【レポート】Web担当者Forumミーティング 2025 秋

AI時代に「選ばれる」オウンドメディアの共通点とは? PVに依存しない生存戦略

Content Marketing Academyの村上氏と、グランプリ受賞メディア『宙畑』『しゃかいか!』両編集長が、AI時代に支持を集めるオウンドメディアの戦略と実践を語った。

シキノハナ[執筆], 内藤 貴志(Web担編集部)[編集]

7:05

生成AIが大量のコンテンツを生み出す時代になり、企業のオウンドメディアにはこれまで以上に「質」や「独自性」が求められている。コンテンツマーケティングの最前線で活躍する編集長たちは、どのような戦略で読者の支持を集めているのか。

Web担当者Forum ミーティング 2025 秋」に、Content Marketing Academyの村上氏に加え、「コンテンツマーケティング・グランプリ2024」でグランプリを受賞した『宙畑(そらばたけ)』中村編集長、『しゃかいか!』加藤編集長が登壇し、それぞれの戦略と実践的なノウハウを紹介した。

左:Content Marketing Academy チーフ・ストラテジスト/「CONTENT MARKETING DAY」プロデューサー 村上 健太 氏
中:株式会社TAM/しゃかいか!編集長 加藤 洋 氏
右:株式会社sorano me CCO/『宙畑』編集長 中村 友弥 氏

グランプリ受賞編集長が語る、オウンドメディアの原点

生成AIがコンテンツを量産する時代に、オウンドメディアはどうあるべきか。その存在意義が、改めて問われている。

宙畑』と『しゃかいか!』は、約100件の応募の中からグランプリに選ばれただけあり、いずれも高い専門性を持つ、注目すべきメディアだ。

宇宙ビジネスメディア『宙畑』
宇宙産業を基幹産業へと育てることを目指すメディア。衛星データの利活用や宇宙業界の最新情報を幅広く取り上げ、民間企業の宇宙ビジネス参入を後押ししている。
『しゃかいか!』
日本各地の工場や工房を取材し、その魅力やものづくりの現場を紹介しているメディア。地域の衰退や後継者不足など、各地で起きている社会的課題を伝える役割も担っている。

特徴的なのは、両メディアとも直接的な営業活動や単体での収益化をあえて目指していない点だ。メディア単体での収益化を目指していないからこそ、更新頻度やPVよりも重要なものがあると話す。

オウンドコンテンツで重要になるのは想起性

オウンドメディアは「自社が自由にコントロールできる場」として20年近く前から広まり、企業の情報発信の手段として定着してきた。しかし、そのブームの中で、中身の薄いメディアも増えてきた。

現在は、SNSやAIの進化によってコンテンツの大量生産・大量消費が加速し、「どう伝えるか」よりも「何を伝えるか」が再び重要視されている。こうした状況の中で、ありきたりではない自分たちだからこそ発信できる「オウンドコンテンツ」に注目が集まっていると村上氏はいう。

AI検索時代(ゼロクリック時代)のオウンドコンテンツにおいて、重要なのは「メンタルアベイラビリティ=想起性」。つまり、「宇宙ビジネスといえば『宙畑』」「社会科見学といえば『しゃかいか!』」と、すぐに思い出される存在になることが、これからの価値あるオウンドコンテンツの条件。自分たちにしか発信できない情報こそが、企業の資産になる時代が来ている(村上氏)

テーマ①AI検索時代にオウンドメディアは不要になる?

ここからは「焚き火トーク」と題し、村上氏が提示する5つの話題に対してディスカッションをする形式で進められた。

最初の話題は、「AI検索とオウンドメディア」。検索時にAIが要約を表示するようになったことで、Webサイトを訪れる人が減るのではないか。この点について、2人は次のように答えた。

全体の流入数は減少しているものの、『宙畑』の指名検索はむしろ増加している。これは、AI検索で得た情報の正しさを確かめるためにサイトを訪れるユーザーが増えているからではないか。情報の真偽を確認する「信頼できるソース」として利用されている可能性が高い(中村編集長)

検索流入は減少しているが、取材先がテレビやAIに紹介されたことをきっかけに、補足情報として訪れる人が増えている。深い体験型コンテンツが持続的な関心を生んでいる(加藤編集長)

信頼性のある深い情報は、AI検索時代においても価値を失わない。村上氏は「広告やSEOもあるが、身近な人から伝わっていくことが長期的には効果的だ」とまとめ、両編集長に共通する点として「人とのつながりをとても大事にしている」と強調した。

テーマ②AI時代を生き抜く戦略

コンテンツを活用し、これからのAI時代をどう生き抜くのか、その戦略を聞いた。

『宙畑』は、B2Bの「顧客の先の顧客」まで理解を促せるよう、記事全体を設計している。立ち上げ時には3人のペルソナを設定し、各10名へのインタビューでニーズとの差を把握。現在は、業界全体を俯瞰するステークホルダー相関図を作成し、情報の「溝」を埋めるコンテンツを制作している。

また、インタビュー記事は1万字規模の長文になることも。AIが情報を生成できる時代に、インタビュイーの生の声を伝えることで、その人の人柄もわかるような記事に価値があるというで構成され、深い情報量こそが信頼につながるというスタンスで運営している(中村編集長)

受け手が自由に加工できる「開かれたコンテンツ」は拡散力を生む。記事がSNSやクチコミで広がることで、取材先やメディア自身のブランド力が高まり、新たな「出会い」が生まれることが大きな価値になっている。

