消費者は年末年始の期間、ギフトを買うためだけにお店に訪れるわけではありません。ブランドへのロイヤルティが高いから来店するのです。
何らかのロイヤルティプログラムを提供している多くの小売事業者。プレミアム度が高く、ロイヤルティのレベルごとにわかれたプログラムや、高度に差別化したプログラムを提供している小売事業者が、年末年始の期間に大きな勝利を収める可能性が最も高いです。そして、すでに2020年の年末年始に向けた準備は始まっています。
ロイヤルティブログラムに満足している消費者は86%、価格ではなくブランドを支持
企業にロイヤルティプログラムサービスを提供する「Clarus Commerce」のデータによると、ブランドのロイヤルティプログラムに満足している消費者の86%は、競合他社がより低い価格を提示している場合でも、そのブランドを選択する可能性が高いそうです。
もし小売事業者がブラックフライデーやクリスマス前のセール以前から満足のいくプログラムを提供していなければ、ホリデーシーズンに利益を得る機会の大部分を失うことになるでしょう。
ブランドのロイヤルティプログラムに満足している消費者の86%は、競合他社がより低い価格を提示していても、そのブランドを選択する可能性が高いのです。
2020年の年末年始に向けて、今からロイヤルティプログラムの改善に着手するのは、決して早すぎではありません。先手を打つために、2019年にロイヤルティプログラムの恩恵を受けたいくつかのブランドの事例を参考にしてみてください。
ロイヤルティプログラムで成功をつかんだ5ブランド例
【Lululemonの事例】“すぐに元が取れる”プログラムで登録人数を増やす
アスレジャー志向の衣料品を販売するLululemonは、2019年の年末年始に驚くべき数字を記録しました。年末年始に入るかなり前に何千人ものロイヤルティプログラムへの登録者を獲得したことが成功の一因でした。
2018年に始まったロイヤルティプログラムでは、年会費128ドルを払うと、パンツまたはショーツのプレゼント、フィットネスクラスへの参加権、送料無料サービスが受けられます。
Lululemonのほとんどのパンツの価格が100ドルを超えるため、会員はすぐに元を取ることができると同時に、無料配送特典の提供が年末年始の買い物ラッシュ時にサイトを訪れるきっかけとなりました。
加えて、他の多くのブランドには真似できない、フィットネスとファッションを融合させたニッチな体験を会員に提供していることが、Lululemonが際立つ理由です。Lululemoは、消費者からの需要拡大により、第4四半期(編注:2019年10月~12月)の売上予測を13億8000万ドルに引き上げています。
重要なポイント
Lululemonのロイヤルティプログラムは非常に差別化されており、販売と体験の両方のメリットをうまく組み合わせて提供されています。顧客を熟知しているLululemonは、他のブランドには真似できない、ファッションとフィットネスを融合させたニッチな経験を提供しているのです。
【Walmartの事例】食料雑貨宅配サービスが大人気。実店舗の多さを武器にAmazonに対抗
11月1日から早めに年末年始セールを開始したにもかかわらず、ブラックフライデーにはトラフィックが殺到し、アナリストたちはウォルマートの売上増加を確信しました。
食料雑貨宅配サービス「Delivery Unlimited」(年間98ドルまたは月間12.95ドルの会費)を開始して予想を上回る実績を上げたウォルマートは、「Delivery Unlimited」を展開する3,000店舗の顧客にとって信頼できるオンラインストアになったのです。ウォルマートの株価は過去12か月で20%上昇しており、Amazonを出し抜くための準備を整える中、まだ上昇を続ける見込みです。
重要なポイント
「Delivery Unlimited」プログラムにより、ウォルマートは顧客に年中頻繁に買い物をすることを促すことができます。そうすることで、ホリデーシーズンでも一番に思い出してもらえる企業になるのです。
【Targetの事例】“特売品にいち早くアクセスできる”を売りに、米国イチ急成長するプログラムへ
Targetもブラックフライデーに成功した企業です。年末年始に最適なストアとしての手堅い評判、即日配送サービス、年末年始に開始されたロイヤルティプログラム「Target Circle」に支えられて、多くのトラフィックが集まりました。
