日帰りプチ旅行でデジタルデトックス体験、周囲を見回せばアイデアが広がる
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の453
夢の10連休なるか
今週末からのゴールデンウィークは、映画会社の販促キャッチフレーズとして捻り出された和製英語です。NHKは映画業界の宣伝になるからと「大型連休」と表現します。
さらに今年は「2日休めば10連休」と、旅行代理店がCMで高らかに歌いあげます。「チッ」と舌打ちする私は、そんなに休めるほど優雅な身分ではありません。
とはいえ、「昭和の日」の4月29日から5月1日の日曜日と、5月3日の「文化の日」から「こどもの日」までの2回の三連休、人がそれを希望的観測と呼ぶとしても、どちらかは休める公算があります。そして、私が少しでもまとまった休みがとれたときに実践しているのが「デジタルデトックス」です。
「デジタルデトックス」とは、IT機器とのつながりを断ち、IT依存からの脱却を目指すもので、「デジタル断食」とも呼ばれます。そのための有料合宿もあるほどですが、Web担当者には定期的なデジタルデトックスをオススメします。
IT機器に動かされている
デトックスとは「毒抜き」の意味で、デジタルデトックスは「デジタル中毒」からの脱却、改善を目指します。
中毒とは言い得て妙。四六時中パソコン画面に張り付き、外出時はスマホと睨めっこし、不要不急で常時Webに接続している姿は、酒やタバコ、薬物などと同じく依存症。もちろん、いまのご時世、ITやWebのない生活は不可能ですが、問題は両者の「主従関係」にあります。
IT機器もWeb情報も、ユーザーが主体的に利用するものです。ところが「デジタル中毒」の状態に陥ると、ユーザーは指示を受ける側となります。スマホゲーム、LINEやTwitterなどのSNS、ネットニュースやWebサイトのチェックが止まりません。
それぞれは主体的に取り組んでいるつもりでも、IT機器から与えられる情報によって行動が決定づけられており「主従関係」が逆転しているのです。Facebookにおいて、フレンドへのリアクションをしないと落ち着かなくなるのは、強迫観念という心の病、中毒であり依存です。だから「断食」を実行します。
ただし、完全な「断食」はなかなか困難。そこで紹介する方法が、「ぷち断食」と「ぷち旅行」です。
中毒症状を自覚する
連休直前のいまから宿泊先を確保するのは至難ですが、「ぷち断食」のための「ぷち旅行」は日帰りです。それも絶対に日帰りができる「勤務先」。電車通勤で「定期券」を持っていれば、交通費は無料です。スマホとPASMOなどの電子旅券は許容して出発します。
家を出たらスマホや音楽プレーヤーの電源を切ります。断食が目的ですから当然ですし、通勤路ならスマホのナビは不要です。
移動中に音楽やゲーム、ネット閲覧ができないことで、物足りなく感じたり、寂しさを感じたりするなら、正常な生活習慣の範囲でしょうが、激しく感情が乱れるならば、深刻なデジタル中毒です。こうした感情の起伏をチェックするのも旅の目的の1つ。すべての依存症において、その脱却のはじまりは「自覚」することです。
そして展覧会へ
バスや電車に乗ったなら、音楽やゲームがなくても、そこに暇などありません。車窓からの街並みは、発展と衰退の明滅を繰り返し、なにより掲示される「看板」や「ポスター」は常に刷新されています。
景色の見えない地下鉄ならば、車内に目をこらします。中吊りをはじめとした広告は、先の看板と同じく、各社の宣伝マンと制作チームが知恵を絞った「作品」で、電車の内外は広告の展覧会と見ることができます。
平日の通勤時間ほど混雑しない連休中ならば、じっくりと観賞できます。Webでは見ないアイデアに出会うことでしょう。
会社の最寄り駅に着いたら、街をぶらぶら散歩します。出社する必要は、もちろんありません。旅先を勤務先とした理由の1つは、休日のオフィス街は「固定観念」に気がつく絶好のロケーションだからです。1つの考え方に固執する固定観念は、デジタル中毒という現状を維持しようとする圧力でもあります。
固定観念という澱
私が独立する以前、プログラマとして就職した先は、東京都港区浜松町。当時はラジオの文化放送や、地下鉄の大江戸線はありませんでしたが、東京国際空港(羽田)行きモノレールの始発駅である浜松町駅は、貿易センタービルを擁するビジネス街で平日はサラリーマンばかり。
ところが休日に訪れてみると様相が様変わり。通称「大門」を構える「増上寺」があり、寺の手前には「芝公園」が広がります。さらに公園の丘を登れば「東京タワー」目の前にあり、そこにいるのは観光客ばかり。
路地裏にもサラリーマンの姿はなく、粋な浴衣姿のご老人を見かけます。調べてみると、時代劇でお馴染みの「め組」が仕切った門前町だったようです。平日に自分が見ていた風景は、ビジネス街という固定観念によって切り取られた、街の一部でしかなかったのです。以来、転職するたびに「休日の会社訪問」をしたものです。
固定観念は「澱(おり)」のように、気づかぬうちに溜まり固まるので、定期的な清掃が必用となります。私のいまの勤務先は自宅兼事務所ですが、目的地を変えた「ぷち旅行」によって「固定観念」を洗い流し、そのついでにデジタルデトックスをしています。
人間回復のぶら散歩
目的のないぶらぶら散歩には、自分の目と耳、皮膚感覚で情報を収集し、行き先をその場で考える作業が求められます。交差点を渡るのか、丁字路を右に進むのか左かとIT機器に頼らず「自分で考えて行動」しなければなりません。これによって行動の主導権を取り戻します。
散歩の途中で、気になるお店を見つけ「ネットで検索」をしたいなら、スマホ(=デジタル)を解禁してもいいでしょう。メールの着信音に従っての行動ではなく、デジタルを使う側、主従の主になっているですから。これでデジタルデトックスの第一段階は完了です。通勤時間+散歩で最短なら2時間ほどの「ぷち断食」。それでも必ず効果を実感することでしょう。
いつもの土日に実践しても同じ効果が得られますが、それだと「1日多く仕事している」と錯覚し、ストレスになる可能性もあります。そこで、1日ぐらい捨てても良いと思える「大型連休」での実践をオススメします。
今回のポイント
デジタル中毒は主従関係の狂い
「固定観念」は依存を強化する
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