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トライベックのMAツール「HIRAMEKI XD」と「Shopify」がAPI連携をスタート

4 years 9ヶ月 ago

デジタルマーケティング支援のトライベックは2月24日、マーケティングオートメーション(MA)ツール「HIRAMEKI XD(ヒラメキクロスディー)」と「Shopify(ショッピファイ)」をAPI連携し、顧客情報や商品情報を自動でインポートするオプション機能の提供を始めたと発表した。

「HIRAMEKI XD」は、リテンション施策やエンゲージメント分析などBtoC-EC領域に特化した「XD.COMMERCE(クロスディーコマース)」、BtoB領域でも活用できる基本機能を搭載した「XD TARGET(クロスディーターゲット)」で構成。目的や用途に応じた企業のOne to Oneマーケティングをサポートしている。

「Shopify」で運営しているECサイトが「HIRAMEKI XD」を活用するためには、会員情報や商品マスターのインポートといった編集・連携作業が必要で、マーケティングやCRM施策をスタートさせるための初期設定などに時間がかかってしまうという課題があった。

連携オプション機能を利用すると、マーケティング担当者やシステム担当者の作業を必要としていた領域での作業負荷を軽減。システム導入に関する費用、マーケティング施策を実施するまでの期間短縮が実現できるという。

デジタルマーケティング支援のトライベックは、マーケティングオートメーション(MA)ツール「HIRAMEKI XD(ヒラメキクロスディー)」と「Shopify(ショッピファイ)」をAPI連携し、顧客情報や商品情報を自動でインポートするオプション機能の提供を始めた
「HIRAMEKI XD」と「Shopify」の連携イメージ

「HIRAMEKI XD」と「Shopify」のAPI連携オプションを利用する企業は、次の3つのデータを指定して連携することができる。

  • 会員マスター連携
    「Shopify」に登録されている会員情報を日次でMAツールに自動連携
  • 商品マスター連携
    「Shopify」に登録されている商品情報を日次でMAツールに自動連携
  • 購買情報連携
    「Shopify」で作成したサイトで発生する日々の購買履歴情報を日次でMAツールに自動連携
瀧川 正実
瀧川 正実

アスクルが通販売上の一部を東北3県の事業者に出資、持続可能な支援をめざす新たな東日本復興支援

4 years 9ヶ月 ago

アスクルはBtoB通販で展開する特定商品の売り上げの一部を、東日本大震災で被災した岩手県・宮城県・福島県の事業者へ出資に充てる新たな東日本復興支援を始める。

「ASKULサービス」で販売するオリジナルデザイン商品の半年間における売上高の1%を東日本復興支援に回すが、0.5%は対象商品の製造メーカーが寄付金、アスクルは0.5%を出資金に充当する。

売り上げの一部から捻出したアスクルの出資金は、インパクト投資プラットフォーム「セキュリテ」(ミュージックセキュリティーズが運営)を通じ、インパクト投資(社会課題解決をしながら投資のリターンをあげる投資行動)として対象事業者を公募。個人投資家からも出資を募る。

アスクルはBtoB通販で展開する特定商品の売り上げの一部を、東日本大震災で被災した岩手県・宮城県・福島県の事業者へ出資に充てる新たな東日本復興支援を始める
新たな東日本復興支援のスキーム

持続可能な支援をめざすため、寄付に加えインパクト投資での支援も加えた。出資、寄付を通じた支援を事業者に対する新たな復興支援策として展開。これまでアスクルが実施してきた東日本復興支援企画における過去実績から500~700万円(寄付とインパクト投資合計)程度を見込む。

アスクルとミュージックセキュリティーズは、現地の活性化や社会課題解決をめざす事業を支援する。“必要なところに必要な支援”を届けるために、支援先の決定は公募の上、審査を実施。公募期間は2月22日~4月30日。6月30日には支援先を決定し、11月上旬にも支援を実施する。

支援対象事業は以下の通り。

  • 岩手県・宮城県・福島県で実施する事業であること
  • 地域活性化に貢献する事業や社会課題の解決に資する事業であること
  • 資金調達の募集開始以降に資金を使用する事業であること
  • 支援事業による地域や社会課題への成果についてモニタリングを実施し、出資者への報告を実施すること

「セキュリテ」は1口数万円の少額から出資できるインパクト投資プラットフォーム。経済的なリターンだけではなく、創業や中小企業支援による産業振興・地域創生、インディペンデントな創作活動と研究開発、環境問題の解決、震災からの復興など、地域で抱える社会的な課題に対し、出資を通じて解決しようとする経済的な価値と社会的な価値の両方を追求する新しい投資の仕組み。

アスクルとミュージックセキュリティーズはそれぞれ、東日本大震災発生以降、被災地復興のための支援活動を実施してきた。東日本大震災の発生から間もなく10年が経過する。地域に根差し、これからの東北3県を築いていく役割を担う事業者へ、寄付とインパクト投資による資金の提供を新たに協力して開始することにした。

石居 岳
石居 岳

サイト表示スピードの新指標「コアウェブバイタル」が5月スタート! GDO、ショップジャパン、IDOM、DNPが語るECサイトの対策 | 勝手にスピードテスト Powered by SpeedCurve

4 years 9ヶ月 ago
表示スピード改善の新指標「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」が2021年5月からスタート。3つの新指標の内容やEC事業者が対応すべきこと、表示スピード対策は防衛予算だと考える理由について、ECサイトの表示スピード担当者が解説します

Googleが2020年に発表した表示スピード改善のための新しい指標「コアウェブバイタル」。2021年5月から検索のランキング要因に組み込まれることになり、EC関係者の関心は急激に高まっています。

「コアウェブバイタル」についての解説を踏まえ、表示スピードにおいて「抜群に速い」とされるECサイト、ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)、IDOM、ショップジャパン、大日本印刷(DNP)の担当者4人と「コアウェブバイタルとは何なのか」「どのように取り組んでいるのか」についてディスカッションしました。

■今回の疑問・課題

  • 新しい指標として登場した文字記号は何を意味しているのか?
  • 本当に検索結果の表示順位に影響するのか?
  • 様子見は許される? 今すぐに対応すべき?
  • コアウェブバイタルの情報感度が高いEC事業者の担当者は何を考え、どう対応しているのか?

ディスカッションに参加したのは種村和豊氏(GDO シニアプロダクトマネージャー)、村田創氏(IDOM Webマスター)、福崎真生氏(ショップジャパン)、近藤洋志氏(大日本印刷・honto)と、筆者の占部雅一(ドーモ)の5人。事業会社の4人は自負を持って表示スピード対策に取り組んでいるECサイトの表示スピード担当者です。

「コアウェブバイタル」とは何か?

