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2010年度 第1回 HCD-Netサロン「アドバンスデザインとHCD」」 からご覧ください。
第1回 HCD-Netサロン「アドバンスデザインとHCD」についてご案内します.
今回のサロンは,HCDと先行デザインとの関係を考える場としたいと思います.
まったく新しい機能や価値をもった商品やサービス,場や情報共有のしかたなどの可視化を行うアドバンスデザインは,ニーズドリブンなアプローチが採用できないデザイン分野であるといえます.このニーズの無い状況の中でいかに受け手の共感を得るか.ニーズに代わるドライブ要素は何なのか.あるいはアドバンスデザインにおいて受け手である人間はどう捉えられ位置付けられているか.さらに踏み込んで言えば,人間中心設計という考え方は成り立つのか,等々について,3つの事例を通じてざっくばらんな議論をしたいと思います.
日時
2010年 4月23日(金)18:30〜21:00(予定) ※18:00頃から,ThinkParkタワーの2階ロビーでカードをお渡しします.受付は23階にて,18:15から.
会場
ネイバージャパン株式会社内カフェ.
JR大崎駅 南改札口、新西口より専用ベデストリアンデッキで徒歩2分.ThinkParkタワー23階.
http://corp.naver.jp/about/access
主催
HCD-Net
参加費
会員:2,000円
一般:5,000円
学生:2,000円 (学生会員は1,000円)
※参加費は事前振り込みをお願いします.(お申込みいただいた方にご案内)
定員
40名 (満員となりました。ありがとうございました)
構成
18:30-18:35 幹事挨拶
松原幸行(キヤノン)
18:35-19:10
有馬 正人氏,井原 亮二氏(セカンド ファクトリー)
19:10-19:45
石黒 猛氏(デザイナー)
19:50-20:25
畑中 元秀氏(タクラム デザイン エンジニアリング)
20:25-21:00
全体ディスカッション
※ 終了後,有志で懇親会を行います.(参加自由,参加費自己負担)
参加申込(満席となりました。ありがとうございました)
メールタイトルを「第1回HCD-Netサロン参加申込み」として
①氏名,②所属,③メールアドレス,
④会員区分(一般,一般学生,正会員,賛助会員,学生会員)を本文に記入し,
hcdnet_registration@hcdnet.orgまでメールでお申込みください.
レクチャー略歴
有馬 正人
大学在学中に南アジア諸国でのNGO活動を経験し,自らのコアとなるスキルを身につける必要性を痛感する.卒業後,Web業界でのものづくりスキルを身につけることを目指し,セカンドファクトリーに参加する.現在はエクスペリエンスデザイナーとして活動中.現在はエクスペリエンスデザイナーとして活動中。
井原 亮二
セカンドファクトリー所属.エクスペリエンスデザイナーとして要求分析や情報設計を行う傍らで,案件をまとめるPLや社員教育など主な案件として,次世代デジタルデバイスで重要な役を担うユーザーインターフェイスをデザインしている,
石黒 猛
1969,山梨県生まれ.育英工業高等専門学校卒業後,1995年にロンドン,ロイヤル・カレッジ・オブ・アート,工業デザイン科修了.1996年に米IDEO社入社.サンフランシスコ事務所に勤務し,広くプロダクトデザイン,戦略にたずさわる.1999年,同社東京に転勤し,2001年退社.2001年から個人で活動を開始.1998年にRice Salt&Pepper,また2007年に加湿器Chimneyが,ニューヨーク近代美術館永久保存に選定される.プロダクト,アート,舞台演出など多岐に活動中.2009年,国際宇宙ステーションで使用される機材を設計,デザインし,現在宇宙ステーションにて運用中.
畑中元秀
takram design engineering共同創業者,取締役,デザインエンジニア.Ph.D..デザインとエンジニアリングの相乗効果を活かした製品開発を,各種電子機器 やロボット,医療機器,スポーツ機器,楽器などの分野で実施している.1999年東京大学工学部産業機械工学科卒業.米国スタンフォード大学大学院で,ロ ボット開発および設計理論の研究に従事しつつ,デザインや開発の手法を学び,2005年に博士号取得.2006年田川欣哉と共にtakramを設立.ほかに実際の設計研究会会員,危険学プロジェクト研究協力員,日本機械学会メカライフ編修委員を務める.
