PCやスマホに続く、ネット通販のデバイスとして有力視されている「IoT」。電化製品やインテリアなど、日常の身近にあるモノをインターネットにつなぎ、ECを展開する動きが広がり始めている。IoTを活用してECを行うには、どのような方法があるのか。ECサイト構築システムや一元管理システムなどを提供するNHN SAVAWAYの安達友昭氏が、クラウド型ECモールプラットフォーム「TEMPOCLOUD(テンポクラウド)」によって実現できる「IoT」を使った新しいECによる買い物方法を提案・解説した。
めざすはIoT家電を使って買い物ができる世界
ネット通販で使うデバイスの主役は今、パソコンからスマホへと移行している。では、この先の未来はどうだろうか?
近年、AmazonやGoogleが提供するAIスピーカー、インターネットにつながった家電などが増えている。こうしたなか、今後は「IoT」(Internet of Things、モノのインターネット化)がECのデバイスになると安達氏は予想する。
ECのデバイスとして活用できるモノの一例として、安達氏は「鏡」をあげた。
「鏡」は生活導線上に必ずある。起床時、身支度、外出前、就寝時など、一日最低3回は鏡を見るはず。私たちは、鏡で買い物ができる世界が実現できると考えている。(安達氏)
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NHN SAVAWAY株式会社 TEMPOCLOU事業部 事業部長 安達友昭氏
鏡を使ったECとは、どのようなことか。安達氏は例として、デジタルサイネージ機能を備えた洗面所の鏡に、トイレットペーパーやシャンプーなど、なくなりそうなものを投影し、その場で買えるようにすることが可能だと説明する。
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インターネットにつながった「鏡」を、ECのデバイスとして利用する
すでにアパレル店舗では「鏡」のECデバイス化が進行
鏡は家の中だけでなく、外出先や会社などありとあらゆる場所にある。アパレル店舗の売り場や試着室、ヘアサロンやネイルサロン、旅行先のホテルの部屋や洗面所……。そして、鏡を使ったECはすでに実用化が進んでいるのだ。
安達氏は、鏡を使ってオンラインショッピングを行う取り組みについて、次のように説明した。
たとえば、アパレル店舗の試着室の鏡を使ったショッピング。試着室で服を試着する際、関連商品やサイズ・色違い、コーディネートなどの情報がミラーサイネージに表示される。
違うサイズを試着したいときは、その場で在庫があるかどうかを確認し、店員に持ってきてもらうことができる。その場で決済できるほか、買うことを迷ったときは商品情報をスマホアプリなどに登録し、後日、オンラインショップなどで買うことも可能だ。(安達氏)
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アパレル店舗の試着室に入ると、自分の選んだ服に関する情報が鏡に投影される
実用化が進むミラーサイネージを使ったEC
海外では、ミラーサイネージをインターネットにつなぎ、実店舗とECの連動を実現している企業がある。安達氏は2つの事例を紹介した。
1つは、アリババグループの「マジックミラー」というサイネージ。鏡になっているディスプレイに、カラーコンタクトの色やサイズが表示され、自分の目に入ったようにバーチャルに試着ができるというもの。商品を気に入ったら、表示されているQRコードをスマホでスキャンし、商品を購入できる。
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「マジックミラー」でバーチャル試着や、決済を行える
もう1つは、レベッカ・ミンコフが実店舗に設置している2つのサイネージ。店に入ると「魔法の鏡」という大きなサイネージがあり、ルックブックで全ての商品の検索・閲覧が可能。タッチスクリーンからサービスドリンクを選ぶこともできる。
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店内のサイネージで全ての商品を検索・閲覧できる
さらに、試着室に行くと「Oak Fitting Room(オーク フィッティングルーム)」というサイネージが設置されている。商品に付いているRFID(ID情報を埋め込んだタグ)を読み取ると、鏡に情報が表示される。画面をタッチするだけでサイズや色違いをスタッフにリクエストできるほか、商品情報をスマホに転送したり、決済したりできるというもの。これは、安達氏が提案する鏡を使ったECと同様の形態だ。
