいたい。

 いずれにしてもソレル氏は人的ネットワークも資金も潤沢に(!)保有されているので、32年前とは格段に違うエンジェル投資家としてやファンドとして再び活躍することも出来るだろうし、その方が新しいポートフォリオを作る近道と思えば個人的な道は広がるだろう。余談トリビアだがソレル氏は2005年の離婚では当時の英国史上最高額の財産分与を行い(株式売却分約67.5億円:4500万ポンド)、その後ダボス会議主催者のメディア・ディレクターと再婚し、2016年に女の子を授かっている。前妻との3人の息子はすでに40歳代前後で、全て金融業界で指揮をとる人材として自立している。ソレル氏の誕生日はバレンタインデー(2月14日)であり、本人の誇り(欧米では男性が女性に尽くす日)であるのは筆者が個人的に聞いた事がある。

■WPPが失った「ソレル・プレミアム」

 むしろ結果的に追い出した側のWPP社は、いわば「ソレル・プレミアム」を失った。この1年ほどで株価はすでに30%ダウンの傾向にあり、辞任発表後の週明けはさらに9%ほどのダウン。ところがその翌週にWPPの第1四半期の発表が予定通り開催され、ソレル氏抜きの初の財務発表会だったのだが、「予想より良かった」事で9%ダウン分を戻している。この復活発表はソレル氏が自身で発表したかった事だろう。

 今後のWPPは「ソレル・プレミアム」がなくなった割安感が継続するならば、Omnicom等の投資集団から受ける買収のリスクが高まる。あるいは利益を出している広告会社やPR会社、調査会社が単体で切り売りされる可能性もささやかれている。

 日本でも既に電通がWPP系列エージェンシーとの合弁であった「電通ワンダーマン」と「電通ヤング・アンド・ルビカム」の株を買い取って電通自社名に吸収し、完全にWPPとのネジレを精算した報道がされている。英語メディアでは逆の目線で上記の電通とのJVの「アジアの支社」をWPPが買い取った、という報道になっている。

 これも余談だが、ADKがベインと組んだ「脱WPP作戦」は「脱ソレル作戦」と言えるが、まさかWPPからソレル卿が居なくなることは想定していなかった作戦だった。ADKの施策に口出しがうるさいソレル氏が居なくなるのであれば、ADKは急いでベインと駆け落ちしてまで「WPPの持つグローバルリーチ」を手放す事も無かったのではないか、という後出しの考えが働く。

■コングロマリットが「所有」し「束ねる」価値は何か、切り売り分解した方が企業価値は高まる?

 さらに市場の分析では、WPPの現在の株価を元にしたWPPの企業価値が150億ポンド(2.2兆円)だが、現在傘下の企業や株を売れば、220億ポンド(3.3兆円)になりえるだろう、という予測がある。これはアクティビストを含む、今やコングロマリットは切り刻んだ方が資本効率はあがる、といういつもの理論が登場している。集団よりも分離した方が価値が上がるのならば、コングロマリットの形態の価値に非常に疑問が出てくる。

 この流れで具体的にWPPの傘下企業、投資株を売ればどうなるかの噂話が耐えない。WPP傘下の大きい企業での放出例が「調査・データ会社のKantar」、その次に「VICE株」「AppNexus株」等への投資解消の話がある。

 Kantarならば、例えばKantar自身がMBOを通じて独立するとか、あるいはデータ競合企業の「Nielsen」が買収するならば、35億ポンド(5,250億円)と見積もられ、WPPの現在の負債量51億ポンド(7,650億円)の 多くを返済できる。

 さらに「WPP Digital」は精鋭のテック企業の多くに投資しているがコンテンツ企業の「VICE」やアドテクの「AppNexus」の名前も上がっている。AppNexusはIPO前だが、推定20億ドル、WPPは15%保有しているので、ざっくり300億円強の価値がある。これらのエクイティー投資を合算すると帳簿上は25億ポンド(3,750億円)だが、今の株高で売れば60億ポンド(9,000億円)に相当すると言われている。すでに株式市場はリーマン・ショック直前をはるかに上回る市場価値を形成している。ソレル氏が作った価値を「売るなら今」という理論は十二分に納得できる。

 後半は、そんな株式市場の景気(株高の時に売り払う)がコングロマリットの成長と無縁では無かった話を紹介する。何と日本の89年バブルが関係している。

ユナイテッドアローズのEC売上は235億円で16.4%増(18/3期)、EC化率は3割めざす方針

7 years 7ヶ月 ago

アパレルブランドを展開するユナイテッドアローズの2018年3月期におけるEC売上高(単体)は、前期比16.4%増の235億2500万円だった。

2017年4月に各ブランドサイトと「ユナイテッドアローズ オンラインストア」を統合。オンライン裾上げサービスなどEC関連のサービスを拡充したほか、ECの在庫を増やして販売機会損失を減らしたことなどで売り上げを伸ばした。

単体売上高は1283億5600万円。EC比率は18.3%で、2017年3月期と比べて1.6ポイント上昇している。

自社ECサイトと「ZOZOTOWN」でEC売上高の約8割を占めた。自社ECサイトの売上高は前期比34.9%増。自社ECサイトと「ZOZOTOWN」における客単価は同4.9%増、客数は13.5%増だった。

2019年3月期のEC売上高計画は、前期比1.1%増の237億7900万円に設定している。

長期目標は連結EC化率25~30%

ユナイテッドアローズは2017年4月に公表した「UAグループ中期VISION」(2020年3月期を最終年度とする中期計画)において、「実店舗の強みを活かしたEC拡大」を打ち出した。

2017年4月にブランドサイトとECサイトを統合。EC在庫の積み増しやSNSを活用した新規顧客の獲得、ECも踏まえた販売員の評価制度の見直しなどに取り組んでいる。

長期的な目標として、連結売上高に占めるEC売上高の比率を25~30%に引き上げる方針。2017年3月期時点のEC化率は16.0%だった。

実店舗に「RFID(電子タグ)」の導入も進めている。「グリーンレーベル リラクシング」や「コーエン」では棚卸し業務の時間が平均80時間から13時間に短縮できるなど生産性が向上したという。

また、「RFID」を活用し、顧客が試着したものの購入に至らなかった商品を特定。購入しなかった理由を洗い出し、商品政策に反映させるとしている。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