http://www.takram.com/
2010年度の第1回Hcd-Netサロンは、「アドバンスデザインとHCD」というテーマで,4月23日(金)18:30から21:30にかけて、ネイバージャパン社のカフェをお借りして、開催しました。
参加者は当初40名ということで募集しましたが、結果的に44名の方に参加していただきました。日頃アドバンスデザインに係わっておられる井原氏と有馬氏(セカンドファクトリー社)、石黒氏(石黒猛事務所)、および畑中氏(takram design engineering)の4名にレクチャーをお願いし、活発な討議を行いました。参加いただいた全ての皆さまにこの場を借りて感謝申し上げます。
以下にレクチャーの概要と幹事としての所感を述べさせていただきます。是非ご一読ください。
なお、カタカナ表記についてですが、<Advanced Design>の発音を基にすると<アドバンストデザイン>となりますが、ここでは日本語として<アドバンスデザイン>を使用しています。
井原氏と有馬氏はセカンドファクトリー社に所属されており、主に依頼案件のPM(注;Project Management)をご担当されておられます。アドバンスデザインが「将来的な価値の立証」だとして、未来のUXをシナリオ化しながら、そのシナリオに基づくプロトタイプを作成し、適切な提案を心がけているとのことでした。体験可能でリアルなプロトタイプにより、先行提案がクライアントに確証を与えるものとなる。但し、目的や用途をよく考えずに製作したプロトタイプが意図に反して製品のα版となってしまったり、目的に適った検証ができないなど、やはり製作する上でのTPOが大事であるとし、「プロトタイプのTPO」という課題をご提示いただきました。また「人の気配」がする演出やテイストを大事にしているとのことでした。
石黒氏は、IDEO社に7年半在籍され、その後独立され、現在は石黒猛事務所を主宰されておられます。〔時代を超えて新しい経験を提供する〕ことを大事にされており、ここに「新しい体験」というアドバンスデザインの本質が垣間見えます。この「新しさ」を得るためには本質を捉えれば良いとし、〔本質を共有する〕ことを目指しておられるとのことです。ここに「受け手の共感」が導きだされるカギがあると思われます。
また氏はアドバンスデザインを、「デザイン」と「芸術」と「舞台」の3つの輪の重なりで示されました。デザインは社会性であり、芸術は純粋美を、また舞台は人の生き様や生そのものが凝縮されたものであると理解できました。デザインは常に社会性を内包しながらも、同時に〔美の追求〕ということもまた無くてはならないものである。舞台はいわば、その縮図でありデザインをシミュレーションする「場」の様にも思えました。大変興味深い視点です。
畑中氏は、takram design engineeringの創立者であり、アドバンスデザインの作品として、多くの製品提案やインスタレーションをディレクションされておられます。日頃の活動の中で、やはりデザインとエンジニアリングの連携や協働が非常に大事である、と述べられています。これはHCDの立場から言えば、Interdisciplinaryということであり、日常のタスクの中でUCDチーム活動を行うことを意味すると思います。
アドバンスデザインで心がけることとしては、〔提案の本質を的確に表現していながら自由な解釈の余地も兼ね備えていることである〕と述べられており、やはり「本質」という言葉を用いておられます。本質を突かなければ、関係者をその気にさせ動機付けることはできない。そのためには〔そぎ落としていく/刺激を与えるが刺激しすぎない〕ことが重要である、と述べておられます。そぎ落とすとは、例えば五感であれば、その全てを考えモダリティを増やしていくのではなく、聴覚だけとか視覚の中の動きのみに着目するなど、ミニマルなアプローチを模索する、と解釈できます。またこれらのビジョンを、アートインスタレーションという形で多数発表されており、やはり「芸術性」というキーワードが背景にあることが確認できました。
今回のサロンで、アドバンスデザインにとって重要な視点の幾つかが提示され、参加者間で共有できたと思います。それは<リアリティ>であり、<新しい体験>であり、<本質を突く>ということであり、また<芸術性>であります。アドバンスデザインのプロセスとして重要なものは<プロトタイピング>であり、<そぎ落としていく>ことがヒントになると考えます。さらに<舞台>という、確認し再現する場の存在が、何か更なる可能性を示唆してると思う次第です。
以上です。今後も、アドバンスデザインに関しては、継続的に話題に取り上げていきたいと思います。どうぞご期待ください。(松原)