単品通販企業「サン・クラルテ製薬」のデジタルシフト事例。EC比率5割以上を支えるLTV向上施策とは | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2021年4月21日(水) 08:00
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健康食品、化粧品、医薬部外品を通販・ECで販売するサン・クラルテ製薬。デジタル化「単品リピート通販」のデジタルシフト、重要視するKPI「LTV(顧客生涯価値)向上」を実現するための取り組みを解説
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健康食品、化粧品、医薬部外品を通販・ECで販売するサン・クラルテ製薬。1992年に創業し、製品の企画から直販までを手がける「製薬会社」「通販会社」として業容を拡大してきた。いわゆる「単品リピート通販」の業態で、Web媒体、紙媒体、ラジオ、テレビなどクロスメディアで事業を展開する。近年は全社売上高に占めるEC割合が過半を突破、オンラインシフトが進んでいる。デジタル化が進む世の中の流れに対応した「単品リピート通販」のデジタルシフト、重要視するKPI「LTV(顧客生涯価値)向上」を実現するための取り組みなどを取材した。

新聞・テレビなどのオフラインから、近年はオンラインシフトを進める

販売する医薬部外品・化粧品・健康食品を各GMP規格に基づいた工場にて生産し、管理を徹底するサン・クラルテ製薬。「全てが自信を持ってお薦めできる商品になっている」(サン・クラルテ製薬の取締役本部長・新島恒亮氏)

さまざまな販売チャネルを活用するサン・クラルテ製薬の利用顧客はオンライン、オフラインで顧客層が異なる。それぞれの中心顧客は、ネット通販が30-50歳代、テレビやラジオ、新聞などの媒体が60歳代以上となっている。

耳の不快な音・音の聞き取りにくさなどで困っているユーザーが愛用する「美聴泉EX」、トイレの回数などに悩むユーザーが使う「ユラン・ケアEX」などは主に電波媒体、新聞広告などの紙媒体で訴求し、マウスウォッシュの「ゴッソトリノ」などはオンライン展開がメインだ。

サン・クラルテ製薬のECサイトサン・クラルテ製薬のECサイト

ラジオやテレビ、雑誌、新聞などの媒体で新規顧客を獲得し、リピート購入につなげるビジネスモデルを展開してきたサン・クラルテ製薬では、コンタクトセンターをアウトソースだけでなくインハウスでも運営し、受注や問い合わせなどの顧客対応を行い、LTV向上につなげている。

一方で、近年は投下する広告費をオンラインにシフト。現在、全体の売上構成比率でECが占める割合が50%を超えている

ECサイトでの人気商品となっている口臭対策マウスウォッシュ「ゴッソトリノ」ECサイトでの人気商品となっている口臭対策マウスウォッシュ「ゴッソトリノ」オンライン注文の増加で業務効率が悪化、専用カートの導入で課題解決

オンライン経由の受注が増加するにつれ、ある課題が浮上してきた。それは、オフライン前提でシステム全体を設計したことによる業務効率の悪化だ。

売り上げの過半を占めるようになってきたECサイトでは、受注や顧客などの情報は販売チャネル別で管理しており、基幹システムとの連携が満足にできていない状態だった。そのため、「オンラインでの獲得が増加し、社内業務の流れ、作業効率が悪化していった」(新島氏)

そこで、2019年10月に定期購入・単品通販・リピート通販に特化したECサイト構築・運営のASPカート「楽楽リピート」を導入した。「楽楽リピート」は株式会社ネットショップ支援室が提供するカート・CRM・ステップメール・受注管理・顧客対応などを搭載のSaaS型ショッピングカートである。

「楽楽リピート」について楽楽リピート」について

EC市場が拡大する中で、定期購入・単品通販・リピート通販向けのショッピングカートはいくつもある。数ある単品リピート通販向けカートの中から「楽楽リピート」を選んだ理由は何なのか? 新島氏はこう言う。

