Web 2.0がクチコミを連れてきた!

Web 2.0の流れが生み出したクチコミマーケティングの必然性

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[特集]Web 2.0がクチコミを連れてきた!

Web 2.0の流れが生み出したクチコミマーケティングの必然性

「バイラル」「エンゲージメント」……
なぜ広告・マーケティングが変わってきたのか

Web 2.0時代。そこでは、普通の人が普通にブログを書き、購入した商品に関する話を書く。そして、その情報は検索エンジンを通じて簡単に得られる。情報が流れる仕組みは変わった。では、マーケティングはどう変わるべきなのだろうか。

池田紀行(株式会社サイバーブレッド) &
タカヒロノリヒコ(mediologic.com)

「2.0」の流行に騙されない・惑わされない。
変化の本質はどこにあるか

今年のネット業界、および、メディア/マーケティング/広告業界の流行語は、間違いなく「Web 2.0」だ。すでにティム・オライリーによる論考『What Is Web 2.0』の内容を大きく超えて(逸脱して?)、完全にバズワード(流行語)となっているふしがある。何でもかんでも「2.0」とつけてしまえという状況になっていて、あげくの果ては「3.0」まで行き着いた人がいる次第(たとえば「マーケティング2.0」とか「Web 3.0」とか)。

さて、件のオライリーの論考のサブタイトルには「次世代のソフトウェアのためのデザインパターンとビジネスモデル」とある。これに照らすと、マーケティングや広告に「2.0」をつけるなら、「次世代の広告コミュニケーションのためのコミュニケーションデザインとマーケティングモデル」という要素がなければならないのではないだろうか。

しかし、Web 2.0とは違って「マーケティング2.0」や「広告2.0」が流行語以上の意味を成さないのは、その変化が「今とこれから」起こるものではなく、「すでに起こっており、今もこれからも」起こり続けることだからだ。数字でバージョン番号を振ることに意味はない。なぜならば、広告コミュニケーションやマーケティングといったものは、常に変化する社会と消費者の中で「利用され続けるツール」であって、常にアップデートを繰り返しているのであり、これまで「1.0」であったことすらないのだから。

ではその一方で、なぜここまで「クチコミ」「バイラル」や「エンゲージメント」といったマーケティング語が再燃、あるいは新語として登場しているのか。マーケターやウェブ担当者としてここを理解するには、マーケティングの本質そのものを見据えなければならないだろう。本記事では「バイラルマーケティング」「クチコミマーケティング」や「購買行動モデル」といったキーワードを見ながら、その本質を洗い出していきたい。

「消費者/利用者」と「トライブ」

先に進む前に、まずこれらの言葉について考えてみたい。別に国語辞典的な定義をしたいのではない。「なんとなく」みんなとらえている、これらの言葉が孕む「意味合い」を考えるのだ。そしてそれらが無意識のうちに頭の思考をセットしているということを理解してほしい。

実は、この「なんとなく」みなが思っていることへの問題に、早くも1970年頃に気づいていた賢人がいた。フランスのマルクス主義哲学者で、名をアンリ・ルフェーブル(Henri Lefebvre)という。彼は『日常生活批判』という著書の中で1つだけ大きな議案を投げかけていた。その要旨は次のようなものだ。

日常生活批判
現代思潮新社(2002/04)
ISBN4-32900087-3

“消費者(consumer)”という言葉があるが、これは物事を“消費する・消尽する(consume)”から来ている。つまり、“消費者”とは“使い尽くす人”というニュアンスを孕む。しかしそうなのか? 実際は、何かを手に入れた(購入した)からといって「そこで終わり(consumption)」なわけではない。それをその後「利用する(use)」のだ。だから、“消費者”という言葉は正しくない。“利用者(user)”と呼ぶべきだ。

今から30年以上も前にすでに発見され見過ごされてきたこのテーマこそが、今再び注目されるべきテーマなのである(なんとかかんとか2.0とか言っている場合ではない)。

しかし、なんて単純な課題なんだろう。このテーマに関する問題とは、ひとえに「マーケター自身が“一消費者”・“一利用者”であることを忘れてきた」ことに過ぎない。どうすればその商品やサービスを享受できるのか、という視点を一消費者や一利用者として楽しむことができれば、そこに自ずと答は出てくるはずだ。にもかかわらず、あまりにも「マス」として画一化されたターゲットをとらえ、「マス」として画一化された商品やサービスをつくり、「マス」としてメディアを使ってきた頭では、単純なものにこそ答えを出すのが難しくなってくる。

※1 CGM:Consumer Generated Media:消費者発信型メディア

※2 CGC:Consumer Generated Contents:消費者発信型コンテンツ

※3 総務省「ブログ・SNS現状分析及び将来予測」(PDF)

そんな中、近年広告業界の中でも注目を集めているのは、ブログやSNSなどに代表されるCGM※1の台頭や、YouTubeなどに代表されるソーシャルビデオサイト内に多くアップロードされているCGC※2の隆盛だ。

確かに、ブログ登録者数は868万人を突破し、SNS利用者も716万人を数え、この数は半年で2倍近い増加をたどっている※3。しかし、いくら数が増えたところで、ブログやSNSの登録者は「マス」ではない。彼らは、年齢や性別といったデモグラフィックに画一化された集団=「マス(mass)」ではなく、ある興味や関心によって互いに“結びついた”集団=「トライブ(tribe)」と呼ばれるカタマリなのである。

「マス」には横の結びつきはないため、「マスコミュニケーション」では情報が縦方向に“下りてくる”。しかし、「トライブ」の中では情報は横方向に“拡がる”。これがブログやSNSがもっている性質なのである。

というわけで、実際のところ、「消費者」「使用者・利用者」や「生活者」といった用語については、それらの孕む問題を理解しておけばいい。むしろ「トライブ」的な結びつきでそれらが人のカタマリになっていると理解することが大事なのだ。

図1 Web 2.0時代において、企業がメッセージを消費者に伝えるには、旧来の一方的なマスに対する発信(B2C)ではなく、トライブ内で情報が自主的に流通するB2C2Cの設計が重要になってくる。

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