2019年広告マーケティング業界7つの予測 | 業界人間ベム

業界人間ベム - 2019年1月7日(月) 07:46
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今年も年初恒例の業界予測です。

①デジタル化に向けて教育・人材育成への投資本格化

デジタル変革の核心は人材である。企業のマーケティングの本丸では、ここ何年かはデジタルに関して変なコンプレックス(つまりデジタルは専門性が高く、自分たちでは対応できないのでは?という)があって、デジタル専門人材を外部から招聘したりしてきた。しかし、概してそうしてつくった外人部隊のデジタル部門は、Webやアプリといった施策そのものがデジタルなものに対応するだけで、マーケティングの幹の部分にはタッチできない構造をつくってしまった。
 枝葉の部分をデジタルで化粧を施すだけなので、かえって本当のデジタル化を阻害してしまった。
 ベムが「出島(デジタルマーケティング本部、略してデジマ)」と呼ぶのは、江戸城本丸はそのままで、「デジタルというエイリアンと対峙するのは出島で」いう状況を指している。
 肝心なことは、その企業のビジネスロジックに精通して、社内に声が通る(周りをしっかり動かすことができる)人がデジタル化することである。
 人材難が甚だしく、採用市場に頼ることが無理である今、「教育」こそが最大のテーマになるだろう。
 自分たちのビジネスを十二分に理解し、そのビジネスを実際に動かしている社内のキーマンに、デジタル化の本質を認識しもらい、効率化だけでなく、従来にない新しい価値を創造するために、ビジネスプロセスをデジタル化することを実践してもらうための素養を育てる教育が必要だ。
 2019年は社内人材への「デジタル教育」への投資が本格化する年になるだろう。そのためにも社長以下経営陣や幹部への「マーケティングのデジタル化の本質」とは何かを徹底して認識させる必要がある。
 

② TVCM枠オンライン取引本格化

2017年の予測で兆しが出ると書いた「TVCM枠のオンライン取引」は今年本格的に試される「オンライン取引元年」となるだろう。
昨年のラクスルのTVCMの発注システムの登場は、そのきっかけをつくったかもしれない。しかし、オンライン取引はテレビ局自身がシステムをつくることになるだろう。
 究極の取引形態は入札応札による価格形成によるものだが、今年はまだ定価ベースでスタートすることになる。
CM枠を買う側が「指し値」をするためには、その枠の買い手にとっての価値が評価できるデータが必要だ。1本1本買い付けるスタイルになるオンライン取引では、1本1本の枠の価値を個別に買い手が評価するためのデータである。
 個人視聴率はもちろん、視聴質(ビューアビリティやアテンション率、誰と誰で観ているかのコ・ビューイングなど)データも要求されるだろう。従来の「売り手のデータ」から「買い手のデータ」が流通することで、むしろパーコストは上がる。広告主も効果を買える。視聴者は様々なCMに接触するチャンスが広がる。テレビ局も広告主にも視聴者にもハッピーな状況になるはずである。

 
③ 広告費アロケーション最適化が活発に 広告主事業部が宣伝費・販促費・流通対策費などを統合して再配分する「テレビ×デジタル×リアル」アロケーションが試行される。

経営層にデジタル化によるマーケティングの構造変化が認識され出すと、デジタル時代のマーケティング投資の最適配分とはどういうことが理解されてくるだろう。
そうなると、テレビにいくら、デジタルにいくらとブランドマネージャーが事前に予算化したら、一切それを変えられないといったナンセンスな事前予算主義から脱するチャンスも出てくる。
 デジタル時代のアロケーションの本質は、「事前に最適なプランなどない」という考え方である。施策による「達成目標」が数値で設定され、「運用」で達成させるという発想である。マーケティングダッシュボードによって、リアルタイムで効果がかなり把握できるようになったからこそ、どこに出稿するかは流動的にリアルタイムに対応すべきである。これからの宣伝部はファンドマネージャー(効果がないものは損切りしてでも新たな枠を買って運用する)であるべきで、決められたプランをそのとおりに買い付けるだけなら購買部でしかない。
 最適化するには、どのメディアに張るかだけでなく、どのブランドを出すか、あるいはブランドの宣伝費・販促費などを統合した予算内での配分をどう最適化するかという本質論に拡大するだろう。
 
 またテレビ×デジタルのアロケーションを設定する以前に、全国でテレビスポット広告を展開するナショナルクライアントには、大きな課題がある。それはエリアアロケーションである。スポットの発注エリアごとに、ターゲットひとり当たりのコストが相当偏っていることに気付いている広告主は少ない。もちろん可処分所得や商品カバレッジ、販売量ほかの変数も最適配分のために必要だが、そうしたものを加味してもバランスが取れない場合が多い。デジタル広告のCPMは当然全国一律になっているので、テレビ×デジタルを最適にアロケーションするにはテレビのエリアアロケーションがまず必要で、その上で首都圏ならテレビ:デジタル=7:3でもいいが、北海道や四国はまだまだテレビが強いので9:1でいい・・・などの設計となる。その設計上も従来のテレビの指標GRPはエリアごとに母数の違う数値なので、視聴率を足し上げるGRPによるパーコストという指標ではなく、到達インプレッション数という絶対値をもって計算する必要がある。(ちなみに個人GRPをインプレッション数に変換することはデジタルインテリジェンスが特許を持つ「CMARC」のコアアイディアです。)