「コアウェブバイタル」のSEOランクへの対応というGoogleの計画は、2018年7月の「スピードアップデート」以来、3年ぶりの大きな動きとなりそうです。今までの指標だった「Backend」「Startrender」「SpeedIndex」から、新たな3つの指標「LCP(Largest Contentful Paint)」「FID(First Input Delay)」「CLS(Cumulative Layout Shift)」に変わります。

また、今回のSEOランクの対象はスマートフォンで、デスクトップサイトは対象外となっています。ほぼモバイルにシフトしているため、妥当だと感じます。

新たな指標を設けた背景には、GoogleがWebサイトに対して「速いだけではなく、本質的に使いやすいUX」を追求したいという意図があるようです。

Google コアウェブバイタル 表示スピード SEOランク ドーモ 新しい指標 LCP FID CLS
3つの新指標「LCP(Largest Contentful Paint)」「FID(First Input Delay)」「CLS(Cumulative Layout Shift)」
  • LCP(Largest Contentful Paint):メイン画像の表示の速さ
  • FID(First Input Delay):最初にアクションを起こしてから、どれくらい反応が鈍いのか?
  • CLS(Cumulative Layout Shift):レイアウトのずれ、特に高さ

バイタル(Vitals)の意味は「重要なもの、本質的なもの」を表します。つまり「Webの本質とは何か?」という意味です。

「わかりやすいサイト」がGoogleとユーザーに必要

IDOM 村田創氏(以下、村田):「コアウェブバイタル」が登場した意味を考えていましたが、3つの新指標を向上させるということは、Googleとユーザーにとって、アクセシビリティと同じくらい重要なんですよね。

それは、「Webサイトが秩序のある動きでなければ、検索を利用したときの体験が良くない」からです。つまり、GoogleのBotがWebを読みに行ったときに、さらにわかりやすいサイトが必要なんですよ。Googleもユーザーも求める方向は同じです。

ドーモ 占部雅一氏(以下、占部):LCP(Largest Contentful Paint)は、メイン画像の表示の速さ。たとえばECだとイチオシの商品を売りたいので、画像を大きく表示します。しかし、メイン画像が遅いと売り上げにも直結しそうなので、早く表示されないといけません。

ショップジャパン 福崎真生氏(以下、福崎):FID(First Input Delay)は初回入力の遅延の具合。つまりスマホのボタンを押した後に、どれくらいで反応できるかです。

今回、インタラクティブ性の対策の対象がTTI(Time To Interactive、インタラクティブになるまでの時間)からFIDになりました。これまでは、TTIを改善するならページロードにおける最後のロングタスク(初期段階に起こる重たい処理)から潰していけば良かった。さらに言うなら、ロングタスクに手を加えなくても結果としてTTIが改善することがあったんです。

しかし、FIDになると「ロングタスクの総時間」となります。そのため、部分的な対策や小手先の対策ではなく、しっかり全体最適を行う必要があります

ゴルフダイジェスト・オンライン 種村和豊氏(以下、種村):サイト運用者側からすると、「Page Speed Insight」のスコア評価と比べて、よりごまかしが効かない指標になったと感じています。操作性を表す指標として、前よりも厳密に対応しないといけない。

ユーザーと向き合って対応しなければならない

大日本印刷 近藤洋志氏(以下、近藤):もう1つの見方ですが、昔は他社と比べて速く表示させることに注力してきました。しかし、今回のアップデートで「使ってくれるユーザーに対してどう対応させるか?」ということを、ユーザーと向き合って対応しなければならないユーザーの実体験の性能が、今回の指標に組み込まれていると考えます。

占部「Page Speed Insight」「サーチコンソール」「Lighthouse」などの表示スピード計測ツールは、「コアウェブバイタル」という指標を入れてきています。これだけでもGoogleの本気度の高さがわかります。

村田「無視するな」というシグナルなんでしょう。TTIやFIDは「Lignthouse」でも測れる。ただ、その評価値ですがLCPは25点、CLSは5点、FIDには点数がない!

検索エンジンは、クローラーがWebサイトを回遊し、インデックスでランクづけします。クローラーがアクセスした時に、レンダリングの性能が悪いサイトページは「次回以降レンダリングしなくて良い」と判断されてしまいます。その先のインデックス化まで辿り着けなくなるわけです。

Google コアウェブバイタル 表示スピード SEOランク ドーモ 新しい指標 LCP FID CLS
写真左上から時計回りに、種村和豊氏(ゴルフダイジェスト・オンライン シニアプロダクトマネージャー)、村田創氏(IDOM Webマスター)、福崎真生氏(ショップジャパン)、近藤洋志氏(大日本印刷 ・honto)

CLSは「高さのズレ」を表す

占部:CLS(Cumulative Layout Shift)のレイアウトずれ、がやや難解ですよね。直訳すると「累積レイアウトシフト」ですが、よくわかりません(笑)

村田:レンダリングするときに高さが変わることですね。たとえば、スマホでボタンを押したつもりがもっと上を押していたという経験です。わかりにくいけど、たくさん発生している。

種村:CLSは操作性と言って良いのでしょうか。僕なりに解釈してみましたが、CLSはスコアリングではないと思っています。

Google コアウェブバイタル 表示スピード SEOランク ドーモ 新しい指標 LCP FID CLS
カルーセルでのCLS可視化観点の例(Amazon)
JS(JavaScript)によるカルーセル実装の場合、ユーザ操作性は良好だが、ページで「要素が変更する範囲が大きい」のでCLSスコア影響は悪い。CSSの要素変更で対応するアニメーションだとレイアウトシフトは最小限と判断、スコア低下を回避できる

計測ツール「SpeedCurve」を使った比較ですが、左のサイトはJS(JavaScript)を使ったカルーセル(画像などのコンテンツを横にスライドさせる表示方法)の場合です。レイアウトのズレが大きいので、警告メッセージが出ます。

しかし、右のサイトは同じカルーセルですが、CSSで書き換えた場合は警告が出ません。カルーセルはユーザーにとって操作性は良さそうですが、Googleは「レイアウトのズレという観点では良くない」と考えているようですね。

村田:IDOMは2020年末から外し始めました。とにかくJSに頼ると良くないです。

福崎:「ショップジャパン」のサイトはレスポンシブWebデザインですから、CLSの対策をする上でどうしても非効率になってしまうところがあります。また、JSもところどころネックになっています。

「FlexSlider」などのライブラリー(汎用的な複数のプログラムを1つにまとめ、他のプログラムから利用できるようにしたもの)で作ったパーツなどは、スクリプトの処理自体に非常に時間がかかっています。もちろんCLSにも影響があり、困りました。

種村:これもロングタスクと関わってきますが、クライアント側に処理させているから負荷が大きい。不動産サイトなどは、特にスマホでやり過ぎている状況です。

占部:そんなに多いのですか?

