国内消費需要の増大でさらなる中国EC発展を
国内消費需要の増大でさらなる中国EC発展を
ファーストリテイリング社は2011年9月に、中国で展開している82店舗のユニクロを年内に100店舗まで拡大する事業戦略を発表。同社の柳井正会長兼社長はアジア市場を「眠れる金鉱」と評し、現在進出している欧米圏に加え、中国だけでなく、韓国、台湾、ASEAN地域のアジア圏を中心に海外市場に注力していくという。
ユニクロを筆頭に大手企業が中国ECに進出し、現地で売上をあげている。家電ではソニー、スポーツ用品ではMIZUNO、カメラならCANON、お菓子なら不二屋、ベビー用品ならユニチャームだ。
中国GDPの上昇率は2010年第1四半期の11.9%から2011年第3四半期に9.1%と2.8ポイント下降しているものの、あくまでも微減であり安定的な経済成長を続けていると、中国国家統計局は2011年10月中旬に発表している。アジアや欧米の経済学者は、「中国は輸出高が減少しているのに対し、中国国内消費需要が貿易のマイナスを補って余るほどの利益を市場にもたらしていることが現在の成長の要因である
」とみている。国内消費需要の増大で中国EC市場、特に中国で最大のユーザー数を持つタオバオは今後さらなる発展を見せるだろう。
そして、そのなかで「高品質」「ホンモノ」を扱う日本企業の信頼性やブランドは大きな強みとなるのだ。
BtoCで偽物と差別化を
現地で活躍している企業は、中国ECだけでなく実店舗など、リアルとインターネットの総合的な進出事業を展開している。たとえば、アパレル業界を見ると、現地で成功しているOLIVEdesOLIVE(オリーブ・デ・オリーブ)やNICE CLAUP(ナイスクラップ )は、中国で100店舗を展開しながらも、さらにタオバオのBtoCモールでも販売している。
販売業の場合は、多様な販売チャネルを持つなかでも、タオバオBtoCモールへの出店が必須である(その理由は後述)。
タオバオBtoCモールに出店するためには、基本的な3つの条件をクリアしなければならない。
- 現地で登記した法人であること
- 商材が現地で認可され、正規ルートで貿易されたものあること
- 現地でブランドの商標登録がなされていること
また、BtoCモールでは開店時に保証金5万元、運営費は最大6万元が必要となる。しかし、そうした基準をクリアした企業しか出店できないことから、(開店時に大きな費用の発生しないCtoCの場と異なり)開店時から消費者に対して商品に対する信頼度が高く、模倣品と差別化できるというメリットがある。もちろん、プロモーションを実施して他店との差別化を図りながら購買実績を重ね、店舗の信用度を獲得していくことはCtoC出店の場合と変わらない。
進出している日系企業のなかで、実店舗とECを組み合わせる戦略、いわゆる「クリック&モルタル」が普及した背景は、2009年のユニクロの成功が大きく影響している。また、現地に実店舗で出店していた日系アパレルが多店舗化し、各地でローカル化が進んだ。これにより、商品購買層の下地ができあがり、EC参入をスムーズにさせ、リアルとネットの連動販売戦略で売上を伸ばしていったのだ。
やはり出店はタオバオで
2011年の中国BtoCインターネットショップサイト市場の内訳をみると、タオバオのBtoCモール「淘宝網」が48.5%で、次ぐ「京東商城」を30.4ポイント引き離し、圧倒的なシェアを誇っている。
ユーザー数を考慮すると、CtoCと同様に集客やプロモーションの観点からタオバオへの出店が妥当である。さらに、現地の経済成長に伴い高品質で本物のブランドを買える購買層が増加したことから、消費者がCtoCからBtoCに移行する動きが目立っている。ECユーザーは、一度慣れ親しんだ購買システムを好んで利用する傾向が非常に強く、CtoCで80%のシェアを持つタオバオでは、BtoCがさらに拡大する可能性がある。
また、タオバオに出店するメリットに「中国でほぼ唯一の“プラットフォーム式”モールで、店舗の自由度が高い」ということが挙げられる。
この点をもう少し解説しよう。ECの出店形態には、次の2種類が存在する。
プラットフォーム式 ―― 日本の楽天市場のように、サイト内に場所を借りて自社でサイトを構築、販売、商品配送を行う形式。
自社式 ―― サイト側に販売、配送を委託する形式。
「プラットフォーム式」のほうが、手間がかかるように感じてしまうかもしれないが、自社用のサイトを構築することで自社用のデータ収集のシステムを組むことが可能で、効果的なデータベースマーケティングを行うことができる点は大きなメリットだ。
ブランディングで旗艦店(直定店)運営が流行り
現在のように中国進出が盛んになる以前は、外資企業は小売規制がかかっていたため直接商売ができなかった。中国進出の黎明期には、日系企業は、現地の代理店への卸しを通じてビジネスを始めていたものだ。古参の日系企業は、代理店を通じて自社の商品を現地でテストマーケティングし、データ収集することで現在の事業戦略の礎を築いてきた。
現地でビジネスをしている所感としては、今でも、小売や卸しなどのCtoC、BtoCに進出している専売店、専営店(要するに代理店)が売上を伸ばしてきたなかで、自社の商品の売れ行きに市場への手ごたえを感じたメーカーは、旗艦店(直営店)を出し、現地でのブランディングを進める動きが活発になってきていると感じられる。
現地で成功するためには、ECだけでなく実店舗も展開することが必要である。しかし、このコーナーで何度も説明しているように、中国では薄利多売の収益構造が基本となる。そのため日系企業は長期的に利益を回収することが基本となる。ということは参入初期には、実店舗を展開するよりも安価で、現地のデータを確実に収集ができるECから進出することが、ハードルが低く、かつ確実な事業戦略を構築するために最も効果的なのである。
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