2026年、AI導入で「組織の生産性」が逆に低下する? 生成AI活用の実態について博報堂DYが解説

博報堂DYが生成AI利用者の実態を調査。購買行動の変化、ビジネス利用への影響について語る。

小林 香織

7:05

博報堂DYは2025年11月25日、「AIに関するプレスセミナー」を実施した

「AIエージェント元年」と称される2025年、生成AIの普及はさらに加速した。博報堂DYホールディングスでは、11月25日に「AIに関するプレスセミナー」を実施。自社で実施した「AIと暮らす未来の生活調査 2025」の結果を踏まえ、生活者のAI利用の実態や成果、AIによる購買体験の変化、組織課題などに言及した。AIは生活者にどのような変化をもたらしているのか。

生成AIの利用率は33.6%、ビジネスよりも「プライベート」の利用が多い

“人間中心のAI”を掲げ、AI推進に取り組む博報堂DYホールディングス(以下、博報堂DY)は、2025年9月、全国の15〜69歳の男女を対象に「AIと暮らす未来の生活調査 2025を実施した。

※ 調査は、全国8地区の性年代構成比に合わせて行った事前調査:回答数3万2180サンプルと、本調査:回答数2400サンプルで構成

オープンニングでは、博報堂DY 執行役員 / CAIO、Human-Centered AI Institute代表の森 正弥氏のAIアバターがあいさつした

まず、生成AI(以下、AI)の利用実態から紹介していく。AIの認知率は85.3%で、利用率は33.6%だった。イノベーター理論に照らし合わせると、普及の起点となるキャズム(16%の壁)は十分に超えている状態だ。

利用者を性別で見ると、約6:4で男性が上回った。年代別では20代が最も多いものの、20〜50代まではそれほど差が出なかった。利用者の半数近くが、「ほぼ毎日」または「2〜3日に1回」使用しており、日常にAIが浸透していることがうかがえる。

AIの年代別利用者率を表したグラフ(提供:博報堂DYの資料より、以下同)
AIの利用頻度を表したグラフ

意外だったのは利用目的だ。最も多かったのは「プライベート利用」(約30%)で、「ビジネス利用」は約15%、「学業利用」は約10%だった。

利用目的を深掘りすると、ビジネス、プライベート、学業のすべてで「調べ物をする・情報収集」が1位となった。2位以下はそれぞれ異なるが、ビジネスでは「文章生成」「要約」「アイデア出し」などが上位に。プライベートでは「会話や相談」が上位となり、AIが友人やアドバイザーなどの役割も担っていることがわかった。

AIの利用目的は、1位は「情報収集」で共通、2位以下は異なっていた

一方、AI非利用者が「AIを利用しない理由」では、「利用するきっかけがない」「必要性を感じない」という回答がトップだった。ただし、2位以下には「使い方がわからない」「何ができるのかわからない」といったツールへの疑問が多く見られ、リテラシーの課題が大きいことも示唆された。

AIの潜在利用者・非利用意向者には、リテラシー不足の課題がある

AIで変わる「購買行動」、ただし「購入代行」は難しい

続いては、AI利用者(2200サンプル)、非AI利用者(200サンプル、参考値の確保が目的)に向けて、AI利用の実態をより深堀りした「本調査」の結果を見ていく。

本調査では、AI利用者を中心に利用実態を深掘りしている

AIの信頼度に関する質問では、「信頼している」と回答した人が55.1%と過半数だった。ただし、AIの情報だけで十分ということではなく、「マスメディアやアプリ、SNSなど他の情報も必要」と回答した人が48.4%に上った。この結果は年代別でほぼ差がなく、全年代で「情報収集においてAIだけでは不十分」だと考える人が多かった。

「AIの情報だけでは不十分」と考える人が多い

AIが一定の信頼度を得ているなか、購買体験はどのように変わっていくのか。調査では、情報源の入手ツールは依然「検索」がトップだった。一方、AIが2〜3番手の情報源になっており、消費者の購買体験にAIが大いに影響していると言える。

