米国を代表するD2C企業「Warby Parker」が店舗拡大&廉価販売&寄付行為を続ける理由 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2022年4月14日(木) 07:00
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Warby Parkerは2021年の株式上場以前、D2Cを代表するユニコーン企業と呼ばれていた。米国のビジネスメディア『Fast Company』が発表した「世界で最もイノベーティブな50社(THE WORLD’S 50 MOST INNOVATIVE COMPANIES)」で、アップルやアリババ、グーグルなどを抑えて1位を獲得したこともある

メガネブランドのWarby Parker(ワービー・パーカー)は2022年、40の小売店舗を新たに出店する計画です。「Buy a Pair、Give a Pair」プログラム(メガネが1本売れるごとに、メガネを必要とする人に1本寄付する仕組み)を通じて、寄付したメガネの数は1000万本を突破。成長をけん引してきた販売価格95ドルでのメガネ販売、店舗出店を今後も続けるとWarby Parkerのデイヴ・ギルボア共同CEOは話します。

インフレでも販売価格を維持する理由は「値段への不満」

2010年にオンライン専門企業としてスタートしたWarby Parker(Digital Commerce 360刊「北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版で315位)は、初年度にオープンした35店舗を含む合計161店舗を展開(2021年時点)しています。これを、2022年には200店舗以上に拡大する計画です。

先日、ラスベガスで開かれた小売業界のカンファレンス「Shoptalk」で、ギルボア氏は「2010年以来、同じ価格で販売しているスタンダードのメガネの価格を引き上げる予定はない」と説明。米国のインフレ率は2月に7.9%と40年ぶりの高水準に達していますが、Warby Pakerはサプライチェーンをきっちり管理しているため、価格を維持することができるのでしょう。ギルボア氏は価格を据え置く理由をこう言います。

私たちがWarby Parkerを始めたのは、消費者がメガネの値段の高さに不満を抱いていたからです。

Warby ParkerのECサイト(Warby ParkerのECサイト(画像はWarby ParkerのWebサイトから編集部がキャプチャ)

Warby Parkerは、低価格への挑戦を続けたいと考え、コストと製造工程を管理できるよう一気通貫したインテグレーションに投資してきました

インテグレーションへの取り組みの最近の例としては、2つ目となる光学研究所をラスベガスに開設。その広さは6万9000平方フィートにのぼります。ニューヨークのスロートバーグにも同様のラボを開設しています。

ギルボア氏は、Warby Parkerが95ドルの眼鏡を販売し続けるには、他の要因もあると言います。輸送業者との長期契約で燃料価格の上昇や燃料関連サーチャージの影響を受けていない、遠近両用レンズなど高価格帯の製品を販売すること――などです。

Warby Parkerは複雑な処方箋のメガネを作ることができるため、あらゆる層にサービスを提供することができるとギルボア氏は指摘します。老眼鏡や遠近両用レンズを必要とする可能性が最も高い45歳以上の顧客は、急速に成長している顧客層になっているそうです。2019年にはコンタクトレンズの販売も開始しています。

価値観に基づくマーケティング

価格を抑えるだけでなく、一定の価値観を貫くことで消費者とのつながりを持ち続けているとギルボア氏は言います。その1つが、「Buy a Pair、Give a Pair」プログラムで、Warby Parkerは4月初めにそのプログラムを通じて1000万本以上のメガネを寄付したと発表しました。

このプログラムは、世界中のパートナーと協力し、Warby Parkerのメガネが1本購入されるごとに、メガネを必要としている人に1本のメガネを寄付しています

Warby ParkerのECサイト「The whole story begins with you」(すべての物語は、あなたから始まる)と書かれたページでは、寄付プログラムの概要やメッセージなどを記載している(画像はWarby ParkerのWebサイトから編集部がキャプチャ)

私たちは、メガネを95ドルで提供することで、消費者にとってより身近なものになると考えています。しかし、95ドルのメガネを買う余裕のない人々が世界中に何十億人もいるのです。グアテマラの田舎であろうと、ニューヨークの郊外であろうと、可能な限りその地域のコミュニティに入り込み、彼らの問題を解決する最善の方法を理解しようと努めています

Warby Parkerはプログラムを運用するため、眼科医療への障害を克服するための公益法人「Warby Parker Impact財団」も運営しています。

ギルボア氏は、製品をより持続可能なものにしようとする試みの一例として、コンタクトレンズブランド「Scout」のパッケージを開発、従来のブリスター包装よりも約80%少ないパッケージを使用したと言います。

公益法人は、社会的・公益的な利益を生み出し、責任を持って持続可能な運営を行うために設立しました

実店舗の拡大

ギルボア氏は、店舗を拡大することで対面式の眼科検査などのサービスを提供できるようになると説明。米国の消費者は、メガネの約70%を検眼士による検査を受けた場所で購入しているため店舗は重要だとギルボア氏は言います。

店舗は新規顧客の開拓につながりますが、リスクもあります。ギルボア氏は、コロナ禍で店舗の売り上げが落ち込んだものの、実店舗を開くことの長期的な価値を重要視しています。

2022年末には、全国の店舗がコロナ禍前の水準に戻ると考えています

3月17日のアナリストとの電話会議でギルボア氏は、新型コロナウイルスのオミクロン変異体により、2021年第4四半期に500万ドル近い売上損失が発生、2022年第1四半期には売上損失が合計1500万ドル以上になると言います。これは、Warby Parkerの店舗で買い物する人の減少に起因しています。

遠隔医療への投資

店舗をオープンする一方で、Warby Parkerは遠隔医療への投資を続けているそうです。2021年は、10分でメガネやコンタクトの処方を更新できる「バーチャル視力検査」アプリを展開しました。

免許を持った医師が各検査を評価し、患者は48時間以内に結果を受け取ることができます。このサービスには15ドルかかりますが、現在の処方箋が更新可能な場合のみ支払う仕組みになっています。

業績推移は?

Warby Parkerは2021年12月期に1億4430万ドルの純損失を計上し、損失幅は2021年12月期の5590万ドルから拡大しました。2021年第4四半期だけで4490万ドルの損失を計上し、損失幅は2020年第4四半期と比べて10倍以上に増加しています。

損失拡大の主な原因は、販売費および一般管理費の急増で、2020年12月期比で5190万ドル増加し、1億2210万ドルに達したといいます。 コスト増加の主な原因は、株式ベースの報酬費用と関連する雇用者給与税で、3160万ドルにのぼったと報告しています。

Warby Parkerは2022年12月期の純収益を6億5000万ドルから6億6000万ドルと予想しており、2021年実績に対して20%から22%の成長率を示しています。この見通しには、年初に発生したオミクロン変異体の混乱に関連した、約1500万ドルの売上損失(成長率3%ポイント)の影響が含まれています。

ポジティブなニュースとしては、Warby Parkerの2021年の総売上は5億4080万ドルで、2020年の3億9370万ドルから37.4%増加したと発表しました。

また、Warby Parkerは12月31日に終了した年度について、次のように報告しています。

  • 有効顧客数が39万人(21.5%)増え、合計220万人に増加
  • 売上総利益は37.0%増加し、317.7百万ドルに到達
  • 第4四半期の顧客1人当たりの平均売上高は前年同期比13%増加し、246ドルに上昇

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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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