1人の主婦が始めたECが年商8億円の事業に。中国越境ECにも挑戦する防音専門ショップ「ピアリビング」の成長ストーリー | 『EC通販で勝つBPO活用術』ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2021年6月17日(木) 08:00
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EC通販における差別化成功事例③『EC通販で勝つBPO活用術』(高山隆司/佐藤俊幸 著 ダイヤモンド社 刊)ダイジェスト(第15回)

ピアリビング」は防音専門のEC通販サイトだ。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonなどのモールに出店しているほか、電話での注文対応や楽器メーカー向けの卸も行っている。

商品ラインは一時期に比べて絞っており、現在の商品アイテム数は2,000SKU。色違いを除くと1,000SKUに過ぎない。専門ロングテール型というには少ない印象だが、「防音」という独自のカテゴリー設定と、壁、床、窓の部材がひと通り揃っていることが特徴だ。

1人の主婦が始めた事業が年商8億円の事業に成長するまでの道のりを紹介する。

企業データ
「防音専門ピアリビング」 https://www.pialiving.com/
本社:福岡県宗像市三郎丸5丁目7−15 代表者:代表取締役 室水房子
創業:1993年12月
事業内容:インテリア用品販売/カーペット販売/防音工事/ファインヴェールシステム施工(吸音工事)/カーペット・フロア施工/住宅耐震補強工事/OAフロア・光天井工事/建築資材販売/インテリア用品の販売/オーダー防音商品の販売/ペット用品販売/飲食業

代表取締役の室水房子氏は次のように語る。

防音は窓だけでも、床だけでも、壁だけでもできません。ケースに応じて適切な組み合わせを提案したり、オーダー制作を引き受けたり、場合によっては施工まで対応したりするワンストップソリューションが当社の強みです。

商品をオンラインで販売するとともに細かい相談とアドバイスにこだわり、福岡と東京にショールームも設けています。

始まりは何気なく目にしたパンフレット

室水氏がEC通販業に取り組み始めたのは2000年のこと。当時、室水氏は幼稚園と小学校低学年の2人の子どもを育てる専業主婦だった。ところが、夫の仕事(内装業)が不振に陥り倒産寸前に。「なんとかしたい」と内装業の施工で取引のあった大手建材メーカーの支店に飛び込み営業に出かけた。

そこで防音カーペットのパンフレットを目にし、「こんな製品があるのか!」と驚いた。高性能だが価格が高いためホームセンターなどでは扱っておらず、ほとんど知られていない製品だった。

室水氏の周りには子どもが走り回る足音などで近隣から苦情を受け、悩んでいる主婦が何人もいた。「これは売れるかも」と考えた室水氏は、見よう見まねでネットオークションに出品。配送はドロップシッピング方式でメーカーから直送した。すると、3か月もしないうちに月100万円を受注するまでになった。

手作りホームページで「防音専門店」をスタート

騒音についての相談や質問もたくさん来た。身近な騒音のトラブルで悩んでいる人がとても多いことを確信した室水氏は、市販のソフトを買ってきて自分でホームページを立ち上げた。壁の防音もできないかメーカーに相談すると、「ロックウールを取り付ければ防音効果があるだろう」という答え。ただ、ロックウールは建築会社や内装業者などBtoB向けしかなく、また個人が買って取り付けるのも難しい。

顧客の要望が来るたびに、主婦感覚で建材をアレンジして独自の施工方法を考案したり、施工が得意な夫や親しいメーカーに商品を作ってもらったりして、商品開発を進めていった。

こうして2001年、防音建材の販売をスタート。2003年には「ピアリビング」を正式にオープンし、EC通販業界では初めての「防音専門店」をうたい、床の防音カーペットと壁の防音建材(ロックウール)の紹介に力を入れた。

当時は他にそういうサイトはなく、まさにブルーオーシャンでした。注文は北海道から沖縄まで、全国から来ました。建材メーカーからも、なぜ九州の主婦がやっているサイトでこんなに売れるのかと、役員が見学にやってきたりもしました。(室水氏)

ユーザーの声に応えた商品開発で年商2億を突破……の後に相次いだトラブル

ショップのオープンから2年で年商は1億2,000万円に達した。ただ、メーカー品を都度、仕入れての販売(ドロップシッピング)なので、利幅は少なかった。仕入れ値を安くするため建材メーカーからケース単位で仕入れて在庫を持つことにし、配送についても宅配便業者と交渉して格安にしてもらうなど、試行錯誤を続けた。

ユーザーの声をもとに組み立て式の簡易防音室(1.5畳から6畳まで)を開発したところ、テレビ番組で取り上げられ、売上はさらに伸びていった。楽天市場に出店すると、自社サイトとともに月間売上1000万円を達成し、年商は2億円を突破。まさに破竹の勢いだった。

