実践編

⑤-1 企業情報のなかの「メッセージ」とは?

⑤-1 企業情報のなかの「メッセージ」とは?

「企業情報」のコーナーは、企業サイトではもっとも多く見られるものの1つ。商品情報と並んでサイトの主役だ。多くの訪問者が会社名検索で訪れて、

  • 「トップページ」 → 「企業情報」トップ → 「会社概要」

とたどる。社屋への訪問の必要がある人は、さらに、

  • 「会社概要」 → 「事業所」 → 「地図」

と進むことも多い。

会社概要を見せることも重要だし、訪問したい人に地図を提供するのは、ホームページの不可欠な役割でもある。非常に役立っていることになる。しかし、会社側としてはそれだけでは満足できないのではないだろうか? 「会社情報」ページでは、会社としての考え方や新しい取り組みが理解されることが望ましいはずだ。

企業サイトの最初の問題は、「会社としての考え方」「新しい取り組み」を語るページがそもそも用意されていないサイトが多いことだ。かなり多くの企業サイトが「会社概要」「沿革」「組織図」といった、会社案内パンフレットのような項目しか持っていない。

海外のサイトでは「ミッション」というページが最初に来ていることが多い。これはその会社の考え方を紹介するものだ。日本の多くのホームページでこれに近い内容を持っているページが「社長あいさつ」というページだ。実際、このページに登場する社長は非常に良いメッセージを語っている。筆者は企業サイトを研究するとき、「社長あいさつ」のページを頼りにしているぐらいだ。

ところが、「社長あいさつ」に現れる内容がWebサイトの他のどのページでもフォローされていないのはなぜだろう? この社長は会社のなかで浮いてしまっているのか? 社長が語る「目指す方向」というのは、あまりにも遠い将来のことになってしまっているのかもしれない。

そうではない。社長あいさつのページは内容が重視されているのではなく「社長あいさつのページを作る」ということが自己目的化しているのだ。社員の多くは、社長あいさつのページを読んでおらず、ましてや社長が語る内容を自分のコーナーでフォローして「目指す方向」を揃えていこうとは考えていないようだ。

サイト訪問者もあまり「社長あいさつ」のページは好きではない。年輩の男性がネクタイを締めた写真が出てきて、昨今の日本の経済状況を語るページが現れるに違いないと思っているからだ。実際にそうしたページも少なくないが、本当は社長あいさつのページはそのサイトでほとんど唯一の「これからやろうとしていること」を書いたページなのに。

もし、企業情報内に他にメッセージ性のあるページがないなら、社長あいさつのページを当面の目標ページとして、そのアクセスを増やすようにするべきだと思われる。できればクリックが増えにくい「社長あいさつ」というページ名ではなく、「戦略」のような言葉を使って“興味深いことを語っているページだ”と伝えよう。

図2 「社長あいさつ」という見出しは、内容への期待感を薄めてしまう
図2 「社長あいさつ」という見出しは、内容への期待感を薄めてしまう。「企業戦略」や「ミッション」に変えるのはどうだろうか。

⑤-2 見せ続けたい「ニュースページ」が埋もれていないか?

企業情報については、メッセージページが少ないことの他に、もう1つ大きな問題がある。それは企業情報の「ニュースページ」(リリースページ)だ。

「ニュースページ」は、企業情報にとって重要なページであるが、Web担当者はニュース更新に日々追われている。中堅以上の会社ともなればニュースは多数あるから、それを文言精査して公開するだけで作業は楽ではない。ところが、企業情報のトップに掲載できるニュースサマリーの数は5件から10件。ニュースが多いと、少し前の記事はすぐに「一覧」をクリックしないと見られない場所に埋もれていってしまう。ずっと見せておきたい内容を見せられなくなってしまっているのだ。

機械的に最新情報が変わっていくのが重要なのではない。ホームページというのは「どう見られたいか」「何を見せたいか」が重要なのだ。単にニュースを更新するだけではなく、しばらくの間見せておきたい情報をページの上のほうにわかりやすく掲載し続け、それがどれぐらい閲覧されるかを成果の1つとして測定すべきなのである。

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