アユムさん、事件です。第2会議室のイスが足りない。もともと24脚あるはずなんだけど、今日数えたら16脚しかなかった。
8脚も行方不明なんですか! 事件は会議室で起こってますね!
それが、総務に聞いたら、4日前から毎日3脚ずつ別の会議室に移してたんだって。規定数の24脚まで減らすはずが、減らしすぎちゃったみたいだね。
事件じゃないじゃないですか! ところで、4日前は何脚あったのですか?
それを計算してみようか。規定数の24脚を基準のゼロと考えると、今日は8脚足りないから -8 だ。毎日3脚ずつ減っていたとして、式にできるかな。
えーっと、1日に -3 が4日分だから……
-8+(-3)×4
(-3)×4=-12 なので、
-8-12=-20
規定数の24脚より20脚少ないということは、4日前は4脚しかなかった?
あれ? 4脚だったのが16脚に増えてる……。毎日減ってるはずなのにミステリーですか?
式が違うね。4日前を知りたいなら、時間をさかのぼるから日数も -4。式は-8+(-3)×(-4)
つくよ。日数がマイナスになると、答えも変わるよ。まあ、詳しくはモリさんに聞いてみて。ボクは事件現場ではない会議室に行ってくるね。
あれっ。マイナスの計算ってどうやるんでしたっけ? モリさーん!
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。
そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学苦手な社会人に対して指導をしているアジアゾウをこよなく愛するモリさん。
この記事を読むべき人:マイナスの計算があいまいな方、「マイナス×マイナス=プラス」の理由を説明できない方
この記事を読む必要がない人:正負の数を理解している方
この記事でわかること:負の数の意味、マイナスの足し算・引き算・掛け算・割り算の考え方
負の数(マイナス)とは? 0を基準にした「向き」で考える
モリさん! 第2会議室のイスが8脚足りないんです。その原因は、総務部が4日前から毎日3脚ずつ持ちだしているとのこと。
総務部の方は、イス取りゲームでもするんでしょうか。
先輩から、4日前にあったイスの数を計算してって言われたんです。先輩が作った式はこれなんですが、意味も解き方もよくわからなくて。教えてください。
-8+(-3)×(-4)
なるほど、マイナス記号が3つありますね。アユムさん、そもそもマイナスって、何を表していると思いますか?
記号だけ見ると、引き算ですよね。3を引く、みたいな。
それも正解のひとつですが、マイナスにはもうひとつ意味があるんです。忘れていませんか、中学校で最初に習った「負の数」を。
はい、正確には「負の数(ふのすう)」と読みます。
数を線の上に並べたものを数直線といいますが、0を真ん中にして、右に行くほど大きく、左に行くほど小さくなります。0より左にある小さい数、つまり頭に「-」がついた数のことを負の数といいます。
勝ち負けの負ではありませんよ。英語だと “Negative number”、否定・打ち消しという意味のネガティブ(Negative) です。反対に、0より大きい数は「正の数」(せいのすう)、英語では “Positive number” です。
ポジティブは「はっきりある」、ネガティブは「ない・逆」という感じですね。数の世界では、0を境にどちら向きかを表しています。
0は、正の数でも負の数でもありません。ちょうどの位置、つまり基準そのものですから。
どっちつかずというか、審判みたいな立ち位置ですね。
今回は「24脚」が基準なので、そこを審判の位置、つまり0とします。8脚足りない状態は、0から左に8つ進んだところ。だから -8 ですね。
なるほど。ぴったり24脚あれば0で、多ければプラス、少なければマイナスってことですか。
その通りです。そして「多い・少ない」は、数直線の上では「右・左」、つまり0から見た向きのことでもあります。今回の式に出てくる3つのマイナスも、全部この「向き」なんですよ。ただ、何の向きなのかがそれぞれ違う。そこが今日のポイントです。
足し算はその向きに進み、引き算は向きを逆にする
では、イスが3脚足りない状態から、さらに3脚減ったらどうなるでしょう?
6脚足りなくなりますね。-3+(-3)=-6 です。
正解です。いま数直線の上では、-3 の場所から、さらに左へ3つ進みましたね。
そういうことです。足し算は、足す数の向きにそのまま進むこと。マイナスを足せば左へ、プラスを足せば右へ進みます。では、3脚足りない状態から、今度は -3 をひとつ引いたらどうなりますか。
-3-(-3)……。えっ、マイナスを引くんですか? 意味がわからないです。
「引く」は向きを逆にするという合図です。マイナス方向は左向きでしたね。それが逆になると?
右向き! ということは、右に3進むから……0ですか?