ECシステムの刷新に向けて、いくつかのシステムを比較検討した。最も重要視したのが、売り上げ規模に応じてかかる、また、クレジットカード以外の決済手段にかかる従量課金。他のECシステムを調べてみると、売上規模に応じた従量課金や、後払い決済などの決済手段にも従量課金(売上処理料)がかかっている。ワンステップ、ツーステップマーケティングを行う定期購入・単品通販・リピート通販のビジネスモデルにおける従量課金の部分は、無視できなかった。そこでクレジットカード以外では従量課金が発生しない「楽楽リピート」の導入を決めた。(新島氏)

サン・クラルテ製薬の取締役本部長・新島恒亮氏サン・クラルテ製薬の取締役本部長・新島恒亮氏

定期購入・単品通販では、無料モニターや500円モニターなどから定期購入につなげるツーステップマーケティングが主流となっている。割引価格でツーステップマーケティングを行った場合、決済手段の従量課金が「クレジットカードのみ」「クレジットカード+後払いなど」の違いが、ランニングコストに大きく影響する。新島氏は「業務効率の向上などに加え、従量課金の対象も大きな選定要因になった」と振り返る。

なぜ「楽楽リピート」は、決済手段において処理料金の対象をクレジットカードのみとしているのか。ネットショップ支援室はグループ会社が通販事業を展開しており、その事業で培った「定期・単品通販でいかに売り上げを伸ばすか」というノウハウなどを「楽楽リピート」に搭載してきた。また、その環境を生かし受注管理システム「アシスト店長」、BtoBtoCカート「楽楽BBC」なども開発・提供している。

こうしたことを踏まえ、ネットショップ支援室の山本皓一朗社長は次のように説明する。

ネットショップ支援室はさまざまなEC支援サービスを提供しており、グループ会社では約40店舗以上のECサイトを運営している。事業者様のニーズや売上アップに効くノウハウを熟知しているため、クレジットカード以外の決済手段では従量課金を採用していない

ネットショップ支援室の山本皓一朗社長ネットショップ支援室の山本皓一朗社長 「Amazon Pay」の導入で、マイページで「Amazonアカウント」でのログインが可能に

「楽楽リピート」を導入したサン・クラルテ製薬ではどのような成果が出たのだろうか。

これまではカートシステムと基幹システムが別だったため、多数のCSVデータを加工し、基幹システムなどと連携する必要があったCSVデータの連携が減り、現場担当の業務効率化につながっている。また、受注データをセグメント処理し、CRM施策に生かすことができるようになった。(新島氏)

「楽楽リピート」では2020年、受注・顧客関連情報が取得できるAPI機能「楽楽リピート API」の提供をスタートした。CRMシステム、基幹・販売管理システム、物流管理システムなどとのデータ連携をシームレスに行えるようにしている。

「楽楽リピート」のAPI連携について「楽楽リピート」のAPI連携について

また、定期購入・単品通販・リピート通販で重宝されているマイページ機能が使えるようになったのは大きなプラス要素。リピートユーザーは「マイページ」に訪問し、前回購入した商品や期間の確認、そこから以前買った商品を再度、購入するといったユーザー行動が多いからだ。

従前はカートシステムと基幹システムとが別だったため、購入履歴などが確認できるマイページ機能は提供していなかった。

こんなサン・クラルテ製薬の「マイページ」機能で1つ特筆すべき点がある。それは、「Amazonアカウント」でログインできる機能だ。

サン・クラルテ製薬では、「楽楽リピート」導入に合わせてAmazonが提供するID決済サービス「Amazon Pay」を導入。これにより、お客さまは「マイページ」にて「Amazonアカウント」でログインできるようになった。

「Amazonアカウント」でログインできるマイページ「Amazonアカウント」でログインできるマイページ

定期購入・単品通販・リピート通販では、LP(ランディングページ)を除くと「マイページ」が最もアクセスされるページと言われており、「マイページ」の使い勝手が向上するとリピート率も伸びるとされる。

