米国のD2Cスタートアップ企業に学ぶロイヤリティ向上戦略 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

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携帯用ミキサーを数百万台販売したスタートアップ 「BlendJet」

携帯用ミキサーのブランド「BlendJet」は、消費者を自社で手がけるD2CのECサイトに誘導し、他の小売事業者が運営するWebサイトでの露出を制限しています。Amazonでの販売も行っていません。そのため、チェックアウトに関する顧客調査において、ダイレクトで貴重な情報を豊富に提供しています。

起業のきっかけはケガ

BlendJetのライアン・パンピリオン共同設立者兼CEOによると、最初は7000台からスタートした携帯用ブレンダーは、いまや3秒に1台が売れる大ヒット商品に。販売台数は数百万台に膨れあがっています。パンプリン氏はこう言います。

携帯用ブレンダーという商品の特性上、我々のターゲット層はかなり広く、口がある人なら誰でも顧客になってもらえます

BlendJetは、顧客との長期的な関係を重視し、2021年売上高は前年比50%以上で成長しました。オンライン売上の3分の1はリピート顧客によるものです。消費者は追加のBlendJet、ジェットパック、アクセサリー、および他の小売業の製品を扱うBlendJet内のマーケットプレイスからアイテムを購入しています。

「2022年も同じレベルの成長が続くと予想しています」とパンプリン氏は言いますが、オンライン売上高の具体的な数字については言及しませんでした。

BlendJetは携帯用ミキサーを販売するブランドで、食事や運動後の飲み物に、果物や野菜を使った健康的なスムージーを加えたいと考えているミレニアル世代やZ世代にアピールしています。また、いつでもすぐに使えるJetPackブレンダーパックを使うと、外出先でも健康的な食事ができます。

パンプリン氏によると、BlendJetの魅力は、さまざまな支払い方法に対応したスムーズなショッピング体験にあると言います。ワンクリックのエクスプレスチェックアウト「Amazon Pay」と「PayPal」の2つのオプションを提供。また、クレジットカードや、後払い決済サービス「AfterPay(アフターペイ)」でも支払いできます。

Cryptocurrency(暗号通貨)ユーザーは、Coinbase(暗号通貨交換プラットフォームを運営する米国企業)を使って支払うことも可能。PayPalのスキームと同様、チェックアウト時にオプションを選択すると、Coinbase digital walletにログインし、支払いオプションとして選択するようリダイレクトされます。その後、消費者はBlendJet.comに戻り、購入を完了することができます。

また、顧客との長期的な関係を維持するために、他の小売業の製品を扱うBlendJet内の「マーケットプレイスセクション」で、断熱ブレンダースリーブなどのアクセサリー、スムージーの材料、レシピなども提供しています。

BlendJetを開発したきっかけは、パンプリン氏が事故で脳に損傷を負ったことでした。それ以来、健康と回復が彼の人生の焦点になり、スムージーによって健康的な食材をブレンドし、手軽で便利な食事ができることに気づきました。

ケガから回復したパンプリン氏は、友人で共同創業者であり、ワークアウト後に飲むシェイクの愛好家であるジョン・ゼン氏とともに、2018年にBlendJetを立ち上げました。

当時のガールフレンドで、現在は配偶者であるキャサリン・オマリー氏は、後にソーシャルメディアの商品ビデオのモデルとして、夫であるパンプリン氏のブランド立ち上げに協力しています。

BlendJetブランドの構築

最初に製造した7000台は3週間で完売、現在はBlendJet.comで年間100万台以上のブレンダーを販売しています。

また、Target、Walmart、Macy's、Kohls、Bed Bath and Beyond、CVS Pharmacyなど米国内の小売事業者や50以上のチェーン小売店で販売していますが、小売店を通じて販売する大半は店舗経由だとパンプリン氏は述べています。

現在は、米国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ヨーロッパ、中東、南アフリカを含む世界中の1万以上の店舗で同社のブレンダーを販売しているそうです。

アクセサリーの取り扱いを拡大したことで2018年以降、平均注文額(AOV)は年間10ドル近く増加しました。BlendJetのブレンダーは1つ約50ドルです。パンプリン氏はこう言います。

富裕層の顧客に加えて、BlendJetを買うために、Starbucksのコーヒーを数回我慢するかもしれない人達も我々のお客様です。

BlendJetは2019年、顧客がブレンダーを使用する際、食材と一緒に混ぜて使用できる「バラエティパック」を販売し、製品のカラーバリエーションを拡大しました。

2020年には、初代の5Wモデルに比べ、よりパワフルな150Wモデルで33%大型化した「BlendJet 2」の提供を開始。また、オンライン小売事業者がより長い保証を提供できるようにする技術プロバイダーであるExtendを通じて、延長保証の提供を開始しました。また、断熱スリーブとトートアクセサリー「JetSetter」と、次世代向けのブレンディングレシピブックも発売しています。

