単品系通販サイトにおけるSEO施策で注力すべきポイントの後編。今回はサイトを改善する上でぜひ活用していただきたい行動分析ツールの使い方、検索エンジンの検索結果の最適化について解説します。
ポイント④ 行動分析ツールで画面を最適化
単品系通販サイトの場合、サイトの構造はそれほど複雑でなく、規模も大きくないケースが多いため、画面周りの課題や技術面の課題は恐らくあまりないものと考えられます。
特に最近は、Googleのクローラーが相当進化し、URLやリンクなどに多少の課題があっても認識してくれます。SPA(Single Page Application)や無限スクロールなど、JavaScriptでページ内容を書き換えるような実装でない限り、あまり気にすることはないでしょう(もし使っていたらこちらの記事を参考にしてください)。
そして大規模ECサイトの回で解説しましたが、昔は有効だった「h1タグを大きいフォントで最上部に設置する」「キーワードを入れたリード文を画面上部に置く」「大量のリンクをフッターに置く」「ソースを軽量化する」といった手法は重要ではなくなってきています。繰り返しになりますが、どれもユーザー目線の使いやすさの観点で施策をやるかどうかを決めることが重要なのです。
なぜ行動分析が必要なのか
「使いやすさ」という観点から、最近のSEOでは画面周りのユーザー行動を分析します。「ページ上部だけ見て直帰されていないか」「期待しているページに回遊されているか」「ページが読まれているか」「購入などの目的をスムーズに達成できているか」など、検索エンジンから訪れたユーザーが快適に過ごせているかを確認するのです。
ECサイトの場合、訪れても自分の好みではなかった、価格が折り合わなかった、タイミングが合わなかったなどの理由で購入に至らないことはたくさんあると思いますが、そんなときでも、
「このサイトなんか良いな」
「見やすい、使いやすい」
「今回は買わないけどいつか欲しくなるかも」
「商品情報がこんなに豊富なんてびっくり」
など、良い検索体験を提供できればユーザーは再訪してくれるかもしれませんし、誰かにお薦めしてくれるかもしれません。それらは結果的にSEOに良い影響をもたらしてくれるのです。
単品系通販サイトにおいては、たとえばTOPページ、重要なカテゴリページ、売れ筋の商品ページ、特集ページなどを行動分析ツールでチェックし、それぞれのページでユーザーがどんな行動をしているのか、分析してみることを強くお薦めします。
ユーザー行動の分析にはヒートマップツールがお薦めです。私のイチオシしはFaber Companyの「ミエルカ」(https://mieru-ca.com/)です。今や記事だけでなく、さまざまなページのユーザー行動分析に欠かせません。ただ、今回はより簡単に試せる完全無料ツール「Microsoft Clarity」を紹介したいと思います。
Microsoft Clarity
https://clarity.microsoft.com/projectsMicrosoftが2020年10月にローンチしたユーザー行動分析ツール。スクロールヒートマップやレコーディングなどの分析機能を提供。無料でPVもサイト数も無制限で利用できる(ただしサポートはなし)。GTM経由でタグを出力すれば簡単に計測を開始できる。
基本機能
- ヒートマップ……スクロール(読了率)/クリック(タップ)
- レコーディング……1セッション単位でのユーザー行動
- ダッシュボード……Clarityが重要視する指標の結果、レポート
このツールがリリースされた時、「無料でこんなツールが使えるとは……」と衝撃でした。ECサイトやコーポレートサイトのちょっとしたユーザビリティ分析には十分です。ただ、「熟読率」がわからないので、記事の分析にはやはり「ミエルカ」がお薦めです。「Clarity」では主に以下の2つの機能を使います。それぞれのポイントを見ていきましょう。
1. 「ヒートマップ」でどこが見られていないのかを知る
このレポートでは、たとえば「TOPページで期待しているナビゲーションがクリックされているか」「商品ページで下部の商品説明までスクロールして読まれているか」といったスクロールやクリック(タップ)の状況がわかります。あまり見られていないことがわかったら、ページの構成やナビゲーションの見せ方などを調整すると良いでしょう。
ECサイトではないですが、アユダンテで運営する「つぶやきデスク」というソフトウエア製品のヒートマップを例に見てみます。まず該当の「Projects」のダッシュボードの「Popular pages」から見たいページの炎アイコンをクリックします。
