消費者庁はこのほど公開した「No.1表示に関する実態調査報告書」で、景品表示法違反にならないための「No.1類表示」の考え方を、NG例も交えて示した。
前提として、「No.1表示類」は商品の内容の優良性や取引条件の有利性を示すが、合理的な根拠に基づかず事実と異なる場合は、一般消費者の「優良誤認」「有利誤認」を招き不当表示として景品表示法上問題となる。アンケート調査やヒアリング調査による回答者の感想などといった主観的評価によってNo.1表示を行う場合、調査結果が合理的な根拠と認められるためには次の要件を満たす必要性があるとした。
- 比較する商品等が適切に選定されていること
- 調査対象者が適切に選定されていること
- 調査が公平な方法で実施されていること
- 表示内容と調査結果が適切に対応していること
比較する商品などの選定
「No.1表示」は競合商品などと比較し、第1位(No.1)であることを示すもの。表示の裏付けとなる調査が合理的な根拠とされるには、少なくとも比較対象となるべき同種・類似商品を適切に選定した上で比較した順位を調査する必要がある。その上で、景表法で問題となる恐れがある比較対象選定のNG例も示した。
「○○サービス 満足度 No.1」といった表示の場合、「○○」に属する同種商品のうち、市場において主要なものの一部または全部を比較対象に含めずに調査を行っている場合はNGとなるとした。
また、インターネット検索で上位表示された同種商品のみを比較対象に選定し、市場において主要な同種商品の一部または全部を比較対象に含めないまま調査を行っている場合もNGになり得るとした。
なお、「比較対象企業選定条件:「○○」で検索上位○社(検索エンジン名)」の注記があっても景表法に抵触する恐れがあると指摘。「記載位置・文字の大きさ・文字の色などから一般消費者にとって明瞭でない場合は、表示内容と調査結果が適切に対応しているとはいえず、景品表示法上問題となる恐れがある」(報告書)としている。
調査対象者の選定
主観的評価による「No.1表示」は、調査実施側による恣意性や調査対象者のバイアスが働きやすく、調査の客観性が担保されるよう留意する必要があるとしている。恣意性の排除要件として「少なくとも、調査対象は、無作為に抽出された者」(報告書)と示した。
景表法で問題となる恐れがあるNG例としては次の2つを上げた。
- 自社の商品等を継続的に購入している顧客だけを調査対象者に選定する場合
- 調査対象者として自社の社員や関係者を選定する場合
「その商品を実際に利用したことがある者」など特定属性に調査した結果、No.1であるかのような表示にもかかわらず、実際の調査内容は異なる場合も表示の合理的な根拠があるとはいえず景表法に抵触する恐れがあると指摘。
たとえば、「顧客満足度」のNo.1表示の場合、「少なくとも、対象商品等を実際に利用したことがある者でなければ、その商品などに満足したかどうかを適切に判断することはできない」(報告書)とした。そのため、「No.1表示」対象を利用したことがない者や利用経験の有無を確認することなく調査対象者を選定した場合は、合理的な根拠とは言えないとしている。また、イメージ調査のみによる「顧客満足度」の「No.1表示」は、景品表示法上問題となる恐れがある。
消費者庁が用意した「顧客満足度No.1」表示の例(画像は報告書から編集部がキャプチャ)
加えて、「サイトイメージ調査」「本調査はサイトのイメージをもとにアンケートを実施しています」「本ブランドの利用有無は聴取していません」などとする注記も、「表示内容と調査結果が適切に対応していないことに変わりはない」(報告書)とし景表法上問題となる恐れがあると釘を刺している。
「~したい」、「~と思う」といったフレーズの「No.1表示」もグレーであると指摘。消費者の意識調査では、こうした表示も「実際の利用者に調査をした結果、第1位であったかのように示す表示」と約半数が誤認しており、景表法上留意が必要であると呼びかけた。
消費者庁が用意した「~したい」「~と思う」フレーズのNo.1表示の例(画像は報告書から編集部がキャプチャ)
その他の留意事項としては、「実際の利用者のうち更に一定の範囲の者を調査対象とすべき場合もあり得る」(報告書)と指摘する。
たとえば、「20代顧客満足度 No.1」のように、実際の利用者のうち限定的な範囲で調査をしたかのように示す表示を行っている場合。また「コスパが良いと思う○○サービス No.1」と表示する場合に、調査対象となる利用者の大部分が、通常よりも著しく安いキャンペーン料金でサービスを受けている時は、実際の利用者のうち一定の範囲の者を除かなければ不公平な調査となる場合があるとした。そのほか、保険商品の「顧客満足度No.1」は、商品特性から実際の利用者のうち保険適用を受けたことがある者でなければ適切な評価を行うことができないと考えられると注意を促した。
調査方法
調査方法も、調査側による恣意性や、調査対象者のバイアスを排除し、公平な調査となるよう留意する必要があると呼びかけた。
NG例として次の2つをあげた。
- 自社に有利になるよう回答を誘導する場合
- 結論ありきの調査が行われている場合
「自社に有利になるよう回答を誘導する場合」については、複数の商品のなかから「おすすめしたい」商品を選択して回答させる場合に自社商品を選択肢の最上位に固定するなど選択されやすくする方法も含まれるとした。
「結論ありきの調査」は、自社の商品が1位になるまで調査を繰り返したり、1位になったタイミングで調査を終了するなどが該当する。
高評価%表示で特に留意すべきこと
「高評価%表示」に関する景表法上の考え方も示した。合理的根拠の考え方は「No,1表示」と共通するとしつつ、「高評価%表示」において特に留意すべき点も示した。
たとえば、「医師の90%が推奨する」といった表示の場合、次をNGとして例示した。
消費者庁が用意した「高評価%」表示の例(画像は報告書から編集部がキャプチャ)
- 調査回答者が医師かどうかを自己申告により確認するだけで、医師であることを客観的に担保できていない場合
- 調査対象者である医師の専門分野(専門の診療科など)が、対象商品等を評価するに当たって必要な専門的知見と対応していない場合
- 調査対象者である医師が、回答に際し、調査会社等から、対象商品等の品質・内容について合理的な根拠がない情報の提供を受けている場合
3.については、「△△試験の結果、この商品には○○の効果がある」、「この商品は安全性について○○の認定を受けている」といった情報が医師に提供されているが、情報が事実と異なっていたり、効果等が客観的に実証されているとはいえない場合が該当するとした。
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消費者庁では不当な「No.1表示類」防止に向け、関係事業者団体などと連携しながら報告書で示した考え方を周知していく。不当な「No.1表示類」の責任は調査会社ではなく広告主にあることを改めて呼び掛けるとしている。あわせて、消費者向けにも「No.1表示類」の根拠とされる調査が、必ずしも消費者の認識するような手法では実施されていない実態があることを周知していくとした。
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オリジナル記事:「No.1表示類」で法令違反にならないために押さえておくべき消費者庁の考え方
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