基本編

トップページは誰のもの? 現代流の動線に合わせたトップページ再評価法

―何を解析すればいいのかわからないあなたに―

Webサイトの“見える化”&“カイゼン”講座

トップページは誰のもの? 現代流の動線に合わせたトップページ再評価法

今回はトップページの位置づけについて調整しよう。

これまで何度も考察してきたとおり、実際にアクセス解析を行うと、最初にトップページを訪れるユーザーは、今やわずか25%程度しかない。言い方を変えると、トップページを入り口とする来訪者は25%程度なのだ。

そういった状況を理解せずに、これまでのようなトップページ偏重の考え方のままサイトを運営していては、機会損失の原因ともなってしまう。

解析結果の「1番上」だからこそ
気づきにくいトップページの盲点

アクセス解析で「アクセスの多いページ」「入り口になることが多いページ」を調べると、解析結果リストの1番上には、たいてい「トップページ」が出てくる。いろいろな動向はあるが、いまだにトップページは非常に重要なページであることに変わりはない。これまで、「訪問者はトップページからやってくるから、そこからどう誘導するかが大切」とよく言われてきた。“見せたいページへトップページから誘導を図ること”、これこそがホームページ制作運営の一番の課題だった。そう、過去形だ。

しかし、ウェブサイトにおけるトップページの位置づけは大きく変わってきている。このことに気づかずに、昔のやり方のままトップページからの誘導を考えていると、大きく損をする恐れがあるのだ。今回はアクセス解析の数字をもとに、トップページをどう評価し直すかを考えていくことにしよう。

トップページ以外の入り口率が高くなる——時間経過とともに

総訪問者数に対して、トップページを入り口として訪れた回数の割合を算出してみよう。これが「トップページ入り口率」と呼ばれる数値だ。トップページ入り口率は、サイトが現在どのような状態になっているかを見極める、わかりやすい指標の1つとなる。

たとえば、ウェブサイトを立ち上げた当初は、リピーターも少ないし、検索エンジンでもあまり紹介されていない。広告やパブリシティでの告知も、まだサイトの開設を知らせるだけで、多くの場合はトップページのURLが告知されている。だからトップページ入り口率が非常に高い場合がほとんどだ。

こうしたサイト開設直後の時期なら、トップページ入り口率は70〜80%となるのが普通である。これは現在のウェブサイトとしては非常に高い割合だが、それでも100%ではないことに留意しておきたい。つまり、非常に早い段階から、トップページ以外から訪れる人が20〜30%存在するのだ(図1)。

図1 立ち上げて間もないサイトのトップページ入り口率

さて時間が進むにつれ、サイトは多くのリピーターを確保していく。お気に入りやブラウザの履歴から訪れる人は、トップページ以外のページから訪れることも多いだろう。広告などにおいても、トップページのURLではなく独特のランディングページのURLが表記されるなど、どんどんトップページ以外のページが入り口になる割合が高くなる。

とりわけ、人気のコンシューマ向け商品をたくさん抱えている企業では、キャンペーンなどにより商品ブランド名で検索して訪れる人が急激に増えるため、トップページ入り口率が急降下する。

商品ブランド名に比べると会社名そのものはあまり知られないことも多いため、会社名の検索でトップページに訪れる人は、意外に少なかったりするのが実態だ。

あるいは、Yahoo!などのニュースサイトにリリースが掲載されたりすると、急に訪問者が増えることもある。これも多くは製品紹介の中の1ページへの直接リンクとなっており、トップページ入り口率を大きく引き下げることが多い。

B2Bサイトでも、こういった現象は同様だ。商品検索などの便利な機能を提供している場合には、その機能の表紙を入り口にして再訪する人(ビジネスユーザー含む)が増えるので、トップページ入り口率は下がっていく。

会社案内に関心がある人も、トップページではなく会社案内へ直接やって来る人が増えてくるだろう。採用情報を求める学生たちなら、「待遇」の情報が気になるため、人材募集ページを直接お気に入りに入れ、ブラウザにたくさんのタブを開き、多くの会社の各待遇を見比べる、といった行動をとるものだ。

これらすべてが、トップページ入り口率を引き下げる要因となる。

会社名以外のキーワード検索では
たいていトップページ以外に来る

サイト開設から時間がたち、エンジンでの評価が高くなっていくと、さらに検索からの訪問者が増えてくる。現在の検索エンジンは、昔のYahoo!のように「こんなサイトがありますよ」とトップページを教えてくれるのではない。「あなたが検索したキーワードに合致するページはこれです」と、特定のページを直接教えてくれるのだ。

