千趣会は2025年12月期から2027年12月期までの3年間を対象とした再生計画を発表した。2022年12月期から3期連続の営業赤字を計上している千趣会は、2026年12月期の営業黒字転換。2027年12月期には売上高500億円、16億円の営業黒字を計画する。
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再生計画の概要(画像は千趣会のIR資料からキャプチャ)
現在抱えている経営課題は「不明瞭なターゲットとトレンド対応の弱いMD」「通販事業の強みを生かした事業拡大が不十分」「通販事業以外の収益基盤の不存在」。これに対して、通販事業の抜本改革、通販アセットを活用したビジネス拡大、新たな収益源の開発――といったアプローチで再建を進める。
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全社戦略(画像は千趣会のIR資料からキャプチャ)
主力事業の通販事業「ベルメゾン」の抜本的な改革
幅広い世代をターゲットに多様な商品を展開してきたが「ベルメゾン」。近年は顧客のニーズが多様化、トレンドの変化が加速したことにより、新規顧客獲得コストの増加、売り上げの伸び悩みを抱えていた。
これまで1ブランド・マルチターゲットで展開してきた「ベルメゾン」を、世代別に3つの事業ドメインに再編。具体的には、「With Family(子育て世代)」「Around 50(団塊ジュニア世代)」「Grand Generation(シニア世代)」に分類。それぞれの世代に特化した商品開発、マーケティングを展開していく。
世代ニーズに合わせた商品や提案、マーケティングを実施し、最新トレンドを捉えた新商品の投入、新鮮で共感性の高い売り場作りを進める。
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通販事業の構造改革(画像は千趣会のIR資料からキャプチャ)
特に注力するのが「Around 50(団塊ジュニア世代)」だ。「ベルメゾン」の売り上げを支える最大のボリュームゾーンであるこの世代に対しより深くフォーカスし、顧客ロイヤリティを高め収益拡大につなげる。
さらに、ECモールとの販売強化も進める。30歳代〜40歳代向け商品群を強化し、外部ECモールでも競争力のあるブランドへと育成することで、新たな顧客層を獲得していく。
コスト構造の見直しも重要な課題。世代別に最適なチャネル戦略を展開することで、注文獲得比を効率化。カタログのラインナップや配布方法を見直し、コールセンターや物流センターの合理化を進めることで、経費削減を実現する。
通販アセットを活用したビジネスの拡大
通販のアセットを活用したビジネスの強化・拡大も進める。
「ベルメゾン」で培った顧客基盤を生かした広告事業を強化する。「ベルメゾン」のターゲット層に合わせた広告メニューの見直しや新たな広告サービスモデルの開発を進めることで、広告収入の増加を図る。
また、株主優待事務局サービスの営業および運用の強化、継続的な物流受託先開拓といった「法人向けサービス」、既存の得意先との協業強化による「ギフト」の拡大なども進める。
新たな収益源の開発
子育て支援事業、エシカル推進事業、海外事業を強化する。
子育て支援事業では、通販事業と保育園などを掛け合わせたサービスを展開。各園の施設長と連携し、園児獲得活動、保護者、子育ての支援といった観点からさまざまなサービスを開発し、導入していく。
エシカル推進事業では、リユース事業を強化。古物商の許可を取得し、買取商品の再販を自社で内製化するほか、「kimawari宅配買取サービス」の有料版を開発し、循環型社会の実現に貢献していく。
海外事業では、中国以外への販売地域拡大と取り扱いジャンルの拡大を推進。千趣会商品のライセンス販売事業を海外展開するほか、日本発のIP商品の企画コラボを海外展開するなど、グローバル市場でのプレゼンスを高めていく。
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千趣会が2月13日に発表した2024年12月期連結業績によると、売上高は前期比7.4%減の456億円、当期純損失は39億5800万円(前期は47億8200万円の損失)だった。最終損失は3年連続。ただ、損益面は改善しており、2024年12月期の最終損失は前期と比べて11億2400万円縮小した。
2022年12月期に「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に重要な疑義を生じさせるような状況」が存在しているとして、決算短信に「継続企業の前提に関する重要事象等」の注記を記載。2024年12月期もゴーイングコンサーンの注記が継続している。
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オリジナル記事:黒字転換をめざす千趣会の再生計画とは? 現状の経営課題+通販事業の抜本改革+新規事業の取り組みまとめ
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