正解です。
-3-(-3)=-3+3=0
マイナスの数を引くと、結果的に足し算になるんですね。
「3脚足りない」を取り消したら、ちょうどになる。そう考えれば当たり前ですね。
マイナス×マイナスがプラスになる理由
さて、本題です。まずは掛け算の準備から。イスは毎日3脚減っています。1日あたり何脚と表せますか?
いいですね。ここでの「減る」は、数直線の左向きのこと。数が小さくなる引き算ではなく、進む向きの話です。 では、このまま何も手を打たないと、4日後は今よりどうなりますか。
(-3)×4=-12 さらに12脚減ります。
今が -8 だから、-8+(-12)=-20
これ、自分が最初に計算した答えと同じですね。会議室がほぼ空っぽになるパターンです。
正の数を掛けるのは、掛けられた数の向きのまま進むこと。左に3ずつ、4回進んだわけですね。では、聞き方を変えます。4日前は?
4日前……。過去だから、時間をさかのぼりますね。時を戻す。
はい。時間をさかのぼることを、-4日と表します。式にすると(-3)×(-4)です。
どう考えたらいいでしょう。「1日に3脚減る」を「4日さかのぼる」と考えると、イスは増えているか、減っているか。
えっと……毎日減ってるんだから、前のほうが多かったはずですよね。だから増えている!
正解だゾーウ。
(-3)×(-4)=+12
4日前は、今より12脚多かったんですね。
なるほど。減っていくものを過去にたどると、増える方向になる。向きがひっくり返ったんですね。
はい。マイナスを掛けることは、向きを逆にすること。「減る方向」の逆は「増える方向」。だからマイナス×マイナスはプラスなんです。
後ろ向きに歩いてる人を逆再生で見たら、前に進んでるように見える、みたいな感じですか。
まさにそれです。逆の逆は、もとに戻る。これがマイナス×マイナス=プラスの正体です。さて、最初に言った「3つとも向き、でも何の向きかが違う」を回収しましょう。
-8+(-3)×(-4)
「-8」は、0から左向きに8つ進んだところ。「-3」は、1日に左へ3つ進むという変化の向き。「-4」は、時間を左へ4つさかのぼるという時間の向き。 3つとも意味は違いますが、どれも「向き」を表しているのは同じなんです。
それぞれ数値の意味は違いますけど、マイナスが「向き」を表していることは同じですね。先輩が「時間をさかのぼるから日数も -4」と言っていた意味がやっとわかりました!
最後にひとつだけ。この式、うっかり左から計算すると答えが変わってしまいます。掛け算が先、でしたね(第14回)。四則演算の順番に注意しましょう。
あぶない、やりかけました。 掛け算が先だから、-8+12=+4。
つまり、基準の24脚より4脚多いから、4日前は28脚あったってことですね!
マイナスの割り算も考え方は同じ!
ついでに、マイナスの数の割り算も確認します。符号のルールは掛け算と同じと考えれば大丈夫です。4日間で12脚減ったとき、1日あたりは?
では、逆に聞きます。1日に3脚減るとして、12脚減らすには何日かかりますか。
その通りです。マイナスで割るのも、掛け算と同じで向きが逆になります。「減る」を「減る」で割ると逆の逆でもとに戻るので、答えはプラス。「4日分」という素直な日数になるんですね。
マイナスって、引き算だけじゃなくて向きだと思うと、ずいぶんスッキリしますね。
ギンギラギンにさりげなくですね。ところで、どうしてイスを減らしすぎたんですかね。
総務部が正負の数の問題を作りたかったんだと思います。
24脚ピッタリに戻れば正負(せいふ)もゼロ、つまりセーフですね。お後がよろしいようで。
ポイント
- マイナスは『引く』という操作だけでなく、その数の向き(0から見て左)も表す
- 0より小さい数を負の数、大きい数を正の数という。0はどちらでもない
- 足し算は足す数の向きに進み、引き算は向きを逆にして進む
- マイナスを掛けたり割ったりすると、向きが逆になる。だから「マイナス×マイナス」「マイナス÷マイナス」は逆の逆でもとに戻り、プラスになる
- 掛け算・割り算は、足し算・引き算より先に計算する
今日の問題をおさらい
Q1.-8+(-3)×(-4)=?
掛け算を先に計算する
(-3)×(-4)=+12
-8+12=+4
答え:+4
Q2.1日に3脚ずつ減るとき、4日後は今より何脚減っているか。
(-3)×4=-12
答え:-12脚(12脚減る)
Q3.(-12)÷(-3)=?
マイナス÷マイナスはプラス
答え:+4