通販サイトの新たな販売手法として注目されている「単品リピート通販」。ですが実際にどういった手法なのか、わからない方も多いでしょう。そこで今回は単品リピート通販の特徴やメリット、通常の通販との違いや市場規模などを詳しく紹介します。
ツクルくん
単品リピート通販の広告はよく見かけるけど、販売側にそんなにメリットがあるの?
カラミちゃん
実はさまざまなメリットがあるんです。これから単品リピート通販について詳しく紹介します。
単品リピート通販とは
リピート通販とは「商品を顧客にリピート(ひき続き購入)してもらう通信販売の手法」です。その最たる例は、定期的に顧客へ商品を届ける「定期購入・販売」などのビジネスモデルです。
そのなかでも、リピートしてもらう前提で一種類または極少数の商品にしぼって通信販売を行う手法として注目されているのが「単品リピート通販」です。
単品リピート通販の特徴
単品リピート通販の特徴としてまずあげられるのが、リピートしてもらうという特性上、健康食品や化粧品といった消費されやすい消耗品が取り扱われています。
さらに、単品リピート通販を行っている多くの起業は自社ブランドの商品、またはOEMをした商品のみを扱っており、仕入れなどは行わないことも特徴です。
【事例】単品リピート通販を行っている企業
単品リピート通販は一部の特殊な企業のみが行っていそうなイメージですが、実はよく知られている有名企業も導入しているビジネスモデルです。事例として、次のような企業が単品リピート通販を行っています。
- サントリーウエルネス…サプリメント、健康食品(セサミンなど)
- 大正製薬…サプリメント、健康食品(グルコサミンなど)
- カゴメ…野菜ジュース、健康食品、サプリメントなど
単品リピート通販を行っている企業では継続して利用してもらうため、割引や送料無料などさまざまな特典を用意していることが多いです。1回あたりの利益が少なかったとしても、定期購入してもらうことでトータルでの利益は出やすい仕組みなのでしょう。
単品リピート通販で必要な機能とは?
単品リピート通販を取り入れる場合、どのような機能を実装するべきなのでしょうか。単品リピート通販を始めるのに必要な機能を3つ紹介します。
初回割引機能
単品リピート通販は通常の商品購入と違い定期購入になってしまうので、商品が魅力的でも購入を迷ってしまう人が多いでしょう。そのため、初回購入のハードルを下げる必要があります。
そこで重要なのが、初回割引機能です。初回購入時の価格が通常販売価格よりも割引されるので、お試し感覚で購入してもらいやすくなるでしょう。
お届けスケジュールの変更機能
単品リピート通販で継続して商品を購入したもらうためには、購入しやすい環境を構築することも大切です。
たとえば1か月に1回の定期購入を設定していたとしても、長期旅行や体調不良などで、購入した商品をユーザーが1か月で使い切らないこともあります。そのような時に、定期便の期間を変更できないとユーザーは不便に感じて、最悪の場合、解約してしまうかもしれません。
ユーザーが自由に配送間隔を変更したり、次回のお届けをスキップしたりできる、お届けスケジュールの変更機能は必須の機能といえます。
自動メール機能
単品リピート通販の場合、通常の商品購入とは送るメールの種類が異なります。
通常の商品購入の場合、ユーザーが意思を持って購入しているため、ユーザーにメールを送る必要があるのは注文後の内容確認メールや発送完了メールなどです。
ですがリピート通販の場合はまず購入前に「◯月◯日に定期購入商品をお届けします。変更の場合は〇月×日までにお願いします」などの購入確認のリマインドメールを送り、変更可能な期間が過ぎた後は「〇月分の商品のお届けが確定しましたので、発送いたします」といった確定メールを送るなど、段階が必要です。
お届けの2週間前や10日前など、自動的にリマインドメールや購入確定メールを送れる機能があれば、アナログ管理によるトラブルを避けることもできます。
単品リピート通販と一般の通販との違い
単品リピート通販は通常の通販とはどの部分が違うのでしょうか? 詳しく比較していきましょう。
総合通販の特徴と単品リピート通販とのビジネスモデルの違い
まず、一般の通販サイトのビジネスモデルは、ほとんどが総合通販と呼ばれる、多くの商品を取り扱っている通信販売の形態になります。
総合通販の特徴としては、「仕入れ販売」と「取り扱う種類」の2つがあります。
総合通販のわかりやすい例としてあげるなら、Amazonや「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」などのモールなどが代表として知られています。
総合通販は基本的にメーカーから商品を仕入れて販売します。また、ネットショップのジャンルやコンセプトによりますが、さまざまな種類の商品を取り扱っています。
メーカーから仕入れているため、同じ商品が別のお店で並ぶこともあり、価格競争が起きやすいのが総合通販のデメリットの1つでもあります。
比べて単品リピート通販はその字の通り、単品(1つの種類)しか取り扱いません。ここが総合通販との大きなビジネスモデルの違いになります。
さらに細かく比較すると下記のようになります。
