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ECサイトの大敵は「ギガ消費」!? Amazon中心主義のユーザーも逃さない4つのポイント(第12回)

ユーザーが求めている情報を知らせるタイミングは、ECサイトで非常に重要。「求めている情報」とは何か

今回のポイントだゾウ

  • 大多数のユーザーが、Amazonの情報提供スタイルを「標準」として受け止めている
  • そのため、他のサイトでも、同じように情報を表示するよう求められる
  • とくに、無駄な操作をさせて、「ギガ消費」を増やす情報配置が嫌われる
  • 配送日時、在庫、色のバリエーションなどの情報は、いつでも知りたい
  • 「記述してあるから、それでOK」ではなく、いかに配置するかがポイント

おしゃべりユーザーテスト、今回は革小物・鞄の通販サイト

皆さんこんにちは! ゾウ好きのかたわら、都内でパソコン研修をしたり、大人向けの数学教室を運営しています。IT業界の人だと気づきにくい、“一般的なユーザーの心に潜んでいる、Webや家電の使いづらさ”を見つけて、より使いやすくなるようご提案するお仕事もしています。社内はぞうさんの置物だらけです。幸せです。

「ぞうが好き」と言うと、「変わっているね」とよく言われます。Facebookだと多くのぞう好きがいるので、変わっているとは思っていなかったのですが、確かに、犬・猫好きよりは絶対数が少ないので、「変わっている」と言われても、仕方ないでしょう。

変わっている……かわっている……かわ!……。ということで、今回は「かわ」つながりで、「革」製品の専門店「システム手帳・革財布など革小物・鞄の通販を手掛けるCカンパニー」さんに「おしゃべりユーザーテスト」のご協力をいただきました! ありがゾウございます!

「Amazon中心主義」の行動原則?! その1
お届け日時がすぐわかる

システム手帳カバーやペンケースが人気だというCカンパニーさん。「被験者になってくださる人はいねぇが~(なまはげ風に)」と探していたところ、ちょうどいらしたのが宇佐さん(仮名、42歳男性)。

ふだんはAmazonに依存、「Amazon中心主義」という宇佐さん(……気づかなかった方のために、アマゾンにイゾンでかけてますから!)。そんな宇佐さんはどういう行動原則を持っているのでしょうか?

まずは、ふだん使っているAmazonの利点を尋ねてみた。

Amazonは、商品がいつ届くか、買い物かごに入れる前にも後にもわかるし、キャンセルも気軽にできるから便利なんですよね。たとえば楽天とかは、それがわからなくて不便に感じる

と宇佐さん。それをふまえて、まずはCカンパニーさんのサイトで、実際に商品を購入してもらう。

うーん、やっぱり他のサイトは、いつ届くのかわかりませんね……

実際には、Cカンパニーのサイトでも、左側メニューに「お届けの目安」が用意されている。

しかし、ふだんAmazonばかり使っている宇佐さんには、「商品の横に、届け日が並記されていること」が普通であるため、「お届けの目安」に気づかないのだ。そこで宇佐さんは、会社概要を開いた。

こういう、独自のお店のサイトでは、会社概要を必ず見るんです。会社住所が自宅に近いかどうかをチェックして、いつ頃届くか推測するんですよ……。このお店は、東京だから、まあ、そんなに時間はかからないかな

そんな宇佐さんを、

ここに、お届けの目安がありますよ

と左側メニューの「お届けの目安」に誘導する。ここには「平日13時までのご注文は当日出荷いたします」と注意書きがされていた。

あー、これだったら安心して買えるよね。探して見つけて在庫なしだったり、お届けまでに何週間もかかると知ったときのショックは大きいですからね

Amazonに慣れている宇佐さんにとって、独立系のショップサイトだと、まずお届け日時に不安を持つようだ。

「Amazon中心主義」の行動原則?! その2
在庫の有無をクリック前に知りたい

宇佐さんとおしゃべりを続ける。

僕は、革製品を購入するときは、デザインや価格より、まず素材で探すんですよね。素材とカラーでだいたい欲しいのが決まって、それを目指して選んでいく感じで

写真はじっくり見るほうですか?