森永乳業のECサイトでカード情報2.3万件が漏えいか。セキュリティコードも流出の恐れ

7 years 7ヶ月 ago

森永乳業は5月9日、健康食品のECサイト「健康食品通販サイト」から顧客のクレジットカード情報約2万3000件が流出した可能性があると発表した。セキュリティコードも漏えいした懸念も明らかにしている。

5月9日現在、2017年1月10日~2018年4月24日の間にクレジットカードを使って商品を注文した約2万3000人分のカード情報が漏えいした可能性がある。

流出の懸念があるのはカード番号、名義、有効期限、セキュリティコード。

カード情報の漏えいの可能性がある「健康食品通販サイト」(画像は編集部がキャプチャ)

2018年4月24日、カード会社からカード情報が不正に使用されるといった被害が生じているとの報告を受け、同日にクレジットカード決済を停止。

第三者調査機関「Payment Card Forensics 株式会社」(PCF社)へ調査を依頼、4月25日から調査を始めた。5月末日までにPCF社から最終調査報告書を受領する予定。

EC業界におけるセキュリティ対策について

経済産業省主導の「クレジット取引セキュリティ対策協議会」(事務局は日本クレジット協会)は、2017年3月8日に公表した「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画-2017-」において、EC事業者に対して2018年3月までにカード情報の非保持化、もしくは「PCI DSS準拠」を求めていく方針を掲げた。

カード情報の漏えいの頻度が高い非対面(EC)加盟店については原則として非保持化(保持する場合はPCI DSS準拠)を推進。EC加盟店におけるカード情報の非保持化を推進するため、PCI DSS準拠済みのPSP(決済代行会社)が提供するカード情報の非通過型(「リダイレクト(リンク)型」または「JavaScriptを使用した非通過型」)の決済システムの導入を促進するとしている。

2018年6月1日に施行される「割賦販売法の一部を改正する法律(改正割賦販売法)」では、クレジットカードを取り扱うEC事業者などに対して、「クレジットカード情報の適切な管理」と「不正使用防止対策の実施」が義務付けられた。

また、独立行政法人情報処理推進機構では不正アクセス対策についての資料をまとめており、「安全なウェブサイトの作り方」などを閲覧することができる。

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

瀧川 正実

「Amazon Pay」は導入して当たり前の時代?「侍カート」が実現した標準実装のスゴさとオプション提供との違いとは

7 years 7ヶ月 ago

Amazon(アマゾン)が提供するオンライン決済サービス「Amazon Pay」の導入店舗の多くで、コンバージョンレート(CVR)やLTV(顧客生涯価値)が向上している。つまり、消費者にとって使いやすく、求められている決済方法だということ――。

こうした状況や考えの下、FIDは定期購入ができるASPカート「侍カート」に「Amazon Pay」を標準実装した。カートなどのECプラットフォーム側では「Amazon Pay」は決済手段の1つとして、オプション提供するのが一般的。「侍カート」は標準化によって、ECサイトの開設と同時に「Amazon Pay」が利用できるようになる(Amazon側での審査は必要)。

ECプラットフォーム側で「Amazon Pay」が標準実装されるのは日本初のケース。FIDは、Amazonのアカウント情報を使って他の自社ECサイトでネットショッピングができるようになる「Amazon Pay」の標準実装を通じて、「多くのECサイトの収益アップに役立てたい」と意気込む。「Amazon Pay」を導入する自社ECサイトの急拡大を予感させる今回の取り組みが実現した背景などについて取材した。 写真◎吉田 浩章

「Amazon Pay」の標準実装とは何なのか?

EC事業者が「Amazon Pay」を利用するには、「Amazon Pay」に対応したASPカートなどのECプラットフォーム、ECサイト構築パッケージなどを使う必要がある。かつ、ECプラットフォーム側ではオプションとしての提供が一般的であり、月額利用料などを徴収しているケースが多い。

また、ECサイト構築パッケージを使うEC事業者であれば、「Amazon Pay」を導入するための開発が必要となり、追加コストや新たな手間などが発生する。

今回、「侍カート」ではECサイト開設ステップの中に「Amazon Pay」を標準機能として組み込んだ。「Amazon Pay」の審査に申し込み、審査が通ればすぐに利用できる環境を整備している(既存顧客も同様)。

実際には、「Amazon Pay」の審査を、「侍カート」のシステムアカウントを発行した段階で申し込むように開設ステップの流れの中に組み込んだ。審査を通過すれば、EC事業者は手間とコストをかけることなく「Amazon Pay」を利用できるようになる。日本では初めてのケースであり、グローバルで見ても初の標準実装で、「画期的な取り組み」との声があがっている。

定期通販ECのすべてがここに 定期購入ができるEC構築ならショッピングカートASPの「侍カート」
日本で初めて「Amazon Pay」を標準実装した「侍カート」は、「Amazon Pay」のCertified(認定) Partner。スモールスタート企業から、年商10億円を突破している企業まで対応する幅広いラインナップを用意している

「侍カート」ではこれまで、「Amazon Pay」の利用には月額利用料金として5000円を導入企業から徴収していた。それを今回、標準機能として組み込むことで、「Amazon Pay」の利用料金を無料にし、決済手数料はAmazon側が定めている決済金額の4%(デジタル商材は4.5%、クレジットカード決済手数料込み)で提供する

ECプラットフォーム側で発生する「Amazon Pay」に関する開発コスト、運用コストを月額料金で回収および補塡(ほてん)していくモデルを捨て、まずは「侍カート」導入店舗の収益アップの達成につなげるという方針に転換したことを意味する。FIDはこう説明する。

FIDは「侍カート」に「Amazon Pay」を標準実装することによって、「侍カート」を利用している販売事業者のビジネスの成長を加速させることをめざしている。消費者の満足度アップがEC事業者(クライアント)の満足につながっている。消費者が求めるサービスを導入するのは必然であり、消費者の満足度を向上させる方法を考えると「Amazon Pay」の導入は必須だと考えた。自社の収益も必要なのだが、それ以上にエンドユーザーのことを考えると、「Amazon Pay」を標準実装しない理由はなかった。(FIDの和田聖翔社長)

株式会社FIDの和田聖翔社長
株式会社FIDの和田聖翔社長。FIDは定期購入に特化したASPカート「侍カート」、MAツール「MOTENASU」の開発・提供会社で、ECサイト構築から集客支援、運営のアウトソーシングまでを手がける