村田:CLSは頻繁に起こっています。アドセンスがわかりやすいですが、最初に表示されて後から平気で下がる。これが発生するのは広告ですね。元々広告を表示する想定になっていないページだと、後から穴を空けることになるから確実にずれます。

占部:解決方法はあるのでしょうか?

村田:手っ取り早いずるですが、下駄を履かせること。つまり、テンプレートで高さを固定してしまうのです。実装すると、結局後から表示されるけど高さは変わらない。

近藤:私もやってみましたが、スコアは良くなりますね。領域を明示的に確保してCLSスコアは良好になります。

レスポンシブWebデザインは圧倒的に不利になる

種村:コアウェブバイタルは、レスポンシブWebデザインにとって圧倒的に不利です。CLS対策をレスポンシブで実際にやるとなると、高さの固定は実装ハードルが高い。たとえば、母数の多いサファリだけ固定して他のブラウザは放置する、どこかのデバイスを諦めるなど、何かを諦めないといけない。

占部:大規模なECならともかく、SMB(Small and Medium Business、中小企業のこと)では多くのサイトがレスポンシブWebデザインで作られています。また、ECカートも標準でレスポンシブWebデザインで対応しているところが多いですよね。SalesForceの「コマースクラウド」もレスポンシブです。

種村:レイアウトシフトが起こるカートがたくさんありますね。だから、SalesForceはSPA(Single page application)化しようとスマートデバイス最適化サービスのMobifyを買収したのかもしれません。

占部:Googleは、かつてレスポンシブWebデザインをモバイルファーストの推奨Webとしていましたが、今になって駄目だと言っている。

福崎:「ショップジャパン」のサイトはレスポンシブWebデザインなんです。2018年ごろはまだ推奨ムードがありましたが、今になっては制約が多いやり方になってしまった。

占部:レスポンシブWebデザインは元々スピードに課題があったし、今回はスコアが悪くなる。Googleは、レスポンシブWebデザインを完全に葬ろうとしているのでしょうか?

村田:そこでAMP(Accelerated Mobile Pages)です。

種村:モバイルシフトはほぼ完了しているから、レスポンシブWebデザインの役目は終わりつつある。今後、大規模ECサイトはセパレート、もしくはSPA化です。

占部:もし、レスポンシブWebデザインのサイトのSEOランクが大幅に下がってくると、多くのサイトは大変ですね。

カルーセルは効果ある? 見た目だけのギミック?

占部:少し話がそれますが、JSで動くカルーセルは効果があるからやっているのか、それとも見栄えが良いからやっているのか、どちらなんでしょう?

種村:日本のEC、Webサイトはカルーセルが多い印象です。海外のEC、Webサイトを調べた限りではカルーセルがそこまで多用されている印象がなくて、日本の慣習なんでしょうかね。

福崎:「ショップジャパン」のサイトはA/Bテストをたくさん行い、効果があるところはカルーセルにしています。ただし、CSSでできるシンプルなデザインのカルーセルにするなど、実装の仕方は工夫しないと、と思ってます。

近藤:DNPも効果があった場所は採用しています。コンバージョンが取れているところには入れていますから、やはり使い分けです。

村田:ライブラリーはたくさんあるし、JS以外の方法でもやり方はありますよ。しかし、エンジニアは新しいやり方にチャレンジしようとしない、これが問題。

種村:8~9割のサイトは少し古いJSライブラリー、JQueryなどを多く作っているのではないでしょうか。

CLS的には、実際にどうなるか見てみたい。ただ、「JSの処理時間をクライアントブラウザ側で増やすことは、CPU処理速度の点でも不利なのは間違いないので、マイナス要素はあってもプラスはない」。これは断言できると考えています。

5月までに対策を間に合わせて、様子をみたい

占部:コアウェブバイタルの対応状況を教えてください。コアウェブバイタルのアラートはどんどん迫っている感じがしますが、対策はどの程度まで進んでいますか?

近藤:今はCLSがほとんど真っ赤(不良)なので、ここを改善する予定です。2020年末に一部対応して効果が見込めたので、ステップをつなぎながら対応していく予定。クローラーに読み込まれるのに1か月かかるので、4月中には終わらせたい。

福崎:2020年度の下期から対策を始めたばかりですが、ほぼクリアしている項目もあります。まずは、3項目すべてにおいてオレンジ(改善が必要)にするよう改善に努めています。

LCPはほぼクリアしていますが、CLSは赤、FIDは赤が多いので対策を進めています。

Google コアウェブバイタル 表示スピード SEOランク ドーモ 新しい指標 LCP FID CLS
「LCP(Largest Contentful Paint)」「FID(First Input Delay)」「CLS(Cumulative Layout Shift)」の合格基準

村田:IDOMは常に表示スピード改善を行い続けています。コアウェブバイタルへの特化は2020年秋から始めています。少なくとも各指標の赤を減らす、ライバルよりも赤を減らすことです。

種村:(IDOMの)「ガリバー」のサイトは、こちらが見なくてもライバル企業がしっかりモニタリングしていますよ(笑)。だからこそ、赤の放置はない。対策の目安としては、落としどころはオレンジで赤は駄目です

表示スピード改善は、防衛予算として組むべし!

占部:5月にどれだけ変化が訪れると予想していますか? 今までのアップデートのようにじわりと始まって、どんどんアクセルを踏んで来ると思えます。

福崎同じくらいの評価のサイトがあった場合のタイブレーカーとして機能するなら、すぐに大がかりな影響は出てこないと思います。

むしろ危惧しているのはその先で、SEOロジックだけでなくブラウザやSERP(Search Engine Result Page)のアップデートを加えた一連の流れとして表示スピード改善を迫られる可能性が高いと考えています。

近藤:今回のアップデートのアナウンスは、早い段階で新指標や実施時期などの情報公開がしっかりありました。今までのアップデートと同じか、それ以上だと考えています。

そのため、様子見の部分もありますが、自社サイトにネガティブ要素として捉えられるものはなくしたい。

村田:僕は「ランクに影響しないわけがない」と考えています。

タイブレーカーの話がありましたが、我々は同じレベルのライバルと戦っていて、その相手が何もしないわけがない。プラスで考えるのではなく、アルゴリズム対応は、対応しなければ下がるだけと考えています。だから表示スピード改善の予算は、防衛予算としてしっかり取るべきと考えています。

占部:ライバルが対策することを想定して、ライバル以上の対策を考えるわけですね。コアウェブバイタル対策は、絶対指標へのチャレンジや数値目標ではなく、駆け引きの相対の対策として考えないといけないわけですね。

まとめ

今回のディスカッションで、大手ECサイトの担当者に最前線の対策について貴重な話を聞くことができました。思った以上に真剣に取り組まれているのは、SEOランクに影響が考えられることが1つの理由ですが、それ以上に「サイトを良くしてくいく=UXを良くしていく」ことが、Googleのめざす方向とサイト担当者の理想が同じ方向を向き始めているからだと言えます。

