消費者がAmazonを利用する一番の理由は、幅広い品ぞろえです。Amazon Prime(Amazonプライム)の会員になることで得られる無料配送の特典よりも、品ぞろえの方が大切な消費者が多いようです。2020年1月時点で1億5000万人だったプライム会員は、2021年春時点で全世界で2億人を超えています。
Amazonを利用する最大の理由は商品の品ぞろえ
新型コロナウイルスが大流行しているなか、「何でも屋さん」のAmazonは消費者にとって大変魅力的な売り場となっています。また、プライム会員向けの特典である送料無料も、北米No.1のオンライン通販事業者Amazonで買い物をする大きな理由です。
2021年8月に『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが米国のEC利用者1000人を対象に行った調査で、Amazonを利用する理由を5つまであげてもらったところ、66%の消費者が「必要なものがほとんど見つかる」と答えました。
Amazonを利用する2番目の理由は、「プライム会員になれば、ほとんどの商品の送料が無料になるから」で56%に達しました。2020年6月の同様の調査では、51%がプライム特典の送料無料をあげ、Amazonを利用する一番の理由でした。
一方、2020年の調査では「必要なものがほとんど見つかる」という選択肢は含まれていませんでした。
Amazonで買い物する理由(消費者が5つまで理由を選択、出典:『Digital Commerce 360とBizrate Insights』が1000人のEC利用者を対象に2021年8月に行った調査)
3分以内に決済終了は約3割、プライム会員の継続率は93%
2021年4月15日に発行した株主への年次報告書のなかで、当時CEOだったジェフ・ベゾス氏は、プライムの会員数が全世界で2億人を超えたと報告しました。2020年1月時点でのプライム会員数は1億5000万人強でした。
7月にCEOを退任したベゾス氏は、大成功を収めているプライムの詳細を明らかにしませんでしたが、いくつかの驚異的な数字を開示しました。消費者は、Amazonでの買い物の半分を15分以内に完了し、28%が3分以内にチェックアウトしているというのです。
これらの購入の多くは、消費者が迅速かつ無料の配送、返品を簡単に行うことができる(コンバージョン率の向上に寄与する要素)プライム会員の特典に起因していると思われます。さらに、AmazonのWebサイトやアプリでのワンクリック購入機能が、購入を促進している可能性もあります。
実際、『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが1000人の消費者を対象に行った調査によると、米国のオンライン通販利用者の26%が、ワンクリック購入や支払い情報の保存などの効率性が、小売サイトではなくマーケットプレイスで購入する最大の理由であると回答しています。そして、米国のマーケットプレイスでは、アマゾンが圧倒的にNo.1です。
ベゾス氏は報告書のなかで、米国のプライム会員に関する詳細を明らかにしませんでしたが、調査会社のConsumer Intelligence Research Partners LLC(CIRP)は4月15日、Amazonプライムのプログラムに関する新たな推計値を発表しました。その推計によると、2021年6月時点の米国におけるAmazonプライム会員数は、2020年6月の1億2200万人から25.4%増の1億5300万人に拡大しました。
プライム会員数推移(単位:百万人、注:データが取得できなかった期もあり。出典:Consumer Intelligence Research Partners LLC)
CIRPの共同設立者でもあるマイク・レビン氏は、プライム会員の動向について次のように述べています。
コロナ禍の1年間で、Amazonプライムの会員数は過去数年に比べて急速に増加しました。コロナ禍の影響でライフスタイルや買い物方法が制限されているなかで、在宅の消費者が配送の特典やその他の機能に魅力を感じたのでしょう。
競合企業はプライムと同様のプログラムを提供するようになりましたが、なかでもWalmartの送料無料プログラム「Walmart+」が有名です。ドイツ銀行によると、「Walmart+」は3200万人の会員を集めているそうです。
プライム会員がAmazonにとって重要な理由はいくつかあります。プライム会員のサブスクリプションによる売上高は、2020年に252億1000万ドルとなり、前年比31.2%の急増となりました。サブスクリプション売上がAmazonの全売上に占める割合は、2019年が6.8%、2018年が6.1%で、2020年は6.5%でした。一方、Amazonの売上高は、2020年は3860億6000万ドルとなり、2019年の2800億5200万ドルから37.6%増加しています。
Amazonの売上高の内訳(2020年)。カッコ内の数値は全体売上高に占める割合
消費者は一度プライムに登録すると、解約することはほとんどありません。たとえば、CIRPによると無料のトライアルに登録した消費者の69%が有料会員に移行しており、2020年第3四半期の64%から5ポイント増加しています。
93%の消費者が1年後も継続してプライム会員費の支払いを行い、98%がプライム会員になって2年後も契約を継続しています。CIRPの推計によると、1年後と2年後の更新率は、2020年第3四半期と比較して横ばいでした。
高い更新率が示すように、多くのプライム会員はプログラムに満足しています。2020年6月にRBC Capital Marketsが2800人の消費者を対象に行った調査によると、1年以上プライムに加入している消費者の少なくとも7割が、Amazonでの体験に満足している、または非常に満足していると回答しています。また、3分の2以上の消費者が、プライムに初めて加入した時よりも今の方がAmazonでの消費額が多いと回答しています。
さらに、プライム会員の半数以上が、プログラムをとても気に入っていて、Amazonが再び会員費を値上げしても、プライム会員を継続すると回答しています(Amazonは2018年に会員費を年間99ドルから119ドルに値上げしました)。
また、もしAmazonが年会費を139ドルに値上げした場合、プライム会員を解約するかどうかを尋ねたところ、54%が「いいえ」、46%が「はい」と答えました。
プライム特典の目玉は送料無料だけではない
2005年2月にプライムプログラムが登場したとき、類似サービスは他にありませんでした。年会費79ドルを払えば、1年間、プライム対象商品を2日以内に無料で受け取ることができ、本1冊を2~3日以内に届けるのにかかる送料9.48ドルと比べても、大変お得でした。
消費者に「無料」で「速い」配送の前払いを納得してもらうことで、何度もAmazonに足を運んでもらい、確実に元を取ってもらおうという考えで、プライムプログラムはスタートしました。
プライムが導入されてから約1年後、Amazonはすでにそのメリットをアピールしていました。Amazonの前CFOであるトーマス・J・スクタク氏は、2006年2月に行われた2005年第4四半期の決算説明会で、次のように話していました。
プライム会員による購入が、多くのカテゴリーで増加しており、特に電子機器、キッチン、健康・パーソナルケアの購入が多かったです。
また同氏は、プライムを利用することで、会員全体で4億7500万ドル以上の配送料を節約したと説明しました。
プライムプログラムには、テレビ番組や映画、音楽のストリーミング配信、ホールフーズ店舗での限定割引、Prime Nowの2時間配送、Amazon Photosなど、無料で迅速な配送以外の特典が年々追加されてきました。そして、プライム会員はそれらの追加特典を利用しています。
2021年8月の『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが行った調査では、消費者の18%が過去1年間にプライムに登録したと答え、解約した人はわずか4%でした。さらに、16%が、音楽やテレビ番組・映画のストリーミングなど、プライム会員だけが利用できる特典のために登録したと回答しています。これは、送料無料以外に、消費者がプライム会員を継続する理由が増えたことを意味しています。
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オリジナル記事:Amazonを利用する最大の理由は「品ぞろえ」。継続率9割を超えるプライム会員など【アマゾン最新情報】 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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