EC・通販事業を運営する上で重要なCRM(顧客管理)。「CRMとは何か?」と聞かれて、正確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。CRM施策を行う上で重要なのは「顧客との関係を管理する定義」をきちんと理解することです。「顧客のニーズを掴むためのCRMの定義」「CRMにしかできないこと」「CRMでめざすべきKPI」について解説します。
顧客との関係を管理する「CRM」の定義
CRMは「Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)」の略で、「顧客関係管理」のことです。この「顧客関係管理」とはどのようなものでしょうか。
顧客情報は、自社のサービスに接触した人(顧客)との関係を良好に維持し、向上させるアプローチのために集めた情報を一元化したもの。すべての施策はこの顧客情報から始まります。
顧客情報のなかには「購入履歴」と「接触履歴」があり、それぞれ次のようなことがわかります。
購入履歴
- 何の商品を購入しているか
- 何回、何円分購入しているか
- 現在も購入継続中かどうか
接触履歴
- どのような手段で接触しているか
- 初回購入経路は何か
- 2回目以降は何を見て購入しているか
- 問い合わせなどは何から接触しているか
特に、接触履歴の「何を見て購入したか」は、EC・通販事業の戦略を考えるために重要な要素です。
顧客を管理する9つのセグメント
さらに顧客を管理する上で、9つのセグメントに顧客を切り分けます。
セグメントとは顧客を細分化した区分のこと。製品への認識、購買過程、購買行動など共通している内容ごとに顧客を分類しています。
ひとことに「顧客」といってもさまざまですが、多くの場合、以下の9つのセグメントに分けて管理されます。
- 未認知顧客
- 認知顧客
- 未購入顧客
- 新規顧客
- 既存顧客
- 積極的なロイヤル顧客
- 消極的なロイヤル顧客
- 休眠顧客
- 退会顧客
未認知顧客
商品をまったく知らない顧客のこと。購入前に商品・サービスの情報を与えて、認知してもらう必要があります。新聞、電車の吊り革広告、SNSなどが認知のきっかけになります。
認知顧客
商品・サービスを認知しているけれど、まだ購入に至らない顧客のことです。目に入った商品・サービスがユーザーの興味・関心を引き、「買ってみよう」「情報を知ってみよう」と心を動かす必要があります。
未購入顧客
検討状態でユーザー登録までしたものの、まだ購入したことがない顧客のことです。「少し情報を知りたい」と思い、店舗に足を運び商品を見たけれど買わなかった人、500円クーポンなど特典のために登録だけした人などが該当します。購入に至らなかった要因を分析して購入へと導き、新規顧客に変えていく動きが必要です。
新規顧客
初めて購入した顧客のこと。どの媒体(TV・Web・新聞など)から来たのか接触履歴を把握しつつ、既存顧客に育てていく必要があります。
既存顧客
2回目以降の購入客のことです。どのように商品・サービスに接触したかをデータ化し、購入に至った経路をセグメントしましょう。その上でリピート購入してもらうための施策が重要になります。
ロイヤル顧客
ロイヤル顧客には、大きく分けて2つの定義があります。
企業やブランドに対して強い愛着、信頼感を持つ顧客のことです。既存顧客を育てることで、ロイヤル顧客になっていきます。
企業やブランドを使い続けているが、他社で良い条件があれば移ってしまう可能性がある顧客のことです。何らかの理由で愛着心を持ちきれず、不満・批判的な意見を持っていることが積極的なロイヤル顧客と異なる点です。
「ロイヤル顧客」について
ロイヤル顧客は上記の2つに分けて考え、できるだけ積極的なロイヤル顧客化していくことで、LTV(顧客生涯価値)の最大化につなげていきます。
休眠顧客
定期商品やサービスを一定期間停止している顧客です。もう一度利用してもらえるように施策を打つ必要があります。
退会顧客
すでにサービスや商品の購入を止めてしまった顧客です。誤って連絡しないよう、退会顧客のデータはマスキングしておきましょう。
紹介した9つのセグメントは、基本的にはどの分野、業種・業態でも使うべきセグメントで、顧客のロイヤル化をめざすなら必須になります。またこの顧客を9つにセグメントし、管理していくためにはCRMツールの導入も検討してみましょう。
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CRMで実現する一元管理と分析手法とは?