しかし、その後は数年ごとに様々なトラブルや障害に見舞われた。

まず2005年6月、アスベストの健康被害が社会的に大きな問題になった。ピアリビングで扱っているロックウールとはアスベストはまったく別物だが、同じ鉱物繊維という点で健康被害が起こるのではないかという風評から、壁材の売上があっという間に半減してしまった。

そこで室水氏は防音カーテンに力を入れることにした。少しずつ売上が戻ってきたところ、今度は2008年にリーマンショックが発生。メインの仕入先の経営が悪化し、仕入れていた建材やカーペットがほとんど廃番になってしまった。そこで現在のメイン商品である防音カーテンをオリジナルで作ることにした。

またこの頃、「ピアリビング」の好調ぶりに目を付けた他社が防音建材の販売を始め、嫌がらせも受けるようになった。これに対しては、いち早く動画やSNSを活用したプロモーションに活路を見出し、売上をV字回復させた。

次は2013年、Googleの検索アルゴリズムの変更(パンダアップデート)でまったく検索結果に表示されなくなり、売上が激減した。一時は茫然となったが、すべてのサイトの設定を変更し、なんとかしのいだ。

このように厳しい状況に何度も直面しながら、その都度、室水氏は持ち前の行動力とビジネスセンスで乗り切り、事業を一回り二回りも成長させてきた。

都内の賃貸マンションからOMOを開始

2014年、社員7人で売上3億円になった頃、EC通販事業は社員に任せ、自身は前年に手掛け始めた福岡・天神での飲食業やセミナールーム事業に専念することにした。

借金や住宅ローンはすべて完済し、子どもたちも大学を卒業しました。以前は毎日、睡眠時間3時間で子育てや会社の再建、ネット販売の強化と無我夢中で走り続けてきたので、ちょっとのんびりしたかったのだと思います。(氷室氏)

個人が立ち上げるEC通販事業では、年間売上が3億円〜5億円くらいになると、1つの壁を迎える。良い意味でも悪い意味でも、当初の事業モデルやオペレーションのやり方が成熟するからだ。室水氏もちょうど、そういう壁に突き当たっていたのかもしれない。

次の段階に進むには何かしらのブレークスルーが必要だ。室水氏の場合、それは社員の声だった。社員から「社長、俺らの5年後はどうなっているんですか? 本社に戻ってください」という声が上がった。もう1つは顧客の声である。これまでとは違う新しい挑戦をしたいと思った室水氏は、「お客さまに直接会ってみよう」と、東京で単独イベントを行うことにした。

イベント名は『防音商品を実際に見よう、触ろう、体感しようin東京』。恵比寿の賃貸マンションの一室を会場に開催した。告知は自社のホームページのみだったが、予定の2日間は大入り満員になった。

以前から防音商品を実際に見てみたいという声をたくさんもらっていたので、さまざまな防音商品を一斉に展示し、その場で相談もできるようにしたのです。来てくださったみなさんはいずれも音のトラブルで悩んでいて、1組30分どころか1時間近く滞在される方もいらっしゃって、お客さまの熱い思いにスイッチが入りました。(氷室氏)

2015年、この人気を聞きつけた東急ハンズ渋谷店から1か月間のイベントを依頼され(現在も不定期に実施)、2017年には東京・神田と福岡・博多にショールームをオープンした。規模こそ小さいがOMOの見本といえるような展開だ、ピアリビングは新たな成長段階に歩を進めることになったのである。

中国市場への挑戦

そして現在、室水氏はまた新たな挑戦を始めている。巨大な中国市場をターゲットとした越境ECである。手前味噌になるが、きっかけとなったのは2017年、筆者が企画した中国EC市場の視察ツアーだ。

当社とピアリビングは2016年頃から取引がある。首都圏の注文については千葉県柏市にある360の物流センターに商品在庫を置き、そこから出荷しているのだ。ちなみに、九州からの配送では2日かかっていたが、これにより注文の翌日配送が可能になり、売上アップに結び付いている

中国マーケット興味はあったものの、どのようにアプローチすれば良いかわからず、送料もかなり高そうなので諦めていたという氷室氏。しかし現地に行ってみて、スクロールグループの成都インハナのサポートを知り、現地でのビジネスをやってみることに決めた。

初めの頃は「中国で防音グッズなんて売れるわけがない」と散々言われました。日本人と中国人とでは、音に対する感覚が全然違うというのがその理由です。それでも、少なくとも中国で暮らす日本人には売れるのではないだろうか、経済成長で豊かになれば、必ず音を気にするようになると確信していました。(室水氏)