2021年には、6-JetPackプロテインスムージーを発売し、モデルカラーを追加。2022年は、新しい飲み口の蓋や瓶、プレミアムモデルのBlendJet 2を発売する予定です。

また、ソフトウェアを使って、すでにブランドを宣伝しているインフルエンサー、プレス、メディアを発見するインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Carro」を使い、Shopify上で、他の数十の小売事業者の製品を提供するBlendJetのマーケットプレイスを立ち上げました

マーケットプレイスは、Carroを通じて顧客に関連性の高いパッケージ商品を提供し、顧客にクロスセルを行っています。この方法で、物理的に在庫を持つことなく、BlendJetのブレンダーで使用できる製品を販売できます。Carroによると、BlendJetのマーケットプレイスと提携しているブランドは、Shopifyを通じてBlendJetの注文が自社サイトで購入されたかのように注文通知を受け取ることができるそうです。

BlendJetのマーケットプレイスには、Tenzo、Soylent、Orgainプロテインパウダー、LadyBoss Lean シェイクミックスなどのブランドが登録しています。

BlendJet.comに顧客を誘導する

パンプリン氏は、小売事業者がBlendJetを小売店舗とECサイトで販売したいと打診してきた場合、オンラインのトラフィックを他の小売事業者に奪われることついて慎重であると言います。

大手小売店での露出は貴重ですが、だからといってオンライン販売での支配力を手放すわけにはいかないとパンプリン氏は指摘。BlendJetはTargetやWalmartといった小売事業者の店頭で販売していますが、「これらのパートナーを通じたオンライン販売は、彼らの店頭での販売や当社のオンライン販売に比べれば小さい」そうです。

またBlendJetは検索広告において、別の小売事業者が商標であるBlendJetの名称を入札することを認めていません。商標入札は、ブランド入札とも呼ばれ、ブランドキーワードに検索広告をターゲティングする行為。これには、BlendJetのようなブランド名を含む検索が含まれます。パンプリン氏によると、BlendJetは“多額のソーシャル広告費”を投じて自社ブランドを構築してきたとのことです。

小売事業者はオムニチャネルを標榜していますが、我々のビジネスの大部分はオンラインD2Cです。小売事業者が私たちのところに来て、店舗もしくはオンラインでの販売を求める場合、私たちは店舗を選びます。全ての流通を我々が担当できないなら、オンラインは選びません。なぜなら、オンライン販売というパイの一部を奪われることになり、それをタダで渡すわけにはいかないからです。

もし、BlendJetがWalmartやTargetで販売されているなら、すべての店舗に置かれていることを確認する必要があります。というのも、近くの店舗で購入可能であることを我々が宣伝するのであれば、実際に在庫がある必要があるからです。ECサイトから他の店舗に消費者を誘導し、そこに商品がなく購入できない事態を避けたいのです。

Target.comやWalmart.comでは、BlendJetの在庫がある場所をリアルタイムで表示しています。また、BlendJet.comにアクセスし、別の小売事業者からBlendJetを購入できる場所を確認できるようにする予定です。

BlendJet.comを離れて馴染みのある有名小売店で購入する消費者もいると予想しての対策ですが、パンプリン氏は、人気の小売店経由でBlendJetブレンダーを販売することは、ブランドの貴重な信用につながると説明。この方向転換が、BlendJetのD2Cオンライン販売に悪影響を及ぼすとは考えていませんが、自社D2CのECサイト上でBlendJetロケーターが、消費者の購入先にどのような影響を与えるかには、関心を持っています。

マーケティング・コンサルティング会社 Belardi Wong 社の社長ポリー・ウォン 氏は、「他の小売事業者がBlendJetを販売できるようにすることは、多くのD2C小売事業者が限られた露出を競うなかで、目立つための1つの方法です」と言います。

D2Cブランドはすべての流通チャネルを活性化する必要がありますが、これは卸売パートナーシップを活用して、サードパーティブランドを扱う実店舗とオンライン小売店の両方で販売することも含まれます。

GoogleやFacebookでのデジタルマーケティングのコストが急騰し続ける中、ターゲットとなる消費者がどこで買い物をしていても、より多くのブランドを目にすることになると予想されます。

顧客アンケートで貴重な知見を得る

EnquireLabsが提供する購入後調査のソフトウェア導入で、BlendJetはチェックアウト後に顧客に「Thank You」アンケートを実施し、フィードバックを得ることができるようになりました。顧客がどのようにしてBlendJetを知ったか、どのような支払い方法を希望するかなどを質問し、顧客の35%がアンケートに答えています。パンプリン氏は言います。