購買体験における情報収集では、AIが2〜3番手の情報源に

多くの生活者は、利用目的に合わせてSNSとAIを使い分けている。SNSは「気になる商品やサービスを見つける」が強く、AIは「比較検討」や「関連情報の収集」が強かった。「好きなジャンルのコンテンツを楽しむ」は、AIもSNSもどちらも高かった。

さらにAIの活用が進んでいくと、従来の購買体験の流れにあった「興味関心」「比較検討」の要素が省かれるのではないかと、同調査では示されている。

「AIに質問し、回答を得て購入」という購買の流れに変わっていく可能性が示された

興味関心や比較検討にとどまらず、購入(決済)までAIが実行する「買い物代行」も技術的には可能だ。しかし、現状は法律や各ECサイトの規約違反のリスクが非常に高い。Amazon、楽天市場など多くの大手ECサイトは、人間が操作することを前提としており、AIやボットによる自動購入やデータ収集を禁止している。また、法的な観点でもAIが誤動作をした場合の責任問題などは論点になりそうだ。AI利用者の回答においても、「購入は人間がやるべき」と考える割合が高かった。

まさに今、この課題に対して、AmazonとPerplexity(パープレキシティ)が争っている。パープレキシティでは、「AI買い物代行」サービスを自社ユーザーに提供しているが、これに対して、Amazonは「AIの操作であることを隠した点が違法である」として、パープレキシティを提訴した。

AIの買い物代行の普及は、「少なくとも1〜2年以上はかかる」と森氏は見解を述べた

博報堂DYの森氏は、「AI買い物代行が浸透する見通し」を以下のように話した。

購買や取り引きを目的としたAIエージェントの普及には、少なくとも1〜2年以上はかかると思います。特に、一般消費者向けは壁が高い。一方で、B2C領域の購買では浸透していく可能性があります。人間ではない存在の購買を想定していない現行のユーザー利用規約の対応は壁ですが、規約とセキュリティの問題がクリアになれば、普及するかもしれません(森氏)

AIのビジネス利用の実態、課題は「リテラシー不足」

ここからは、ビジネスシーンでのAI利用の実態を掘り下げていく。

本調査では、「AIをビジネスで利用している」と回答した人のうち、約6割が「活用できている」「やや活用できている」と回答した。一方、同僚や職場全体では、その割合が減少した。「自身は一定活用できているが、周囲や職場全体では不十分だ」と考える人が多いということだ。

業務効率化の効果においては、約半数が「5〜20%改善した」と認識している。AIの利用用途における満足度では、「情報収集」「要約」「文章生成」「校正・添削」「アイデア出し」「翻訳」「議事録の作成」「データ分析・予測分析」といった基礎的な単一タスクにおいて高かった。

業務効率につながっているのは、基礎的な単一タスクが多い

AIの利用促進のための課題では、「社員の知識不足」という回答が最多だった。次いで多かったのが、「情報漏えいなどセキュリティやプライバシーの懸念」「社員間でAIに対するリテラシーの差がある」などで、いずれもリテラシーにまつわる内容だった。

ビジネスシーンでのAI利用は「リテラシー問題」がメインとなる

将来、期待する「AIの役割」、より人間に近い存在に

今後、AIはどんな役割を担っていくのか。調査では、AIが「人間に近い存在」に変化していくという期待が示された。

以下は、「現在のAIの存在」と「将来なってほしいAIの存在」を比較したグラフだ。現在は「便利な道具」だと認識する人が43.6%と圧倒的に高いが、将来では32.0%に減少している。一方で、「自分のやりたいことをサポートしてくれる部下」や「人手不足を補ってくれる存在」などは、現在はやや低めだが、将来の回答は増加した。「自分向けのおすすめや疑問を解決してくれるアドバイザー」「悩みを相談できる存在」「遊び相手(友人)」などは、現在と将来で大きな差が出ていなかった。

生活者は、AIにより人間に近い存在を期待している

さらに、AIへの信頼度も利用度も高い「AI推し層」の使い方・態度を分析すると、AIを「相談相手」や「気持ちを共有する相手」と考える傾向が高いことが判明。「人に言えない相談や恋愛相談でもAIであれば、躊躇なくできる」「落ち込んだときやイライラしたとき、寂しいときなどにAIに気持ちを共有する」といった声が聞かれた。