もちろん、写真を中心に見て、文字は、素材の確認程度かな。クリックする価値があるかどうか。クリックして、欲しいものがなかったらそれこそ時間の無駄でしょう

まずは、ペンケースを購入するという方向で、商品一覧を見てもらう。

写真の統一感がなくて、素材がわかりづらいな。レザーの感じがちょっと比較しにくいですね

と言いながらひととおり写真を眺め、シンプルなペンケースをクリックした。

カラーバリエーションは結構あるんだ。在庫とカラーバリエーションみたいな、基本的な情報は、詳細ページに行く前に知っておきたいですね

と、ここで宇佐さんが不満そうな声を上げる。

……あれ、この商品、在庫切れだ。在庫切れ商品は一覧に出さないようにしてほしいなあ。Amazonなら、一覧の時点で「在庫切れ」って書いてあるから選ばないし

確かに、市原ぞうの国に行って、ぞうさんへの貢ぎ物「バナナバケツ」が売り切れると、ベートーベンの「運命」がジャジャジャジャーンと鳴り響く、絶望的な気分になる。「あと10分くらいで持ってきますから」と言われると、「もういくつ寝るとお正月」がロックな感じでリピートされる。サイトなら、在庫がなければ「在庫なし」と表示する、さらには「いつ入荷予定か?」を表示するのが理想的だ。

「Amazon中心主義」の行動原則?! その3
“もう知っている情報”はいらない

続いて、名刺入れや小銭入れを見る宇佐さん。

革製品の専門店だとわかっているから、製品説明に「革」ってあると、「それはわかってるよ!」ってツッコミたくなります(笑)

ツッコミをいただいたのは、商品名にこう書いてある部分。

名刺入れ/革/レザー/国産/磨き込まれた上品な光沢【FALCOLA】プレツィオーソ・名刺入れ

一瞬、宇佐さんがハリセンで突っ込みを入れる姿を妄想した。

革製品の店だから、「革」「レザー」とかの表示はいらないですね。知りたいのは「種類」「カラー」とかのバリエーション。クリックする前に突っ込んだ情報を読みたい

確かに、Cカンパニーのサイトで商品名は、シンプルなものから検索エンジン対策っぽいものまで、いろいろなタイプが並んでおり、パッと見ごちゃごちゃした印象だ。商品名に限らず、「ユーザーにとって当然の情報」を何度も提供すると、ただのくどい情報になってしまい、ユーザーのスルー力を鍛えるだけになってしまう。

スルー力が高まる、ということは、ますます文字を読まなくなる、ということだ。すると、本当に伝えたい情報がスルーされてしまい、伝わり力が弱くなる。

「人は見た目が9割」なんて本があったが、商品一覧も、写真が9割9分になってしまい、文字が読まれなくなる。シンプルに、適切な量をしゃべることが、文字も読まれる秘訣だ。

ちなみに、弊社でも、私は、スタッフが笑うまでギャグを言い続けてしまうことがたまにある。しかし、スタッフは笑わない。私によってスルー力が超絶に鍛えられているからだ。新人スタッフが笑うと、古参スタッフが言う――「笑ったら負けですから」「新人のうちだけですよ、笑うのは」と。

「Amazon中心主義」の行動原則?! その4
クリックしたくなる

さらに「システム手帳」を探す宇佐さん。

システム手帳の最初の写真、メモじゃなくてスケジュールの方がイメージつきやすいなあ。でも「職人」という単語は、好きですね~。ちょっとうれしくなります

などとつぶやきながらスクロールしていると、サイズ、写真、そして色情報が表示された。開いたページには、こだわりなども書かれている。

これです! これです! これが見たかった! これが他のページにもあればいいのに。何の革かわかるし、違いもわかるし、色がどんなのがあるかもわかるし

と、突然テンションがあがった宇佐さん。ちょっとびっくりした。

こういうの、いいよね。うんちくとか、読むとテンション上がります

とチェックを進めていたが、買い物かご付近を見ると、欲しい色が在庫切れ!