④ プレミアムなデジタル広告掲載面がレギュレーション化され、需要拡大

 アドベリフィケーションは話題になって久しい。2019年はその結果として、ヒューマニティ(人の目に触れているインプレッションか)とブランドセイフティを解決した広告掲載枠とはどんな在庫かが定義され、実際に商品化されることとなるだろう。ホワイトリストでプレミアムな枠が提唱され、それを標榜するメディア(パブリッシャー連合)などが立ち上げってくる。
 広告主にアドべリコストを負担させないで、メディア側が品質保証する枠が、ブランディング目的のデジタル広告枠としてテレビ×デジタルのアロケーション対象となるだろう。
 またプレミアムな広告枠とは、そもそも銘柄の良い広告主しか出稿されない枠とも言える。その意味で、まずプレミアム広告主で取りまとめた需要に、良質なパブリッシャー連合が枠を供給するというスタイルが出現するかもしれない。

⑤ デジタルのビューアビリティだけでなくテレビのビューアビリティを含めた「人の目に届いているインプレッション」を評価

 アメリカ業界団体であるMRC(Media Rating Council)は従来デジタル広告(ディスプレイ広告)のビューアビリティのレギュレーションを、「広告スペースの50%以上が静止画像で1秒、動画で2秒以上」としている。
 このビューアビリティにテレビCM側もどう定義するかが今年動き出す。
 ただテレビにもこうしたビューアビリティルールを適用しようとすると今のニールセンの分間測定では意味をなさず、秒間データを使わなければならない。またテレビではCMは画面にフルサイズで常に移っているので、デジタル側も50%以上では比較できないので、デジタル側も画面の100%としてからまずはOTTに転用してから、テレビ放送にも適用されていくだろう。
 今年2月にMRCに新たな発表がありそうだ。これをきっかけに、ブランディング広告におけるテレビとデジタルのビューアビリティ定義が統合的に指標化される可能性がある。
 デジタルインテリジェンスでは昨年「コレクトビュー」という概念(テレビとデジタルを双方ともビューアブルなインプレッションをもって評価する)を提唱しているが、テレビとデジタルもしっかり人の目に触れたインプレッションを測ってこそ、その効果(例えば購買)と広告投下量の相関が見える。広告のアロケーションをするにはこうした説明変数を整地化する必要がある。

 ベムはこの件に関しては日本もアメリカの動きを即追いかけることになると思う。

⑥ デジタル領域の特化型ソリューションサービス企業の横の連携進む。オーケストレーション機能が注目される。

 デジタル領域には、リスティングやデジタル動画やインフルエンサーマーケティングなど特化したソリューションが多くあり、専門性が高い故に広告主も直接こうしたソリューションベンダーと直接取引をしていることが多い。
 しかし、それらを統合的にコントロールするスキルが広告主側にあればいいが、なかなかプロデュースする人材がいないのは否めない。
 従来大手代理店がワンストップで対応すると標榜していたこうしたプロデュース能力は、代理店のフロントである営業がデジタル時代の専門性に全くついて行けず、ワンストップはほぼ否定された感がある。そこで、特化した複数のエキスパートの技量をコーディネートする、言ってみるとオーケストラの指揮をする機能が必要とされ、またそれが定義されるようになる。
こうしたことができる人材は極めて少ないが、出来る人材には多くのニーズが集まるだろう。

 「オーケストレーションとは何か」、また「どうやってオーケストレーションが出来る人材が育成されるか」が話題になり、多く議論されるだろう。

  
⑦ AIによるブランド横断型デジタル広告買い付け配信が試行される

  7つめは、現状少しづつ使われ始めている広告配信におけるAI活用が、AIでしか出来ない領域に到達するのが今年だろうということだ。
  広告配信の最適化は、最小単位である1インプレッションごとに行われる、この時、掲載面(コンテンツ)、オーディエンス、タイミング、ジオなどの加えて、そもそも当てるブランドやクリエイティブも変動的であることで、より最適化される。
 複数のブランドを抱えている企業は、バルクで良質な広告掲載面を買い付けておいて、この掲載面に、このタイミングで、このオーディエンスがアクセスしてきたらどのブランドのどんなメッセージの広告が配信されるのが最も効果的かを瞬時にAIが判断し配信、さらにブランドごと設定予算に割り振るという「人間技ではない」ことをAIがこなすことになるだろう。
 前述の④のプレミアムなブランディングのための広告枠が定義されると、こうした掲載面を最も効果的に使うAI配信が意識されるだろう。


番外 広告代理店のデジタル化展開予測

  広告ビジネスのデジタル化は、ネット広告の扱いに対応するレベルから本丸の「クリエイティブ」、「戦略プランニング」、「マス、リアルを含むトータルメディアプランニング」、「フルファネルへのコストアロケーションとコミュニケーション開発」のデジタル化、つまりアウトプットがデジタル施策でないものも、その開発プロセスをテクノロジーやデータを駆使してデジタル化するステージに来ている。