今後は小手先のSEO対策がほぼ消えて、まっとうなサイトをコンテンツ・Webともに作ることが勝負の分かれ目になってくる。コマがまた1つ進んでいることを感じました。

占部 雅一
占部 雅一

スターバックスなどの事例に学ぶ、顧客獲得とリピート化に役立つ4つのマーケティング手法 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

4 years 9ヶ月 ago
ブランドが新しい戦略で新規顧客を引きつけ、その後もリピートしてもらうためにはどうしたらいいのでしょうか? 海外事例からその手法を見ていきます

競争が激化し、どのブランドも新規顧客の獲得に苦戦していますが、顧客の定着化はさらに困難になっています。顧客を惹きつけリピート客になってもらえるような、新たな戦略を立案できる革新的な企業だけが今後も生き残れるでしょう。ブランドが顧客獲得とリピート化においてよりクリエイティブにならざるを得なくなってきている環境下、さまざまなアイディアを実践している事例を見ていきます。

新規顧客獲得に向け、テクノロジーを取り入れる

顧客を獲得し、リピート顧客になってもらうことは、小売業の収益性を高める上で非常に重要です。すべての小売事業者にとって新しい顧客は必要ですが、飽和した市場で新しい顧客を獲得するには創造力が欠かせません

ブランドは毎日、さまざまなマーケティングチャネルを使って顧客にアピールするための新しい方法を試しています。しかし、インバウンドマーケティング&セールスのソフトウェアを提供する「Hubspot」によると消費者の71%はソーシャルネットワーク上のスポンサー広告をもう信用していないそうです。

  • 81%が企業からのアドバイスよりも友人や家族のアドバイスを信頼している
  • 55%が以前と同じように購入先の企業を信用しなくなった
  • 65%が企業のプレスリリースを信用していない
  • 69%が広告を信用しておらず、71%がソーシャルネットワーク上のスポンサー広告を信用していない

つまり、興味喚起できていなければ、お金を無駄にしていることになります。

消費者の目を引く1つの方法は、テクノロジーを取り入れることです。顧客獲得にテクノロジーを取り入れることが、重要なマーケティングトレンドになっており、多くのブランドが最新技術を使い始めています。2021年に役立つ、クリエイティブな顧客獲得と囲い込み戦略を紹介します。

動画マーケティング:ブレンダーD2C「Blendtec」の事例

動画マーケティングは、ここ数年で増加傾向にあります。コンピュータネットワーク機器開発の「Cisco」によると、2022年までに、オンライン動画は消費者のインターネットトラフィックの82%以上を占めるそうです。

動画を適切に利用して新規顧客や売り上げを獲得している企業の1つが、ブレンダーを製造するD2Cブランド「Blendtec」です。このブランドの動画マーケティング戦略は、基本的でありながらも大変クリエイティブです。「Will it Blend?」の動画シリーズを通して、彼らのミキサーがどれほど効果的かを消費者に知らせています。

ブレンダーを製造するD2Cブランド「Blendtec」のサイトトップページ
ブレンダーを製造するD2Cブランド「Blendtec」のサイトトップページ(画像:サイトよりキャプチャ)

クルマの鍵や携帯電話など丈夫なモノも混ざるかどうか? つまり、ブレンダーがそれらを破壊できるかどうかも実験しています。Blendtecは2006年からこの動画施策を行っていますが、このマーケティング戦略は今でも効果的です。彼らのアプローチはシンプルで、商品に関するストーリーを伝えることでエンゲージメントを高める、というものです。動画は、より良いストーリーを伝えるのに役立ちます。

「Will it Blend?」の動画シリーズ。クルマのカギを使った実演動画

消費者のトレンドを鑑みると、動画マーケティングの重要性は、今後数年間でより重要になるでしょう。動画コンテンツは魅力的で消費しやすく、より多くの顧客を引き付けることができます。

紹介プログラム:グループ注文の「Ritual」のサービス例

紹介プログラムはコストを低く抑えられ、質の高い顧客につなげるための、ベストな顧客獲得戦略の1つです。消費者は、多くの企業が使用しているスポンサー広告に辟易しています。研究によると、消費者の92%は知人・友人からの紹介を信頼しています。興味深いことに、企業の新しい取引の65%は紹介によるものです。

特に2021年は、より多くのブランドが有料広告にお金をつぎ込むようになるため、どの企業も顧客獲得により真剣に取り組む必要があります。

「Ritual」は、ユーザーが友人や同僚のためにグループ注文をすることができる紹介プログラムです。ユーザーは、アプリを使って注文をするたびにポイントを獲得できます。これらのポイントは、地元のレストランで1ドルランチなどに交換可能です。そして紹介するたびに、ユーザーは1000ポイントを獲得できます。

「RItual」のサービス内容
「RItual」のサービス内容(画像:サイトからキャプチャ)

「Ritual」のプログラムを魅力的にしているのは、顧客の利便性に配慮していることです。オフィスやコワーキングスペースにいる人にとっては特に、グループ注文機能が大変便利です。

顧客の定着化:シニア向けD2Cブランド「Because Market」の事例

既存顧客を維持することが、ビジネスの要です。顧客の定着化は、ビジネスにより多くのお金と安定をもたらします。現代の消費者はとても洗練されているので、企業はクリエイティブでなければなりません。

「Because Market」は、尿漏れやその他特殊なニーズを持つ高齢者の支援に焦点を当てたD2Cブランドです。「Because Market」の特筆すべきポイントは、顧客が購入プロセスで直面するストレスを軽減したことです。

「Because Market」のサイトトップページ
「Because Market」のサイトトップページ(画像:サイトよりキャプチャ)

彼らは、最も繊細な顧客のニーズもキャッチするため、機械学習アルゴリズムに人的サポートを加えた、“ソーシャルでインテリジェントな”カスタマーサービスを構築しました。通常、小売事業者は繊細で重要な情報を、日常的なカスタマーサービス業務の中で忘れてしまいます。「Because Market」はデータから読み取れる、それらの貴重な顧客ニーズを基にして商品を設計しているのです。

顧客は、自宅にいながらにして商品を選ぶことができます。そして、「Because Market」が膨大な数の商品を、目立たないように届けてくれます。少額の手数料は発生しますが、顧客は複数の商品やサイズを試してみて、最適なモノを選ぶことができます。

このシンプルな戦略により、「Because Market」は2017年の創業以来、20万人の顧客に8,000万点以上の商品を販売しています。

データに基づいたロイヤルティプログラム:スターバックスの事例

ロイヤリティプログラムは、顧客維持のための最も確実な方法の1つです。研究によると、強力なロイヤルティプログラムを導入している企業は競合他社の2.5倍のスピードで収益を伸ばし、株主に100%から400%の高いリターンをもたらしていることがわかっています。

