ECサイトでレビューを有効活用し、ファン作りや購買につなげたいと考えているが、「レビューが集まらない」「うまく活用できない」といった悩みを抱えている企業は多いだろう。こうした課題に対し、レビュー最適化ツール「ReviCo(レビコ)」を提供するecbeingの高橋直樹氏(ReviCo Lab 上席執行役員 開発第1本部長 兼 ReviCo LAB PO)が、「デジタルの潮流とユーザーの声の重要性」「導入事例から見るレビューの活用」「レビューの更なる活用と今後」について解説した。
ユーザーの意見や体験者の見解を活用することが商品購入につながる
2020年のEC市場はコロナ禍で伸張し、特に物販系ECは前年比21%増で伸長した。ネットショッピングの利用世帯の割合も増加。アフターコロナ以降はリアル回帰が発生するものの、デジタルとリアルを消費者が上手に使い分けていく時代になるだろう。
EC市場の伸長率、EC化率について
こうした変化を踏まえ、高橋氏はGoogleが提唱する消費者の情報検索行動「バタフライ・サーキット」に触れた。消費者が商品購買の意思決定をする際の情報探索行動には「さぐる」「かためる」の2種類があり、それぞれ検索動機がある。両者間をネットでぐるぐる検索するため「バタフライ・サーキット」と名付けられたという。
Googleが提唱する新しい情報探索「バタフライ・サーキット」
購買決定に必要な期待と信頼を勝ち取るための情報についてまとめると、「学びたい」「知りたい」という消費者には、商品やブランドの公式サイトやSNSのアカウントなどからの情報発信が役立つ。さらに詳細に知りたい人には専門家の声や意見だ。ここで注目すべきは、ユーザーの意見や体験者の見解で、これが重要になる。(高橋氏)
期待と信頼を勝ち取る情報整理について
「機能的価値」「情緒的価値」の提供に役立つレビュー
高橋氏は企業のデジタル化に必要なこととして、機能的価値と情緒的価値をあげた。機能的価値は、情報整理や情報収集のノウハウの集約、顧客体験の向上やデータの活用だ。情緒的価値は、消費者に刺さる商品や提案、世界観の伝達で「シズル感」と表現されることもある。
この機能的価値と情緒的価値をECサイトで提供するにはどうすればいいのか。高橋氏が提案するのがレビュー活用だ。
ecbeingが開発した「ReviCo」は、レビューを集めるための施策・機能が自動で追加されるクラウド型のサービスで、レビュー投稿率増加、CVR向上、商品開発の質や接客の改善などを支援。レビューを通じて機能的価値と情緒的価値の提供を実現する。
「ReviCo」導入によるレビューを通じてCVRアップやロイヤリティ向上などを実現した成功事例としてあげたのが、実店舗とECでさまざまな雑貨を扱っているECサイト「AWESOME STORE」。
2021年3月にリニューアルし、「ReviCo」とビジュアルマーケティングツール「visumo(ビジュモ)」を導入。ファンからの写真、情報とスタッフからの情報を1つのサイトにまとめた、共創で作るサイトに作り替えた。
レビューはリニューアルオープンから8か月で3000件以上になり、90%はポジティブなレビューだ。ネガティブなレビューはコメントを返すことで接客につなげるとともに、改善に生かしている。
「AWESOME STORE」のサイトはファンとスタッフが共創で作るサイトにリニューアル
高橋氏は、自社ECサイトでのレビューが大切な理由として、①コンバージョンへの貢献②ユーザーの声を拾うことによるロイヤリティの向上③CSの活性化④SEO施策⑤商品開発・接客改善――の5つをあげる。
消費者は商品を実際に見られないECでの買い物時、不安解消のためにレビューを見る傾向がある。自社ECサイトにレビューが蓄積していければ、CVRが上がり、また、ユーザーの声をしっかり拾って対応することで、ロイヤリティ向上につなげることが可能になる。
「AWESOME STORE」に寄せられたレビューの90%はポジティブな内容のため、CS担当者、EC担当者のモチベーションが高まっている。現場は、ネガティブなレビューに対しては、反省点を考えてPDCAを回しているという。