顧客をセグメントした後は、「顧客がどういう動きをしたか」という分析が必要です。顧客が認知した入り口・継続率・購入回数などを計算して、退会や解約があれば、購入を辞めてしまった理由も考え分析します。
CRMでは、1回でも長く継続利用してもらうためにも、顧客が購入を辞めてしまう理由を排除していくことが重要です。
そして、継続してもらうための施策を先述したセグメントごとに考えます。たとえば次のような施策が考えられます。
- ロイヤル顧客化するためのシナリオ作り
- ステップメールや同梱物の作成
- 電話で顧客のリアルの声を聞く など
セグメントごとの課題を見つけ、KPI(重要業績評価指標)を定めて施策に落とし込む。CRMによって得られた情報を元に分析を進めることで、ターゲットとなる顧客に対して、より適切なプロモーションを実施することが可能です。
その上で、CRMのデータを一元管理したものを使って、顧客をデータ化してPDCAを回していきます。それがLTVを最大化させ、ひいては顧客の見える化につながり「自社にどんな顧客がいるのか」が見えてくるのです。
CRM専用ツールの使用も検討する
顧客マネジメントを効率的かつ正確に行うために、CRM専用ツール導入を検討するのも1つの手段です。
ウェブからの接触履歴であれば、自動で情報を集計することも可能ですが、FAXやハガキ、電話の場合は、手動でシステムに入力しなければなりません。また、名前・性別・住所・購入履歴くらいの情報なら、地道にエクセル管理も可能ですが、接触履歴だと管理が難しくなってくるでしょう。
CRMツールを導入することで、項目の管理、課題の整理・分析を行いやすくなり、メールや電話などさまざまなアクションに結び付けられます。顧客マネジメント・分析をした上で施策に落とし込み、顧客とつながるためにもツールの導入をおすすめします。
ツールを検討する際は費用対コストを考慮し、きちんと使いこなせるか、自社の課題解決につながるかなどをしっかり考えることが大切です。
課題を洗い出したらKPIを設定しよう! 設計のコツを解説
CRMの重要指標
セグメントごとの課題を洗い出した後は、KPIを設定します。「休眠復活のKPI」「継続促進のKPI」「ロイヤル化のKPI」など、どのようなKPIを設定するかで打つべき施策も変わってきます。重要なことは「企業の売り上げにどのくらいインパクトを与えられるか」という点です。
たとえば、以下のような課題にKPIを設定したとします。
- 継続率改善の目標
- 定期購入5、6回目になる顧客のロイヤル化
- 休眠顧客の増加対策
この場合、いずれもゴールは“LTVの最大化”になります。LTV最大化が結びついてKGI(重要目標達成指標)になると、その部署の売上目標になります。そこから考えると、KGI(売上目標)=LTVの最大化となり、それを達成するためには、F2の継続率を上げれば1番インパクトが高くなるといえるでしょう。
数字目標設定の次にやるべきことは「F2の継続率を上げた後、それでも離脱した休眠顧客を復活させる」こと、「2回・3回継続してもらうための施策」を考えることです。どうすれば顧客に「もう1回継続したい」と思ってもらえるかが重要になってきます。
売上目標は必ず「%」も含めて表示する
前提として、CRM部署の数値目標(売り上げ)があります。その数値目標の内訳である「何の商品をいくらで、いくつずつ売れば」数値目標を達成できるか、「既存顧客からいくつ買ってもらうか」などがKPIの1つの目標になるでしょう。
たとえば、次のようなKPIが出てくるとします。
- 商品A:新規顧客に1000個買ってもらう
- 商品B:休眠顧客の掘り起こし
- 商品C:ロイヤル顧客化
ここで気を付けたいのが、売上目標は必ず「%」も含めて表示する、ということです。
例のように「新規顧客に1000個買ってもらう」という目標を設定してしまうと、新規顧客を獲得できなければ達成できないからです。したがって売上目標は、「新規の継続率60~70%で購入数600~700個、純新規顧客の購入率30~40%で目標達成をめざす」といったように、必ず具体的に%を入れることが重要です。
KPIに対する定性的な目標を定める
それぞれの商品に定めたKPIには、定性的な目標も定めます。定性的な目標とは「数値化できないが、めざすべき状態」を示す目標のことです。
たとえば、「どうしたらロイヤル顧客になってもらえるのか」というザックリとした課題から、それをスコア化して顧客ロイヤルティを上げることを目標にします。
顧客ロイヤルティを測る「NPS(ネットプロモータースコア)」というものがあります。「NSP」とは、商品・サービスを友人や家族などにどの程度勧めたいかを0~10までで評価してもらい、結果を数値化するものです。
「NPS」を活用した独自のアンケート項目を作って、毎回定点観測するのも1つの方法です。
「NPS」を活用して顧客ロイヤルティを図る
【NSPスコアを測るアンケートの質問例】
- この商品を使って良かったと思いますか?
- 同梱物やメールで気に入っているコンテンツはありますか?
- 商品を誰かに紹介したいと思いますか?
このようなアンケート結果をスコア化して、顧客ロイヤルティを測ります。CSの観点からの定性的な目標と、継続率の数値目標という定量的な目標の両軸でKPIを定めます。両方達成することで、CRM部署の数値目標を達成する、というような設計にすることがポイントです。
CRMを考えるときには、対象顧客がどのセグメントに属しているか、顧客の切り分けを行い、その顧客対して何をすれば良いかを考えていきます。
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次回は、新規顧客獲得に依存しない、CRMで注目すべき4つの戦略について解説します。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:「リピート客」を生むためのCRM、ちゃんと理解していますか? 顧客を管理する9つのセグメント、KPI設定のコツを解説 | みんなのCRMアカデミー byライフェックス
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