1日6時間勤務や子連れ出社など、社員の“やる気”アップに注力する通販企業の施策 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2015年5月28日(木) 08:00
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オークローンマーケティング、千趣会、ベガコーポレーション、Hamee、モーハウスといった通販企業の“やる気”アップ方法

勢いのある企業ほどそこで働く従業員のモチベーションは総じて高い。社員の“やる気”は当該企業の業績に直結するため、「従業員のやる気をいかに引き出せるか」は企業にとって極めて重要な経営課題の1つとも言える。とは言え、“やる気”を引き出すためには、叱咤激励で済むというものではなく、従業員の多様化する要望ややりがいを汲み取りつつ、適切な制度や支援体制を用意、「働きやすい環境」を整える必要があるようだ。注目すべき取り組みを行う通販実施企業の試みについて見ていく。

OLMのケース:1日の勤務時間は個人の裁量で
1日6時間勤務や子連れ出社。社員の“やる気”アップに注力する通販企業の施策①
社員個人の裁量で労働時間を決めて地震の生活にあわせて働ける(OLMの東京オフィスの様子

テレビ通販大手のオークローンマーケティング(OLM)は今夏にも、社員自らが1日の労働時間を決めることができる「スーパーフレックス」を導入する。同社では昨夏から全社員を対象に1日6時間勤務制度を導入したが、これを一歩進めたもの。勤務体制の自由度を高め、社員それぞれが自身に合致する働き方をして、生活の充実やモチベーションのアップなどにつなげたい狙いだ。

OLMでは昨年6月から「1日6時間」の勤務形態を導入した。従来までの勤務時間は8時間という一般的なものだったが、「個人の成長なくして会社の成長はない。社員には仕事だけでなくプライベートも充実させ、個人として成長して欲しい。それがひいては会社の成長につながる」(バックオフィス本部・河村佳朗本部長)という考えのもと、するべき業務を完了し、また、今後の業務のスケジュールに支障が出ない範囲であれば、個人の裁量で午後3時に退社することができるようにした。

この6時間勤務を導入して1年。狙い通り、社員のモチベーションアップに貢献するなどの成果が見える一方で、所属部署によっては6時間勤務がままならなかったり、連携する部署の社員が帰宅したことで他の部署の業務が進めにくくなる場合も出てくるなどの課題も見え始めたという。そこで1日単位で考えるのではなく、1カ月単位で労働時間を調整することにした。「例えば経理の部署は月末が非常に忙しかったりするわけだが、それ以外の時期は早く仕事を終えられる日もある。部署による業務繁忙のバラツキを考え、もう少し自由度のある設定にすることにした」(同)という。

現状、詳細を詰めている段階だが、昼帯にコアタイムを設定したり、全社員参加の会議を開催する特定曜日の特定時間は全員出勤とするなどのいくつかの条件は設ける模様だが、「1日6時間×20日=120時間」という月の労働時間をクリアすれば、当該月の中で社員の裁量で1日の労働時間を決め、自由な働き方ができるようにする。年内をメドに「在宅勤務」のテストなども始める模様で、さらに勤務形態を充実させ、社員のモチベーションアップと多様な働き方が可能となる体制を整え、様々な背景を持った人材の確保と当該人材の能力のレベルアップを図りたい考えだ。

千趣会のケース:手厚い内容の大手の育児制度

“ウーマンスマイルカンパニー”を掲げる千趣会では、とくに女性社員の「仕事」と「家庭(育児)」の両立を目指した取り組みが充実している。育児両立の制度では育児休業期間が2歳まで、育児短時間勤務、時差出勤勤務の期間が小学3年生末日までで、他社に比べると手厚い内容だ。

サービス・サポートなどの面では、出産時のお祝い金(ベルメゾン商品券、社長からのメッセージ)や、両立支援マニュアルによる情報提供、女性活躍推進委員会「ハナメゾン」の設置などが挙げられる。中でも、ハナメゾン委員会は女性の活躍推進を目的に10年も前から委員会として取り組んでいる会社は少なく、歴史も実績もあるという意味で先進的な取り組みと言えそう。

ハナメゾン委員会では現在、「子育て両立の実態を知る!両立ママに聞く会」などのテーマで女性ランチミーティングを開催したり、外部講師による社内セミナーでは今年4月にNPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表理事を招いて「イクボス(※従業員の育児参加に理解のある経営者や上司のこと)」セミナーを開催するなど、両立支援の啓発に向け積極的に活動している。

千趣会では、一連の活動の成果として、2014年度の社員の育児休暇復帰率は100%を達成している。

モーハウス:子連れ勤務で育児と両立
1日6時間勤務や子連れ出社。社員の“やる気”アップに注力する通販企業の施策②
子連れ勤務を導入、幼子を抱える母親でも無理なく働ける(モーハウス)

授乳服の企画・販売を手がけるモーハウスでは、子連れ勤務や時短出勤を導入して、幼い子供を抱える母親でも無理なく働ける環境を整えている

現在、本社には15人ほどのスタッフがおり、その内約2割が同制度を活用。育児中の母親が多いということで4時間や6時間の勤務など働き手のニーズに合わせた時短出勤も取り入れている