デフォルトの「Click」(タップ)レポートの見方は下記のとおりです。

①閲覧したいURL ②クリックの多い要素 ③絞り込み ④絞り込み中の条件 ⑤デバイス ⑥ヒートマップのタイプ ⑦ヒートマップ ⑧PV数とタップ数
例としてTOPページのタップ状況を見ていきます。
右上の「ログイン」(赤い矢印の1)が一番クリックされていて、次いで「機能」(2)や「価格」(3)のボタンがクリックされているとわかります。昨年のリニューアルでヘッダーラインを整理したことで、ヘッダーナビがよく使われるようになったようです。
メインエリアの「価格」ボタン(5)もよく押されているようです。1ページに同じリンク先が2か所あっても、ちゃんと分かれるので便利です。ただ、その下の導入事例はあまりクリックされていないようです。ここはコンバージョンにつながりやすいコンテンツなので、位置や見せ方を調整すべきだな、ということがわかります。
次に「Scroll」モードに切り替えます。
先ほどと同様に、TOPページのスクロール状況を見てみます。

①閲覧したいURL ②スクロール率 ③絞り込み ④絞り込み中の条件 ⑤デバイス ⑥ヒートマップのタイプ ⑦ヒートマップ ⑧PV数とタップ数
「導入事例」の辺りを見ると、そもそもここまでスクロールしているのは15%程度しかいないことがわかります。つまり、気づかれていない? もっと上部で訴求する必要があるかもしれません。
2. 「レコーディング」でユーザーの目線を疑似体験する
ここでは1セッション単位でのユーザー行動がわかります。ユーザーがどこをタップしたか、スクロールする速度、止まってよく読んでいる箇所、遷移したページなどが録画されているのです。
ダッシュボードに戻って、見たいページのビデオアイコンをクリック(ヘッダラインにある「Recordings」をクリックして、見たいページURLを入れてフィルタをかけてもOKです)。

①絞り込み ②絞り込み中の条件 ③レコーデイング ④レコーデイングの詳細 ⑤再生中のレコーデイング画面 ⑥シークバー ⑦非アクティブをスキップ ⑧10秒スキップ、再生/一時停止
このレコーディングを見ると、ある機能ページへ入ってきて、価格をチェックしてTOPページから離脱しています。その間にどこで迷い、どこをよく読んでいるかなどがわかります。ECサイトの場合も次のようなシナリオを確認してみると気づきがあるかもしれません。
- カテゴリから商品をどんな風に選んでいる? 絞り込み、並べ替え、サイト内検索?
- 商品ページのどこがじっくり見られている? 素材や原材料? 洗濯方法? 類似商品?
ヒートマップで定量的なデータを確認、気になったところはレコーディングで定性的に深く見る、という流れがお薦めです。
このようにツールを使ってユーザー行動を分析し、使いやすいサイトにすることは、広告的にも大いにメリットがあります。アユダンテでは広告チームでもヒートマップツールを活用して広告LP(ランディングページ)の最適化などを行っています。
プライバシーポリシーについて
Clarityはcookieを利用しています。詳細はこちらを参照いただき、自社サイトのプライバシーポリシーに個人情報の取り扱いについて記載するようにしていただくのがいいと思います。
セミナー開催のお知らせ
アユダンテでは12月13日(月)14時より、来年4月に施行される改正個人情報保護法およびそのガイドラインをふまえ、データを利活用する企業がやるべき実務的な対応策についてセミナーを開催します。参加費は8,000円(税込み)です。ご興味のある方あご参加ください。
ポイント⑤ スニペットを徹底的に最適化、CTR向上を
次のポイントは検索エンジンの検索結果の最適化です。ユーザーは検索した後に「タイトル」と「説明文」からどのページをクリックしようか決めると言われています。そのため、検索結果を最適な状態にすることは、お店の前を整備して入りやすくすることと同じことなのです。
ECサイトの場合、すべて共通化されたタイトル、説明文というケースが多いでしょう。DB型の大規模サイトならまだしも、商品数がそこまで多くない単品系通販であれば、重要なカテゴリ、商品、特集だけでも個別に手をかけて見直すことをお薦めします。
特に特集や記事はタイトルを少し調整するだけで検索結果のCTR(クリック率)が大きく上昇することもあるのです。
それでは検索結果の構成がどうなっているのか、いくつかのECサイトの表示結果をもとにおさらいしてみましょう。
上の例のように最近は検索結果がどんどんリッチになり、商品画像や価格などさまざまな情報を出せるようになっています。今回の例の中でサイト側が調整できるのは以下の要素です。それぞれポイントも記載しますので、ぜひ意識して最適化してみてください。