トップページはたいてい多くのページにリンクするのに忙しいページだから、1つのキーワードと強い結びつきを持っていることは少なく、検索からの入り口になることは少ない。また、画像が多用されていることが多いため、ますます検索にヒットする確率は減ってしまう。こうした理由からも、トップページ入り口率は時間とともに減少していくのだ。

トップページ入り口率を高める……必要はない

時間とともにトップページ入り口率が減っていく。それは、ここまで見てきたように、自然なことだ。トップページ入り口率が低いからと言って、問題とするような事情は何もない。しかしながら、この比率が低いことを「困ったことだ」と感じる企業人は多い。トップページは力を入れて作っているエリアだし、企業のイメージや最新情報を掲載しているので、トップページはより多くの人に見てもらいたい。トップページから来る人が少ないのは困る。そう思う気持ちもわかる。

とはいえ、トップページ入り口率を再び引き上げるのは簡単なことではない。時間がたって、お気に入りの入り口が分散したのは、ユーザーがそれぞれのコンテンツを「便利だ」と思った結果なのだ。検索で各入り口ページの評価が高くなったのは、そのページがそのキーワードについて力を入れているページだからだろう。

ユーザーに「お気に入りを必ずトップページにしてください」と頼むのもおかしな話だし、検索でたくさんのキーワードからトップページがヒットするようにするのは至難の業だ。だから、一度低くなったトップページ入り口率を高めようとは考えないほうがいい。

トップページ入り口率を高めるには、一般的には会社名を浸透させ、検索で商品を思い浮かべるよりも社名を思い浮かべてもらえるようにすることだ。しかし、そんなことができるのは、全国区の“知らぬ者がいない”会社だけである。トップページが入り口になることは会社にとっては望ましいことのように思えるが、訪問者(顧客)にとっては必ずしもそうではないのだ(図2)。

図2 トップページが入り口になることが利用者の手間を増やす場合もある
製品Aの機能3を見たい人が、トップページから来たら、3クリックを要するが、製品Aのページに来た人は1クリックで到達できる。

この図でわかるように、トップページは、訪問者が目指すページ(機能)から“ほどほどに遠いページ”なのだ。トップに来た人は、まず目指す機能へのボタンやリンクを探さなければならない。むしろ、目指すページを直接の入り口として訪れるほうが、訪問者にとってはいくらか手間が省けうれしいのだ。

そういうわけで、トップページ入り口率については、てこ入れはしないでありのままの数値を確認するだけとし、その数字に応じたサイト運営を心がけるほうが、はるかに効率が良いということになる。

0.5%の訪問者しかトップページから入ってこないサイトもある

では、実際に今のウェブサイトのトップページ入り口率がどれぐらいか、見てみよう。現在、多くのサイトで平均をとってみると、35%程度になる。

1999年までの70%といった数字を見ていると、大きく下がったものである。ただし、製品情報は各製品のドメイン名のサイトに置きカンパニードメイン名(○○.co.jp)に会社案内しか置いていない、といったサイトでは、会社名を検索して訪れる人が多く、相変わらずトップページ入り口率が7割以上あったりする。

さらに、ここであげた「35%」という平均トップページ入り口率は、そうした非常にトップページ入り口率が高いサイトの数字に引きずられて高い目に出ていると考えて良い。こうしたサイトを除いて平均すれば、25%程度になる。こうしたところが最頻値だと思ってもらうほうがいいだろう(図3)。

図3 今やトップから来る人は25%程度

ちなみに私が知るかぎり、一番値が低かったサイトではトップページ入り口率は、なんと「0.5%」だった!つまり、月に10万人が訪れていても、最初にトップページを訪問する人は500人しかいないということだ。コンシューマサイトでは10%を切るぐらいの数字は、もう決して珍しくない。

と言っても、他ページはもっと小さなシェアの入り口ページとなっている。今でもトップページは、アクセス解析で「アクセスの多いページ」「入り口になることが多いページ」のリストを出すと、その1番めになっている。だから多くの会社ではトップページの質的な変化に気づいていないのだ。

トップページから来ているのは、
取引先などの関係者が多い

トップページ入り口率が減ったことは、ただ量の多い少ないの問題ではない。トップページにやって来る人は、会社名で検索した人が非常に多いのだが、そうした人は「ホームページであらたに購入を考える新規顧客」ではないことが多い。

アクセス解析してみると、トップページに会社名で検索して来た人の多くが、会社案内で地図を見て帰ったり、採用情報やIR情報、調達コーナーなどに移動していることがわかる。「会社名」と「認知されている商品ブランド名」とが同じ一部有名企業だけが、商品を求める人を、会社名でトップページに集める力を持っている。自動車メーカーや家電企業など、カタカナ3文字程度の社名で、商品カテゴリの代表として誰もがすぐに思い浮かべられるような名前の会社がこれにあたる。