ロイヤルティプログラムをさらに効果的にするためには、データを活用する必要があります。消費者データを利用することで、顧客にパーソナライズされた体験を提供することができるのです。

「STARBUCKS」のリワードプログラムは、売り上げの40%を占めていると言われていますが、その仕組みは以下の通りです。顧客は、1ドルごとに2つの星を獲得。25ポイントに到達すると、お好みの特典を受け取ることができます。

「STARBUCKS」のリワードプログラム案内ページ
「STARBUCKS」のリワードプログラム案内ページ(画像:サイトよりキャプチャ)

「STARBUCKS」は、顧客の誕生日にはパーソナライズされたメッセージを送り、購入したばかりの商品と似たような商品もおススメします。また、モバイルアプリを使って簡単に特典を交換できるようにしています。

◇   ◇   ◇

2021年以降は既成概念にとらわれず、顧客を第一に考えて戦略を展開するブランドには、良い結果が待っていることでしょう。ご存じの通り、顧客を引き付けることと、顧客に定着してもらうための施策は別物です。

1つの戦略だけでは十分ではありません。現代の消費者は、自分たちのペインポイントを解決するための完成された商品、優れたショッピング体験、そして使い続けるためのインセンティブを求めています。簡単ではありませんが、それらに取り組めばEC業界で勝つことは可能です。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

Digital Commerce 360
Digital Commerce 360

グーグル、IDFAの使用を中止へ

4 years 9ヶ月 ago

アップル「iOS 14」のポリシー変更に対応して、グーグルは広告識別子(IDFA)を取得しない予定。フェイスブックとは対照的。

Preparing our partners for Apple's iOS 14 policy updates
https://blog.google/products/ads-commerce/preparing-developers-and-advertisers-for-policy-updates/

Google、一部の自社アプリでは「iOS版アプリでのトラッキング許可画面は表示しない」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2101/28/news103.html

noreply@blogger.com (Kenji)

「カラーミーショップ」で簡単にライブコマースが行える「ライコマ for カラーミーショップ」提供開始

4 years 9ヶ月 ago

月額制ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」のGMOペパボとThe Unit、Liver Bankの3社は、2月17日から「カラミーショップ」利用店舗用アプリケーションプラットフォーム「カラーミーショップ アプリストア」にて、ライブコマースパッケージ「ライコマ for カラーミーショップ」の提供を開始した。

「ライコマ for カラーミーショップ」とは

The UnitとLiver Bankが共同で提供するライブコマースパッケージ「ライコマ」を「カラーミーショップ」利用店舗向けに提供するアプリ。

The Unitがツールの提供と企画・配信などを行い、Liver Bankが運営する育成型ライバープロダクション「pino live」に登録しているライバーやインフルエンサー、タレントなどをキャスティングする。

ライブコマースに必要な機能をパッケージ化しているため、ライブ配信に詳しくない、企画経験がない店舗でも簡単にライブコマースを行うことができ、集客力や売り上げ向上を図ることができるという。

GMOペパボ カラーミーショップ ライブコマース ライコマ for カラーミーショップ The Unit Liver Bank
「ライコマ for カラーミーショップ」の提供を開始

同アプリ導入で利用できる主な内容は下記の通り。

  • 運用中のカートとの連携
  • ライブコマース配信画面上でカートへの商品追加
  • リアルタイムでのチャット機能
  • 配信画面へのポップアップや通知の表示
  • いいね投稿機能
  • 視聴者の行動データ収集

利用金額は月額3万3000円(税込)で、「視聴人数×平均視聴時間(分)×1.5円」の従量課金が発生。また、動画内容の企画提案、インフルエンサーやタレントのキャステイング、PR・広告戦略を利用する場合は別途料金が発生する。

藤田遥
藤田遥

特定のECサイトで買い物すると最大15%の現金を還元する「C」とは? レシート買取サービスのWEDが手がける新サービス

4 years 9ヶ月 ago

レシート買取アプリ「ONE」を提供するWEDは2月17日から、特定のECサイトで買い物すると購入額の最大15%を現金で還元する買い物サービス「C」(シー)を開始した。

「C」と提携する買い物サイトで商品を購入した場合、購入商品価格に対して最低で2%、最大で15%を現金で還元する。

「ファッション」「お出かけ」「ギフト」「グルメ」「家具/家電」の5つのカテゴリーで31のブランドと提携(2021年2月10日時点)。「宅麺」「紀文」「cake.jp」「小僧寿し」「ANAP」「L'OCCITANE」「アルペン」「スーパースポーツゼビオ」「Combi」などが「C」に参加している。

レシート買取アプリ「ONE」を提供するWEDは2月17日から、特定のECサイトで買い物すると購入額の最大15%を現金で還元する買い物サービス「C」(シー)を開始
「C」(シー)のサービス内容

消費者は「C」に電話番号を登録、「C」経由で提携サイトに移動し商品を購入すると、現金を還元するアフィリエイトの仕組みを採用している。自動的にサービス上でポイントではなく、現金を還元する。サービスの利用や出金などにかかる手数料は無料。会員制サービスだが、会員費用などは発生しない。

サービス利用で現金がたまっていく仕組みは、WEDが提供するレシート買い取りアプリ「ONE」の系譜を継ぐものになる。「ONE」は2018年6月にサービスを開始。アプリ上のカメラでレシートを撮影すると、それをWEDが最大10円で買い取っている。

レシート以外の画像買い取り、「ONE」上の残高を使って商品の引き換えチケットと交換できる「ONE TICKET」などの機能を追加。2020年11月にはアプリインストール数が100万件を突破した。

レシート買取アプリ「ONE」を提供するWEDは2月17日から、特定のECサイトで買い物すると購入額の最大15%を現金で還元する買い物サービス「C」(シー)を開始
100万DLを超えた「ONE」

2020年12月には、ECアプリでの買い物時に発行される領収書データを買い取るサービスもスタート。ショッピングアプリ、デリバリーアプリで注文した領収書や購入明細画面のスクリーンショットを、1枚につき最大10円で買い取っている。対象は、ショッピングアプリが「Amazon」「楽天」「ZOZOTOWN」。デリバリーアプリが「Uber Eats」「出前館」「Wolt」「Chompy」「menu」。

石居 岳
石居 岳

デジタルシフトで買い物行動はどう変わる? 6つのトレンド予測と音声コマースが加速させる非接触購買の未来 | 顧客時間が見たCES & NRFレポート2021

4 years 9ヶ月 ago
顧客時間のスタッフそれぞれの視点で紹介する2021年の「CES & NRFレポート」。第1回は、チーフプランナー 風間公太氏による考察

