Facebookのような新興企業がどうやってGoogleを打ち負かすか、という多少なりとも興味深い話題を扱えば、単にそれが議論のためだけに過ぎなくても世間の注目を集める。
――ロバート・スコーブル
ロバートの理論の検証と、彼の言うGoogleキラーを遅ればせながら支持するために、Googleキラーになれる可能性を秘めた、ある韓国のウェブサイトの話から始めよう。
1999年6月に韓国で開設されたNaverというポータルサイトは、韓国国外ではほとんど知られていない。Yahoo!やGoogleをはじめとして韓国産の検索エンジンなどの競合相手がいるにもかかわらず、Naverが現在韓国における検索エンジンの王者であることに疑問の余地はない。1日のページビューは10億以上、検索市場のシェアは実に77%以上だ。Naverは韓国版「ダビデとゴリアテ」として研究しがいがあるけれど、韓国検索界の歴史を語るブロガーとしては僕なんかよりもっと適任の人もいるので、ここは長い話をはしょってしまおう。Naverを成功に導いた大きな要因は2つのサービスにある。
Knowledge iNは「知識検索」サービスだ。いわばYahoo! Answersの韓国版だが、時間的にはKnowledge iNの方が3年先行している。あるユーザーが質問をして、それに回答したユーザーには「知識ポイント」が与えられる。こうしてできたデータベースの記事数は7500万を超え、その容量はWikipediaデータベース全体の実に10倍だ。
統合された検索サービス――韓国のブロードバンド普及率は非常に高く、ユーザーもインターネットを使い慣れていて、間違いなく世界の最先端を走っている。しかし、Googlebotがクロールしてインデックス化できるドキュメントがなければ、いかなGoogleと言えども無力だ。韓国におけるインターネットの黎明期、検索クエリに対応する韓国語のドキュメントが十分になかったため、Naverはコンテンツプロバイダにお金を支払って自サイト内にコンテンツを囲い込み始めた。GoogleやAskの検索が世界各国の言語に対応する7年前に、Naverはすでに大量の「コレクション」データベースから検索結果をアルゴリズム的にマッシュアップするサービスを提供していたのだ。
韓国のWeb 2.0事情に詳しいキム・チャンウォン氏は、Naverが自発的連鎖を作り出したのだと考えている。Naverはユーザーがまとめたコンテンツであれベンダーがまとめたコンテンツであれ、まずはNaverからチェックするという利用者が多いため、韓国のコンテンツプロバイダにとっては、すべてのコンテンツを常にNaverのサイト上に置いておくのが当然のこととなっている。
韓国検索界から、僕らは何を学べるだろうか?
Yahoo!がトップに躍り出る日?
2005年12月にYahoo! Answersのサービスが始まったとき、全世界のYahoo!ユーザー5億人をうまく活用するQ&Aサービスが伸びると予想したアナリストはほとんどいなかった。ところがそれから2年も経たないうちに、Yahoo! Answersは9500万を上回る登録ユーザーを獲得し、四半期ごとにYahoo!が発表する好材料の1つとなっている。
率直に言おう。Naverと同じように、知識検索をオンラインユーザーが探し求めている検索体験そのものにするための「エコシステム」なら、Yahoo!にもある。人力検索エンジンのMahaloは少人数の編集チームが選択した検索結果を提供しているが、Yahoo! Answersは膨大な数のユーザーが入力した回答を提供している。もし、こういった検索が(Yahoo! 360のような)ソーシャルネットワークとシームレスにつながっているとして、君ならまずどのサイトを真っ先にチェックするかな? Yahoo! AnswersをYahoo! Alphaとマッシュアップしたり、Yahoo! oneSearchを通じて携帯でサービスできるようになれば、欧米版のNaverができ上がるかもしれない。
Facebookは本当にGoogleを潰す 苦しめる 喜ばせるかもしれない。
よし、じゃあ現実に戻ろう。
Yahoo!は今までのところ、自らが持つ無数の資産を統合するのがへたくそで、Yahoo! 360もまだ軌道に乗っていない。