それに比べて、一般的な会社であれば、会社名で検索してトップに来るのは既存の取引先、仕入れ元、金融機関・投資家、学生などがほとんどだ。トップページ入り口率が減っていっても、こうした広い意味での「関係者」たちは引き続きトップページを入り口として来る層として残る。

つまり、商品を求める人たちは、ブランド名や個別の商品名で検索するなどして、さまざまなのページを入り口にするようになり、トップページを入り口として来る人の多くは、こういった関係者が多くなるのだ。

こう考えると、トップページの質的な変化は明らかだ。トップページに来ているのが関係者ばかりだとすれば、商品についていくら主張しても、誘いに乗ってリンクをクリックすることが少ないのは、仕方がないことかもしれない。

訪問者の8割にメッセージするには、どれだけのページが必要か?

まずは、きちっとアクセス解析をして、トップページ入り口率を算出しよう(図4)。

図4 トップページ入り口率の計算方法

トップページ入り口率(%) = トップページの入り口回数 ÷ 総訪問者数 ×100

トップページ入り口率が20%を切っていたら、非常にトップページ入り口率の低いサイトだと考えて良いだろう。同時に、トップページ訪問率も算出しよう(図5)。

図5 トップページ訪問率の計算方法

トップページ訪問率(%) = トップページの訪問者数 ÷ 総訪問者数 ×100

このときトップページ入り口率とトップページ訪問率の差が、「トップページ以外から訪れて、トップページに移動する人の割合」ということになる。

こうして算出したトップページ入り口率も訪問率も低いなら、「トップページだけに書いたメッセージは、あまり見られていない」と考えなければならない。

トップページ訪問率が30%、トップページ入り口率が25%といったサイトが多いが、これだとサイト側が重要と考えているニュースがあまり見られないことになる。オンラインショップサイトで、トップページ訪問率が8%しかなく、会員募集や大特価セールの予告が一般の顧客にほとんど見られていないことがわかった、というサイトも実際にある。

トップページ入り口率が低いサイトでは、重要なニュースやコンテンツへのリンクはトップ以外の重要ページにも掲載するようにしなければならない。どのページにそれらを掲載するかは、訪問率、入り口率の高いページ順に並べて、訪問者の8割が見るように、といった基準で考えると良いだろう。

一例を見てみよう(表1)。

表1 入り口率の高いページ順
訪問者数訪問率入り口率
全体10万人————
トップページ2万人20%15%
商品情報1万人10%8%
会社情報5000人5%4%
商品A3000人3%2.7%
商品B2000人2%1.8%
商品C2000人2%1.8%
商品D2000人2%1.8%

この例では、総訪問者数が10万人なので、8割の訪問者にメッセージしようと思うと、メッセージを掲載するページの合計訪問者数が8万人になるように掲載ページを調整すればいい。表に示した7ページ分を合計しても、まだ4万4000人にしかリーチできない。8万人に見せるには、あと3万6000人に見せる必要がある。これよりも下位のページにそれぞれ2000人の訪問者があると仮定すると、少なくとも3万6000人÷2000人=18ページに情報を掲載しなければ、訪問者の8割をつかまえられないことになる。

トップページ入り口率の低いサイトでは
「トップページ=会社の顔」となる

こうしたトップページ入り口率の低いサイトでは、会社情報に移動したがっている関係者たち相手となることが多いので、トップページから製品ページへリンクしても期待どおりの反応は出にくい。トップページは製品情報のリンク元としてはバリューが下がっているのだ。しかし、逆に見れば、「会社の顔」としてのバリューが高まっているとも言える。コーポレートブランディング、IR、CSR、採用情報など、企業として出すべき情報をどんどん見せていくと良いだろう。

より積極的に、製品を求める人を製品ページにいきなり集めるようにし、そこからトップページに誘って、「この製品を作っているこの会社はこんな全体像を持った会社だったのか」と気づかせ、企業ブランドを高めたり、別の商品を買ってもらったりするのだ(図6)。

図6 入り口率の低いトップページを「会社の顔」として活用する発想

図6のような位置づけで、トップページを会社の顔としてより活用していくことができれば有効なサイト運営ができるようになるだろう。

用語集
CSR / アクセス解析 / キャンペーン / キーワード / コンテンツ / コンバージョン / ドメイン名 / ヒット / リンク / 検索エンジン / 見える化 / 訪問 / 訪問者
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

リーチ
Web広告の効果指標のひとつで、「広告の到達率」を意味する。ある特定の期間にその ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]