この1年で我々を取り巻く生活環境は、デジタルへと大きくシフトした。そのことは当然ながら、顧客と企業がつながる「場」にも変化をもたらしている。緩やかに進んできた業種を問わないデジタルトランスフォーメーション(DX)、デジタルシフトはこの流れを急激かつ不可逆的に推し進めることになった。コロナ禍がもたらした環境変化が次の時代のビジネスやお客さまとのつながりに、どのような変革をもたらすだろうか。オンラインで行われた世界最大のテクノロジー展示会「CES」のセッションから、「環境変化が買い物行動に何をもたらしているのか」を有識者たちからの指針と合わせて考察する。

コロナ影響が顕著なDigital Health領域の拡大

2021年のCESを俯瞰する上で重要なキーワードが、主催団体であるConsumer Technology Association (CTA)が発表した6つのトレンドだ。

Consumer Technology Association (CTA)が発表した6つのトレンド
Consumer Technology Association (CTA)が発表した6つのトレンド(画像:「CES 2021 Tech-Trends Briefing」よりキャプチャ)

最初に「Digital Health」が並んでいることが2021年を象徴している。体調管理関連のヘルステックだけでなく、メンタルヘルス領域も含めて多くの企業が出展。また関連セッションも多数用意された。その状況はコロナ禍の世相を映し出している。

自動運転技術などの「Vehicle Technology」、都市機能のDXともいえる「Smart Cities」などはCESではお馴染みのキーワード。しかし、例年のような無人運転の技術向上のアピールよりも、電気自動車の活用や物流への配慮など、SDGs文脈とも言える環境への対応を、ゼネラルモーターズ(General Motors)などの企業が伝えていたことが印象的だった。

ここからは、筆者が所属する顧客時間の専門領域の1つとも呼べる、小売りや顧客行動の観点でCESを紐解いていきたい。

買物意識変化の理解と、迫られるリアル店舗の環境変化対応

アリババグループのトニー・シャン氏(Tmall Globalの米国事業責任者)らが登壇したセッション「Retail Trends: The New Shopper(リテールトレンド:消費行動の新潮流)」では、リアル店舗における健康関連のテナント需要の拡大、モノづくりの過程でこれまで以上にサスティナビリティの取り組みが欠かせない潮流になることなどに言及。また、環境や買い物行動の変化の視点で6つのトレンド予想が示された。

「Retail Trends: The New Shopper」の冒頭で紹介された2021年の6トレンド
「Retail Trends: The New Shopper」の冒頭で紹介された2021年の6トレンド(画像:「Retail Trends: The New Shopper」よりキャプチャ)

上記の日本語訳は以下の通り。

  1. 消費者のコスト意識が変化する
  2. 新しい技術が店舗やモールを“再構築”する
  3. 体験に寄り添ったオンラインフォーマットが小売業の成功のカギを握る
  4. 良いビジネスを生み出すのは、良い行いに他ならない
  5. 小売事業者は顧客との新たな取引方法を模索する
  6. 不確実性の高い世界では、柔軟でしなやかな臨機応変型のサプライチェーンが重要な資産となる

コロナウイルスは、顧客の買物行動にも大きな影響をもたらしている。2020年に顧客時間が三井住友カードと共同実施した買物行動/意識変化の調査(三井住友カードが保有するキャッシュレスデータの分析や顧客インタビューなどを組み合わせた調査)からも、買い物に対する価値観の変化やオンラインシフトといった傾向は、世代を問わず如実に表れた。前述の6大トレンドは、このような変化が世界規模での事象であることを示している。

セッション「Retail Trends: The New Shopper」のようす
セッション「Retail Trends: The New Shopper」のようす
(画像:「Retail Trends: The New Shopper」よりキャプチャ)

リアル店舗を有する小売業からは、カーブサイドピックアップ(車中受け取り)や、BOPIS(Buy Online Pick up In Store/オンラインで購入し、店頭で受け取る)への迅速な対応がコロナ前後のビジネスの明暗を分けたと繰り返し強調されたことも、2021年を象徴していた。

小売りの新たな活路となる「Contactless Shopping」

続いて、「Contactless Shopping(非接触購買)」をテーマにした「Retail's New Look – Shopper's Little Helpers(リテールの新しい姿―買い物客の“お手伝いさん”)」のセッション内容を紹介する。

セッション「Retail's New Look–Shopper's Little Helpers」のようす
セッション「Retail's New Look–Shopper's Little Helpers」のようす(画像:「Retail's New Look–Shopper's Little Helpers」よりキャプチャ)

現在、小売業にとっての「Contactless」は、決済の“非接触”に留まらず、店舗内でのスタッフと顧客、顧客同士の非接触など、物理的な人と人との接近・接触までも考慮せざるを得ない状況になっている。

こういった状況下で、決済関連のContactlessサービスも進化を遂げている。セッションに登壇したOV Loop, Inc.のウィル・グレイリンCEOは、自社プロダクトの「OV Loop」を紹介。専用のモバイルアプリやBluetooth内蔵デバイスに、クレジットカードや銀行口座をひも付けることで、非接触決済を安全・迅速に実現するテクノロジーとなっている。

「OV Loop」
「OV Loop」(画像:CES2021「Retail's New Look–Shopper's Little Helpers」セッションよりキャプチャ)

グレイリン氏は、顧客が複数のクレジットカードを持ち歩く必要が無い利便性の高さ、非接触であることからスキミング被害を受けにくい安全性について説明。特に、物理カードでのやり取りが多い小売りや飲食店でのクレジットカード決済の現場でニーズがあると語った。

また、決済大手VISAとも共同で、人と人の非接触を考慮したサービスを提供。同サービスは、決済ターミナル端末を使わず、スマホとスマホ、スマホとクレジットカード、KIOSK端末とクレジットカードなどの組み合わせで非接触決済を実現するというものだ。

音声コマース市場、2022年までに40億ドルへ

小売りの未来が垣間見えるContactless Shopping関連の展示やセッションのなかで、筆者がもっとも注目したのが、Voice Commerce(音声コマース)関連のサービスだ。

音声コマースに関するセッション「The Future of Contactless Shopping」のようす
音声コマースに関するセッション「The Future of Contactless Shopping」のようす(画像:「The Future of Contactless Shopping」よりキャプチャ)

「Alexa」や「OK Google」と呼びかけて始めるVoice Commerceは、日本国内ではまだ普及しているとは言い難いが、AIスピーカーが出始めた当初と比較すれば珍しい光景ではなくなりつつある。対してVoice Commerceの市場が拡大しているアメリカでは、「2022年には40億ドルまでに拡大する」と、音声インターフェイスを提供する「Jetson AI」のCEOで、セッション「The Future of Contactless Shopping」(非接触購買の未来)に登壇したピーター・ペン氏が予測を示した。

セッションに登壇した「Jetson AI」は、ブランドの規模感にかかわらず、会話インターフェースを通してサービスや商品を売ることができる「voice- first」マーケットプレイスを提供
セッションに登壇した「Jetson AI」は、ブランドの規模感にかかわらず、会話インターフェースを通してサービスや商品を売ることができる「voice- first」マーケットプレイスを提供(画像:「The Future of Contactless Shopping」よりキャプチャ)

ここ最近話題の音声版Twitterとも呼ばれる「Clubhouse」の盛り上がり方も、Contactlessな買い物体験である声×EC、声×オンラインの親和性の高さを予言するような出来事と言えるかもしれない。

音声コマース成長のカギは、ライブコマースにあり?