「侍カート」が惚れ込んだ「Amazon Pay」とは

「Amazon Pay」は、Amazonアカウントに登録した情報を使い、Amazon以外の自社ECサイトなどでログインや決済を行えるようになるオンライン決済サービス。2015年のサービス開始から約3年で、利用ECサイト数は数千社に達している。アメリカ、イギリスやドイツなどでも展開しているが、日本の伸び率は他の国と比べて高く、自社ECサイトからの利用ニーズが急増しているという。

「Amazon Pay」の利用イメージ

「Amazon Pay」を導入したECサイトでは、その自社ECサイトを使う消費者に対して次のようなメリットを提供できる。

  • 「Amazon.co.jp」のID/パスワードひとつで買い物できる
  • 住所やクレジットカード情報の入力が不要
  • Amazonアカウントへのログインと注文確定の最短2クリックで決済が完了する

そのため、「Amazon Pay」を導入したECサイトでは、①新規会員が獲得しやすくなる②CVRが向上しやすくなる③不正注文が防げるようになる④LTVが向上しやすくなる――といった効果を期待することができるという。

新規会員獲得&CVR向上に役立つ

Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長によると、あるクライアント企業では導入後に「購買率・新規顧客数がともに1.5倍になったと事例がある」と言う。初めて利用するECサイトでは、顧客情報の入力が必須。だが、「Amazon Pay」を導入しているECサイトであれば、その手間や時間を省くことができる

入力作業が面倒で買い物していなかった消費者が「Amazon Pay」の利用をきっかけに購入するようになったのではないか。情報入力が手間で買うことをやめてしまった消費者に対して、便利な買い物環境を与えることができていると思う。(井野川本部長)

また、自社ECサイトへのAmazonのロゴ掲載、「Amazon Pay」が利用できる、といった表示の部分が安心感の提供となり、商品購入につながるケースが多いというEC事業者の声もあると井野川本部長は語る。

「Amazon Pay」で商品を購入いただくと、マーケットプレイス保証の対象にもなる。それが購買の後押しになっている可能性がある。初めてのECサイトで購入するというのは、少なからず消費者の心理的ハードルが上がる。「Amazon Pay」がそこを少しでも払しょくできるといいと思う。(井野川本部長)

井野川本部長が指摘したAmazonマーケットプレイス保証とは、Amazonマーケットプレイスでの購入時に、販売事業者と購入者の間でのトラブル時において、配送料を含めた購入総額のうち、最高30万円までAmazonが保証する制度のことで、「Amazon Pay」を利用した場合には、同等の保証対象となるというもの(一部対象外となる商品・サービスも有り)。

Amazonの堅牢なセキュリティー環境

「Amazon Pay」はAmazonがアカウントやカードの不正利用を24時間365日監視しているため、不正注文を防ぐ効果もある。「Amazon Pay」を導入したことでリスク管理のコストを削減し、不正注文の被害も減ったという事例もあるという。

「Amazon Pay」はAmazonがグローバルで展開している不正検知システムを利用している。「Amazon Pay」は消費者とEC事業者の双方に安心感を提供できると考えている。(井野川本部長)

LTVの向上が期待できる

Amazonは日本で最も利用されているECサイトの1つ。そのため、Amazonアカウントに登録されているクレジットカード情報は、常にリフレッシュされ最新の状況になっているケースが多いと考えられる。

そのため、「カードの期限切れといったリスクが少ない最新情報にアップデートされた状態になっているため、『Amazon Pay』がLTV向上を期待していただける1つのメリットになっていると思う」と井野川本部長は分析する。

Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長
Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長。「Amazon Pay」は2015年5月にリリースされ、3年間で数千社が導入する規模にまで広がっている

「侍カート」利用店舗、「Amazon Pay」経由の受注件数&決済金額は大幅増加

「侍カート」は定期購入に特化したECサイト構築のショッピングカートで、サンプル提供やお試し商品の購入から本購入へつなげていくツーステップマーケティングなど、定期購入に必要案作業を自動化することに集中した開発を行っているのが特徴。

「Amazon Pay」は、定期購入などに活用できる「Auto Pay機能」(購入者が注文時に選択したクレジットカードを利用し、今後も支払いすることに同意すると、「自由に金額やタイミングを設定し、請求することが可能」「顧客へのサービス提供内容に応じて、頻度や金額などのカスタマイズが可能」というもの)を実装している。定期購入+追加購入にも対応できるため、「侍カート」との相性も良い。

「侍カート」を利用しているある事業者では、「Amazon Pay」の導入月と直近月を比較したところ、受注件数、決済金額ともに増加。そして、「Amazon Pay」の利用率、決済金額もともに増えている。

Amazon Pay導入月の受注件数&決済金額→2018年4月の受注件数&決済金額
ある「侍カート」利用サイトにおける「Amazon Pay」導入月と2018年4月度の比較

FIDの和田社長はこう言う。

「Amazon Pay」の導入によってスムーズな買い物が可能となり、従来はカゴ落ちして購入に至っていなかった消費者が商品を購入している可能性がある。

また、コンバージョンだけでなく、LTVの向上にも寄与している数値も出ている。LTVの向上は、クライアント企業が長く商売を続けていくためには必要不可欠な指標であり、「Amazon Pay」はそれに大きく貢献していると思う。

自分自身、クレジットカード情報をいろんなサイトで入力するのは手間がかかると感じるし、不安を感じて入力したくないケースもある。「Amazon Pay」の便利さ、安心感がLTVの向上に一役買っているのだと感じている。(和田社長)

ちなみに、FIDが参加したあるコンペで案件を獲得した際、発注企業から「当社はエンドユーザーの利便性などを考えると、Amazon Payを使わなければならない。だからFIDを選んだ」といった意見を言われたことがあるという。そのことを踏まえ、和田社長はこう語る。

新規顧客を獲得できなければ、リピート購入にもつながらない。まずは消費者に商品を買ってもらう必要がある。それを達成するには決済手段のバリエーションを増やすことが1つの重要な要素。それは、顧客満足度の向上、そしてゆくゆくはLTVの向上にもつながる。(和田社長)

株式会社FIDの和田聖翔社長 アマゾンジャパン合同会社 Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長
5月9日、通販ソリューション展内のFID出展ブースで行われた「Amazon Pay」とFIDのスペシャル対談で、「侍カート」による「Amazon Pay」標準実装が公表された。ネットショップ担当者フォーラム編集長の瀧川もモデレータとして参加