レビューはSEO施策にも有効だ。また、集まったユーザーの声は商品開発、接客改善など事業的に活用できる。「ReviCo」導入後のCVR実績は平均1.94倍、最大で3.4倍のケースもある。
自社サイトでレビューを紹介することで、口コミで悪い噂が広がるレビュテーション・リスク、いわゆる風評被害も低減できる。(高橋氏)
ecbeing ReviCo Lab 上席執行役員 開発第1本部長 兼 ReviCo LAB PO 高橋 直樹氏
レビューの活用で顧客満足度をアップ
クレーム対応と再購入率との間に相関関係があることを提唱した「グッドマンの法則」がある。その第一法則に、不満を持った顧客のうち苦情を申し立てた顧客は、申し立てなかった顧客に比べて再購入率が圧倒的に高いとされている。
「グッドマンの法則」について
「グッドマンの法則」に則った有名な実例として、北米トヨタがリーマンショックの時に採った対応がある。さまざまな部門のコストカットを図った際、CS部門はコストカットをしなかった。コストカットしてしまうと、ユーザーの不満が溜まり二度と戻ってこない。今堪え忍んでしっかりと対応すれば、また必ず購入してくれるという理由からだ。(高橋氏)
「グッドマンの法則」の第二法則は口コミについて触れている。消費者の生の声という意味で口コミの影響度を記したものだが、そのレビューを通じて顧客満足度向上につなげた中古のブランド品を扱うECサイト「ALLU」の例を解説しよう。
「ALLU」が扱うのは1点もののリユース商品。そのため、レビューでは高評価でも他の人は同じ商品を購入できない。だが、「ALLU」はユーザーの声をVOC(Voice Of Customer)として集めて、反省や改善に生かしている。
また、新規ユーザーの「高価なものを買うのに中古で大丈夫か」という不安をレビューで払拭すると同時に、レビューに対して店舗から回答をすることで丁寧な対応を演出。さらに「気になるレビューを表示」という欄を設置し、キーワードをタップするとそのキーワードの声が見られるように工夫している。売り上げは2年間で4倍になった。
高橋氏は自社ECサイトを伸ばすための1つとして「メディアコマースにおけるレビュー」について次のように説明する。
さまざまな情報を発信していくには、サイトにいろいろな情報を集めてつなげていくことが大切だ。ユーザーレビューへの返信が接客になり、CVRアップにつながる。そして、スタッフのコメントを専門家のレビューとして掲載したり、オススメ商品と一緒に購入すると良い商品をレビューと合わせて提案したりする。さらに、サイトと店舗をつなげることで、ユーザーの声を商品開発や接客改善、サイト改善に生かしながらCSの活性化も図れる。(高橋氏)
メディアコマースにおけるレビューが果たす役割
導入企業は2年間で90社以上100サイト。事例から学ぶレビュー活用法と機能
「ReviCo」は、2年間で90社以上100サイトが導入している。
生地、毛糸、手芸用品、下着などを販売する「okadaya」では、商品詳細を閲覧したユーザーの内、レビューを見たユーザーのCVRが全体で300%、新規顧客では360%アップした。新規顧客の数字が高いのは、レビューが商品購入時の不安解決に一役買っているためだ。
バルーンショップ「アップビートバルーン」では、ユーザーにレビューと合わせて画像を投稿してもらっている。レビューがある商品は、ない商品と比べて商品詳細ページの閲覧時間が7.5秒、レビューが5件以上付いている場合は10秒長くなったという。
バルーンショップ「アップビートバルーン」ではレビューのある商品の方が商品ページの閲覧時間が長くなった
レビューの投稿数を増やすインセンティブ
レビューでは投稿数も重要だ。「ReviCo」では、投稿依頼と合わせて常時インセンティブとしてプレゼント企画を実施している。
レビュー依頼とあわせてプレゼント企画を実施。インセンティブはecbeingが負担する
商品詳細や購入履歴にレビュー投稿の導線を用意しても、購入者が一度買った商品の商品詳細ページに行くことはほとんどなく、レビューの90%以上はメール経由だ。メールでの投稿オファーと合わせてプレゼントを用意すれば、投稿率が伸びる。プレゼント付きのオファーの開封率が50%、投稿率は8%くらいまで上がり、60%近いユーザーはプレゼント応募まで行っている。(高橋氏)