ここで改めてリアル店舗での購買行動を想像してみよう。リアル店舗で接客を受け、購買の気持ちが定まった際に、顧客が「これ買います」と意思を言葉で伝えること。これは、店舗における購買行動の中で“自然な行為”だ。

この“購買行動中の自然な行為”であることが、Voice Commerce普及の鍵となる。「これ買います」を、いかにオンラインの購買行動に組み込めるか。筆者はインスタライブに代表される、ライブコマースとの相性の良さの可能性を感じている。

インスタライブは、顧客と企業がリアルタイムで双方向のやり取りを行える場だ。しかし現在のインスタグラムの仕様では、インスタライブで気になった商品を顧客が購入するには、一度インスタグラムを離れ、Webブラウザ(ECサイト)やアプリで購買の操作をしなければならない。

購買までの導線を最適化するようなインスタグラムの仕様変更にも期待したいが、ここにVoice Commerceの機能を導入し、顧客による「これ買います」のような一言でECサイトのカートボタンが押下されたらどうだろうか。ライブコマースが有する“高い熱量”を保った状態で、顧客を購買に導くことができるかもしれない

このようにContactlessなテクノロジーは、感染拡大に配慮した安心・安全を提供するだけでなく、オンラインでの購買体験を向上させる一面も存在する。原始的かつ身近な「音声」の活用は、デジタルを媒介しながらも顧客との関係性に温もりや手触りを与え、顧客との対話を深める新たな活路になるかもしれない。

◇   ◇  ◇

「最先端技術の祭典」と称され、「未来への先見の明」を体感する場であったCES。2021年は、世界が未曾有の事態と対峙する中、機能性や効率性を追求する“乾いたテクノロジー競争の場”では無く、半強制的な環境変化を強いられている状況下でCESが何を示唆してくれるかは、筆者の参加モチベーションでもあった。そして、Voice Commerceに代表される、“望まずして分断された”企業と顧客との繋がりを補うような体温を感じられるテクノロジー活用の兆しと出合えたことは、CES 2021からの大きな学びであったと言える。

※文中の翻訳は、ネットショップ担当者フォーラム編集部 公文紫都によるものです。

風間公太
風間公太

無計画なカスタマイズはダメ! Shopifyのプロが語る失敗しないカスタマイズ【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

4 years 9ヶ月 ago
ネットショップ担当者が読んでおくべき2021年2月15日〜21日のニュース
ネッ担まとめ

IT全般に言えますが、無計画なカスタマイズは将来の負債になる可能性があります。Shopifyも同じ。簡単にカスタマイズできるからこそ慎重に。

Shopifyのカスタマイズは簡単だけど将来的に足を引っ張ることも

Shopifyテーマのカスタマイズについて 基本的な話 ~ マニアックな話【Shopify エキスパート2社対談 】 | ECのミカタ
https://ecnomikata.com/column/29291/

まとめると、

  • Shopifyでカスタマイズが必要な理由は「何を伝えたいのか」というデザイン面と、「どう行動してほしいのか」という体験面のどちらかを改善したいとき
  • Shopifyはデザインとシステムがきちんと分かれているところが使いやすい。プログラマーであるCEOが作りたいと考えたことが反映されているので、カートシステムの理想的な形がエンジニア視点でも盛り込まれている
  • カスタマイズは容易だが、コードが肥大化して読み込み速度が遅くなる可能性がある。直接コード編集は肥大化を避けられるが専門スキルが必要

有料テーマで構築したものの、その段階で自分たちで手に負えなくなり、構築会社に依頼するということもあると思います。カスタマイズの内容によっては有料テーマをベースにゴリゴリいじるよりも、オリジナルで作り直す方が良かったりもします。
─non-standard world CMO兼アートディレクター 佐藤昭太氏

そのあたりは昔から思う事があります。有料テーマで作成するとURLもそこに依存するので、URL構造が有料テーマに依存することになるじゃないですか?これを別テーマに変えようとするとURLも変わるので、インデックスも変わるんですよね。
─コマースメディア 代表 井澤孝宏氏

何でも自由にカスタマイズできそうなShopify。しかし、何も考えずにカスタマイズしてしまうと後になって痛い目に遭うこともあるようです。基本的には無料のテーマも問題ないので、そこから自分たちのやりたいことに合わせて専門業者を探すのが良さそうです。Shopify自体も進化しますし、アプリも進化していきますので、その変化を追いかける必要もあります。作っただけで終わりではないことを覚えておきましょう。

関連記事

3大モールも成長していますがShopifyはそれ以上の成長率

【Zホールディングス2020年4-12月期】ショッピング取扱高は54%増の約1.1兆円、eコマース取扱高は28%増の2.4兆円 | ネットショップ担当者フォーラム
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楽天の国内EC流通総額は約4.5兆円で、伸び率は約20%増【2020年度の実績まとめ】 | ネットショップ担当者フォーラム
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Amazonの2020年売上は3860億ドルで37%増、日本円で41兆円。直販ECは4割増の1973億ドル、第三者販売は5割増の804億円 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/8420

Shopify、2020年売上高は驚異の「86%増」。ECシェアは米国2位“巨人”アマゾンの4分の1規模に | Business Insider Japan
https://www.businessinsider.jp/post-229914

Strong Consistent GMV Growth

Shopifyの流通取引総額(GMV)。2016年〜2020年通期の推移(左)、右が2020年10月〜12月期(右)

出所:Shopify Investor Deck Q4-2020
https://www.businessinsider.jp/post-229914より編集部でキャプチャ

流通取引総額(GMV)は、2020年通期が前年比「96%増」の1196億ドル(約12兆5600億円)。10~12月だけで見ても、前年同期比「99%増」の411億ドル(約4兆3200億円)。同じ10~12月の楽天の国内EC取扱高は約1兆4100億円、比べると規模感が分かる。

こちらは記事タイトルだけででも状況がわかると思います。既存の巨大モールは20%~40%ほど伸びている中で、Shopifyは売上高が86%増で取扱高が99%増。ECの市場シェアはAmazonに次いで2位で8.6%となっています。関連記事にあるようにAmazonも自社ECサイト構築サービスを買収していますので、AmazonとShopifyの競争はますます激化しそうです。