今後の展望

「Amazon Pay」を標準実装するECプラットフォームが増えれば、自然と「Amazon Pay」を導入するECサイトが増える。こうした流れが生まれてくると、「自社ECサイトでAmazon Payで決済するのが当たり前の時代になるかもしれない。

FIDが踏み切った標準実装は、こうした可能性を秘めているという声が出ている。事実、和田社長は今回の標準実装を機に、「侍カート」のさらなる飛躍を見据える。

開発者目線でのサービスの開発ではなく、消費者の声を聞いた上でこれからも開発を進めていきたい。たとえば、デジタルコンテンツや役務の分野。家賃の支払いなど定期的に支払いが発生するサービスに対して、今回のような仕組みが生かせる時代がやってくるはず。消費者が買い物・支払いがしやすい、よりよい社会作りを担っていきたい。(和田社長)

井野川本部長も、Amazonの進化に応じて、「Amazon Pay」も変化対応していくと話す。たとえば、クラウドベースの音声認識サービス「Amazon Alexa」に日本語対応した「Amazon Echo」などのボイスコマース分野。

現在、音声を通じて「Amazon プライム」対応商品を購入できる機能が搭載されている。それが、将来的にはさまざまな自社ECサイトの商品を、声を通じて探し、購入できるようになるかもしれない。井野川本部長はこう説明する。

今後、ボイスコマースの分野を含めて、「Amazon Pay」はいろんな使い方が出てくるだろう。実際に欧米では「Alexa」で「Amazon Pay」を使った決済サービスがスタートしている。新しい分野にも積極的に取り組んで、お客さまの利便性向上に取り組んでいく。(井野川本部長)

株式会社FIDの和田聖翔社長 アマゾンジャパン合同会社 Amazon Pay事業本部 井野川拓也事業本部長
「Amazon Pay」リリースから3年後の2018年5月。「Amazon Pay」は標準化という新たなステージに入った

【関連リンク】

瀧川 正実

アマゾン化が進むネット通販が抱えるリスク、Amazonにはない自社ECの強みとは? | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

7 years 7ヶ月 ago

オンラインで商品を販売する際、ネット上の巨大勢力Amazon(アマゾン)とパートナーシップを結ぶことはもはや避けられないでしょう。しかし、小売事業者は自社にしかない強みを保っておくことが必要です。

年に1度の小売事業者の大規模カンファレンス「Shoptalk」がラスベガス開催された際、いつも通りMacy's(メイシーズ)やWalmart Inc.(ウォルマート)、Nordstrom(ノードストローム)といった巨大企業の話が出ました。しかし、今回みんなが話したがったのは、(驚くべきことに)アマゾンについてでした。

小規模オンライン通販事業者から、伝統的な実店舗ブランドまで、みんなが同じ質問をしたのです。

アマゾンがマーケットシェアを独占するなか、自社ECサイトでの販売に意味があるのか?

他に類を見ないアマゾンの顧客数を利用して、アマゾンだけで販売した方が得策なのか?

その答えは「両方とも正解」です。

アマゾンに関しては、アマゾンを打ち負かすとか、アマゾンとパートナー組む、という単純な話ではすでになくなっています。最も確実なことは、ネット上で急速に成長しているアマゾン号に乗り込むと同時に、オンライン上での自社のアイデンティティを確立していくことです。なぜその中庸なやり方が最も確実な方法なのか、理由を解説します。

アマゾンは諸刃の剣

オンライン上の売り上げの43%を占めるアマゾンの影響を無視することは、実際は不可能です※1。今のアマゾンは15年前のウォルマートのようです。

どこからでもアクセスでき、インターネットで商品を探すときに消費者が最初に訪れる場所となっています。規模の小さな小売事業者のみならず、卸売販売業者もアマゾンに参加したいと思うはずです。

404
※1 米国ネット通販市場におけるアマゾンの売上比率(編注:編集部が過去記事をもとに追記)
出典:インターネットリテイラー、ChannelAdvisor、Slice Intelligence、米国商務省
※市場シェアにはアマゾンが自社で販売した製品および、同社のマーケットプレイスで販売された製品が含まれる

しかしながら、アマゾンと組むことで払わなければいけない代償があります。多くのアマゾン顧客はアマゾンへのロイヤルティが高く、アマゾンでしか買い物をしません。そのため、自社のブランディングをアマゾン内で行っても、ロイヤルティを高めることは難しいのです。また、アマゾンは小売事業者や商品に対して忠誠心などまったく持っていません

ウォルマートと同様に、アマゾンは中間事業者です。パートナーシップを組めば、アマゾンのサイト内で販売できますが、販促用のプレミアムを得たり、バーチャルな陳列棚で良い場所が確保できたりする保証はありません。検索結果で4ページ目に表示されるような事態になったら、真剣に商品を探している消費者の目にしか止まらないでしょう。

つまり、アマゾンにすべてを委ねると、小売事業者は多くのメリットを失います。ブランディングを行い、ストーリーを伝え、消費者と関係性を築いていくといった機会を失うのです。

トイザらスが最も良い事例でしょう。2000年にトイザらスはアマゾンと10年間の独占契約をしました(編注:トイザらスの公式サイトをアマゾン内に開設し、玩具ジャンルで唯一販売業者となる契約内容だったという)。

しかし、2004年には他のおもちゃ販売業者がアマゾンに大量参入してきました。トイザらスはアマゾンでの競争力を失っただけではなく、ECのオペレーションをアマゾンに頼っていたたため、オンライン上で自社のアイデンティティを築くことができませんでした。アマゾンで売り上げが落ち込んだとき、消費者がブランドとつながる別の場所がまったくなかったのです。

このことが、トイザらスを襲った経営難の理由の1つになったとも言えるでしょう。トイザらスはかつて、大変尊敬されていたブランドでしたが、2018年には、古いやり方で失敗した犠牲者の1つになりました。

自社サイトで販売するメリット

アマゾンで販売すれば、露出も増え、ブランドを見つけてもらえる可能性が高くなりますが、思い出に残るカスタマーエクスペリエンスを提供することはできません。記憶に残るカスタマーエクスペリエンスこそが、顧客との長期にわたる関係を築いていくのです。

消費者は、興味のある商品について多くの情報を求め、気に入ったブランドとのユニークなカスタマーエクスペリエンスを期待しています。実店舗であってもオンライン上であっても同様です。ですから、自社ECサイトを持つことが極めて重要なのです。