オフィスの一角にはキッズ用スペースも設けているが、基本的には抱っこ紐などを使って胸に抱えながら仕事をしている場合が多い。子供も母親のそばにいられることで安心して落ち着けるようで、デスクワークに大きな支障はなく、時には会議の場に子供が一緒にいることも珍しくない育児中の母親が多いということで4時間や6時間の勤務など働き手のニーズに合わせた時短出勤も取り入れている。実店舗の場合には店員による“子連れ接客”が来店客から好感を得ることもあるようだ。

また、商品が授乳服ということもあって、子連れスタッフはそのまま商品モニターにも置き換えることができる。開発段階から多くのスタッフが試用してアイデアを出し合えるのでサンプリング作業がすべて社内で完結できることも多い。

そのほかにも採用活動でアドバンテージをとれる面もあるようで、幼い子連れの母親を中心に同社への求人希望は多く、人手不足を感じることは少ないという。「通販こそ場所を選ばずに仕事ができると思う。特に人材が限られているような地方で人手を集める時は、幼い子連れの母親は手つかずのマーケットになる」(光畑社長)という。

同社では短時間勤務の枠で募集した時ほど優秀な人材が集まるようで、これまでもコンサルタント、建築監督、編集者、アナウンサーなど特殊技能を持って実務経験が豊富ながらも、家庭の事情によってフルタイムで働けない女性が数多く集まってきた。「元々、フルタイムができるような優秀な人材はすでに大手企業に囲い込まれている。そこ以上の待遇を提示することはできないが、子連れで短時間勤務ができるとなればまた違った角度から優秀な人が来る」(同)という。多彩な技能や異なる価値観を持った人材が集まることで、商品開発や売場に新しいアイデアを注入できることにもつながるようだ。

ベガコーポレーションのケース:社員全員参加で商品開発を
1日6時間勤務や子連れ出社。社員の“やる気”アップに注力する通販企業の施策③
アルバイトからも商品の意見を求める(ベガコーポレーション)

家具のネット販売を手がけるベガコーポレーションは、商品開発について正社員に限らず契約社員、派遣社員、アルバイトなどからも広く意見を求める制度がある。全スタッフに発言機会を設けることで積極的に開発業務に参加する土壌をつくり、仕事への意欲を上げている

これまでの実績としては、店舗運営所属のスタッフが「階段付木製ロフトベット」を企画し、月の売り上げが1500万円以上を超える商品になったことがあった。さらに、人気ソファの色柄について新色を提案したケースでは、その色だけで月の売り上げが1100万円を超えて社内でも一番売れる商品になったことがあったという。

商品開発以外でも、ボトムアップで意見を吸い上げて上長にアイデアが認められればそのプロジェクトリーダーに任命していくなど、若手社員のモチベーションアップにつながる取り組みを実践している。3年目の社員が取り組んだ事例では、商品ページの刷新プロジェクトがあり、他社に真似されることを防ぐために、従来からの安さだけでなくデザインにも焦点をあてた商品ページを作成したという。実際に変更する商品の選定や撮影スタジオとの調整、モデルの選定などをすべてプロジェクトリーダーとしてこなし、結果的に売上アップにつなげることができた。

そのほかにも、残業廃止や連続で休暇を取得できる制度などは以前から取り入れており、社員が勤務以外の時間を有効に過ごせるように配慮。リフレッシュ効果にもつながるため、日々の業務効率の向上に大きく寄与しているようだ。

Hameeのケース:同じ釜の飯を食べ仲間意識を醸成
1日6時間勤務や子連れ出社。社員の“やる気”アップに注力する通販企業の施策④
ごはんを炊いてみなで食べkみゅにケーションのきっかけに(Hamee)

Hameeではユニークなコミュニケーション制度を設けている。「よこづなランチ」は、毎週金曜日に、ランダムで選ばれた社員同士でランチに行くという制度

部署や性別、年齢に関係なく横の繋がりを大切にしてほしいという想いから始まったもので、会社からは1人1000円がランチ代として支給される。「他部署と交流する機会があまりないので、フランクな形で会話ができる時間が欲しいという意見が社員から出た」(総務・人事・広報チーム)のが制定のきっかけという。

また、「おなかまPJ(同じ釜の飯を食べるプロジェクト)」は、毎日持ち回り制で米を研ぎ、炊飯器でごはんを炊いてみんなで食べるという制度。米は会社から支給される。おかずだけ持ってきて炊いたごはんと一緒に食べるといった社員も多いという。

ランチルームに人が集まり、食事をする中でコミュニケーションが生まれ、例えば「『通販システムのボタンが使いにくい』『検索はもっとこんな感じにしたほうがいいのでは』といった意見が出るなど業務改善につながることもある」(総務・人事・広報チーム)という。

 

通販新聞」掲載のオリジナル版はこちら:
社員のやる気、引き出すには? 「働きやすさ」をサポート 従業員の気持ち、汲み取る施策を(2015/05/21)

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