フルフィルメントの課題は2021年も山積しています。長引くコロナ禍の影響で、多くの人々が休暇を取る期間に十分な在庫を確保できるか、小売企業は懸念しています。また、コロナ禍は、カーブサイドピックアップ(車中受け取り)のようなオムニチャネルサービスのさらなる拡大に拍車をかけています。
コロナ禍は、2020年にフルフィルメントと配送を劇的に変化させましたが、1年経った今でも、小売企業は新型コロナウイルスの影響を受けています。
強制的な店舗閉鎖はほぼなくなりましたが、消費者のショッピング習慣が2019年のコロナ禍前の状態に戻ることはないでしょう。
コロナ禍により、オンラインで定期的に購入し、ネット通販の体験を楽しむ消費者が増えましたが、その多くが以前の買い物方法に戻るつもりはないと言います。次のホリデーシーズンに向けて、この傾向はeコマース事業者にとって良いことかもしれません。しかし、在庫がないものを売ることはできません。
コロナ禍による世界的なサプライチェーンへの影響が続いているため、小売事業者はホリデーシーズン商戦のために、十分な在庫を確保できるかどうか不安を抱えています。状況は非常に切迫しており、The Home Depot (Digital Commerce 360発行「北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版」第4位)は、サプライチェーンの管理を強化。商品の在庫切れを避けるために、少なくとも1隻の専用貨物船をチャーターしました。
最近では、6月初旬に中国・広東省の塩田国際コンテナターミナルが、感染拡大を抑制するために部分的に閉鎖されるという、衝撃的な事態が発生。6月末に操業を再開しましたが、閉鎖中に大量の出荷貨物の遅延が発生しました。
7月には、ユニオンパシフィック鉄道が西海岸からシカゴまでの鉄道サービスを1週間停止し、シカゴでの混雑を解消するとともに、一部の車両を他の市場に向けて転用しました。
WalmartとTargetは店舗をフルフィルメントに活用
小売事業者は、新型コロナウイルスの変異株がもたらす潜在的な経済的影響についても懸念しています。『Digital Commerce 360編集部』が、「クリック、出荷、返品レポート 2021年版」をまとめていた頃、東南アジアで新型コロナウイルス感染が発生し、世界的に有名な靴メーカーや衣料品メーカーの生産が停止。工場は、操業継続が困難な状況に陥りました。
2021年のフルフィルメントの傾向として、小売企業がオムニチャネルのオプション、特にカーブサイドピックアップを追加・改善していることがあげられます。「北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版」にランクインしている小売企業のうち、2020年には25社しか提供していなかったカーブサイドピックアップですが、2021年半ばには170社が提供しており、580%も増加しました。
2020年にカーブサイドピックアップサービスを提供していた小売事業者の数、2021年にカーブサイドピックアップサービスを提供している小売事業者の数について(出典:Digital Commerce 360)
オンライン注文における店舗活用にとりわけ注力している小売企業として、Walmart(「北米EC事業 トップ1000社データベース2021年版」第2位)と、Target(第6位)があげられます。
WalmartのECの拡大に大きく貢献しているのは、食料品事業です。Walmartは、オンライン売上を商品カテゴリー別に開示していませんが、4月30日に終了した会計年度において、食料品のピックアップとデリバリーの販売量が過去最高となったと公表。eコマースやオムニチャネルへの消費者の継続的なシフトを反映したものと言えます。
2020年1月31日時点で、Walmartは米国内の3750店舗でオンライン注文のピックアップサービスを提供し、約3000店舗で当日配送を行っています。コロナ禍直前の2020年1月には、それぞれ3200店、1600店でした。
また、フルフィルメント業務を優位に進めるためのテクノロジー投資も積極的です。在庫切れの商品をどのように代替するのかを決定する複雑なプロセスを処理するために、人工知能ベースのソフトウェアを食料品事業のために開発。Walmartによると、食料品の代替品の決定には、100近い要素が含まれるそうです。また、ロボットによるフルフィルメント技術にも投資しています。
ロボットへの投資もまた、Walmartの効率化の一環です。2019年末にニューハンプシャー州セーラムの店舗でロボットによる自動フルフィルメントシステムのテストを開始し、2021年には数十の店舗で同様のフルフィルメントセンターの展開を開始しました。
一方、Targetでは、カーサイドピックアップ、BOPIS(オンライン購入・店舗受け取り)、Shipt社によるオンデマンド配送の「即日サービス」が、2021年に急速に拡大しています。
2021年第1四半期のカーサイドピックアップ(Targetは「Drive Up」と呼んでいます)の成長率は123%増。2021年は件数が増えているため、前年同期の600%以上の成長率からさらに数字を伸ばしています。BOPISは52%増で、2020年第1四半期の100%増から続伸。Shiptによると配送も86%増で、前年同期の300%増からさらに伸びています。
7月31日に終了した2021年第2四半期では、Targetの即日サービスを利用した販売の成長が続きました。「Drive Up」は、2020年第2四半期に700%以上の伸びを示した後、2021年の第2四半期に80%以上の伸びを示しました。BOPISは、前年同期に350%以上増加した後、前年同期比で30%以上の成長となりました。そしてShiptは、2020年第2四半期に60%以上の成長を遂げた上で、約20%の成長を見せました。
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オリジナル記事:実店舗企業の次なる成長のカギは店舗のフルフィルメント活用、「車中受け取り」「店舗受け取り」への対応を | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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