アマゾンがブランドを最初に試してもらうための前菜だとしたら、自社サイトは5つの料理が用意されたフルコースのようなものです。ここで重要なのは、自社サイトを最大限に生かすためには、アマゾンで提供しているような面白みのない在庫表示やチェックアウト方法を提供するだけではいけない、ということです。

消費者にとって、真の目的地となる必要があります。成功している小売事業者のサイトは、多くのことを同時にうまくこなしています。ブランドのアイデンティティを示し、より多くの在庫を表示し、消費者との直接的な会話を可能にし、消費者の購買行動を表す貴重なデータを収集してます。最も大切なことは、サイトへの流入を促すだけではなく、実店舗への訪問も促進していることです。

この点において成功しているのがAldo社です。モールへ出店しているブランドが苦戦しているなか、カナダの靴メーカーであるAldoはオンライン戦略に成功し、数年前に立ち上げたサイトで売り上げが倍増しました。

2,000以上ある実店舗でもコンバージョン率が増加しています。最も成功した施策は、消費者がお店の前を通り過ぎる時、オンラインでチェックしていた商品をモバイルのアプリを通じて知らせることだったそうです。

全米中のモールに出店していないとしても、ブランドに親しみを持ってもらうためには、自社サイトを立ち上げることは不可欠です。規模の小さい小売事業者には特にメリットが大きいでしょう。

何年にもわたって、アマゾンでひっそりと販売しているカナダ・ケベック州の企業Shore Furniture(編注:家具の製造販売業者)のような卸売販売者業者にとってもメリットがあります。

オンラインで成功しようと模索していた時、Shore Furniture社の最大の特徴はカスタマーサービスだということがわかりました。第三者のベンダーでは超えることができないサービスを持っていたのです。

オンラインでお店を持つことによって、より人間味溢れる企業になり、2週間早く出産した女性のために、ゆりかごが間に合うように送付するなど、顧客のために労を厭わない企業の姿勢が強調されるようになりました。以前は大きな百貨店でしか商品を見つけられなかった消費者と、自社サイト通して直接コミュケーションできるようになったのです。

小売パートナーにもまだ販売していますが、自社サイトだけで売り上げを伸ばすことができるのは、常に変化している小売業界では非常に重要なことです。

◇◇◇

アマゾンに大きな注目が集まるなか、アマゾンだけが唯一の方法だと考えるのは簡単なことです。しかしながら、自社のECサイトを持つことでアイデンティティを確立し、消費者との関わりを持ち、強固でロイヤルティの高いファン層を作ることが不可欠です。

この先何年もアマゾンはオンラインのマーケットプレイスを独占していくかもしれませんが、アマゾンを打ち負かす努力をするにしても、アマゾンとパートナーを組むにしても、この先、小売事業者が生き残るには主導権を持つことが大切なのです。

Internet RETAILER

世界最大級のネット通販業界の専門誌「Internet Retailer」は、雑誌のほか、Web媒体、メールマガジンなどを運営。Vertical Web Media社が運営を手がけている。

Eコマースの戦略に関し、デイリーニュース、解説記事、研究記事、電子商取引におけるグローバルリーダーをランク付けする分析レポートなどを発行している。

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メルマガ『週刊GAフォーラム』の登録解除ページ変更のお知らせ

7 years 7ヶ月 ago
筆者が運営しているGoogle アナリティクス情報サイトのGAフォーラムではメールマガジン『週刊GAフォーラム』を発行しています。そのメルマガで利用する配信サービスASPを、諸事情により変更いたしました。2018年4月23日発行号から変更しております。

今後はこのメルマガへ登録する、あるいは解除(配信停止)するページが下記になりましたので、お知らせいたします。旧メルマガ登録解除ページは一月くらい残っていると思いますが、ご利用にならないでください。

メルマガへの登録ページはこちらのリンクからどうぞ。ワンクリックで簡単に登録できます。なお登録に際して入力を求める情報はメールアドレスだけです。本メルマガ配信以外の目的で利用することはございません。

メルマガの解除(配信停止)ページはこちらのリンクからどうぞ。解除の操作もワンクリックで簡単です。

バックナンバー(2018年4月23日発行号以降)の公開も始めました。バックナンバーはこちらのリンクからどうぞ
noreply@blogger.com (hiromi ibukuro)

モール店から自社ECサイトへ強化軸を移すベガコーポレーションの戦略

7 years 7ヶ月 ago

家具ECを展開するベガコーポレーションは2019年3月期、旗艦店(自社ECサイト)の強化に取り組む。

配送費の高騰などで利益が圧迫される中、販売チャネルの軸を価格競争が起こりやすいショッピングモールから、利益率が高い自社ECサイトへシフトすることで収益改善を図る。

自社ECサイトの平均購入単価は2万1000円で、モール店舗と比べて8000円高い。また、売上高に占める販売管理費の割合は、自社ECサイトの方がモール店舗より約8%低いという。

ベガコーポレーションは今後、自社ECサイトの強化を進める

ベガコーポの今後の戦略(画像は編集部がIR資料をキャプチャ)

2018年3月期の単体売上高は前期比18.4%増の129億7700万円だったものの、営業利益は同32.2%減の5億6100万円で増収減益。大手ショッピングモール内の価格競争が激化し、コモディティ商品の値下げを行ったほか、配送会社の値上げで配送コストが上昇したことが営業減益の要因となった。

今後は自社ECサイトへの積極的な広告投資や、検索エンジン最適化などに注力する。

ベガコーポレーションの業績

17/3期と18/3期の業績(画像は編集部がIR資料をキャプチャ)

2018年3月期における自社ECサイトの売上高は約16億6100万円。EC売上高に占める自社ECサイトの比率は急速に拡大しており、2018年1~3月期(第4四半期)は前年同期比約2.5倍の19.2%となった。

自社ECサイトの年間アクセス数は前期比329%増で、2018年3月度は前年同月比約4.3倍の151万ユニークユーザー。

ベガコーポレーションの自社ECサイト「LOWYA」はアクセス数が急増している

自社ECサイトはアクセス数が急増している(画像は編集部がIR資料をキャプチャ)

なお、ベガコーポレーションは家具・インテリア市場の「トレンド LOWプライス」において、ファストインテリアのジャンルを確立するとしている。

自社ECサイト「LOWYA」のポジショニング

自社ECサイト「LOWYA」のポジショニング(画像は編集部がIR資料をキャプチャ)

