【リテールメディア最新事例10選】米国企業のリテールメディアネットワーク活用注目トピックまとめ | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2024年5月30日(木) 07:30
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リテールメディアネットワークの米国小売事業者における活用事例や進出の取り組みをまとめて、特に重要な10項目を紹介します

小売業界でリテールメディアネットワークの活用が進んでいます。記事では、米スーパーマーケット大手のWalmart、米ホームセンター大手Home Depotなどの事例を中心に、注目度の高いトピックを紹介します。

2024年はリテールメディアネットワークの活用が拡大

リテールメディアネットワークとは、小売事業者が自社のデジタルチャネル上の広告スペースを第三者に販売できる広告プラットフォームの一種です。広告主は会員制プログラムの情報を含む、小売事業者が自社で収集した顧客データを利用し、広告のターゲティングを行うことができます。広告はリテールメディアネットワークのWebサイト、モバイルアプリ内、店舗内のスクリーンやディスプレイにも掲載できます。

リテールメディアネットワークは、2024年の小売業界で最も注目するべき項目の1つ。顧客基盤を収益化し、販売するブランドの広告機会を創出しようと、小売事業者のリテールメディアネットワークを活用する動きは加速。その投資額が拡大していることからも、高い関心が寄せられていることがわかります。

リテールメディアへの広告支出の割合(2023年1月~11月)(出典:MediaRadarレポート)リテールメディアへの広告支出の割合(2023年1月~11月)(出典:MediaRadarレポート)

リテールメディアネットワークを活用した2024年の成功事例として、WalmartHome Depot米高級百貨店チェーンSaksなどの大手小売事業者が、リテールメディアネットワークの拡大、リブランディング、新たなブランドの創出、新たな成長戦略の発表などがあります。

小売事業者によるリテールメディア戦略の解説

こうした動きは今後もさらに拡大していく可能性があります。米国の大手コンサルティング企業Deloitteが2023年12月に発表した調査結果によると、小売事業者の64%が「2024年末までにリテールメディアネットワークの導入を計画している」と回答しました。

リテールメディアネットワークは、小売事業者にとって新たな収益源になります。2024年のリテールメディアネットワークによる主なトピックは次の通りです。

1. AlbertsonsとCriteoの提携

米国の大手食品メーカーAlbertsonsでは、広告部門を担うグループ企業Albertson Media Collective(アルバートソンズ メディア コレクティブ)が、コマースメディアプラットフォームのCriteoと提携、広告主向けに店舗内のリテールメディアを拡大しています。Criteoは、動画広告やコマースディスプレイのような新しい広告フォーマットの開発を支援しています。

Albertsonsは、自社が収集した顧客データ、店舗での売り上げ、その他の消費者の情報を組み合わせ、広告主により優れたターゲティング広告を配信できる場を提供しています。

2. InstacartがGoogleショッピングと連携

米国で食料品の即日配達サービスを展開しているInstacart(インスタカート)は2024年1月、Instacartのプラットフォームに出稿する広告主がGoogleショッピングにアクセスできるようにすると発表しました。

「Instacartのプラットフォームとファーストパーティを活用した小売メディアのデータを活用することは、消費者向けのパッケージ商品を扱うブランドにとって重要な差別化要因になります」と、Instacartの最高マーケティング責任者であるローラ ジョーンズ氏は説明します。

現在、Instacartは5500を超えるブランドが利用し、ビジネスの成長と売り上げの増加を実現しています。Googleショッピング広告の機能にInstacartが持つ小売メディアデータを重ねることで、Instacart以外でも消費者向けのパッケージ商品を扱うブランドの訴求を強化できます。(ローラ氏)

InstacartはGoogleと連携したリテールメディアネットワークを推し進めているInstacartはGoogleと連携したリテールメディアネットワークを進めている

Instacartは、食品スーパーに提供しているレジ不要のショッピングカート「ケイパーカート」にも広告掲載をスタート。Instacartによると、「ケイパーカート」に広告を掲出するリテールメディア化は、広告を通じてパーソナライズされたレコメンデーションを行うAI搭載のスマートカートと言えます。お薦めの商品は、時期や実施中のキャンペーン、顧客のカートに入っている他の商品などに基づいて表示されます。