「Amazonアカウント」を使い最短2ステップ(ボタンのクリックとパスワード入力)でマイページにログインできる簡便さは、サン・クラルテ製薬のECサイトの利便性向上、およびリピート率の向上につながっているようだ。

「Amazon Pay」は必要不可欠、新規顧客の2割が利用

定期購入・単品通販・リピート通販で重要視される「マイページ」に搭載した「Amazonアカウント」によるログイン機能はもともと、決済手段の拡充を通じた利便性およびリピート率の向上が目的だった。

「Amazon Pay」は、「Amazonアカウント」に登録された情報を利用することで、購入時の配送先・クレジットカード情報の入力をすることなく、Amazon以外のECサイトでログインや決済を行えるサービスである。

「Amazon Pay」の紹介動画

「Amazon Pay」を導入したECサイトで、顧客は「Amazonアカウント」を使って簡単に商品を購入できるようになるため、カート離脱率の改善、コンバージョン率の向上、新規会員登録の促進につなげることができると期待されている

リピート率向上を実現するために「Amazon Pay」を2020年5月に導入した。Amazonを使う顧客は多く、さまざまなECサイトを見たところどのサイトにも「Amazon Pay」が入っていたオンライン展開をさらに拡大するための利便性向上に「Amazon Pay」は必要不可欠だと感じた。(新島氏)

「Amazon Pay」を自身でも使う新島氏は「顧客体験が最高」と評価する「Amazon Pay」を自身でも使う新島氏は「顧客体験が最高」と評価する

こう導入の理由を語る新島氏によると、導入から数か月で新規購入者の2割が「Amazon Pay」を使って商品を購入している状況という。

新島氏は「LTVと新規顧客の獲得効率は上がっている」と説明。また、顧客への利便性向上という効果以外にも、自社の業務効率アップという思わぬ効果も得られているという。

「Amazon Pay」の導入で、「後払い決済」や「クレジットカード決済」の全体比率が減少。その結果、特に「後払い決済」の与信不可で発生していた顧客対応業務が従前と比べ「削減できている」(新島氏)のだ。

サン・クラルテ製薬では、与信不可となった「後払い決済」選択顧客に対し、その旨と不可理由を連絡している。メールを開封しない顧客も一定数いるため、電話やメールでの対応が発生してしまう。こうした顧客への連絡、対応が削減できているという。

また、「後払い決済」の場合は、請求書の印字や同梱作業が発生する。「後払い決済」を選択していたお客さまが「Amazon Pay」を利用するようになったことで、こうした作業負荷を軽減できている点も「Amazon Pay」の重要な効果だという。

定期購入でも「手間を少なく」「わかりやすく」を実現する「Auto Pay」機能

「Amazon Pay」には定期購入ビジネスを支援するうえで欠かせない重要な機能がある。「Auto Pay」と呼ばれる機能で、ECサイトに導入するとお客さまは初回の支払い手続き時に「以降の支払いをAmazon Payで行う」と設定できるようになる2回目以降は都度ECサイト上で支払いの手続きをすることなく、継続して商品やサービスを注文できるようにするものだ。

「Amazon Pay」の「Auto Pay」機能を使えば、事業者は「自由に金額やタイミングを設定し、請求することが可能」「決済の頻度や金額などを個別にカスタマイズすることが可能」など、ビジネスモデルに柔軟に対応した決済方法をお客さまに提供することが可能となる。

現在、忙しいお客さまが多くなってきた。そのため、「手間を少なく」「わかりやすく」買えるというECサイトが求められている。新規購入者やリピート購入するユーザーの中には、買い物手続きが面倒で止めてしまう人がいる。そういった理由で、商品の購入や継続を止めてほしくない。どんな商品も、継続利用していただくことが重要。求められていることを実現するために、私たちは商品を作り、定期購入コースを提供している。「Amazon Pay」を通じてたくさんのお客さまに当社の商品を使ってもらいたいと考えている。(新島氏)

「Amazon Pay」の「Auto Pay」機能である定期支払いの確認画面「Amazon Pay」の「Auto Pay」機能である定期支払いの確認画面(赤枠内が定期支払い) 不正注文によるブランドイメージ毀損(きそん)防止にも役立つAmazonのブランド効果