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試着室で在庫検索や購入ができ、レジで待たされることもない
安達氏はこの後、実際のミラーサイネージを用いて実演を行った。鏡の前にRFIDが付いた商品をかざすと素早く情報が表示され、スムーズに楽しく試着ができることがわかる。
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ミラーサイネージに表示されるデータのイメージ。試着しているユーザーは、ミラーサイネージに表示された情報を見て、購入したい場合はQRコードからショッピングすることができるようになる
RFIDの導入で実現できる、来店~購入~再訪問の形
さらに安達氏は、ミラーサイネージを活用した、アパレル店舗における顧客の行動に合わせた新しい商品提案の形を説明した。
たとえば、商品にRFIDを付けておけば、消費者が商品を試着室に持っていくと、関連商品やサイズ・色違いなどが鏡に表示されるようになる。消費者が商品を気に入ったら、その場で購入することが可能だ。
その場で買わなかった場合は、関連商品や割引、特典などの情報を、メルマガやアプリのプッシュ通知、DMなどで送信。店舗への再訪問を促すこともできるようになる。
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実店舗への来店から情報提供~購入~再訪問へとつなげる形を提案
RFIDは現在、比較的高単価。だが、経済産業省が2025年までにセブン-イレブンをはじめとするコンビニのすべての取扱商品にRFIDを用いた電子タグを利用すると発表しており、単価が下がり身近になってくると考えられている。現在導入しているユニクロ、GUなど大手だけでなく、多くの店舗で導入されるようになるだろう。
「鏡」をECのデバイスに変える「TEMPOCLOUD」
NHN SAVAWAYは、ネットショップ構築システム「CARTSTAR」や一元管理システム「TEMPOSTAR」など、EC事業者向けのさまざまなシステムを開発・販売。IoT関連では、インターネットに接続したカメラを使い、スマホなどで室内をリアルタイムに閲覧できる見守りカメラ「TOASTCOM」を展開している。
2019年4月から、クラウド型ECモールプラットフォーム「TEMPOCLOUD」の提供を開始する予定。
「TEMPOCLOUD」は、複数ショップやブランド専門店、モール型など、さまざまな形態のECプラットフォームの構築と運営を行うことができるシステム。業種(商材、商品)や業態(オンライン/オフライン、BtoB、BtoC)にとらわれることなく利用することが可能だ。APIにより、外部システムやアプリなどとも連携できるため、企業形態に合わせた柔軟な運用が実現できる。
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APIで外部システムやアプリなどとも連携できる
「TEMPOCLOUD」の特徴は、「ヘッドレスCMS」であること。「ヘッドレスCMS」とは、ビジュアル情報を表示する機能を持たず、APIでつながったデバイスにコンテンツを配信する仕組みだ。
こうした特徴を備えているため、「TEMPOCLOUD」を活用すれば、インターネットにつながったディスプレイ機能付きの鏡といったIoT製品をECのデバイスとして利用できるようになる。
IoTによるECを行う場合、鏡をインターネットにつなげただけでは、ショッピングはできない。そこで、NHN SAVAWAYが提供するクラウド型ECプラットフォーム「TEMPOCLOUD」を活用し、鏡とECサイトをつなぐことによって、鏡を使ったECが実現できるようになる。
「TEMPOCLOUD」を活用すれば、家電やインテリアなど、あらゆるモノがECのデバイスになり、新しい買い物体験が可能になる。PCやスマホで買い物をする現在のネットショッピングが、今後は変わっていくのではないかと予想している。既存ビジネスのEC化のほか、オンラインとオフラインを「TEMPOCLOUD」でつなぎ、新しい買い物の形を作っていきたい。(安達氏)
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オリジナル記事:ネット通販の買い物デバイスはPC、スマホ、次は? 「IoT」時代を前に知っておきたいECの近未来
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