ワーキングウエアの「ワークマン」は、「ReviCo」導入で投稿数を10倍以上に増やした。その結果、今ではほとんどの商品にレビューが付き、隠れた人気商品が判明したりユーザーの声を商品開発に生かしたりといった成果も得た。
「ワークマン」の事例
アパレルでは、色合いが実物と多少異なることや、サイズ感や質感がわからないため、レビューが参考になる。「ジェラートピケ」は、ECサイトでは黒に見えるトートバッグが実際はチャコールグレーであることがレビューを通して伝わるようにしたのだ。
レビューを通じて、ECサイト上で細かなニュアンスが伝えにくい色合いを伝えている
「PETIT BATEAU(プチバトー)」では、フィット感、肌触り、伸縮性などをチャート式で表示。コメントでは、そのサイズを購入した人のフィット感、身長、体重などを記したレビューを掲載している。
「PETIT BATEAU」では、フィット感や肌さわりなどをチャート式で表示
化粧品関連では、購入者に肌質や肌の悩みなどを聞き、同じ悩みを持つ人のレビューを検索で絞り込めるようにした企業もある。
悩みごとにレビューを検索できる事例
レビューが集まってきたら、各レビューにタグ付けをする。扱う商品によって内容は変わるが、サイズ、用途、テイストなどでタグ付けしてキーワードとして表示し、ユーザーが気になるキーワードでレビューを見られるようにすると、CVRも高まる。「ReviCo」では、キーワードを自動抽出し、自動でタグを生成する機能も備えている。(高橋氏)
「ReviCo」の機能の1つである自動タグ生成
その他、テイストをチャートで表現しているワイン販売店やランキングと合わせてレビューを表示している食品販売会社など、各社さまざまな工夫をしている。
サイト評価を高めるSEO施策
Googleなどで検索した際に、できるだけ多くの人に自社ECサイトに訪問してもらうにはSEO施策が必要だ。Googleは公式ブログで、「レビューの評価はSEOに影響する」と明言しているが、それに加えクリック率が上がれば、順位も上がっていく。
「ReviCo」では商品ごとにレビューページを用意し、FTPで自動的にアップしたり、SEO施策を行ったページを自動で生成したりするような機能なども用意している。ネガティブなレビューが集まることを気にする声もあるが、「ReviCo」の結果では星4以上が92%、星2以下は3%程度だ。(高橋氏)
「ReviCo」導入企業におけるレビュー評価の平均
顧客ロイヤリティを指標化してファンを拡大するNPS
今、NPS(ネットプロモータースコア)が注目されている。これは顧客ロイヤリティの指標で、企業やブランドに対してどのくらい愛着や信頼があるか可視化したもの。
ユーザーに推奨度合いを0~10の11段階で評価してもらう手法で、「ReviCo」でもレビューと合わせてNPSを取得する機能も用意している。
「ReviCo」ではNPSを収集する機能も実装している
消費者の"本音”が記載されたレビューには、ECサイトの評価アップ、商品購入の後押しなど大きな影響力がある。だが、投稿数が増えないと意味を成さない。「ReviCo」にはレビュー集めを支援する機能、顧客のロイヤリティ向上をサポートする機能などを搭載している。
「ReviCo」はタグをECサイトに埋め込むだけで利用できる手軽さがあり、手間をかけることなく日々のECサイトで利用できるといった特徴もある。
こうした「ReviCo」を解説した高橋氏は、レビューについて次のようにまとめ、EC企業へレビュー活用を推奨する。
- レビューはCVRへの貢献度が高いが、収集や活用が難しく、施策や機能が重要
- ユーザーの声を集めることで、商品開発、接客、物流の質を向上させ事業改善を加速させる効果がある
- ユーザーに良い買い物をしてもらい、自社のファンになってもらうためにレビューを有効活用する
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:CVR向上、商品開発、接客力アップにつながるレビューの重要性&活用事例を徹底解説
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