私はこの調査データを何よりも信頼しています。我々にとって最も信頼できる情報源です。なぜなら、サイトでチェックアウトした実際の人々の回答だからです。

購入後の顧客アンケートでは、従来のブレンダーが月に3回以下の使用であったのに対し、BlendJetのブレンダーは1日に2回使用していることも明らかになっています。

これは非常に大きな違いであり、私たちにとって大きな喜びです。

調査結果によると、BlendJetの顧客は通常、携帯用ミキサーを使って1日1食を置き換えたり、補ったりしていると、パンプリン氏は言います。「最もよく置き換えられる食事は、マクドナルドのドライブスルーでの食事です」。

また、購入後調査キャンペーンによると、2021年第4四半期中にブレンドジェットを入手した回答者の70%がギフトとしてプレゼントされたそうです。パンプリン氏の考えでは、BlendJetでの買い物は1回限りで終わりません。顧客と長期的な関係を築きたいと思っています。

商品を一度だけ顧客に売って、それで関係が終わる、というような取引的な関係は望んでいないのです。

それが、BlendJetがAmazonで販売しない理由の1つだと言います。もしAmazonにBlendJetのストアがあれば、自社のD2CのECサイトよりも上位になる可能性が高いとパンプリン氏は指摘。もう1つの理由は、Amazonで販売されている模倣品に対抗する形で自社商品を販売したくないからです。

Amazonのようなマーケットプレイスで、我々の知的財産を侵害しようとする売り手と戦いたくないのです。私は、顧客との関係を大切にし、その生涯価値をどんどん高めていきたいのです。我々の顧客は何度も何度も足を運んでくれるので、生涯価値の上限はわかりません

後払いのテストと実装

2019年、BlendJetは数週間にわたって調査をし、顧客がどのような支払い方法を望んでいるかを調べました。チェックアウト時にどのようなBNPL(buy-now-pay-later/後払い決済)方式を希望するかを答えてもらったところ、AfterPayが上位を占めました

数週間の間に、396人の顧客が購入後アンケートに回答し、AfterPayを選択した人は13人名でした。PayPalは34票、Affirmは27票、Sezzleは12票、Zipは10票、Shopifyの分割払いオプションであるShop Payは3票と、他のBNPLオプションが続きました。

パンプリン氏は、AfterPayが小売業にとって魅力的だったのは、その名前が分かりやすかったこともあると言います。

AfterPayという名前を見れば、それが何を意味するのかがわかります。AffirmやSezzleの意味はわかりません。AfterPayは、直感的に何をするものかを伝えることで、高い導入率につながっているのです。

平均して、顧客は38%の確率でクレジットカードでの支払いを選択しています。PayPalが23%、次いで国際決済が17%を占めています。AfterPayは、決済の15%を占めています。

2019年にAfterPayを本格導入する前に、BlendJetは一部の顧客にAfterPayをオプションとして展開し、別のグループには提供しないスプリットテストを実施しました。BlendJetは、テストを行った顧客の人数を公表していません。同社はこのようなスプリットテストを定期的に実施しており、直近では2022年1月に完了しました。

その結果、平均して15%の顧客がチェックアウト時にAfterPayを利用したことが分かりました。また、AfterPayを利用してチェックアウトした顧客のコンバージョンは、利用していない顧客に比べて15%増加しました。BlendJet全体のコンバージョン率は4%で、AfterPay利用者のコンバージョンは4.6%でした。

AfterPay利用者が15%というのは、予想を超えた例外的な数字だと思います。コンバージョン率への影響は、AfterPayを利用する顧客の割合に比例しています。つまり、15%の人は、その支払いオプションがなければ、おそらくBlendJetを購入しなかったということです。

クレジットカード決済の平均注文額が66.21ドル、PayPalが65.49ドルであるのに対し、AfterPayの平均注文額は71.70ドルと高く、BlendJetは2022年1月から3月第1週までのデータをもとに、以下のようなデータを公表しています。

グラフ;BlendJetの顧客がチェックアウト時に希望する支払い方法
BlendJetの顧客がチェックアウト時に希望する支払い方法(期間:2019年~2022年、出典:BlendJet)

パンプリン氏は、BlendJetがAfterPayの取引で支払う手数料について明らかにすることを避けましたが、同社が手数料を交渉していることに言及しました。AfterPayは通常、小売事業者に0.30ドルの一律手数料と購入価格の4%〜6%を請求しています。AfterPayは、顧客が無利子で支払いを行う場合は無料ですが、分割払いの期限を過ぎた場合の遅延損害金は顧客の負担になります。

人々はより健康的な食事に関心を持っています。便利な食べ物は健康的でなく、健康的な食べ物は便利ではありません。我々はその課題を解決しようとしているのです。

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オリジナル記事:米国のD2Cスタートアップ企業に学ぶロイヤリティ向上戦略 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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