ショップ名は筆者のアドバイスで「快適空間工房」とし、まず取り組んだのは中国語のホームページ作成と中国のSNSであるWeibo(ミニブログサイト)のアカウント取得だった。日本語のサイトをインハナのスタッフが翻訳し、毎日、Weiboに投稿していった。

中国向けの販売では現地のKOL(key opinion leader)をSNSで使うと良いとよく言われるが、筆者は疑問に感じている。彼らはいわばプロであり、毎日別の商品を取り上げる。中小のEC通販事業者の場合、KOLにまとまった広告費をかけるより、まず自社サイトを丁寧に作り、少々時間がかかってもコアファンを育てるほうが大事である。

「快適空間工房」でも、自社サイトと並行してWeiboで音の問題や防音の大切さについて情報発信を続けた。すると、1年で1万人のフォロワーがつくようになった

「快適空間工房」のWeiboの投稿画面
「快適空間工房」のWeiboの投稿画面
防音カーテンの意外な人気

2019年から中国で防音カーテン、防音ライナー(後付け用のカーテン裏地)、防音カーペットなどの試験販売を行うことにした。配送は日本の物流センター(千葉・柏)から日本郵便のEMS(国際スピード郵便)を使っている。

やってみると防音カーテンの人気が予想以上に高く、1回5万円〜10万円のオーダーが入ります。基本は標準タイプなのですが、中にはオーダーの希望もあり、これまでの最高は1回約60万円の注文でした。リピーターも2割ほどいます。窓の1つに付けてみて、効果を確認して追加の注文をしてくれるのです。(氷室氏)

「助かりました」「これで安心して暮らせます」といった顧客の声が励みになるという。氷室氏の持ち前の行動力と旺盛な好奇心、そして人の役に立ちたいという想いこそがピアリビング成功の原動力といえる。中国向けの越境通販もいよいよ本格化。今後は新しい防音製品の開発にも取り組んでいく予定だ。

  サイドストーリー 始まりは成都インハナツアー

2017年2月、成田空港から中国四川省成都に向かう一行がいた。全員が日本のEC事業者で、目的は成都インハナの見学だった。17時に成田空港を出発し、5時間のフライトで夜22時に成都空港到着。翌日、成都インハナのオフィス見学会が行われた。

日本語が堪能な中国人スタッフが、次々とBPO業務を説明していく。実際のオペレーションの現場も視察した。「今の処理テクニック、知らなかった!」とECのプロである参加者から声が上がった。「これだったら日本でやる必要はないね」といった声も聞かれた。

ツアーの目玉は、中国越境EC進出におけるサポートサービスの確認だった。ピアリビングの室水社長もそれを一番望んでいた。日本のEC事業者の越境ECへのニーズは高い。誰もが将来、日本の市場が萎んでいくのを知っている。日本以外の市場に進むしかない。その最有力候補が人口13億人の中国市場である。しかし、そこには言語の壁、法律の壁、中国市場理解の壁、物流の壁という4つの壁がある。ピアリビングの室水社長が、この壁をどのように乗り越えていったのか。

第1の「言語の壁」について、室水社長は成都インハナの越境サポートを使うことを決断した。防音グッズを紹介するページは日本に山ほどある。そのページを成都インハナのスタッフが中国語に翻訳して、毎日、Weiboに掲載してくれる。

第2の「法律の壁」だが、難しいと思っていた中国での商標も成都インハナが代行申請してくれた(現在、当局の許可待ちの状況)。「快適空間工房」というブランド名はスタッフの投票で一番人気のあるものだった。

第3の「中国市場理解の壁」は、現地に行ってみないとわからないことが多い。当初、成都インハナのスタッフも「防音グッズは中国では売れないです」と言っていた。理由は「他人に迷惑をかけてはいけない、といった教育を受けた中国人は1人もいないから」というショッキングなものだった。ところが現在、売れている。「他人に迷惑をかけないため」というより「他人の騒音を防御したい」というニーズが高いようだ。

第4の「物流の壁」は、日本のスクロール360物流倉庫からEMSで発送することで解決した。また、送料については、販売価格に上乗せして吸収するようにした。価格はかなり高くなったが、それでも注文が来るのは、他社では売っていないということと、中国には富裕層が多いということだ。

このように4つの壁を乗り越えて、ピアリビングの中国越境EC展開は第1ステップへ進むことができた。次のステップでは中国モールの「グローバル」に正式に販売申請することと、売れ筋商品については中国倉庫からの出荷にチャレンジすることだ。成都インハナという信頼できるパートナーがいることで、それが可能になってくる。

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