関連記事
  • Amazon、自社ECサイト支援のSelzを買収と報道 ブランドのオムニ化やマーケティングまで支援する狙いか | 日本ネット経済新聞|新聞×ウェブでEC&流通のデジタル化をリード
    https://netkeizai.com/articles/detail/3039

巨大モールへの規制は強まる流れ

マゾンの敗訴確定<景表法処分取消訴訟>「場の提供者」の表示責任で初判断 | 通販新聞社
https://www.tsuhanshimbun.com/products/article_detail.php?product_id=5662

まとめると、

  • 東京高裁は不当な二重価格表示を行った責任はアマゾンにあるとの一審判決を支持した。アマゾンは訴えを取り下げ、判決は確定。2月10日、自社サイトのほか、日刊紙2紙にお詫び社告を掲載した
  • 販売する「クリアホルダー(1000枚入り)」で「参考価格9720円(90%オフ)」など、5商品で実際の販売価格と比較して安いかのように表示。サイトで表示した「参考価格」は、製造業者が社内管理上、便宜的に定めたものであるなど根拠のないものだった
  • 判決は「アマゾンが価格を決め、安さを強調して顧客誘引するために参考価格、割引額、割引率の表示によって大幅に割引された商品と消費者が誤認するならば、不当な表示をした事業者に該当する」と結論づけた

 アマゾンの表示責任を認める判決にある公正取引委員会OBは、「シンプルに考えれば当然の結果。システム構築といってもそのシステムを使い、販売しているのは自分。消費者からしたら当然アマゾンが売っていると見る。売り値をよその事業者に入力させるほうが無責任。責任を持って確認しないといけない」と感想をもらす。

 別の公取OBは、「責任はゼロではなく、プラットフォーマー規制と同じで自律性を持ちなさいということ。チェックの仕組みを作らないと、二重価格表示に限らず、景表法の優良誤認、薬機法、PL法などでも規制の対象になりうる」と指摘する。

こちらでもお伝えしたように巨大ITモールに対する規制はどんどん強まっています。楽天では過去に二重価格問題があって、今ではガイドラインで決められていますので、違反点数を課せられてしまう可能性があります。とはいえ、そもそも消費者が勘違いしやすいような価格表示すること自体が問題なので、売れるからといって悪徳手法を使うのは絶対にやめましょう。

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EC全般

【ニュース】Google、価格表示の正確性を欠いた広告主のGoogle Merchant Centerアカウント停止措置を開始へ | Unyoo.jp
https://unyoo.jp/2021/02/gmc_price_enforcement/

こちらも二重価格というか価格を誤認させるようなことはダメ、ということですね。

コロナ禍でECは「天下一武道会」、勝ち目は「人間味あるデジタル」にあり ハイフィットの吉村さんに聞く | ECzine
https://eczine.jp/article/detail/8791

「天下一武道会」はものすごく納得。知らないところから競合というか強豪がやってくる時代です。

「レディー・カガ」「旅館で音楽フェス」などのアイデア、ファンやアイドルとのつながりを生かした体験+物販のECサイト「かいねや加賀」のスゴイ取り組み | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/8412

地域全体でどういったマーケティングをするのか?がスタートです。ECはその一部。

ECのエキスパート7人に聞く!2021年最新ECトレンド | Printful
https://www.printful.com/blog/jp/ec-trends-2021-according-to-experts/

最後にある「共通する7つの重要なキーワード」を見ておきましょう。

【社長インタビュー】流通額2.8倍、1100億円突破の「STAFF START」。デジタル×販売員の力でめざす「カリスマ店員新時代」とは | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/8408

上記に関連して。ライブコマースとオンライン接客は2021年のトレンドですね。

チャージバックを未然に防ごうーー不正利用の疑いがある注文のお知らせ表示を開始しました | BASE U
https://baseu.jp/19299

BASEも利用者が増えて安心・安全の部分に力を入れるようになってきました。

今週の名言

効果的な子育て支援施策を打てば、子育て世代の移住件数や出生率は当然、増加する。

そうして人口が増えると、街がにぎわい活性化し、税収も増えていく。税収が増えればその財源で、より手厚い行政サービスができ、街への愛着が高まる。

こうした好循環を意識した施策展開を続けると、街はどんどん豊かになってくるわけです。

市民のわがままを政策に生かすには、「きれいごとと本音」の両立が必要だった──明石市長 泉房穂×サイボウズ 青野慶久 | サイボウズ式
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005932.html

ネットショップが儲かるようになるのもこのサイクル。魅力的な商品やサービスがあってお客さんが増えればファンも増えて自然と成長します。

森野 誠之
森野 誠之

【読者プレゼント】『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革』を5名様にプレゼント!

4 years 9ヶ月 ago

ビジネス用コラボレーションツール「Slack」を活用した企業のデジタルシフトの手法や事例を紹介する書籍『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革(できるビジネス)』がインプレスから発売されました。

『EC通販で勝つBPO活用術 ─最強のバックヤードが最高の顧客体験を生み出す』表紙
この本をAmazonで購入

本書では、Slackを導入している10の企業・団体の事例を掲載。さまざまな業種や規模、課題を持つ組織が、どのようにSlackを取り入れ、組織の働き方を変えているかを紹介します。

これらの事例はすべて2020年8~9月に取材しており、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言以降の、まさにコロナ禍を踏まえたワークスタイル変革事例から学ぶことができます。

事例として登場する企業・団体

  • NTTドコモ(通信)
  • マスヤグループ(製造)
  • リバネス(教育)
  • SOMPOシステムイノベーションズ(システム開発)
  • 近畿大学(大学)
  • アスクル(物流)
  • カクイチ(製造)
  • 三菱重工(製造)
  • Code for Japan(NPO)
  • コープさっぽろ(小売)
 

筆者プロフィール

長谷川 秀樹(はせがわ ひでき)氏
ロケスタ株式会社 代表取締役社長

長谷川 秀樹(はせがわ ひでき)氏
ロケスタ株式会社 代表取締役社長
1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。100%AWS化、自社開発にてコスト削減とスピーディーな開発体制を構築。
2013年、ハンズラボ株式会社を立ち上げ、代表取締役社長に就任(東急ハンズの執行役員と兼任)。初年度から任期中、売上、営業利益率とも2桁成長を達成。2018年、株式会社メルカリの執行役員CIOに就任。領収書レス、新しい電子契約の仕組みを考案。
2019年、ロケスタ株式会社を立ち上げ代表取締役社長に就任。「プロフェッショナルCIO/CDO」として、生活協同組合コープさっぽろCIOなど複数社のCIOに従事。

内容は「できるネット」で無料公開されています。

この『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革 (できるビジネス)』の書籍版を5名様にプレゼントします。

ご希望の方は下記のフォームにご記入の上、お申し込みください。締め切りは3月12日(金)です!

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内山 美枝子

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