新型コロナ感染拡大による政府の緊急事態宣言発令から2週間余りが経過。5月6日まで一時閉鎖や営業時間を短縮している小売り業は多く、事業面であらゆる影響が出ている。こうした状況に拍車をかけているのが消費者行動の変化。「対面接客ができない」「衣類品の購入を控える」。この2つの課題をアパレル業界はどう乗り越えたらいいのか? アパレル店員のデジタル接客支援サービス「STAFF START」を開発・提供するバニッシュ・スタンダードの小野里寧晃代表取締役に話を聞いた。
店員のコミュニケーションをオンラインで可視化
「STAFF START」は、アパレル店員1人ひとりのデジタル上の接客や業務を円滑にするアプリ。従来は可視化されにくかった、スタッフのオンライン上でのコミュニケーションや投稿がどの程度売り上げにつながっているか、個人成績がすべて数値化されるのが特徴だ。1つのコーディネート投稿が起点となり、月間600万円以上の売り上げにつながった実績もある。
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ベイクルーズの利用例。それぞれのスタッフページに、所属店舗、身長などのプロフィールや、コーディネート例が紹介されている
最近ではアパレルに限らず、コスメ、家具・インテリアなどでの業界でも利用が広がっている。導入ブランドは、アダストリア、ベイクルーズなどの人気ファッションブランドなど計811ブランド(2020年4月時点)。
各種SNSと連携できるため、Instagram(インスタグラム)内で人気が出ると今までリーチできていなかった潜在的なファンを獲得できたり、LINEを通じて顧客とOne to Oneコミュニケーションが行えることなどから、1人ひとりのスタッフにファンがつきやすい特性がある。月間8,000万円弱を売り上げたアパレル販売員もいる。
デジタル接客とは何か?「STAFF START」の例
店頭の売上減が避けられない今、非対面でも販売員個人のSNSから接客や集客ができる「デジタル接客」が注目されるが、そもそもデジタル接客とはどういうものか? 「STAFF START」のサービスは一例になる。その内容を見ていく。
1. 販売
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バーコードを読み込み、アプリからECサイトへ商品情報を反映(画像はバニッシュ・スタンダードのサイトから編集部がキャプチャ)
- 「コーディネート画面」に商品を結び付けた投稿ができる。販売員個人のSNSへの同時投稿も可能。
- 「このシーズンに外せないデニムまとめ」など、販売員が特集のテーマを創作してコンテンツ化できる。
2. 生産
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アプリ上で、「売れそう」「売れなさそう」などの評価ができる(画像はバニッシュ・スタンダードのサイトから編集部がキャプチャ)
- 「売れそう」「売れなさそう」と評価できる。これらの回答をデータ化することで、在庫の適正化やヒット商品の最大化を計る
3. 評価
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売り上げやランキングなど個人成績が可視化される(画像はバニッシュ・スタンダードのサイトから編集部がキャプチャ)
- コーディネート等のデジタル接客、個人のSNS経由での集客や売り上げ、店頭でのQRメモ(※以下に詳細)経由の売り上げを計測し、個人成績表を生成
- 基幹システムと連携し、店頭の個人売上も計測可能。販売員の適正評価ができる
4. 案内
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店頭で商品ページのQRコードを顧客に転送し、ECサイトへ誘導(画像はバニッシュ・スタンダードのサイトから編集部がキャプチャ)
- 来店中に顧客が商品を買わなかった場合、販売員は商品情報(ECサイトのURL)をQRコードに変換し顧客のスマホへ転送可能
- 販売員自身のSNSのURLもQRコードに変換して案内できる
デジタル接客を実施するメリット
個人・企業ともに売上向上が見込める
バニッシュ・スタンダードの小野里寧晃代表取締役は、デジタル接客に着目した背景について、アパレル業界が抱える課題をあげる。
個人の売り上げや成績が可視化されにくい
従来、店頭スタッフがSNSにコーディネートを投稿しても、それらがどの程度EC売上に貢献しているかは可視化されにくかった。
その構造が、「STAFF START」の登場で大きく変わった。店頭の販売員が「STAFF START」のアプリを利用しSNSに投稿した写真経由で売れた場合、個人の成績と結びつくようになったからだ。
ブランドによっては、「売り上げに対して最大7%(平均は3%)を販売員に還元」(小野里氏)しているところもある。
デジタル接客で貢献した分だけ対価がもらえるという直接的なインセンティブは、販売員のモチベーションを上げやすい。それまで月に1回しかなかったSNS投稿が、10倍になっているケースもあるという。会社としても、利益率の高いECサイトでの売り上げが向上することはメリットが大きい。
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バニッシュ・スタンダードの小野里寧晃代表取締役(画像はバニッシュ・スタンダードが提供)
店舗売上? EC売上? がわかりにくい
もう1つ、「STAFF START」が解決したのは、「EC売上を、店舗売上に換算できる」という点だ。
たとえば、実店舗で働いている販売員がECのために写真を撮影しSNSに投稿したとする。その稼働コストは「実店舗の人件費」で計上されることになるが、SNS投稿経由で商品が売れた場合の売り上げは、EC部門になる。
「STAFF START」では、A店舗、B店舗、C店舗などの「実店舗」と「EC店舗」を並列で考えるのではく、「A~C店舗のために売り上げがあがるEC店舗」として考える。つまり店舗形態や立地に関わらず、店舗とオンライン(SNSやEC)を連携させることで、「会社全体で売上目標をクリアする」という考え方にシフトできるというわけだ。
コロナ禍に求められる「デジタル接客」とは?
SNSを通じて、店頭と同じように個別接客
現在のように店舗の一時閉鎖などの非常事態が起きたときでも、デジタル接客は強みを発揮しやすい。
店頭で接客するような感覚で、店員がLINEを通じて顧客ごとに商品を案内したり、自宅で撮影したコーディネート写真をインスタグラムに掲載しECサイトへ誘導したりと、減少した店舗売上を吸収できる。
STAFF STARTを利用しているブランドのなかには、3、4月のEC売上が前年同期比で2倍になるなど、コロナ不況を感じさせない実績を残しているところもあるという。
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オリジナル記事:ファッションブランドは非常事態をどう乗り切る? 「STAFF START」の「デジタル接客」がコロナ禍でも強い理由
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