3. Macy's、副社長にWalmartの広告事業出身者を起用

米国の百貨店Macy's(メイシーズ)は2024年3月、メディアプラットフォームを手がける子会社Macy's Media Networkの副社長に、Walmart出身のマイケル・クランス氏を起用しました。クランス氏は2年前まで、WalmartのリテールメディアネットワークであるWalmart Connectに在籍していました。

Macy'sの広告ネットワークは、米国の百貨店チェーンBloomingdale'sの広告主とも連携。Bloomingdale'sの広告主はMacy'sの顧客へ広告をターゲット配信できるようにしました。この目的は、Macy'sの顧客に広告主のブランドを広く認知してもらうこと。2020年にスタートしました。

Macy's Media Networkは、広告主がMacy'sとBloomingdale'sの顧客とつながることができる小売業界の主要プラットフォームの1つです。企業のブランドのマーケティング担当者に、メディアを活用した認知拡大施策をより効果的に進められる機会を提供しています。(Macy's 顧客・デジタル最高責任者 マックス・マグ二氏)

4. Lowe'sはGoogleが提携

米国の住宅リフォーム・生活家電チェーンであるLowe's(ロウズ)はGoogleと提携。3月にリテールメディアソリューションを発表しました。

発表したリテールメディアソリューションのベータ版では、Googleの検索広告「Search Ads 360」を使用したリテールメディアキャンペーンを促進しています。検索広告を利用した仕組みにより、広告主はリテールメディアネットワークの出稿先だけでなく、新たなサードパーティチャネルにもリーチを広げることができます。

セルフサービスにすることにより、小売事業者はユーザーレベルのデータを公開することなく、プライバシーを重視した方法で、自社のブランドパートナーとファーストパーティのオーディエンスを選択的に共有することができます。

これにより、ブランドは消費者のプライバシーを尊重しながら広告パフォーマンスを向上させつつ、関連性の高い広告で購買意欲の高い消費者にリーチすることができるのです。また、Googleは新たなパートナーとなる小売事業者を常に探しています。(Google プロジェクトマネージャー イワン・フィッシャー氏)

5. Home Depotは広告事業を刷新

Home Depotは自社のリテールメディアネットワークを、「Orange ApronMedia」として再スタートさせました。

「Orange Apron Media」のメラニー・バブコック副社長は米国のEC専門誌『デジタル コマース 360』の取材に対し、「『「Orange ApronMedia」』の名称は、従業員が着用するユニフォームであるオレンジ色のエプロンにちなんだもので、業界全体に広がっている他のリテールメディアネットワークと差別化するための試みでもある」と説明しています。

広告主はHome DepotのWebサイト上で、バナー、商品カルーセル、販促メールなどの広告メニューを購入することが可能。一部の店舗では、Home Depotの店内のテレビや売り場に表示する広告を購入できます

Home Depotは現在、数千のサプライヤーを広告主として抱えています。メラニー氏によると、今後数年間でその数を倍増させる計画です。

6. Chase銀行がリテールメディアネットワークに参入

米銀行のChase(チェース)は2024年4月、Chase Media Solutionsを設立し、広告事業としてリテールメディアネットワークに進出しました。デジタルメディア事業はブランド各社にChaseの顧客8000万人とつながる手段を提供するそうです。Chase Media Solutionsは、リテールメディアプラットフォームとして唯一の銀行主導型であるため、一般的なリテールメディアネットワークにはない利点があります。

「ほかの小売事業者と同様に、Chaseも顧客のファーストパーティデータと熱心なファンを抱えています」と、Chase Media Solutionsのリッチ・マールストック社長は説明しています。

Chaseを際立たせている特徴は、他社の追随を許さないほどの規模と顧客からのインサイトです。Chaseは、ブランド、小売事業者、ショッピングの業種にまたがり、購買行動の包括的な見解を提供します。これによって、広告主となる小売事業者のパーソナライゼーションを強化し、ブランドが消費者の興味をかき立てるプロモーションを提供するのに役立つのです。(リッチ社長)

Chaseの広告プランの出稿している小売事業者は現在のところ、カナダ最大の航空会社Air Canada、アウトドアストーブのSolo Stove、米国のコーヒー製造販売のBlue Bottle、米国のファストフードチェーンであるWhataburgerなどです。