長文コンテンツも積極的に許容し、読者がAIで要約したり音声化したり漫画化したりと、多様な形で受け取ることを歓迎している。こうした「自由な楽しみ方」がコンテンツの力をさらに広げるのではないか(加藤編集長)

情報の受け取り方は多様化している。AI検索、要約、SNS、クチコミなど、経路は1つではない。「重要なのは、自分たちが伝えたいメッセージや世界観そのものが伝わること。その発想の転換こそがオウンドコンテンツへの移行を促している」と村上氏はコメントした。

テーマ③PV至上主義からの脱却

オウンドメディアの現場では、PV(ページビュー)の増減に振り回されがちだ。しかし、「なぜ数だけで評価するのか」という疑問も大きい。PV至上主義をどう転換し、より適切な指標へと移行するにはどうすればいいのか。

「必要なPV」と「不要なPV」の見極めこそが新しいつながりや信頼につながる。『宙畑』はまず「見られるコンテンツ」づくりから始め、「届けたい人に届くPV」を重視している(中村編集長)

「自分たちに合った目標」を設定することが重要。参考にしているのは、「視聴率に依存せず、DVD販売数やイベント集客など別の指標に置き換える」テレビプロデューサー・佐久間宣行氏の方法。達成しやすく、より意味のある目標を設定することがポイントだ(加藤編集長)

PV至上主義に陥るのは、企業のビジネスとメディアが噛み合っていないからかもしれない。中村氏は、「オウンドメディアは、これまでの“効率的な集客ツール”から、会社のブランディングや人との出会いを生む“ハブ”へと役割が変わりつつあるのではないか」と語った。

テーマ④良いオウンドコンテンツの条件

どういうコンテンツが、優れたコンテンツだと言えるのか。村上氏の問いに対し、両編集長がそれぞれの視点を語った。

「『宙畑』らしい」と直接反応が返ってくるようなコンテンツこそ良いコンテンツ。そのために、技術的に難しいテーマを半年かけて学ぶこともあり、深い知識と情熱を注いで記事化している(中村編集長)

コンテンツを「情報」ではなく「熱量」として捉え、記事がどれだけ熱を持てるかを重視している。「ためになる」「元気になる」「おもしろい」「誰かに伝えたくなる」といった多様な価値を生み出し、AIには生み出せない“熱量”こそ人間が作るコンテンツの強み(加藤編集長)

村上氏は、良いコンテンツには必ず“熱量”が宿っていると指摘する。コンテンツマーケティング・グランプリの審査を通じて、その重要性を強く感じているという。

受賞メディアは、文面や写真から伝わってくる熱量がすごい。コンテンツに現れる熱い思いは、数値化しにくく評価指標として取り入れられていることは少ないが、確実に読者の心を動かしている。社内の“熱量の高い人”が直接書くことで、強いコンテンツが生まれる。そういう人を見つけることも大切かもしれない(村上氏)

テーマ⑤企業にとってのオウンドメディアの意義

最後は、このセッションの核心に迫る話題だ。企業がオウンドコンテンツを運営する意味とは何か。経営の視点から、その存在意義について二人に意見を聞いた。

オウンドメディアやオウンドコンテンツは、企業が「何をしたいのか」を示し、普段出会えない人や情報とつながる場になる。『宙畑』では、サイトに人を集めるだけでなく、編集者自身がハブとなってコラボを生み出す役割も重視している。たとえば「衛星データでここまでできる! ヤッホーが綺麗に返ってくる場所(やまびこスポット)の解析とシミュレーション」という記事は、コンテンツマーケティング・グランプリの表彰式でヤマップ(YAMAP)さんと出会ったことをきっかけに生まれた(中村編集長)

オウンドコンテンツは、自分たちの存在意義を示し、企業が「何のために存在するのか」を社会に伝える場となる。社会への貢献をどう実現するかという視点は経営的にも重要であり、コンテンツを通じて社内の人も会社の姿を理解し、モチベーションを高めるきっかけになる(加藤編集長)

村上氏は、「オウンドコンテンツは外部発信だけでなく、社内のモチベーション向上などのインターナルブランディングや、経営的なパーパス表現にもつながる」とまとめたうえで、CMAが提供する「コンテンツプランニングシート」を紹介した。これは、オウンドコンテンツを計画的に作るためのツールで、提示された二次元コードから年内いっぱいダウンロード可能だという。

また、CMAは2025年11月に、日本最大級のコンテンツマーケティングオンラインイベントCONTENT MARKETING DAY 2025」を開催した。今後の活動にも注目してほしい。

おわりに――両編集長からのメッセージ

最後に、編集長の2人からセミナー参加者へ向けて、本日の感想とメッセージが寄せられた。

加藤さんの話を聞きながら、オウンドメディアの役割を改めて再認識できた。定量情報だけでなく定性情報を集めることが、経営者との対話にも役立ち、前例の蓄積にもつながる。これからも価値あるコンテンツを届けていきたい(中村編集長)

コンテンツ制作は孤独になりがちだが、こうして語り合える時間は楽しい。コンテンツの成果は複利で返ってくるものだと考えている。良いコンテンツを積み重ねれば、年を重ねるごとに成果が大きくなる。ぜひ楽しみながら一緒に取り組んでいきましょう(加藤編集長)

グランプリ受賞メディアの事例から浮かび上がったのは、信頼性と熱量が人を動かすということ。そして「宇宙ビジネスといえば『宙畑』」「社会科見学といえば『しゃかいか!』」と想起されるような固有の価値を築くことの重要性である。さらに、PVだけでは測れない、ビジネスの目的に合った指標を設定する姿勢が、これからの時代のオウンドコンテンツには求められている。

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