「AIと人間、どちらを主体とするのが好ましいのか」という問いに対しては、すべての層で「人間主体が好ましい」という回答が多かった。ただし、その割合には差があり、AIの非利用者ほど「人間中心のAI」を好ましいと考える傾向があった。ビジネス利用ユーザーとプライベート・学業利用ユーザーの間でも明確な違いがあり、ビジネス利用は「AI主体」をよしとする人が多いのに対し、プライベート・学業利用は「人間主体」のほうが明らかに多かった。

人間を主体としながらAIを活用したい人が多い

2026年は「AIによる組織パフォーマンスの低下」が経営課題に

セミナーでは、「AIにまつわる2026年の見立て」にも言及された。同社の予測によると、AIの先進研究は2026年も過熱するとのこと。AIエージェントの開発や普及、マーケティング分野での活用が期待されるペルソナタイプのデジタルヒューマンの活用、実世界の仕組みを理解して未来予測につなげる「世界モデル」の研究開発などが進んでいくとされる。

2026年はAIエージェントやデジタルヒューマン、世界モデルなどの開発が進むと見込まれる

そして、同時にAIの導入による組織・チームのパフォーマンス低下の課題が深刻化するとの指摘も出た。すでに、AI導入によるパフォーマンス低下の報告が相次いでおり、106件の調査研究の分析から、人間とAIの組み合わせは、平均でパフォーマンスが低下することが判明したそうだ。さらには、AIによって個人の認知能力が低下するという研究報告もあるという。

2026年は、多くの企業でこうした課題が浮き彫りになるでしょう。一方で、例外となるケースも同時に判明していて、チーム内に対象となるタスク・業務の熟練者がいる場合は、パフォーマンスが向上しています(森氏)

「2026年は、AIによるパフォーマンス低下の課題がより増加するだろう」と森氏

また、2025年4月に国際会議のCHI(Computer Human Interaction)で発表されたマイクロソフトとガートナーの研究者による協同研究結果では、AIの使用による個人の認知活動への影響が示された。

調査によれば、AIのアウトプットを使い続けることで、知識労働者の認知活動における努力を全体的に減少させる傾向がある、つまり認知能力の低下につながることがわかった。さらに、AIへの信頼が高いほど認知能力の低下につながりやすいことも判明。その理由として、AIへの信頼が高いほど批判的思考の必要性が低いと認識され、批判的思考に費やす労力も少なくなるためだ。一方で、自身のスキルへの自信が高いほど、批判的思考の実践が多くなるという。

AIを使い続けることで人々の思考の均質化が予想されます。AIによる効率化の追求と同時に、創造性と専門性の拡張も求められます(森氏)

博報堂DYの最新AIソリューションも発表

最後に、博報堂DYの最新AIソリューションが発表された。

1つ目は、マーケティングなどに活用できる「バーチャル生活者」。2つ目は、ブランドコミュニケーションを支援するAIエージェント「Branded AI Agent™」だ。

「バーチャル生活者」は、同社が保有する豊富な生活者データをもとに、AIによって複数の生活者を再現し、いつでも対話できる機能だ。同機能は、博報堂DYの統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM (クリエイティビティ エンジン ブルーム)」(以下 BLOOM)の根幹となる機能として、今後BLOOMのさまざまなプロダクトと連携するという。この11月から、博報堂DYグループの全社員に向けて利用を開始したところだ。

「バーチャル生活者」の利用イメージ

「Branded AI Agent™」は、ブランドの思いや個性を反映したクリエイティブな対話が可能なAIエージェントを生み出し、そのAIエージェントが自発的にコミュニケーションを取る世界観を実現する。

「Branded AI Agent™」で開発された、多様な個性と思いを持ったAIエージェント群「tsubuchigAI(つぶちがい)」

現代は、生活者との接点が多様化・常時接続化しており、また生活者とAIが日々対話するようになった。そんななか、一貫したブランドイメージや体験の維持、ブランドの差別化、生活者との深い関係性の構築が困難になるなどの懸念が顕在化している。Branded AI Agentは、そうした問題へのアプローチとして開発された。博報堂DYでは、同製品を活用した各社への支援を今後展開していく。

写真・資料提供:博報堂DYホールディングス

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