7. Walmartが「Walmart Connect」の成長計画を発表

Walmartは2024年4月上旬、広告プラットフォーム「Walmart Connect」の最新情報と目標を発表しました。

「Walmart Connect」で今後予定されているいくつかの項目をまとめます。

  • ディスプレイ広告の提供拡大
  • 「walmart.com」販売事業者以外の広告活用
  • ストリーミングサービスを提供するRoku(ロク)およびTikTokとのメディアパートナーシップ
  • 店舗内広告の広告クリエイティブ作成のサポート
  • 従来よりも優れた広告分析ツールの提供

Walmartは米テレビメーカーのVIZIO(ビジオ)のM&Aを含め、広告事業の成長に向けた動きを加速しています。VIZIOが保有する1800万人のユーザーデータを利用し、「Walmart Connect」の広告ターゲティングの精度をさらに上げることができます。

は直近では、メキシコの広告技術プラットフォーム「Infillion(インフォリアン)」との統合を発表。この提携によってWalmartは、ラテンアメリカの広告主に人工知能(AI)で最適化した高度なメディアプランを提供できるようになります。

8. 高級百貨店がリテールメディアネットワークを構築

高級百貨店のSaksは、顧客とデジタル広告主をつなぐ「Saks Media Network」の立ち上げを発表しました。SaksのEC担当者は、高価格帯ラインの商品を扱う小売業界では初のリテールメディアネットワークの1つになると説明しています。

Saksは、「象徴的なブランド、豊富なファーストパーティの顧客データ、年間4億3500万件以上のサイト訪問という強力なトラフィック」を活用。スポンサー付き商品広告やディスプレイバナーを通じて、広告主が扱うブランドの販売力アップを支援し、ブランドの収益を増加させる計画です。

靴とバッグを展開するStuart Weitzman(スチュアートワイスマン)やデニムのRag&Bone(ラグアンドボーン)など、Saksを通じて販売する著名なブランドはすでに、「Saks Media Network」を利用しています。

「Saks Media Network」は、販売するブランドとの関係も強化しています。Saksの社内メディアチームは、広告出稿する小売事業者が各ブランドのビジネスを販売促進できるようにするため、出稿をカスタムできる仕様を開発しています。

9. Best BuyはCNETと提携

米家電量販店のBest Buyは、テック系ニュースサイトのCNET(シーネット)と提携し、Best BuyのWebサイト、店舗、モバイル・アプリにCNETのお薦め商品やコンテンツを統合すると発表しました。

Best Buyはこれを「ニュースメディアと小売事業者の新しいリテールメディアモデル」と呼んでいます。広告主は両社の広告枠を共有し、ファネル全体で両社のユーザーデータを活用することができます。両社の月間ユニークビジター数は合計で5000万人ということです。

「Best BuyとCNETの提携は、記事コンテンツとリテールメディアのブランドがどのように協業し、消費者と広告主の双方に多くの機会をもたらすことができるかを表す強力な事例となります」と、CNETの収益担当エグゼクティブ バイスプレジデントであるローレン ニューマン氏は自信を持っています。

データに基づくユーザーインサイトに重点を置いて、広告主のブランドがリーチを拡大し、従来は断片的だったデジタルメディアのエコシステム全体への影響を測ることができるよう、広告効果測定には新しい基準を導入します。(ローレン氏)

10. T-Mobileはリテールメディアネットワークの提供を予定

米携帯電話キャリアのT-Mobileの広告事業であるT-Mobile Advertising Solutionsは、提供する広告サーzビスにリテールメディアネットワークを追加する予定です。このネットワークを利用した広告出稿では、全米1万1000以上のT-モバイル店舗に設置された2万のスクリーンに広告が広がり、毎月5800万人の消費者にリーチすることができます。

広告主は、T-モバイルのアプリ会員も視野とする場合、さらに毎月700万人の消費者にリーチが可能です。

T-モバイルはインターネットに接続されたテレビ端末「コネクテッドTV(CTV)」のリーチを拡大しました。T-モバイルによると、ストリーミング会社である米Plexの無料広告付きオンデマンド配信を利用して、関連性の高い広告を消費者にリーチできるということです。

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オリジナル記事:【リテールメディア最新事例10選】米国企業のリテールメディアネットワーク活用注目トピックまとめ | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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