これが惜しいんだよなあ……。Amazonみたいに、入荷予定日がわかったり、予約購入できたりすればなあ……

と購入を断念したところで、今回のおしゃべりユーザーテストが終わった。

ユーザー行動まとめだゾウ

ところで、宇佐さんは、こういう嗜好性が高いものを買うとき、どういう感じで選ぶんですか?

だいたい電車とか、待ち時間とかで、こういうのないかなーってスマホで探して

買うのはパソコンですか?

そう、スマホで探していくつか商品を絞って、パソコンで最終確認。だから、欲しい色がなかったり、購入ボタンの近くで在庫切れだとなると、時間もパケットも返せ!という気分になって、ちょっとキレたくなる(笑)。特に、月末のパケット制限がかかりそうなときとか

お届け日時、在庫の有無をまず知りたい理由とは、つまり、「時間を無駄にしたくない ≒ “ギガ”を消費したくない(イマドキ風に)」という思考なのだ。

興味を持たせておいて、その気にさせて、ワクワクしだしたときに、買えないというショックだけではなく、そのショックが「パケットを無駄に使ってしまった」という残念な気持ちまで引き起こしてしまう。こういうショックは、そのときに持っているいろいろな負の気持ちをひきずり込む性質がある。嗚呼。これが少女漫画なら、ヨヨヨと倒れ込むところである。

Amazonはこのへんを巧妙に回避している。本文では「Amazon中心主義」の行動原則として以下の4つをあげた。

「Amazon中心主義」4つの行動原則
  • その1「お届け日時がすぐわかる」
  • その2「在庫の有無をクリック前に知りたい」
  • その3「“もう知っている情報”はいらない」
  • その4「クリックしたくなる」

お客様を悲しませないよう、必要な情報は早く知らせるのがベターなのだ。Amazonに最適化されている顧客は、Amazonの体験がスタンダード。そのためには、次のように気を配ってほしい。

  • お届け日時の目安を書いておくゾウ。在庫切れ商品なら入荷の目安を書いておくゾウ

    入荷予定がわかっていれば、顧客に伝わる形で掲載しておこう。

  • 知りたい情報を配置して、ユーザーを躊躇させないゾウ

    情報が足りないと、ユーザーはクリックを躊躇する。パケットの浪費、すなわち「ギガ消費」を恐れて閲覧しなくなるからだ。これはとてももったいない! 顧客が欲しがる情報は、商品の横にも一覧ページにも配置するようにしよう。

  • 逆に「知っている情報」は削って、シンプルな文章を心がけるゾウ

    一方で、あまりにくどい表現は、顧客のスルー力を鍛えるだけ。シンプルな言い回しを心がけよう。

  • 商品を知りたくて、クリックしたくなるような情報を載せるゾウ

    自明の情報は必要ない。写真、デザイン、キーワードなど、商品のイメージが湧くような表現に比重を置こう。

ということで、今回は、「ギガ消費」からの「鳥獣ギガ」からの「鳥獣戯画と言えば、うさぎさんだね」というつながりで「宇佐」さんでした! ありがとうございました!

【このコーナーに協力いただける、ECサイトさん・企業ホームページさんを大募集!】
~あなたのサイトを無料で「かんたん!おしゃべりユーザーテスト」してみませんか?~

「見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!」を、いつもお読みいただきありがとうございます。本連載では、「ぜひ、うちのサイトも分析してほしい!」というサイトオーナー様を募集しています。

基本的に、物販などを行っている「ECサイト」または「企業のサイト」が対象です。

  • 自社サイトが、ユーザーからどのように見られているのか知りたい。
  • いまひとつ、自社サイトの構成に自信が持てず、シックリきていない。
  • シルバー層をターゲットに含めたいので、一度チェックしてみたい。

応募いただいたサイトでユーザーテストを行い、記事として公開させていただきます。ぜひご応募ください。

【応募方法】

次の情報を、「editor-tomioka@impressrd.jp」(担当編集:冨岡)までメールください。内容を吟味し、折り返しご連絡させていただきます。

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