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

着物の楽しさをネットで世界中に届けたい。伝統を守り革新を続ける「きもの京小町」の挑戦 | STORY of BACKYARD ─ECサイトの裏方たち─

7 years 7ヶ月 ago

「着物に興味があるけど買い方がわからない。ネットで気軽に購入できたら……」。そんな願いに応えるのが京都発祥のECサイト「きもの京小町」だ。「Enjoy!! KIMONO」をスローガンに2012年にオープンしたこのサイトは、看板商品の「着物デビューセット」をはじめ、初心者にわかりやすい独自の商品が支持されている。サイトを支える“着物愛”に迫る。

国内・海外のファンに着物を楽しんでもらうために

きもの京小町がオフィスを構えるのは、京都でも呉服業者が多く集まる室町エリア。古くからこの地で呉服卸業を営んいた同社は、京都呉服界の中でいち早くネット通販に参入した。ネットショップの運営は社内のインターネット事業部が行っている。メンバーは社員4人にパート6人。みな“着物愛”にあふれたメンバーだ。事業部をまとめる齋藤亜耶さんに話を聞いた。

きもの京小町 インターネット事業部 マネージャー 齋藤亜耶さん

齋藤さんが入社したのは11年前。最初は商品の撮影や出品や受注処理などを担当していたが、前任のWeb担当が辞めることになり、知識も経験もないのにインターネット事業部に配属、Web担当になった。業務に必要なスキルは独学で身に付けてきた。

齋藤さんの一日
9:00 出社。お問い合わせメール見る
お問い合わせに返信
10:00 サイト上でセールなどイベントを更新する
バナーやページデザインをFireworksとDreamweaverで行う
商品ページを作り込む
12:30 昼食
午後〜 セールの売上をチェック
売上の施策を立てる
発送メール処理
梱包作業
きもの京小町の看板

着物って、難しそうなイメージがあって、一歩入ってもらうのが大変なんです。そこで“お洋服と何ら変わらないものですよ”というイメージを持ってもらうために、社長が考案したのが「Enjoy!! KIMONO」というスローガンでした。(齋藤さん)

きもの京小町の帯

課題は伝統を守りつつ敷居を下げること。国内の顧客は東京、九州が多く、地元京都は5位くらい。年代は30代が多い。3月の卒業式、4月のお花見など、着物が必要になるイベントではキャンペーンを行うようにしている。一番の繁忙期は浴衣が必要とされる夏のちょっと前の6月と7月。

海外の顧客も多い。海外のモールへの出店も、世界中の人に着物を楽しんでもらいたいという思いから。

現在は海外Amazon、eBay、PriceMinisterに出店しています。以前は楽天インドネシア、楽天アメリカにも出店していました。海外出店では多言語の問い合わせへの返信や、配送事情の違いが問題になります。24時間以内に問い合わせに返答しないとお店の評価が落ちてしまうし、ちょっとした住所の不備で届かなかったり、常識のくい違いがあったり、思ってもみないトラブルがあるんですよね。(齋藤さん)

きもの京小町では、インターネット事業部でフランス語対応スタッフを雇用し、不測の事態にも対応できるよう体制を築いている。嬉しいのは海外の人に着物文化が受け入れられること。

ヒジャブを巻いたインドネシアの方が、着物を着ている写真を送ってくれたりするんです。フランスの方はファッションに敏感なので、価格が高いものも買ってくれたり……。海外の見本市に出店する時にも、現地にいるファンの方が手伝ってくださるのが嬉しいです。(齋藤さん)

高額商品が多いだけに、気を使うのは「梱包」 だ。

きもの京小町 梱包
きもの京小町 梱包
正絹のお着物は大変滑りやすくなっております。必ず水平のまま運んでいただけますよう、お願いします。

海外向けだと梱包資材で送料が高くなってしまうので、梱包には工夫を凝らしています。箱はつぶれてしまうのでビニールの方が良い。板を入れたり軽いものでクッションをかませたり……ノウハウもたまってきました。(齋藤さん)

初心者に寄り添う丁寧なコンテンツ作り

きもの京小町が他店と一線を画しているのは企画力。「最初に何を買えばいいのかわからない」という初心者のための「着物デビュー20点セット」や、メンズのためのセットなども人気だ。着用イメージをふんだんに掲載した特集ページや、動画での着こなし解説など、自社で精力的にオリジナルコンテンツを制作している。

実際に着ているところを見ていただかないと着物の良さがわからないので、正統派のモデルさんに着ていただいたイメージを中心にコンテンツを作成しています。コンテンツで心がけているのが“敷居は下げても品は下げない”ということ。最近は肩を出して着る浴衣やミニスカタイプの浴衣などもありますが、スタンダードな魅力を伝えることに注力しています。(齋藤さん)

解説動画においても、初心者は手順が1つでも違うと戸惑ってしまう。そこで、着付け小物セットがリニューアルされるごとに、新しい動画を作成している。初心者に寄り添ったコンテンツ作りが求められているのだ。

お問い合わせでも、「1人で着られますか?」と心配されている方が多いんです。動画だけではわかりにくい場合は、写真を入りのマニュアルも作ります。(齋藤さん)

きもの京小町の企画力は、オンライン上だけではなく、リアルでのイベントにも発揮されている。

「着物でどこに出かければいいのかわからない」というお声をいただくことが多いので、店舗でお茶会をしたり、着物で祗園祭や時代祭を見に行ったりといった体験的なイベントを企画しています。イベントによって、着物や浴衣を着る場を提供していきたい。物を売るだけがきもの京小町の仕事ではないんです。

そうしたイベントの際に、ネットのお客様とお店で顔を合わせるのも嬉しいこと。イベントだけでなく、きもの京小町の着物を通して、ユーザー同士の交流も生まれているそうだ。

東京で展示会をすると、お客様がお菓子持参で来てくださって、お客様同士で5時間ぐらいおしゃべりされているんです。みなさんうちで買った着物で来て下さるんですが、お客様同士で「それ可愛いですね」みたいに褒め合っていている姿を見るのはすごく嬉しいです。(齋藤さん)

