企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用の現場

社内共有がなくても、担当者が変わってもTwitterの対応は変わらない

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社内共有がなくても、担当者が変わってもTwitterの対応は変わらない

アイスタイルでは、Twitterの運用方法について社内共有やトレーニングは特に行っていないというが、担当者が変わることで、対応方法も変わってしまうことはないのだろうか。

うーん、変わらない気がしますね。発信する内容がだいたい決まっていますし、アットコスメ独特の文化がありますから。アットコスメはユーザー参加型の情報サイトですから、そこを運営するなかで、編集部として発信するための基本ルールというものがソーシャルメディアポリシーとは別にあるんですよ。中立サイトという強烈な個性があるので、そこでのなかの人の発言をどれだけフラットにするかというノウハウがずっとあるので、それに則っていれば主役はユーザーだというスタンスは絶対に変わらないですから」(服部氏)

コミュニティサイトとして明確なルールがあったとしても、実際に運用をするのは“人”である。アイスタイルの担当者はTwitterのことをどのように捉えているのだろうか。

基本的にTwitterが好きなんです(笑)。私自身も個人のアカウントを持っていますし、日ごろ利用していて新しい発見をしたりとか、世の中こんなふうに考えている人がいるんだとか、そういった部分がわかるので」(服部氏)

アットコスメ以外のTwitterアカウントでも同じことがいえるのだろうか。

ユーザーさんと同じ目線の担当スタッフが付いているところがいいんだと思います。たとえば、モバイルサイトは利用ユーザーの世代が若いので、担当者も年齢も若いんですよ。モバイルの担当者もモバイルのコンテンツを作ること自体を楽しんでいるので、ネタの作り方やキャラクタも他のアカウントとちょっと違っていたりするんですけど、すごくキャッチーな言葉を選んでレスポンスが返ってきやすいようにするとか、そういった工夫ができる。逆に、全然興味がない人が担当になったらネタも尽きますし。会話をするのも辛いので苦しいと思う」(小笠原氏)

Twitterとコミュニティサイトの違いはコミュニケーションの速度

10年前からコミュニティサイトを運営してきたアイスタイルはTwitterをどう捉えているのだろうか。

去年、マーケティング業界でソーシャルメディアが盛り上がりを見せていましたが、弊社のなかでは、『当たり前のことなのにみんな何を騒いでいるの?』という雰囲気でした。メディアを運営していくうえでのポリシーや一般の方に対する接点の持ち方など、どういうスタンスでメディアを運営していくのかという考え方が、私たちは10年前から変わっていないんです。ソーシャルという新しいツールが出てきたことによって、コミュニティや一般消費者の声を基盤としない運営をしていた人たちも、メディアとして活用しはじめるようになったので、ソーシャルのコミュニケーションが新しい考え方に見えているのではないでしょうか。恐らく、カスタマーサポートにものすごく注力されている会社さんも、私たちと同じような感覚をTwitterに持たれていると思います」(小笠原氏)

年配の役員など、Twitterに慣れ親しんでいない経営メンバーから批判的な意見が出ることはないのだろうか。

批判というわけではありませんが、活用自体にリスクはともないますのでソーシャルメディアポリシーを作成しています。ただ、それはソーシャルメディアに明るくない人からの意見があったためではなく、中立的な立場で運営を行う弊社としての責任だと考えているためです。また、弊社では、役員もTwitterの個人アカウントを持って参加していますから、その楽しさも、考えるべき点も共有できていると思います。弊社の役員はネットでクチコミサイトをやろうと考えたくらいの人たちですし、障壁はかなり小さいといえるかもしれませんね」(小笠原氏)

会社として共通のポリシーを持ち、長年コミュニティサイトを運営してきたアイスタイルでは、Twitterとコミュニティサイトの違いをどう捉えているのだろうか。

今までと違うことといえば、速度でしょうね。考えている時間がどれだけ持てるのか、そもそも返信すべきなのか、すべきではないのかなどは、ノウハウ化できていないかもしれません。どういうタイミングでリプライしたらいいのかとか、中立的な立場としてのツイートを即座にできれば理想かもしれませんが、瞬間的な反応のみで対応してしまうと問題を起こしかねない。そこは個人のスキルというか、大げさかもしれませんが精神力の問題にもなってきますよね。コミュニケーションをするうえで、担当者個人の能力に頼らざるをえないところが大きいのは、今までと違うところだと思います」(小笠原氏)

最後に、10年間変わらぬポリシーでコミュニケーションを続けてきたアイスタイルが、どのような展望をいだいているのか伺ってみた。

弊社がソーシャルメディアにアレルギーを覚えないのは、10年間変わらずそうしたことに注力してきているからなんです。消費者主導型の市場をつくっていくために、消費者の声を中心に運営を行ってきました。ウェブサイトも、リアル店舗も、消費者の声というデータベースを中心に運営していく。その軸が化粧品という会社です。

Twitterなどのソーシャルメディアが台頭するような世の中になり、10年間同じポリシーでビジネスを続けてきて良かったと考えますし、誇りに思ってもよいのかな? と思う部分はあります。ですが、弊社社長の吉松が新聞取材をお受けした際、『10年前に描いていたものがどれだけ達成できていますか』という質問に対し、『2割くらい』と答えているように、消費者の声を市場へ届けるため、中立な立場でユーザーとメーカーをつなぎ、双方のお役に立つようやって行くべきことは、まだまだあるんです。私たちアイスタイルグループは、これからも変わらないポリシーを軸に、ネットとリアルの領域で、チャレンジを続けて行きたいと考えています」(小笠原氏)

◇◇◇

コミュニティサイトの運営者であるアットコスメから見れば、Twitterのように使うツールやコミュニケーションする場所が異なることはあっても、運用における基本的な考え方に大きな違いはない。そのため、これまでに培ってきた運用ノウハウの延長線上にあるものとしてTwitterをスムーズに受け入れることができたのだろう。一方で、長年コミュニティサイトを運営してきた彼らでさえ、ノウハウを蓄積している段階にあるというTwitterならではのスピード感には、より注意を払うべきかもしれない。

Twitterの即時性を活かした企業アカウントの運営を検討・実施している企業担当者は、同社のように、ソーシャルメディアポリシーの策定を検討してみてもいいかもしれない。Facebookなど、他のソーシャルメディアの活用も検討していると話す同社に今後も注目していきたい。

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