新規顧客がEC売上の半数近くを占める「洋服の青山」の通販戦略とは? 実店舗とECの併用者が拡大したメソッドを解説 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2022年12月26日(月) 07:00
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「洋服の青山」で知られる青山商事は、OMO戦略の強化を進める中で、ECでの新規顧客の割合が拡大。実店舗とECの併用者が増えているという

青山商事では、OMO戦略の強化を進める中で、ECでの新規顧客の割合が年々拡大している。それを受けて、ネット上での買いやすさを担保する仕組みも相次いで導入。実店舗とECの併用者を拡大させることにも成功しており、好循環を生み出している。

ECでは低価格帯商品の引き合い高まる

今上半期はコロナの感染状況の変化に伴いテレワークの機会も限られてきたことから、ECでのビジネス需要も回復し、スーツやシャツ、レディースの主要3アイテムがけん引した。低価格帯から高価格帯までまんべんなく動いたという。

実店舗と比べ、ECの方がやや低価格帯の商品が強かったもよう。特にセットアップで1万円以下の「ゼロプレッシャースーツ」が若年層を中心にECでヒットしたことも起因している。

ECではセットアップで1万円以下の「ゼロプレッシャースーツ」が若年層を中心にヒットECではセットアップで1万円以下の「ゼロプレッシャースーツ」が若年層を中心にヒット
冠婚葬祭向けアパレルも需要復活

その一方でアダルト向けのスタンダードなスーツも好調に推移。コロナ禍のこの1、2年間でスーツを買い控えていた顧客の反動需要があったと見ている。同様の理由で、冠婚葬祭の機会も徐々に戻りつつあることから、フォーマル商品も売れていった。

また、この数年間でOMO戦略を本格展開したこともあり、ECの顧客層では新規の割合が年々増加している。700店以上を全国展開し、多くの来店客を抱えている同社がオンラインを強化したことでリアルとネットの併用顧客が拡大。ECの新規比率を底上げしている。

加えて、Web広告の在り方も見直し、SNSを積極活用することで、今まで取り切れていなかった20~30代も多く獲得できるようになった。

EC購入者は半数近くが新規顧客、伸びしろに期待も

その結果、現在では「洋服の青山」のEC購入の50%近くが新規となっており、まだまだ伸びしろが見込めるとしている。

「洋服の青山」ECサイトでは新規顧客の利用が半数近くを占める「洋服の青山」ECサイトでは新規顧客の利用が半数近くを占める

さらにOMO戦略の一環として、近年注力しているのが、ECでの先行発売や限定商品だ。実店舗とECのどちらでも買いやすいようにした環境作りはもとより、ECでの先行・限定商品を意図的に増やすことで、ファンが通販サイトを積極的に見るきっかけになるとも考えている。現状、新商品については基本的にECでの先行発売を進めていくようにしているとした。

そのほかにも、全店舗で一斉販売する前にトライしてみたい企画商品などをECで先行発売している。直近ではエコ素材を使った新商品などを取り扱い、ウェブでの反響を見ている

ビジカジ路線は今後も注目

商品戦略としては、引き続き「ビジカジ」の販売を強化していく。同社によると、ECでのアパレル商品の買いやすさにはサイズの見せ方が大きく関わっているという。

青山商事はビジネスカジュアルの販売に引き続き力を入れていく方針(画像は「洋服の青山」ECサイトから編集部がキャプチャ)青山商事はビジネスカジュアルの販売に引き続き力を入れていく方針(画像は「洋服の青山」ECサイトから編集部がキャプチャ)

一般的に、カジュアル商品については端的に、S・M・Lという表記でわかりやすいが、スーツの場合は独特のサイズ感やカテゴリー分けとなっている。スーツについても、今は単純な表記の方がネット上で買いやすいという層も出てきていることから、ビジカジ寄りの商品の需要が増えていると考えている。

とはいえ、従来のスーツのサイズ表記で買っている人も少なくないことから、現在は通販サイトで「マイサイズ」機能を提供。過去に購入した商品のサイズが登録されており、2回目以降の購入サイズがわかりやすくなっているようだ。

このほかにも、ビジネスウェアのガイドライン情報をサイト内で掲載。種類やスタイルごとの着こなし解説などを発信している。

サイトでは着こなしの解説や機能性も示している(画像は「洋服の青山」ECサイトから編集部がキャプチャ)サイトでは着こなしの解説や機能性も示している(画像は「洋服の青山」ECサイトから編集部がキャプチャ)