いま企画しているのは、「着物で食べ放題のバイキングに行く」というイベント。きもの京小町の創意あふれるイベントによって、着物の道に一歩踏み出す人が増えてほしい。

お買い物の時にはお客様にウキウキしてもらいたい

もう1人お話を聞いたのは亀山雅代さん。亀山さんは元プログラマー。Uターンで京都に戻り、「着物に関わる仕事がしたい」という思いできもの京小町に入社した。着物が好きになったきっかけは、家族が時代劇好きだったこと。時代劇に出て来る女性の着物の色合いが綺麗だなと思っていた。

きもの京小町のインターネット事業部 お問い合わせ担当 亀山雅代さん
きもの京小町 インターネット事業部 お問い合わせ担当 亀山雅代さん

亀山さんはAmazon店を担当している。Amazonの特徴は売れるものが決まっていないこと。高価な反物も売れるし、小物などすぐに欲しい消耗品なども需要が高い。着物をネット上で販売する上で気を使うのは「色」。

着物で重要なのは何と言っても色です。商品画像は補正して、本物となるべく色が近くなるように気を付けています。誰もがわかるような色の名前を書くことも重要です。反物で高価なものは、事前に送ってお客様に見てもらうこともあります。人によっては顔が暗く見えるような色もあるので、後悔なく買い物をしていただきたいんです。(亀山さん)

着物京小町社内風景
着物京小町社内風景

また、文化の違いによっても受け取られ方も変わってくる。

着物セットは便利なんですが、こちらが在庫の中でいろいろと考えてコーディネートして送っているので、お客様から「違うものが良かった」と言われることも当然あります。嫌いな色は避けて、クールにするのか可愛くするのか、お客様の好みに合わせてお送りしても、どうしても「イメージと違う」ということはあります。関東・関西でも感覚が違います。(亀山さん)

お客様の感性と合わなかった場合は、対応できる範囲でコーディネートをし直して交換を行っている。実際に商品を見てもらうことができないネットショップで着物を売るには、事前・事後のきめ細やかな対応が重要だ。そのほかに、亀山さんがいつも心がけているのは、「お買い物の時にはお客様にウキウキしてもらいたい」ということ。

お買い物ってすごく楽しいことですよね。その気持ちをネット上でもお客様に味わっていただきたいと思っているんです。私は着物が好きという気持ちで転職したのですが、知識はまだまだ。初心者の方の気持ちがわかるというか、同じ気持ちで着物に向かっています。(亀山さん)

着物京小町社内風景

お問合わせの中で着物のTPOに関する質問は特に多い。

お客様からは、「お茶の席や、入学式などにこの着物はふさわしいものですか?」というような具体的な質問をよくいただきます。季節や格式によってもふさわしい着物は違ってくるので、自分で判断できないケースは、会長や業者さんなど、呉服のプロの知識をお借りします。

オフィスのある室町通りは呉服関係の業者が集まっているので、着物のベテランの方々に教えていただきやすい環境にあるのが幸いです。仕入れに行くのも歩きか自転車だし、メーカーによって着付けが得意なところもあれば、着物が得意なところもあって、それぞれのプロの意見を拝聴しています。(亀山さん)

通常なら店舗でサイズを図るオーダーの着物も、きもの京小町ではネットで受け付けて仕立てている。その場合にはよりシビアなサイズ確認をお客様にお願いしなければならない。

着物は実はサイズがシビアなものなんです。サイズが合っていないと格好良く見えないんですね。サイズを5種類から選べるセミオーダーからフルオーダーまで対応していますが、オーダーの際にお客様がお困りになるのは「サイズをどうやって測ればいいのか」ということ。

ご自分の着物を送っていただいて同じサイズで作ることもできますが、それがない場合は「裄(ゆき)丈」の測り方を細かくお伝えします。一人ひとりサイズは全然違うものだし、洋服とも違うサイズ感なので、丁寧に説明するようにしています。

着物京小町社内風景

最後に、亀山さんが初心者におすすめすの着物について教えてもらった。

最初はやっぱり入りやすい浴衣から始めるのがおすすめですが、浴衣を入り口としてお客様には着物にステップアップしてほしいと思っているんです。初心者なら綿の着物が良いですよ。綿だと生地が滑らずツルツルしていないので、慣れていない人でも着付けが楽です。浴衣だと夏しか着られませんが、着物ならお花見も紅葉狩りにも行けますよね。(亀山さん)

眼を輝かせて話す亀山さんを見ていると、着物文化に踏み出してみたい気持ちになってくる。こうした担当者の情熱が、京都の歴史ある着物文化を支えていくのだろう。

B.Y

B.Yは、普段表に出ないEコマースのバックヤード(受注、出荷、顧客対応)担当者を取材した“日本初”バックヤードに特化したWEBメディア。 バックヤードの人々が実践する「運用業務の創意工夫」「仕事への向き合い方」をSTORY、「バックヤード運用ノウハウ」をTOPIC、として発信している。本来Eコマースがもつ可能性を拡げ、バックヤードの人がいきいきと働けるキッカケを提供することでEC業界全体を支援している。

B.Y

大塚家具がAmazonでの販売をスタート、EC事業強化の一環

7 years 7ヶ月 ago

大塚家具は5月1日、Amazonで寝具や家具などの販売を開始した。経営計画に掲げたEC事業強化の一環。シーツやピローケース、ソファ、マットレスなど約130品目を販売している。

Amazonでの販売を通じて、既存の顧客とは異なる客層へアプローチする。

大塚家具がAmazonでの商品販売をスタート

大塚家具はAmazon内での販売をスタート(画像は編集部が該当ページをキャプチャ)

大塚家具は2017年3月に発表した「経営ビジョン」の中で、インターネットと店頭、外商が連動した「商品とサービスのオムニチャネル化」の推進を掲げている。

インターネット上での存在感を高め、OtoO施策を強化することで店舗への集客を強化するとともに、品ぞろえと価格競争力を武器にECを店舗と並ぶ第二の柱にするとしている。

2017年以降、商品紹介サイトとECサイトの統合や、EC商品の拡充を推進。9月には靴やファッションのECを展開するロコンドと提携し、家具のECサイト「LOCONDO HOME(ロコンドホーム)」を開設した。

2017年10月には会員向けのポイント制度を変更し、リアル店舗で実施してきたポイントプログラムをECサイトにも拡大。会員制度「IDCパートナーズ」のポイントを、オンラインショップ「IDC OTSUKA オンライン」で利用できるようにした。また、「IDC OTSUKA オンライン」で購入した顧客にもポイントを付与している。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

