高島屋は、2024年2月期が最終年度の中期経営計画で掲げる「ネットビジネス売上高500億円」の達成に向けて、EC専用倉庫を開設して店頭在庫に頼らない販売・出荷体制を整備するほか、EC事業部内にバイイング機能を持たせることで、ネット限定商材の開発を進めて品ぞろえ強化につなげる。カタログ通販では、出産内祝いカタログや冷凍グルメの専門カタログを始動するなど、新たな顧客アプローチ手法の開発やコロナ禍で高まる消費者ニーズへの対応を強化する。紙媒体とECの両チャネルで成長を狙う高島屋の現状と通販戦略を見ていく。
売り上げ目標達成ならずも、母の日などギフトで成長
高島屋の前期(22年2月期)におけるネットビジネスの売上高は前年比8.8%増の323億円で、目標の345億円には届かなかった。そのうち、主力サイト「高島屋オンラインストア」の売上高は3.9%増、食料品宅配サービスの「ローズキッチン」が5.2%増、ファッション通販サイト「タカシマヤファッションスクエア」が9.0%増だった。
コロナ1年目となる前々期(21年2月期)は、巣ごもり需要の拡大に伴う消費者のネットシフトが加速したこともあり、同社もネットビジネス全体の売上高が前年比約60%増と大幅拡大した反動もあって前期の成長率は落ち着いたが、24年2月期に計画する500億円へのステップとして、今期は420億円を掲げているだけに、もう少し伸ばしたかったところだ。
前期はとくに4~5月が苦戦。ボリュームの大きい中元商戦の後半から盛り返し、8月に実施した「高島屋オンラインストア」のリニューアルに合わせてキャンペーンを展開したこともあって、9~10月は大きく伸ばした。ただ、人出の増加や実店舗の回復とは真逆に、11月くらいから再び苦戦し始めたという。
同社のECはギフトや食料品が強く、大型商戦である中元・歳暮は売り上げを維持しつつ、バレンタインや母の日など第2のギフトとして力を注いでいる商戦ではしっかり成長できた。
高島屋通信販売のオリジナルブランド「タカシマヤ スタイル・プリュ」
スマホファーストのサイト設計でリニューアル
昨年8月に実施した「高島屋オンラインストア」のリニューアルでは、スマホファーストのサイト設計とし、スマホサイトは訪問者ベースで全体の7割強、売り上げベースでも約半分を占めている。
リニューアルした「高島屋オンラインストア」。スマホファーストの設計になっている
また、これまで同社では通販サイトで展開する企画ページについては、クリエイティブチームと企画チームが打ち合わせを重ねて作り込んだページを展開していたが、サイト刷新に合わせて各担当者が簡易的に企画ページを作りやすくした。同じ商材であっても切り口が変われば見え方も変わるため、さまざまな企画をスピーディーに更新し、サイト訪問者の目に触れる機会を増やした。
強化中の自家需要の開拓については、EC全体の成長率よりも伸ばした。規模はまだ大きくないものの、百貨店の優位性が出せる特選カテゴリーが好調だ。
「高島屋オンラインストア」内には世界を代表するラグジュアリーファッションを集めた「タカシマヤラグジュアリーサロン」のコーナーに続き、ハイエンドからカジュアルウォッチまでを多彩にラインアップした「タカシマヤウォッチメゾンオンライン」コーナーを開設し、取り扱いブランド数や展開商品数の拡充に努めている。
コスメを強化、EC用在庫を確保
今期、自家需要の開拓ではコスメを戦略的に強化する。具体的には、EC専用の倉庫を8月末に開設する予定で、商品在庫をEC用に確保するのに加え、EC限定商材も展開しやすくするなど、裏側の仕組みを整える。
従来、コスメ商材は横浜店と大阪店の店頭在庫を発送していたが、コスメのEC売り上げが拡大する中、EC在庫が確保しにくくなってくることを見越して手を打つ。
倉庫は、横浜市内にある同社物流センターの1フロアをEC専用に改修する。まずはコスメ商材を扱うが、今後はECで展開するリビング商材や食料品の一部も同倉庫で保管、発送する計画だ。
「高島屋オンラインストア」内の化粧品ページ。発売日ごとにアイテムが確認できるコンテンツも
(画像は「高島屋オンラインストア」から編集部がキャプチャし追加)
EC事業部にバイヤーを置き、商材の拡充をめざす
加えて、中計の目標達成をめざし、組織面では今春からEC事業部にバイイング機能を持たせた。従来のEC事業部はサイトを運営する部隊として機能。カタログ通販がメインのクロスメディア事業部や各店舗が開発したり、セレクトしたりしたアイテムを取り扱っていたが、EC強化に本腰を入れるためにも、店舗などと同様にバイヤーを置いてネット専用商材の開発に乗り出す。
今後はEC事業部として広げたい商材やカテゴリーを部内のスタッフで広げられるようになるため、よりスピーディーに品ぞろえを拡充できる。
「店頭やカタログで買い物をするお客さまだけを見ていてはECユーザーを取りこぼしてしまう」(西名香織EC事業部長)とし、今後はECユーザーに向けた品ぞろえも強化。高島屋店頭や通販カタログでは扱わない商品も販売していく。
たとえば、戦略商材のコスメでは従来の百貨店コスメに限定せず、プチプラコスメ、韓国コスメを含めて店頭とは異なるECユーザーのニーズに応えられる商材も扱っていく考え。
コスメ以外では、スポーツ関連商品や美容家電なども候補になっているようで、今秋から本格的にバイイング機能を強化する計画だ。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:高島屋の通販戦略とは?――EC事業部のバイヤーによるネット専用商材の開発、専用在庫の確保、倉庫改修 | 通販新聞ダイジェスト
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