Q&Aもソーシャルネットワークの一種だ。誰かが質問して、別の誰かが答える。4500万ユーザーを抱えるFacebookは十分すぎるほどの回答者を持つソーシャルネットワークだ。Facebookには質問用のアプリケーション(SlideのMy Questionsなど)がすでにあるけれど、今問題にしているのは、ソーシャル化のレベルを1段階推し進めて、Q&Aを検索に転換することだ。
Facebookのページにはいちばん上に大きめの検索ボックスがある、と想像してみてほしい。そのボックスに検索クエリを入力すると、Facebookのデータベースから回答(検索結果と言ってもよい)が返ってくる。
質問にぴったりの答がデータベースで見付からなければ、ボタンをクリックして自分の検索クエリを公開し、Facebookユーザーが最適な回答を寄せてくるのを待つ。たとえば、「アニメ映画」のような特定のカテゴリについてクエリを公開することを選択したら、Facebookのニュースフィードに「アニメ映画」に関する新しい質問が流れる、とかね……。
Facebookにおけるユーザーの滞在時間を長くする方法として、他のFacebookユーザーの手助けをしながら、同時にちょっとした名誉も得られるようにすること以上にすぐれたやり方があるだろうか?
ソーシャルネットワークに関してはYahoo!の方がずっと有利なスタートを切っていて、さらにGoogleが「ソーシャルグラフ」のデータを開放しようとしているにもかかわらず、Facebookがあっという間に今の地位を築けたのは、間違いなく、その使い勝手が(既存のソーシャルネットワークに比べて)非常にすばらしいからだ。Q&Aサービスは、Facebookが現在採用しているユーザーの囲い込み方針ともうまく合う……が、唯一の、しかも大きな問題は、NaverやGoogleのようなコンテンツデータベースがないため、Facebookユーザーは自分たちの回答を探すのにまだGoogleなどの検索エンジンに頼っていることだ。
つまり、どういうことかって?
潰せるのは時間だけ
Facebookは本当にGoogleキラーなんだろうか、それとも実はグルなのか? 次のGoogleキラーはGoogleなんだろうか?
Yahoo!は方向転換し(Yahoo! 360だけにぐるりと回って)、Yahoo! Answersを検索手段にするのだろうか?
今のところ、Googleに取って代わるだけの機能を兼ね備えたソーシャルネットワークはないというのが答だ。その機能とは次の2点だ。
守備範囲と拡張性 = ロングテールの質問に答える能力と短い応答時間を実現する力。
使いやすさ = 強固なスパム対策、投稿しやすさ。
- Googleは検索データベースを持っている(ブログ、本、地図、ビデオなど)。
- Facebookはソーシャルネットワークとしての使い勝手がいい(コンテンツの囲い込みも行っている)。
- Yahoo!にはYahoo! Answersがあり、Googleと違ってウェブポータルとしての存在感がある。
- AskはJeevesの回答サービスを持っていた(GoogleはGoogle Q+Aを持っていた)が、うまく伸びなかった。
こう考えてみてはどうかな――今の検索エンジンは基本的な3種類の質問に対応している。
商取引に関する質問:「バフィーの最新のフィギュアはどこで買える?」
ウェブナビゲーションに関する質問:「トイザらスのウェブサイトはどこ?」
情報に関する質問:「シアトルにあるおもちゃ屋の営業時間は何時から何時まで?」
しかし、検索エンジンでは対応できない質問が1種類ある。
Yahoo!のブラッドリー・ホロウィッツ氏は次のように語っている。
だが、今のところ「ウェブ検索」には些細だがどうしようもない限界があると認識されている。検索エンジンは、何と言うかその……今あるものしか結果として返さない
ソーシャルネットワークをベースとした検索可能なQ&Aサービスが実現できれば、この4種類の質問すべてに答えられるはずだよね?
で、何かご質問は?
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