スタートトゥデイグループのテクノロジー戦略は? 新会社の久保田社長と金山CIOに聞く | 通販新聞ダイジェスト

7 years 7ヶ月 ago

スタートトゥデイ子会社の旧スタートトゥデイ工務店とVASILY(ヴァシリー)、カラクルが4月1日に合併し、スタートトゥデイテクノロジーズが発足した。グループの技術力を集結した新会社には2人の代表取締役が就任し、専門性の高い分野でも迅速な意思決定とスピード感のある経営を行うという。同社の久保田竜弥社長と金山裕樹CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)に新会社での役割分担や経営ビジョンなどを聞いた。

スタートトゥデイテクノロジーズの久保田竜弥社長(写真左)と金山裕樹CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)
久保田竜弥社長(写真左)と金山裕樹CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)

――テクノロジー系3社が合併した。

金山「3社が合併した理由は攻めと守りの両面がある。攻めの部分は機能的に似ている3社がノウハウの共有や人材交流を含め、テクノロジーと生み出すモノの価値をより高めていくためには、各社で技術開発を行うよりも、一丸となった方が良いと考えた。まずは、主にソフトウエア開発の技術力向上とお客様価値の増大に取り組む」

――守りの部分は。

金山「テック企業の情報の取り扱いは非常にセンシティブな問題だ。3社で統一された情報セキュリティーレベルを設定するなど、コンプライアンス意識をさらに高める必要があった。それには、1社の方が効率的で、かつリスク管理がしやすいと判断した」

――新会社でのふたりの役割分担は。

久保田「スタートトゥデイ工務店のときから人工知能や機械学習というワードは出ていたし、現場からもリクエストがきていたが、既存事業の開発に時間をとられ、なかなか手を付けられない状況だった。今回の合併で足りない部分を補えるため、新しい技術の開発などは金山に任せる。自分自身はこれまで通り、既存事業を大きくしていくことに全力をつくす。昨年はPBや『おまかせ定期便』とひとつのサービスで会社が作れるくらいの規模のローンチが相次いだ。PBも始まったばかりで、ゾゾスーツの供給体制やPBの国内外での販売など、取り組むことは多い。ただ、ECチャネルでの販売手法がこの先ずっと続く保障はない。次のトレンドの発掘などは金山に依頼して準備を進めてもらう

――業務範囲が増えるのか。

金山「ヴァシリーでも新規事業創出や研究開発を行っていた。人員と予算をもらってスケールアップして取り組めるようになり、研究結果を披露する場ももらえる。業務範囲というよりは大きな舞台に立てるチャンスが広がった。『ウェア』は1000万人の利用者がいるが、『アイコン』は200万人とまだまだ規模が小さく、“地産地消”という感じだった。『ゾゾタウン』と連携すれば決済や物流、ゾゾスーツにPB販売もあり、可能性が広がる」

――スタートトゥデイ研究所のプロジェクトリーダーも務める。

金山「プロジェクトリーダーは研究員が気持ちよく研究できる環境を整え、研究されたものが実用化できるように導いていくのが役目だ。予算も含めて健全に運営できるようにマネジメントしていく」

――新会社の人員は。

久保田「213人でスタートした。3社の人員を合わせただけでなく、3~4月に採用を積極化し、新卒者も採用した。職種はエンジニアとデザイナーが大半を占めている。拠点は青山と幕張、福岡の3カ所に分かれており、例えば、『ゾゾタウン』の開発はカスタマーサポートや物流拠点、ブランドEC支援の部隊がいる幕張に置き、コミュニケーションをとりやすくしている」

――研究所の体制は。

金山「15人程度でスタートしている。旧カラクルの10人は福岡に、ヴァシリー出身の5人は青山を拠点にしている」

――研究所を運営する上でのKPIは。

金山「最終的にはどのくらい事業にインパクトを与える発明ができるかが重要で、そのためには特許の申請数や基となる論文の数も大事にしたい。機械学習や画像認識などコンピューターサイエンス分野の学会に論文を通し、その内容を特許としてパッケージ化し、現実のビジネスに実装して価値を生むことが大切だ。1~2年で結果が出るとは思っておらず、腰を据えて取り組める体制を作っていきたい」

――研究範囲は。

久保田「スタートトゥデイグループは現状、ECやメディア事業にとどまっているが、もっとファッションの範囲を大きく見ており、例えば、服を作る工場のラインや原料になる綿の栽培をいかに効率化するかとか、素材の研究やデザインプロセス、もっと言えば、物流倉庫のロボット化、自動運転なども事業対象の範囲に入ってくるかもしれない。ファッションという大きな軸で見たときに、事業の対象になりそうな部分で必要な研究開発には取り組みたい。領域が広くなって研究員がいなければ、求める知見のある人を採用したり、外部の有識者と共同研究していけばいい。何を優先的に取り組むとか、研究テーマにするかどうかは、基本的には当社経営陣と前澤で判断するが、その根底にはファッション産業を盛り上げたいという気持ちがある」

――今期、新会社として優先することは。

金山「まずは組織だ。200人以上のメンバーが集まっており、各自が自分の能力を十分に発揮できる組織、環境作りを急ぎたい」

久保田「当社はテクノロジーの会社ではあるが、根底にファッションがあるからこそユニークだと思う。技術の力でファッションの課題を解決する企業文化やミッションを発信し、共感する人が集まって、より強い組織が作れるようにしたい」

――海外拠点も増えていきそうだ。

金山スタートトゥデイグループはPB販売を通じてグローバルカンパニーへと成長し、10年後の取扱高は国内よりも海外の方が大きいくらいでないといけない。そういう意味でも、世界中どこにいても同じ水準でストレスなく仕事ができる環境は大事。外国籍の社員が増えてくる中で、いま働いている人の意識改革も必要になる」

通販新聞

【告知】2018年5~6月開催のセミナー

7 years 7ヶ月 ago
こんにちは。秘書です。 ゴールデンウィークはのんびり過ごせましたでしょうか? さていよいよ5月より、弊社主催の「提案型ウェブアナリスト育成講座」が始まります。準備も着々と進んでおります。今回の受講者の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。 また、6月には ~祝・第10回!【無料&初心者歓迎】 解析相談&アナログゲーム大会~ も開催いたします。小川が皆様のお悩みにお答えするイベントですので、お気軽にお越しください。 ※2018年5月6日時点の情報です。 詳細はリンク先をご確認の上、お申込みください。 では、一覧をご覧ください。(時系列です。)

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