企業ホームページ運営の心得

MTとタグ打ちに通じる真理。エクセルは重宝します

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の六十四

オートマティックかマニュアルか

弊社のスタッフが免許を取ったので、練習を兼ねて社用車でお使いを頼みました。1時間ほどして帰ってくると「足がつりそう」とクタクタです。右足は常にかかとを宙に浮かせた「片足上げ」の状態で、アクセルやブレーキはつま先で踏むといいます。1時間も「片足上げ」をすれば足もつります。「昭和時代」では考えられない「片足上げ走法」に「世代差」という文字がポッカリと浮かびました。

インターネット元年から10年以上が過ぎ、ホームページの世界でも「世代差」が目立つようになりました。世代差は進化によるところが大きく悪いことではありません。しかし、一方の「古いもの」のすべてが時代遅れかというとさにあらず。21世紀の制作現場で実務に携わる「兼業Web担当者」に喜ばれる旧世紀の「テク」は意外と多いのです。

地域コンテンツは古典で手軽に

前号からの引き続き「ご近所コンテンツ」は旧世紀の「テク」で量産できます。

まず、ベースとなる「ひな形」を作ります。ひな形をコピーするか「別名保存」でクローン(複製)を作り、それをテキストエディタで開き、地域や公園名を「検索・置換」機能で「置き換え」ます。「写真」も置換します。ポイントは画像ファイル名に規則を持たせることです。前号で紹介した見沼代親水公園なら「minuma_001.jpg」とし「最初の6文字は公園名、以下連番」としておけば、別の公園を作る際は「minuma」の部分を置換すればできあがりです。もちろん、画像の「alt」も置換して微力でもSEO効果を高めます。

そして手を加えるのは「本文」だけとなります。

テーブルや表ならエクセルの出番

ご近所SEOはタイトル、見出し、本文、そしてメタに「名称」を盛り込んでいればOKです。競合の少ない市場ですから「基本」を抑えるだけで効果が期待でき、検索・置換を使うことで半自動的にキーワードを埋め込むことで「うっかり漏れ」がなくなります。そして「手抜き」により浮いた時間で「数」を作れば「ご近所SEO」は加速します。

旧世紀、「エクセル」などの表計算ソフトも活躍しました。

計算書、一覧、名簿など値が変動するコンテンツを手作業で作るのは面倒ですが、エクセルで用意しておけば表計算の要領で速やかに変更できます。HTMLを作る「計算式」を作っておくのです。

専門家の間では「テーブルタグ」を唾棄する論調も見受けますが、計算書や一覧表などは「エクセル+テーブルタグ」がもっとも更新効率が高く、こちらも使わないのはもったいない話です。

一覧表以外にも応用できます。たとえば、ページの「タイトル(title)」「概要(description)」「キーワード(keywords)」といったヘッダー情報はどのページにも必要ですから、それぞれの入力欄とHTMLを出力する計算式を作ります。

AT車とビルダー、MT車とタグ打ち

20世紀の終わり頃、今風に訳すると「ホームページビルダーかタグ打ちか」という論争がSOHO界でありました。タグを覚えなくてよいホームページ作成ソフトが主流となるという主張と、HTMLのタグを打ち込むのが「本筋」だという正論の激突で、世代差による「世代間抗争」です。オートマティック(AT)免許導入時に起きた、AT車の普及に即してAT限定免許をという主張と、「半クラ」もできない人間に免許を取らせるのかという議論と重なります。

ともあれ「商売用」の立場からみれば正解を固定しようという姿勢が間違いです。タグの知識はあるに越したことはありませんし、マニュアル(MT)免許の方が選択肢は広がります。しかし、手段は結果のためにあり、「そのときの正解」を選ぶのがベストです。トラックやタクシーにもAT車両が増えましたし、ワープロが使える社員なら、タグをゼロから学ばせるより「ビルダー」を仕込む方が短期間で戦力となり、猫の手の何倍も働くことでしょう。

どちらかではなく、必要に応じて選択すべきだということです。

グーグルの「検索依存」とタグを覚えないの類似点

ホームページに取り組むならタグを覚えろというのは至極ごもっとも。しかし、丸暗記しなくてもATOKやMS-IMEの「単語登録」を利用すると事足ります。「<a href="">」を「リンク」で、「ブランク」なら「<a href="" target="_blank">」と単語登録してしまうのです。古典中の古典のこの手法は「とっかかり」としては重宝します。しかし、諸刃の剣であることを記しておきます。

これも弊社の話。「出前でも取ろうか」とスタッフに声をかけると「ちょっと待ってください」といいグーグルで検索を始めました。事務所にポスティングされたメニューがあるのでそちらを探す方が早いのではと尋ねると、紙のメニューを置いた場所の記憶は不確かだけど「グーグルなら確実」といいます。実は単語登録という「古典技」も当時からタグを覚えられなくなる危険性のある技として有名でした。変換に頼ることで「綴り」を覚えなくなるのです。

作用があれば反作用があるのは世代を問わない真理です。

片足上げ走法はMTでないから実現

一般的にアクセルはかかとを床に付けて軸にすることで安定し、微妙な速度調整も簡単に行えます。逆にかかとを上げた「片足上げ」での操作は不安定です。

私が免許を取った平成元年(昭和64年と同年)当時、AT限定免許はありませんでした。MT車の運転は、アクセル&ブレーキの右足に、左足の「クラッチ」、左手の「ギアチェンジ」が加わり、常にハンドルを握る右手と、両手両足すべてを動かさなければならないので「片足上げ走法」は不可能です。そこで自然とかかとを付けるようになるのですが、AT限定なら余った左足で体を支えることができます。片足上げ走法の誕生秘話です(片足上げは不安定ですので実際にやらないようにしましょう)。

同じ道路を走れる「免許」の取得に世代差を感じました。善悪や優劣ではなく「差」です。

ホームページビルダーが進化し、CMSやブログが発達した21世紀。しかし、不便だった時代のテク=創意工夫は今でも結構使えます。

前略 安田編集長。Web担当者フォーラムにて連載中の諸先生方の「昔技」を紹介する企画って役立ちませんかね。

♪今回のポイント

古典技は不便な時代の創意工夫。

原理主義ではなく最適解を意識する。

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