電通グループ、博報堂DYグループ、サイバーエージェントグループの3大代理店時代、各社はこの本丸のデジタル化ができるだろうか。電通・博報堂は伝統的なスキルの陳腐化をデジタル変革で打破することができるか、またサイバーはアウトプットがデジタルな施策に留まらず、トータルソリューション領域に踏み込めるか(もっともCAにその気があるかはベムには分からないが・・・)

まだまだ広告主側がマスとデジタルで対応セクションが分かれている場合が多い。マス広告宣伝部はブランディング、デジタル部門は刈り取り&CRMといった機能分化になってしまっている。
しかし、マーケティングのデジタル化による大きな変化のひとつは、いわゆるアバブ・ザ・ラインとビロウ・ザ・ラインの統合である。ブランディングを担う広告宣伝部門と、販促部門を別々に機能させることはナンセンスだ。従来IMCという発想でブランドマネージャーがマーケティング活動を統合的にみる考え方が定着しつつあるが、マーケティングのデジタル化は、この流れにさらにフルファネル(購買後のレピュテーション効果を含む)に統合的に(PR活動まで)かつ有機的に連携することが必須条件となる。
宣伝費・販促費・流通対策費など合算して(場合によってはR&D費も含め)マーケティングコストの配分を最適化することが求められる。

企業のデジタル化は、商品開発・製造・物流・営業・管理・人事など、広告販促領域以外もすべてのバリューチェーンにおいて起こる。
エージェンシーも企業のデジタル化をサポートする存在として、単に広告販促領域だけではなく、営業支援やR&DやHRに至るデジタル化支援サービスに広げるチャンスでもある。

「デジタル」とは「グローバル」とコインの裏表のようなものである。イージスというグローバルデジタルエージェンシーを傘下にもつ電通には、その両方を果たすための持ち駒が揃う。日本市場における広告ビジネスのデジタル化は、日本の広告主自身がイノベーティブでない以上、欧米のクライアントと共にビジネスとマーケティングのデジタル化を果たしている知見が応用できる電通グループの優位は変わらないだろう。

以前のエントリーにも書いたが、デジタルビジネスを推進するにはフロント(営業会社)が重要である。電通本体と電通デジタルが両方でフロントをとって、お互いにスタッフ機能を使う「両タスキ掛け」状態とすることが「本丸のデジタル化」を推進させるだろう。

一方、博報堂DYグループは、メディア会社のデジタル化はDACを吸収することで果たすことが出来るだろうが、博報堂本体のデジタル化にまだ手がついていないとお見受けする。(ベムにはアイディアがあるが)フロントに立つのは博報堂・大広・読広・アイレップとなる訳だが、リスティングに特化したアイレップ以外にもデジタルソリューション機能の水平拡大(M&Aによる編成)が必要だろう。つまりブランドエージェンシー博報堂のデジタル化と、フロントに立つ営業会社各社の再編は同義になるかもしれない。

サイバーエージェントは、グループとしてテレビ広告を出稿するクライアントとして、ある程度テレビ広告に関する知見を保有しているようだ。またメディア事業としてのAbemaTVが広告代理事業にテレビ×デジタルへの橋渡し機能をもつことになる。
ただ、当面テレビ予算をデジタル予算にシフトさせるという戦略には変わりがない。テレビだけでは「売り」までの機能不足をデジタルが補うのは当然だが、一方、デジタル施策もいつまでもネットのチャネルだけに閉じているのではエージェンシービジネスとして頭打ちとなるのは必然。デジタル側もテレビの力を借りないと成果を出すのが難しい。デジタルを起点としてミドルファネル施策にテレビの動員もかけ、テレビ×デジタル×リアルで設計できるかが、CAのエージェンシーとしての次のステージに行けるかどうかの試金石となるだろう。

 さて、最後にこのブログを読んでいただいている広告業界の若い人たちにベムからのアドバイス・・・。

 マーケティングのデジタル化で、様々な専門的知見を要する特化したソリューションに対応しないといけない今の時代、広告マンとして自分たちのスキルの核を何とすべきだろうか・・・。
 
広告マンとしての軸は今も変わらない。

「広告コミュニケーションの本質」を極めていくことである。

今でも我々のドメインはマーケティングとコミュニケーションがオーバーラップする部分において、コミュニケーション側を熟知しているからこそマーケターに提供できる知見にある。
 
 専門性の高いマーケティング手法は、最初は提供価値があっても、いずれは実践しているマーケターには敵わない。しかしコミュニケーション開発だけはマーケター側も自身でこなすのは至難な領域だ。
 
 ネットマーケティングが台頭してきてから、実は広告を知らない人たちが「広告」を語るようになった。CMを1本もつくったことがない人が「広告」を云々する変な時代だ。そういう「まがい物」に惑わされずに「広告コミュニケーション開発」をスキルの核にしてほしい。

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