「Target Circle」には、プログラム開始から2週間で2500万人以上が会員登録し、アメリカで最も急成長しているロイヤルティプログラムとなりました。
消費者は、商品購入ごとに1%のキャッシュバックがもらえること加えて、「Target Circle」の会員はブラックフライデーの特売品や年末年始の期間中の「休日の必需品」特別セールに早めにアクセスできる得点を提供しました。このプログラムは無料ですが、18か月の試験運用期間中、ターゲットの顧客はより頻繁に買い物をし、消費額も訪問ごとに2~5%増えました。
重要なポイント
Targetのロイヤルティプログラムは、他のプログラムでは見られない、ユニークなCSR的な要素を提供しています。「Target Circle」のメンバーは、どの非営利団体がTargetから寄付を受けるべきかを投票することができます。同時に、「Target Circle」は、パーソナライゼーションと目先の特典にも焦点を当てています。
【スターバックスの事例】顧客中心主義のアプリで接点を拡大、トラフィック54%増
ダイナミックでかつ顧客中心主義で作られたアプリに支えられた1600万人以上のメンバーからなる強固なロイヤルティプログラムで、スターバックスは世界中のコーヒー愛好家の日常生活に入り込みました。
会員は頻繁にブランドに関わり、ブラックフライデーだけでもトラフィックが54%増加しました。一方、競合のコーヒーブランドは、同じ日にトラフィックが7%しか増加しませんでした。
ブランドに対する強い忠誠心、モバイルアプリからの簡単な注文、そして購入のたびに「スター」がもらえる仕掛けが、年末年始の期間中にスターバックスでコーヒーを飲むという消費者の選択を後押ししたのかもしれません。
重要なポイント
スターバックスのロイヤルティプログラムでは、利便性がすべてです。コーヒーは何百万人もの人々の日常的な活動であり、Starbucksはそれをより満足感のある、簡単なものにしました。
【Sephoraの事例】パーソナライゼーションで成長。2020年はさらにプログラムを強化
Sephoraは、会員データを使ってアプリとサービスのパーソナライゼーションに成功した「Sephora Beauty Insider」プログラムのおかげで、年末年始期間の成績は好調です。
Sephoraの新しいプログラムは段階的になっていて、顧客がポイントを獲得するごとに特典が増えていきます。このプログラムでは、ロイヤルティのステージに合わせてギフトや体験を提供していますが、今年は最も低いステージの会員でも使える特別なホリデークーポンを準備し、クリスマスの買い物に割引を適用します。
世界の化粧品業界の売り上げが2022年までに4300億ドルに達すると予想されていることから、Sephoraは今後もますますこのプログラムに力を入れていくでしょう。
重要なポイント
メイクアップや美容が消費者にとってパーソナルなものであるのと同様に、Sephoraのロイヤルティプログラムもパーソナルなものです。高度なパーソナライゼーションとロイヤルティステージごとのアプローチにより、幅広い顧客層にアピールしています。
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成功するロイヤルティプログラムはそれぞれに特徴があり、ワンパターンではありません。顧客が何を求めているのか、何を気にかけているのか、どのようなメリットだったら使ってもらえるのかを理解する必要があります。プログラムを無料にするか有料にするか(または会員をロイヤルティステージごとに分けるか)を決めるにしても、今が今年のホリデーシーズンについて考え始める時なのです。
今回ご紹介した小売事業者にとっては、カスタマーエクスペリエンス的なメリットと売り上げのメリットを慎重に組み合わせ、会員のROIが明確になることがプログラムの成功なのです。前述した例にならい、ブラックフライデーを待たずにロイヤルティの高い顧客を継続的に獲得することで、あなたのブランドは同様の利益を享受し、より収益性の高いホリデーシーズンを体験できるでしょう。
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オリジナル記事:ウォルマートやスターバックスのロイヤルティプログラム戦略とは? 売上アップなどを実現した5ブランドの事例 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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