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「ミレニアル世代×ハイテク企業」の沸騰、アメリカの中間選挙でフル活用されたSNS

若年層の投票率が過去最高を記録。アメリカの中間選挙で、SNSが2つの大きな役割を果たしていた

アメリカの中間選挙は2018年11月6日に投開票が行われ、上院は共和党、下院は民主党がそれぞれ多数派となりました。この中間選挙にSNSが2つの大きな役割を果たしていたことをご存じでしょうか。1つは投票率の向上、もう1つは資金集めについてです。

中間選挙はもともと投票率があまり良くなく、今回は投票を促す動きがインターネット上で数多く見られました。中でもミレニアル世代やZ世代のユーザーが多いSNSの活用は顕著で、この世代の投票率向上に大きく貢献しています。また、候補者の中にもSNSを駆使して多大な資金を集めた人物がいます。

この記事では、アメリカ中間選挙におけるSNSの活用をクローズアップします。

中間選挙への投票を促すインターネット上の動き


画像素材: Syda Productions / PIXTA

SnapchatやInstagramなどのSNSをはじめ、アメリカのインターネット上では、若者の投票を促す動きが見られました。

Instagram

Instagramでは、投票に行った後、シェアする際に使える「I Voted」スタンプが追加されました。ヒスパニック系の住民のために、スペイン語の「Yo Votē」というスタンプも活用されています。

また、フォローしている友人のうち何人かが「I Voted」に関するストーリーを投稿すると、11月6日の投票日に「We Voted(私たちは投票しました)」という投票ストーリーが現れ、まとめて見られる機能も追加され、若い世代の投票を後押ししました。スタンプ機能をベースとしたストーリーは、今後、企業のストーリーなどでも活用できるとする見方もあります。

For starters, this is interesting in that it’s a new functionality within the app. The capacity to build entire new stories based on usage of a selected sticker opens up a range of additional considerations for future public stories, and even branded stories content.

出典:Instagram and Snapchat Look to Boost Voter Participation with New Tools Social Media Today

Snapchat

Snapchatでも、中間選挙にちなんだスタンプやレンズが登場。加えて、アメリカの18歳以上のユーザーに投票をリマインドするビデオメッセージを送信しました。送られたビデオメッセージには投票所の位置が示されたスナップマップも添付されており、投票を促す仕組みです。また、Snapchatは9月25日の全米有権者登録日に、アプリから選挙登録ができる機能をリリースしていて、アプリユーザーの若い世代が選挙に参加するよう積極的に支援しています。

Google

Googleの検索画面に現れるロゴが、ハロウィンや周年記念などのイベントに合わせてアレンジされる「Google Doodle」。11月6日の投票日当日、アメリカでは「Google」ロゴのカラーで「Go Vote」というメッセージが表示されました。「Go Vote」をクリックすると、ユーザーにとって最も近い投票所の位置と、そのほか投票に関する情報へのリンクが表示される仕組みです。

画像出典:Doodleアーカイブ Google

ソーシャルメディアの活用とアメリカ政治

SNSを活用した戦術で多くの支援を集め、注目されたのがテキサス州の民主党候補、ベト・オルーク氏です。結果的には落選しましたが、共和党の金城湯池のテキサス州で予想以上に善戦したことから、今後の選挙でもSNSが活用される機会が増えるのは確実です。

カリフォルニア州に次いで代議員数の多いテキサス州の上院議員選は、中間選挙の中でも注目される選挙区の一つです。1994年にジョージ・W・ブッシュが勝利して以来、これまでテキサス州で民主党候補が勝利したことはなく、オルーク氏が現職のテッド・クルーズ氏に勝てるかどうかが注目されていました。

もともと共和党の支持基盤を持つクルーズ氏に対し、無名で資金もほとんどないオルーク氏がどう戦ったかというと、オルーク氏はテキサス州254郡すべてを訪問したほか、有権者にSNSで支持を訴えるという戦術に出たのです。

オルーク氏の名が一躍知れ渡るようになったのは、8月に行われたスピーチ映像がTwitter上で拡散されたことがきっかけです。話題になったのは、NFLの国歌斉唱問題について触れたスピーチで、オルーク氏は国歌斉唱をせずに抗議した選手たちを、「国家や退役軍人に対する冒涜とは思わない」として擁護しました。彼がそう思う理由とともに語られたスピーチは多くの支持を獲得し、動画のツイートは20万件以上もリツイートされました。

そもそも上記の映像が話題になる以前から、オルーク氏はFacebook Liveを活用するなど、ソーシャル経由のキャンペーンに力を入れていました。彼が最初に投稿したキャンペーンはiPhoneを使用して撮影されたものです。

クルーズ氏がテレビでのキャンペーンに多く投資したのに対し、オルーク氏はデジタルでのキャンペーンに480万ドル(日本円にして約5億4390万円)を投資したと言われています。投票日前日に至っても、新たな広告を公開しています。

▲カントリーシンガーのウィリー・ネルソンのコンサートに招待されて一緒に「On the Road Again」を歌っているシーンや、254郡を車で訪れているシーンなどの映像を再利用して作られています。

オルーク氏に最も投資した14企業のうち、6つはハイテク企業となっており、アルファベットやMicrosoft、Facebook、Apple、Amazon、Dellなど、大手シリコンバレーの企業も投資したことが話題となりました。こうして集められたオルーク氏の資金調達額は歴史上の上院候補を上回り、第3四半期の間に3800万ドル(約43億円)を調達したと言われています。

中間選挙における若年層の投票率は過去最高を記録

アメリカにおいてSNSは、コミュニケーションや企業のマーケティングといった手段だけでなく、政治にも大きく利用されています。特に若年層の投票率が伸び悩んでいることから、ミレニアル世代やZ世代を動かす上ではソーシャルメディアが有効と考えているのでしょう。結果、今回の中間選挙における18~29歳の投票率は約31%と1994年以来、最高を記録しています。

日本においても電子メールを除き、SNSやブログ、YouTubeなど、インターネットを利用した選挙運動は認められていますが、有料インターネット広告の利用は禁止されています。今後、日本のInstagramでも投票を促すスタンプが登場するかどうかはわかりません。しかし、今回のスタンプを利用した機能や、オルーク氏のデジタル戦略については、企業のマーケティングにおいても参考にできる部分があるのではないでしょうか。

参考
Ted Cruz fends off Beto O’Rourke to retain key Texas Senate seat Business Insider
Beto O’Rourke is taking advantage of the digital ad spending trend in 2018 abcNEWS
Silicon Valley tech employees are pouring money into Beto O’Rourke’s campaign to unseat Ted Cruz CNBC
Beto O’Rourke Sings ‘On the Road Again’ With Willie Nelson In Final Pitch to Texas Voters RollingStone
Young People Dramatically Increase their Turnout to 31%, Shape 2018 Midterm Elections CIRCLE
(1)インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等 総務省

「Marketing Native」掲載のオリジナル版はこちらアメリカの中間選挙でフル活用されたSNS | Marketing Native(マーケティング ネイティブ)

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