合わせて、有人によるチャットボット機能も搭載。実店舗でのスタッフ経験がある担当者が、回答していく仕組み。10月にはここにAIを組み合わせて、顧客の商品詳細ページに問い合わせを受けた商品に関連するコーディネートの提案画像を表示できる機能も取り入れている。

デジタル会員は堅調に増加、前年比較250万人増に

なお、公式アプリについては4月にお気に入り機能を入れており、実店舗で見た商品のバーコードを読み込むことでお気に入りに登録されて、後にECからでも買えるようになっている。

傘下ブランドの「ザ・スーツカンパニー(TSC)」と合わせて、今年9月末時点でのアプリ会員登録数は674万人で、前年から132万人増加。また、各種SNSやメールなどを合わせたデジタル会員数全体については前年比250万人増の1596万人に拡大している。

実店舗とECの相互送客加速へ

現状での実店舗との連携においては、EC商品の店舗出荷(発送)や店舗受け取りを増やすことを掲げており、特典なども設けながら利用を促進。リアルとネットで相互送客が図れる仕組みとして進めている。

同社ではEC商品の実店舗からの出荷について、中長期的に拡大することをめざしている。この仕組みは、注文された商品が顧客の最寄りの実店舗に在庫がある場合、ECの倉庫からではなく、当該店舗から直接出荷することで、注文を受けたその日の翌日には最短で到着するというもの。配送リードタイムの短縮と物流コストの削減になるとしている。

もちろん、当該店舗で梱包や出荷作業を行うことから店舗スタッフのオペレーションに影響する面もある。

これまでそういった部分をトライアルしていきながらさまざまな問題点・課題を洗い出し、できるところは今後システム化していく予定。対象店舗数についても今後拡大する考え。

EC商品の店舗受け取りは利用数2.4倍

同様に、実店舗でのEC商品の受け取りを増やすことも進めている。これは昨年から取り組んでいたもので、今期は前年比240%まで利用数が増えているという。

店舗受け取りサービスの利用者数は右肩上がりになっている(画像は「洋服の青山」ECサイトから編集部がキャプチャ)店舗受け取りサービスの利用者数は右肩上がりになっている(画像は「洋服の青山」ECサイトから編集部がキャプチャ)

実店舗出荷と同じく、意図的に実店舗受け取りを増やすことで、物流コストや効率の面で高い効果があるという。また、最大のメリットは実店舗への来店機会の創出につながるということ。実際にECでの注文商品を実店舗で受け取った顧客は、その後、実店舗のリピーターにもなりやすいという。

「コンビニやカジュアルウェア店などとは違い、紳士服は来店頻度がそこまで高いわけではない商材。これが仮に年1回の来店が2回に増やせるとなるとかなり大きい」(同社)と説明。

受け取り時には実店舗スタッフが、前回購入された商品をフックにした接客もできるため、深いコミュニケーションが図れると見ている。

店舗受け取りの“ついで”セールスを促進

実店舗受け取りはもともと利用数が右肩上がりで増えていたものだが、今期は実店舗受け取りの利用で2か月間限定で実店舗で使える20%クーポンを配布。それにより、さらに大きく利用者が増えた面があるようだ。

「マーケティング的にはどのように顧客のライフスタイルの中に『洋服の青山』が入ってくるかが大事。ただメールを送ってセールを伝えるよりも、受け取りのついでに気になる情報を直接伝えることで、より『次も行こう』と思える」(同)とし、“ついで感”の演出をどのように作るかを大事にしているとした。

EC事業売上、前年比31%増の34億円を計画

同社の場合、「洋服の青山」で699店舗、「TSC業態」で60店舗の実店舗網(9月末時点)を持っていることから、リアルの拠点を活用したEC連携は今後も欠かせないようだ。

なお同社のEC事業の売り上げについて、今上半期(4~9月)は前年同期比29・4%増の14億1000万円だった。今通期の計画としては、前年比30・8%増の34億円を計画している。

顧客と双方向のコミュニケーション施策を強化へ

下半期についてはEC限定セールをはじめ、各種デジタル媒体も使った1to1によるコンテンツ配信など、情報発信の最適化を実施する。SNSについてはライブコマースのように双方向のコミュニケーションが図れる施策を強化していく考え。

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