タイトル
最近はGoogleに編集されてしまいますが、titleタグの内容が出ることが多いです。できれば30文字以下にし、途中で切られてもいいように重要な言葉やキーワードは前方に置くと良いです。「何のページか」が直感的にわかるように「通販」「公式」「一覧」などのプラス言葉と、サイト名も入れた方が良いでしょう。キーワードの詰め込みや乱用はやめましょう。
スニペット
いわゆるページの説明文です。基本的にはmeta descriptionから出ることが多いので、70文字前後でページの内容を表す一文を入れておきます。ユーザーはクリックする前に案外読んでいます。ページの内容を簡潔にまとめて、「xx円以上で送料無料」「初回購入で500円引き」「公式サイト購入限定特定」「ミシュラン五つ星シェフ監修」というように、訴求ポイントを含めると良いでしょう。
ただし、ここの更新は即座には行われないため、「10/8まで送料無料」など期間が限定されるような文言は入れない方が良いでしょう。
価格など
ここは主に商品ページがヒットする際に、Productという「構造化データマークアップ」をしていると、価格や在庫の有無、レビューなどを出すことができます。
構造化データとは
「ページの意図を伝える明示的な手がかりとして構造化データを提供してもらうと、Googleはそのページをより正確に理解できるようになります。構造化データとは、ページに関する情報を提供し、そのコンテンツ(たとえば、レシピページの場合は材料、加熱時間と加熱温度、カロリーなど)を分類するために標準化されたデータ形式です」 (Googleの構造化データの仕組みについてについて より)
Productのマークアップについてはこちらのヘルプを制作か開発担当の方に見せて依頼してみてください。
マークアップしたらリッチリザルトツールでエラーが出ないかチェックします。

リッチリザルトツール結果の例
Productの構造化データは、Googleのショッピング広告にもメリットがあります。マーチャントセンターの商品アイテムが自動更新され、価格や在庫情報の不一致が原因で発生する不承認リスクが減るのです。
「Search Console」でCTRを確認する
さて、これらを最適化してみたらぜひCTR(クリック率)の変化を追ってみてください。CTRは「Search Console」の「検索パフォーマンス」で確認できます。
このレポートでは、ユーザーが検索したキーワードやページごとのCTRがわかります。最適化した際には「ページ」から該当のページに絞ってCTR推移を見てみると良いでしょう。
上記はアユダンテ運営の製品サイトのある記事のCTR推移です。6月にタイトルをチューニングしたところ、CTRが目に見えて上がっていることがわかります。CTRは順位に比例するので必ず順位とセットで見ます。チューニングした後に順位は変わらず、CTRだけ上昇していたら、それは最適化できた結果でしょう。
タイトルやスニペットの説明文はキャッチコピーに似ている部分もあります。広告を出稿する際は広告担当の方にアドバイスをもらったり、広告のクリエイティブのCTRデータを参考にしてみたりしてください。思わぬ発見があるかもしれません。
単品系通販は大量の商品をたくさんの顧客に売るというサイトではないでしょう。ていねいな施策で良い検索体験を提供し、ファンを増やしていくことがSEOにも広告にも効果的ではないかと感じています。
おまけ:SEO以外のチャネルを活用する
前編で解説しましたが、単品系通販は年々、SEO施策が難しくなってきています。アイテムクエリは激戦ですし、広告が最上部に表示されて流入が取れなくなってきているという課題もあります。そこで商材やターゲットユーザーによってはSEO以外のチャネル、SNSを活用しても良いのではないかと感じています。
SNSは最近ショッピング機能がかなり充実してきているようです。広告の活用は必要になりますが、SNS上での集客からそこからの購入完結までという施策は、丁寧な商品訴求が必要な単品系通販と実は相性が良いように思います。詳しくは次の広告の回でも取り上げていきます。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:単品系通販サイトでやるべきSEO施策② 行動分析ツール「Microsoft Clarity」で サイトの問題点を見つけ出そう | EC事業者のための「SEO」と「広告」の話
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