食品の通販や宅配を行う各社は、新規事業として施設向け給食事業に参入、強化している。施設向け給食市場は人材不足が深刻化し、食事の調理を外部委託するケースが増加。通販や宅配各社がこれまでに培った商品開発や製造、配達のノウハウを給食事業に応用している。強みを生かして、数年後をメドに事業規模数百億円へと成長を見込む。
給食は自社調理から委託にシフト。今後の市場成長にも期待
施設向け給食市場は4.5兆円と大きく、少子高齢化の加速などで今後の成長率も高い市場といわれている。一方で、労働力不足で人件費が、円安などの影響を受けて食材費が高騰。DXの遅れも指摘されている。施設運営側は利用者向けの食事を自社調理から委託調理へとシフトするなど、生産性の高い事業モデルへの転換がすすんでいる。
オイシックス・ラ・大地:ミールキットを業務用に応用
オイシックス・ラ・大地は中長期戦略で、給食事業を強化すると発表した。自社調理およびシダックスと協業する受託調理をあわせて、数百億円規模の事業へと拡大していく。
給食事業では、ミールキットの製造とメニュー開発のノウハウを活用する。給食事業と個人向け通販の食材調達を共同で行うことで、高品質、低コストでの調達を実現。個人向けミールキットを業務用に応用し、製造の効率化と高付加価値商品の開発をめざす。また給食事業を通じて食にこだわりのある新規客層との接点を拡大し、通販への相乗効果も期待する。
オイシックス・ラ・大地は高付加価値による差別化を図る(画像はオイシックス・ラ・大地の2023年3月期通期決算説明資料から編集部がキャプチャ)
昨年10月にTOB(編注:株式公開買付)が成立して関連会社となったシダックスとの協業では、ミールキットを活用した受託調理を行う事業モデルを構築する。オイシックス・ラ・大地がシダックスに業務用ミールキットを卸販売し、シダックスが自前施設で受託調理する。
4月からテストマーケティングとしてシダックスが新規受注した保育施設への提供を始めており、順次、取引施設を拡大する。25年3月期以降に、高齢者施設や病院など提供先の拡大をめざす。
すでに保育園向けに展開する「すくすくOisix」で業務用ミールキットの活用を実施。導入により食材費・人件費の総額18%削減に貢献したほか、DXによる給食業務の省力化を実現したという。カット済み食材の比率を高めることでさらなる省力化を図れるとしている。
「すくすくOisix」では売上規模100億円をめざす(画像はオイシックス・ラ・大地の2023年3月期通期決算説明資料から編集部がキャプチャ)
ベネッセホールディングス:介護事業に参入。差別化のポイントはラインアップの豊富さ
ベネッセホールディングスも今後、介護施設や病院向けに食事を提供する介護食事業に参入する。介護食事業と人材サービスを行う介護HR事業を合わせて、2028年に売上高300億円を計画する。
2028年までに売上高300億円を計画(画像はベネッセホールディングスの「ベネッセグループ変革事業計画」から編集部がキャプチャ)
高齢者施設や病院向けに介護食事業を行うのは、ベネッセパレット。嚥下(えんげ)困難者のニーズに対応したソフト食やミキサー食を提供する。
これまで8年間にわたって自社の介護施設の利用者向けに、1日5000食を提供した実績を持つ。調理されたメニューをミキサー加工し、風味や見た目が良く食べる楽しみと栄養効果を合わせて提供。メニュー数は120種で、充実したラインアップで他社との差別化を図っていく。
商品の製造では独自のノウハウを生かす。料理ごとの離水対応を個別に行うといった誤嚥リスクへの対応を行うほか、業界団体基準に準拠した堅さを実現するなど安全性にも配慮している。
ヨシケイ:施設向け販売好調。販売数は12%増で推移
ヨシケイ開発は2013年から、高齢者や障がい者施設向け給食事業「ヨシケイキッチン」を手掛ける。個人用ミールキットのメニューを施設向けに応用。自社便での配送を行い、施設側の要望を直接吸い上げてサービスを改善してきた。今年4月に採用施設が5000か所となり、年間販売数は前年比12%増(22年9月末)と拡大している。
ヨシケイ開発が手がける「ヨシケイキッチン」(画像は「ヨシケイキッチン」の公式Webサイトから編集部がキャプチャ)
ヨシケイ開発が本部機能を担ってメニューを開発し、個人向け宅配事業で加盟するフランチャイズが受注や配達などを手掛ける。なお、現状はフランチャイズ65社のうち52社が施設向けの配達を行っているという。
施設向けのメニュー開発は原価設定を踏まえて、ミールキットのメニューを応用する。主菜と副菜を組み合わせた均一価格で提案し、予算を立てやすいようにした。「食材の発注や調達、調理、残った食材を使った献立の考案など施設の業務負担を『ヨシケイキッチン』が解消している」(ヨシケイ開発)とした。
自社配送による対面での顧客接点を生かし、施設の要望を直接吸い上げてサービスの改善を行う。10月から湯せんや流水解凍で調理できる「超簡単おかず」のボリュームを増やしたコースを新設する。もともと高齢者施設向けに開発したものだが、障がい者施設からの要望を受けて主菜を増やして提供する。
人気商品は「超簡単おかず」で、前年比14%増と伸長した。調理師が不在でも大人数分を用意できる利便性が奏功した。このほか、湯せんや流水解凍と新鮮な野菜を使った「簡単おかず」が同11%増、新鮮な野菜を使った「手作りおかず」が同5%増だった。
導入する施設からは「業務負担が減り、他に時間が使える」「価格が手ごろで、必要な人数分を頼めて無駄がない」などの評価を得ているという。
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オリジナル記事:オイシックス、ヨシケイ、ベネッセが強化する施設向け給食事業とは?市場の成長性+各社の独自戦略を解説 | 通販新聞ダイジェスト
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