初代編集長ブログ―安田英久

ネット業界にも広がっていた麻薬の影響 ~2009年、印象に残ったヒトモノコト

第12回のテーマは「2009年、印象に残ったヒトモノコト」です。
Web担のなかの人

このコラムは、Web担当者Forumと「日経ネットマーケティング」「Markezine」「ASCII.jp Web Professional」各誌の編集長が、毎回共通のテーマでネットマーケティングを語るコーナーです(バックナンバー)。

今回ASCII.jpのWeb Professionalが合流して4サイト連動コラムになりました! そして今年最後となる第12回のテーマは「2009年、印象に残ったヒトモノコト」です。

他誌編集長のコラムも同時に公開されていますので、併せてご覧ください。

2009年は覚せい剤所持などによる逮捕が芸能界で相次ぎましたが、Web関係者のなかでも、かなりの麻薬汚染が広がったことが、2009年最大のトピックでしょう。といっても、「Twitter」という名前の麻薬なんですが。Twitter+iPhoneがなければ生きていけないんじゃないかという人も、山ほど生まれましたね。「中心のない」ソーシャルメディアであり、そのリアルタイム性やゆるやかなつながり感から、ブログを更新せずにTwitterばかりになってしまった人も出現しました。

ウェブ業界だけでなく、いろんな人がTwitterを使うようになったために、2009年1月~12月で、twitter.comへの日本からのアクセス数は9倍以上、

Google TrendsでのTwitter
Google Trends for Websitesでみた過去12か月のtwitter.comへのアクセス(日本)

「twitter」という単語の検索は14倍以上にもなりました。

Google InsightsでのTwitter
Google Insights for Searchでみた過去12か月の「twitter」の検索(日本)

実際にはモバイルやAPIを通じたアクセスがありますので、もっと増えていますね。

また、企業が「Twitterをビジネスに活用するには、どうすればいいのか」と考えるのも当然の話。2009年だけで、Twitter関連セミナーも頻繁に開かれるようになりました。

Googleでの「Twitter セミナー」
Googleで「twitter セミナー」を検索

Web担的には「どうTwitterをビジネス活用できるのか」が気になると思います。もちろん以前にコラム「Twitterやセカンドライフやmixiアプリに手を出して失敗する人の考え方」で述べたように、Twitterだけで見るのではなく顧客コミュニケーション全体の一部として考えるべきなのですが、Twitterの利用という側面でいえば、その方法論は現状、次のような類型化で考えるのがいいでしょう。

  • 一般情報提供 ―― 他のチャンネルと同様の情報提供。特に大きな効果を出せるわけではないが、多々あるコミュニケーションチャンネルの1つとして。

  • 特別情報提供 ―― お得情報などをTwitter限定で配信。物販系には特に有効で、タイムセールなどはTwitterの特性に合う。

  • サポート ―― トラブルの早期発見と対応など。既存サポートチャンネルにおけるミスコミュニケーションを発見して柔軟に対応する手法。リアルタイム検索が整ってきたので、Twitterのユーザー層が広がっていくとさらに有効性が増す可能性も。

  • コミュニケーション ―― 顧客の情報を吸い上げたり、それに反応したりする動き。Twitter上でクイズを出すなどの仕掛けもブランディングコミュニケーションとして有効。

とはいえ、ネット系の人がTwitterに夢中になり、マスメディアでも取り上げられるようになったとはいうものの、一般の人への浸透でいうと、まだまだこれからでしょう。英語圏のように一般に浸透していくかどうかという観点では、2010年はTwitterにとって大切な年になるでしょう。そういった意味では、サイバーエージェントの「Amebaなう(アメーバなう)」のようなサービスがどう伸びていくかも気になるところです。

実は、「2009年、印象に残ったヒトモノコト」という今回のお題で、Twitterともう1つ最後まで残っていたネタが、「Amebaブログの黒字化でした。アメブロが2009年9月期に四半期ベースで黒字化した件です。

アメブロというと芸能人ブログ。Web業界の人は「マスメディアでの知名度に頼った芸能人ブログなんてブログじゃない、ブログは一般の人が情報発信できることが重要なんだ」ということを言いがちですが、アメブロがネット業界にどれだけの貢献をしたかは、測り知れません。芸能人ブログをきっかけにブログになじみ、自分でブログを始め、ブログを通じたコミュニケーションになじんでいった「普通の人」がどれだけいることでしょうか。そういった意味では、ネット業界の人にはなしえない、(表現は悪いですが)「札束で芸能人を呼び集めて場を作って育てる」ということを、周囲の無理解や批判に負けず黒字化するまで続けた藤田氏の方向付けと執心には感服します。ネットはもう技術者やオタクの場ではなく、主婦や学生も含めた普通の人の場になっているのだということを痛感します。

さてTwitterは2010年の日本で「普通の人」に浸透していけるのでしょうか。楽しみです。

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