単品リピート通販 総合通販 商材 化粧品や健康食品などの消耗品 服・雑貨・家電・など幅広い 品ぞろえ 1つ 多い 価格競争 なりにくい なりやすい 利益率 高くなりやすい 低くなりやすい 顧客獲得費用 高くなりやすい(認知などがないため) 低く抑えられる 購入頻度 消耗品のため定期的に購買が発生 同じ商品は買われにくい
単品リピート通販のメリット・デメリット
消費者にとっては毎回注文しなくて済んだり特典があったりする、単品リピート通販。では導入すると、ショップにとってどのようなメリットやデメリットがあるのかをご紹介します。
メリット
単品リピート通販には、主に次のような3つのメリットがあります。
価格競争に飲まれにくい
先ほどもお伝えしたように、単品リピート通販で扱う商品は基本的に他社でも取り扱うような既製品ではなく、オリジナル商品であることから、価格競争に飲まれにくい特徴があります。
価格競争により単価を下げなければ売れないという状況を避けられるため、高い利益率で運営することが可能でしょう。
売上予測を立てやすい
新規注文や定期購入商品のスキップなども発生しますが、定期購入契約のため、どのくらいの注文が入るかをおおよそ把握できることから、売上予測が立てやすくなります。
総合通販の場合は商品が話題になるといきなり売り上げが高くなりますが、一方でブームが去ると売上が一気に下がるなど、売り上げが不安定なことが多いです。
ですが単品リピート通販は定期購入のため、安定した収益を得やすく、今月の売り上げが先月よりも一気に下がるといったことはあまり起こらないでしょう。
生産量を管理できる
売上予測に加え、生産数の目安もわかるため、生産量の管理もしやすいです。在庫が過剰になったり、あるいは在庫が不足したりといった状況を防止できます。結果、在庫がないことによる販売機会の喪失も防げるでしょう。
また、生産数の増減が少なく済むため、生産コストも抑えられるといえます。
デメリット
さまざまなメリットのある単品リピート通販ですが、次のようなデメリットもあります。
商品を気に入ってもらうための工夫が必要
販売する商材は1つなので、扱う商品が気に入ってもらえないと売り上げが立たないというリスクがあります。また、商品のクオリティを上げるだけでなく、リピーターになってもらうための仕組み作りもきちんと行わないと、継続購入には結び付きにくいでしょう。
集客に労力がかかる
オリジナル商品は、大手の既製品などと比べると認知度が低いです。購入してもらうには多くの人に商品の存在を知ってもらわなければならないので、宣伝・広告などの集客が必要になります。
商品が売れるようになるまで、集客に時間もコストもかかってしまうのが単品リピート通販のデメリットの1つといえます。
リピート通販の市場規模はどんどん広がっている
リピート通販自体の市場規模がどのような状況なのかも気になりますよね。
消費者庁の資料「サブスクリプション・サービスの動向整理」によると、定期購入(リピート通販)を含む、2018年度のサブスクリプションサービスの市場規模は5627億円で、2023年度には8623億円と、約1.5倍にまで成長すると予測されています。
さらに単品リピート通販で多く販売されている、サプリ市場が好調です。2021年12月の産経新聞の記事によると、コロナ禍での健康志向が高まり、日本国内のサプリ市場は1兆円を超え、さらに成長が期待されているそうです。
このような、サブスクリプション(定期購入)市場自体の拡大、単品リピート通販で人気の商品市場の成長から、今後日本でも単品リピート通販はますます増えていくことが予想されます。
単品リピート通販に向いている商材
総合通販に比べてさまざまなメリットがある単品リピート通販ですが、実際に販売するにあたって向いている商材はどんなものがあるのでしょうか?
実はその特性からリピート通販に向いている商材は限られています。繰り返し購入してもらうことで利益を得る販売方法のため、消耗品や定期的に販売される雑誌などが望ましいと考えられます。
さらに、リピート通販で購入してもらうためには「商品のオリジナリティ」が重要です。
商品には「型番商品」と「オリジナル商品」の2種類があり、前者は大手企業が販売している商品のことです。コンビニやスーパーで簡単に手に入るのが特長ですが、それをわざわざ「ネットショップで購入しよう」と考える購入者は少ない傾向にあります。
一方、オリジナル商品はどこでも購入できるものではありません。店舗限定だったり、一部の認可を受けた提携店でのみ販売されていたりすることがほとんどです。
「そこでしか手に入れることができない商品」はネットショップでの購入につながりやすいため、多くの単品リピート通販の業者はオリジナル商品を商材として扱うことが多いのです。
購入場所が限定的であったり、独自性があったり、消耗品であることなどを考慮して商材を選びましょう。
また、リピート通販と似た販売方法として、頒布会というものがあります。リピート通販が同一商品を定期的に届けるのに対し、頒布会は毎回違う商品を届けます。
季節ごとに旬の野菜を届けたり、ファンが多いショップさんは、毎月異なった商品のセットをワクワク感と共に届けたりすることができます。
リピート通販と頒布会の2つの切り口からも商材選びを検討してみましょう。
単品リピート通販を成功させるポイント
さまざまな商品を扱っている総合通販よりも購入難易度の高い単品リピート通販を成功させるには、どうすれば良いのか3つのポイントをご紹介します。
新規顧客の集客に力を入れる
ポイント1つ目は、新規顧客獲得に向けた集客の強化です。