健康食品、化粧品などの単品系通販が多くの被害に遭っている「不正注文」。不正注文された商品はフリマアプリなどで転売されているケースがあり、「ブランド毀損」などにつながってしまうこともある。

サン・クラルテ製薬でも転売などを目的とした不正注文は悩みの種。フリマアプリなどで販売されているケースがあり、そうした販売は当社の製品保証の対象外になってしまう。最終的にだまされて購入するお客さまのことを考えると、不正注文は対策しなければならない問題だ。(新島氏)

こうした課題は「Amazon Pay」で解決できる、と説明するのはネットショップ支援室の山本氏。「『Amazon Pay』はAmazonのアカウントを持っていなければ使用できず、その使用状況はAmazonがチェックしている。不正注文はクレジットカードに比べて圧倒的に低いのではないか」と指摘する。

「Amazon Pay」では、Amazonがアカウントやカードの不正利用を24時間365日監視する世界水準の不正検知システムを採用。「Amazon Pay」は、お客さまと事業者の双方に「安心・安全」を提供している。

自社ECサイトで手の込んだ不正注文を1件1件確認することは非現実的だが、「Amazon Pay」なら不正注文を検知できるため、不正注文対策の手間やコスト、時間などを大幅に削減できると同時に、ブランドイメージなどの維持といった観点でも役立てることができる

「Amazon Pay」とシステム連携している「楽楽リピート」は、化粧品や健康食品のほか、食品、アパレルのなどの企業による利用が多い。利便性やLTVの向上を含めた効果のほか、ブランドイメージ維持や消費者保護のための不正注文対策という観点から考えると、「健康食品、化粧品などと『Amazon Pay』の親和性はとても高い」と山本社長は説明する。

山本社長は「Amazon Pay」は不正注文対策に役立つと説明する山本社長は「Amazon Pay」は不正注文対策に役立つと説明するLTV向上を実感、「マーケティング面のアクセルを踏んでいきたい」

ネットショップ支援室のグループ会社が手がけるEC事業部では、「Amazon Pay」を導入して4年が経過した。「Amazon Pay」導入後、お客さまの年間の平均買い物回数は、4回から7回に伸びているという。「『楽楽リピート』の導入企業さまを含めて、LTV向上につながっている企業が多い」(山本社長)

サン・クラルテ製薬の新島氏も「まだ明確な数字が出ているわけではないが、LTVは伸びているはず。新規顧客の獲得効率の向上も踏まえ、CPA(1件のコンバージョンにかかるコスト)、CPO(1件あたりの顧客獲得にかかった広告コスト)も改善していくことができるだろう。『Amazon Pay』を使って、よりマーケティング面のアクセルを踏んでいきたい」と意気込む。

2021年春、しばらく停止していたテレビ媒体を活用した広告を再開する予定である。そこで、新島氏は、あるテレビ通販企業が挑戦した「Amazon Pay」を使ったテレビショッピングの手法に興味を抱いた。

それは、テレビショッピングの放映中、画面内に商品申し込み方法としてQRコードを表示してECサイトでの購入を案内、Amazonを利用していれば「Amazon Pay」を使い簡単に決済できる――という仕組みだ。

テレビ通販番組の放映中、電話件数がコールセンターの席数を上回った場合、超過した入電は自動応答によって対応するケースが多く、自動応答によって販売ロスが発生するケースがある。席数を増やすことなく、QRコードを使った「Amazon Pay」決済ページへの誘導で販売機会の損失を防ぐことが可能になる

新島氏は、クロスメディアでの事業展開と同時に、「新しい取り組みも含めたデジタル対応を進め、売り上げの拡大に取り組んでいきたい」と取材を締めくくった。

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オリジナル記事:単品通販企業「サン・クラルテ製薬」のデジタルシフト事例。EC比率5割以上を支えるLTV向上施策とは
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瀧川 正実
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