新型コロナウイルス感染症の影響でEC事業へ乗り出すメーカーや事業会社が増えています。自社ECサイトを開設するには、モールへの出店、ASPカートによる開設、SaaS型のECプラットフォームの利用などさまざまな方法があります。最近は、「Shopify(ショッピファイ)」というサービス名を耳にする方が多いのではないでしょうか。なぜShopifyが注目されているのかを紐解き、Shopifyを活用したEC事業立ち上げのポイントをお伝えします。
Shopifyとは?
Shopifyは2004年にカナダで設立された世界最大級のマルチチャネルコマースプラットフォームです。Shopify Japanの発表によると、世界175か国で170万以上のオンラインストアをサポートしており、日本国内だけでもおよそ4100憶円の経済効果に貢献。2020年の流通総額は2019年比323%増、新規出店数の伸び率は2019年比228%増と急成長中です。なぜここまで利用されているのでしょうか。代表的な3つのポイントがあります。
1. EC事業を始めるための機能を網羅している
注文管理、商品管理、顧客管理といったEC事業を始めるための基本的な機能が用意されており、スピーディーに事業を開始できます。Shopify自体が日々アップデートされており、その機能を追加コストなしで利用できるほか、高額なライセンス費用やバージョンアップ費用も不要。新たに必要な機能が発生した場合は、マーケットプレイスから自社の業務に合ったアプリを購入することで簡単に機能を追加できます。
2. デザインテンプレートが豊富
コードの知識がなくても、直感的に操作できるデザインテンプレートが豊富に用意されています。サイト制作において必要だった画面設計、デザイン、実装の工程を省くことができ、スマホファーストな最新トレンドのデザインを制作できます。
3. 販売チャネルの拡大が可能
さまざまな販売チャネルに展開するための機能が標準で備わっていることもShopifyの強みの1つです。Instagramに商品をタグ付けすることでシームレスな購買体験を提供したり、実店舗がある場合はPOSアプリを導入したりすることでオンラインストアと実店舗のデータをリアルタイムで同期することもできます。
Shopify導入に向いているプロジェクト
次に、Shopifyはどのようなプロジェクトに向いているか説明します。一部、売り方が複雑だったり取り扱えなかったりと向いていないケースもありますが、基本的にはShopifyはどんなEC事業にも柔軟に対応できると考えられます。
海外発祥のため「まだまだ日本向けのローカライズが進んでいない」と言われてることもあるShopifyですが、日本のECでは当たり前の機能や商習慣に合わせたアプリが登場しています。たとえば、定期購入アプリ、日本の贈り物文化に欠かせない熨斗(のし)を設定できるアプリもあります。
この他にも、ShopifyではさまざまなAPIが準備されており、これらAPIを活用して自社の基幹システムと連携したりカスタムアプリを開発したり、企業に合った仕組みを柔軟に構築できます。
EC事業立ち上げ時に決めるべきこと
ShopifyでのEC事業の立ち上げに興味を持った方のために、立ち上げ時に重要なポイントをご紹介します。まず、EC事業を開始する際に重要になる項目は大きく5つに分けられます。
・事業計画
事業目標、売上目標を実現するための具体的な計画を立てる。
・顧客体験
商品やサービスとの出会いから購入後まで、ユーザーが体験するすべての接点を最適化する。
・販売スキーム
在庫管理や発送業務など、実際の運用の細部を具体的に設計する。
・コミュニケーション手法、サポート体制
サービスの信頼性を高めるために、適切なコミュニケーションやサポート体制を整える。
・集客、売上向上施策
認知から購入、継続からファン育成に至るまでの施策をあらかじめ用意する。
事業計画に沿ってお客さまに提供する体験やコミュニケーションの手法を確立する、売り上げを達成するための施策を決めるといったことは、いずれも重要な項目です。この設計を怠ると、スタート後に問題が発生した際に対応できず、売上拡大のために始めたEC事業が、問題解決ばかりに時間を取られるといった事態に陥りかねないだけでなく、ブランド毀損など会社全体に大きなダメージがおよぶ可能性もあります。
そうならないために、上記の5つの項目全体に通じる重要なポイントを2点紹介します。
ポイント① 運用業務を緻密に設計し、できる範囲で自動化する
自社ECサイトを訪れた購入者に商品を届け、継続的に購入してもらうというプロセスの裏側にある運用業務を細部まで棚卸しし、手動でしかできない業務とシステム化して自動で行える業務とに分けて整理する必要があります。
なかでも購入者からの問合せに対応したり、購入のお礼を伝えたりといった業務はとても重要です。購入者が増えるにつれ、手動で顧客1人ひとりに対応することはできなくなるため、購入完了やお問い合わせの一次返信の自動化は必須です。
また、できる限り早く商品をお届けできるよう、注文から出荷までのフローや在庫連携などは、可能な限り自動化することをオススメします。Shopifyでは、購入プロセスにおける基本的な設計がなされているため、初期の設定が終わってしまえば多くの業務が自動化されるようになっています。
ポイント② 事業計画に沿って集客や売上向上施策を構築する
ECサイトができたら自然とお客さまが来てくれるわけではありません。最初にすべきはまず集客です。Shopifyでは専用アプリを使うことでGoogleショッピング広告など、各プラットフォームでの広告を効率的に出稿できます。他にも、ShopifyとInstagramを連携して販売チャネルを増やせば、より多くのお客さまの認知や購入獲得がねらえます。
次に、購入者と継続的な関係を築くためのCRMにおいては、Shopifyのメール機能を使った定期的な情報の発信や、シーズンイベントに合わせたクーポン施策も有効です。メールの開封率やクーポンの利用率は管理画面から確認できるため、効果測定がすぐに実施できます。コアファンを育ててLTV(Life Time Value、顧客生涯価値)向上を図ることで、事業はより安定したものになります。
また上級編として、購買データを外部CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)に蓄積しておけば、ダッシュボードを活用した分析や複雑なステップメール、LINEでのコミュニケーションなどをスムーズに実施できます。
いずれの場合も「何年後までにどれくらいの事業規模にしたいのか」という事業計画をしっかり立て、KPIを設定し、目標に向かって日々改善・改革を重ねることが重要になってきます。
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EC事業はサイトをオープンした瞬間からが本当のスタートです。Shopifyという便利なECプラットフォームを活用する場合でも、オープン後のトラブルを回避し、収益を上げるためには、しっかりと業務プロセスを検討し、運用体制と売上計画を練ることが大切です。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:今さら聞けないShopify。EC事業立ち上げ時に決めるべき5項目とShopifyが選ばれる理由 | デジタルコマース注目TOPIX presented by 電通デジタル
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