すでにお伝えしているように、単品リピート通販の商品はオリジナリティはあるものの知名度が低いので、きちんと集客する必要があります。
できるだけ多くの人に商品を知ってもらい、実際に定期的に購入してくれる人をいかに増やせるかが、単品リピート通販での成功のカギになります。
短期間での新規顧客獲得に有効なのが、購入してくれる可能性が高いターゲット層に合った広告宣・伝です。
また、効果を実感するまでに時間はかかりますが無料でできる集客方法としては、ECサイトのSEO施策(コンテンツSEO)が上げられます。まずは手軽な方法から始めたい方には、SNS運用による集客がおすすめでしょう。
広告やSNS運用、SEO施策など、ターゲットに合った手法を選択して集客していくことがポイントです。
初回購入のハードルを下げる
1回ごとに購入の商品に比べ、定期購入となるとユーザーはなかなか購入を決断できないため、初回購入のハードルは下げましょう。
たとえば、初回購入時のみの特別割引や送料無料特典などが方法としてあげられます。
初回だけでなく、2回目、3回目の購入時も特別割引価格で購入できるようにすれば、さらにユーザーの購入を後押しするでしょう。
重要なのは、初回購入のハードルを下げて購入してもらいやすい環境を作ると同時に、定期購入してもらえるよう特典を設けるなどの工夫をすることです。
アップセル・クロスセルなどを活用してLTVを高める
LTV(顧客生涯価値)は、顧客が自社の利用を始めてから利用を止めるまでに生み出される生涯利益のことをいい、継続的な収益を上げるために重要な指標です。
LTVを高める方法としては、アップセルやクロスセルといった手法があります。
アップセルは、同じ種類の商品でもより高単価なものを購入してもらうことです。
健康食品であれば、価格は上がるものの有効成分が通常の商品より2倍含まれているなど、より高機能なものを顧客に促します。
クロスセルは、顧客がすでに定期購入している商品に関連するもの、一緒に利用してもらうことで相乗効果が期待できるものなどを合わせて購入してもらうことです。
たとえば化粧品の場合、その化粧品と一緒に使うことでより効果がアップする他の化粧品を合わせて紹介するのがクロスセルになります。
アップセルもクロスセルも、レコメンド機能などを使って関連する商品を表示させることで購入を促せます。
単品リピート通販専用カートの選び方
リピート通販で重要な要素になるのが、「CPO」(新規顧客の購入を獲得するためにかかった費用)と「LTV」(顧客が初回の購入から最後の購入をするまでの売り上げの累積)のバランスです。
リピート通販の特性として、CPOが初回受注単価を上回るのがほとんどであることがあげられます。ネットショップでリピート通販を始めるには、カートシステムを導入する必要がありますが、単発販売に比べると初期費用として高額なシステム利用料やクレジット決済導入費用がかかります。
つまり、リピート通販のメリット自体は単発販売より多くあるものの、初期費用のせいで初めて商品が売れた段階では赤字になりやすいのです。
このため、リピート通販を収益化するためにはCPOを可能な限り抑え、LTVをできるだけ上げていくことが重要になります。
単品リピート通販を行う際の注意点
単品リピート通販を成功させるには、より多くの人に定期購入してもらい、定期購入を継続してもらうことが必要になります。
一方で、無理な定期購入は消費者庁の規制に抵触する恐れがありますし、かえって顧客のイメージを悪化させてしまうこともあります。そのため単品リピート通販では、次の点に注意しましょう。
- 定期購入であることを明記しておく
- 解約の方法を明確に提示する
- 初回購入価格だけでなく2回目以降の価格も明示する
- 支払の時期を明記する
- 発送の時期を明記する
令和4年(2022年)6月に、改正特定商取引法が施行され、カートシステムの最終画面で分量や販売価格、申し込みの解除に関する表示などが義務付けられています(参考:消費者庁「事業者向けチラシ 貴社カートシステムでの改正法への対応について」)。
また、内閣府大臣官房政府広報室が運営する政府広報オンラインでも、定期購入トラブルについて消費者向けに注意喚起をしています。
定期購入によるトラブルが増えていることから、国が消費者を守るためにこのような法改正などが行われていると考えられます。
消費者にとって不利益になるような定期販売を行ってしまうと罰則が科されてしまう可能性もあるため、単品リピート販売を行う際は消費者が誤解せずトラブルが起こらないような表示を心がけてください。
まとめ
単品リピート通販は、他のサイトでは売ってないようなオリジナル商品を売ることから、価格競争に飲み込まれにくいなどのメリットがあります。
また、定期購入になるので総合通販よりも安定して収益が得られるでしょう。
方、定期購入による消費者トラブルが増えているのも事実です。消費者に誤解を与えるような表示は、罰則の対象になりかねません。
定期購入だからこそ、表示が義務付けられている内容はきちんと明記し、消費者にとってわかりやすいサイトをめざしましょう。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
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