小売はエクスペリエンス企業になるべき――米国では何が起きている? IRCE&NIKE旗艦店などで見たEC最新トレンド | 米国カンファレンスレポート | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2019年7月24日(水) 08:00
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2019年6月25日から28日の4日間、シカゴのマコーミックプレイスで開催された「Retail-X」。今回は、EC業界ではお馴染みのインターネットリテイラーのための勉強会&展示会「IRCE」と、RFIDについてのイベント、さらに小売デザインやテクノロジー、店内マーケティングのためのイベントである「GlobalShop」という、3つのカンファレンスを統合したイベントになりました。

ECは小売に飲み込まれた
Retail-X WELCOME
主催者側の発表では来場社は2万人以上とのこと

4日間参加した率直な感想は「ECが小売に飲み込まれた。ついに来てしまったな……」ということです。キーノートはECテクノロジーというより小売業向けにアレンジされおり、セッションはより実務寄りの内容になっていました。

Retail-Xカンファレンス客席のようす

ドローンやIoT、VRといった最新テクノロジーは一部のみ。「イノベーションバレー」というテーマということで、派手さはなくちょっと物足りない感じがありました。バルセロナで行われていた「Mobile World Congress 2019」の方は、5Gがメインということもあり、先進的な印象です。

Retail-X展示ゾーンの様子
会場が昨年の2倍以上になり、歩く距離も2倍以上に

気付いたことは、言いやすいのか「オムニチャネル」というキーワードが復活していたこと。InstagramなどSNS関連は変わらず。Linkedinが少しだけ目立っていました。Pinterestは展示はなくてセッション1つのみ。しかも人気のキーノートの裏側で寂しい印象でした。

Retail-XのAmazonコーナー
アマゾンは強過ぎ。セッションの数も展示も多過ぎ
Retail-XのAIのコーナー
AIについては普通にセッションや展示が行われていました。AIを使ったマーケティングで売上をアップしている事例も
Retail-XのRFID「TORY」の展示
RFID関連はとても面白い。棚卸しロボットやハンガーRFIDなどが出ていた
Retail-X プロジェクター
なんだがわかりづらいけど、実は展示を兼ねたプロジェクター
Retail-X OUTFORM
RFIDの展示から。商品を手に持ったり特定のスペースに置いたりすると、サイネージに商品説明が表示される

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データ企業ではなくエクスペリエンス企業になるべき

講演についてもご紹介します。最初のキーノートが、ダグ・スティーブンス氏(Doug Stephens)による「The Future of Retail in a Post-Digital World」(ポストデジタル世界の小売の未来)。

ダグ・スティーブンス氏は、『小売再生 ─リアル店舗はメディアになる』の著者として日本でも知られていますが、世界各国で本を出している有名人。セッションでは「実店舗のメディア化」について話していました。いろんなデータを紹介してくれて、「今後企業はデータ企業ではなく、エクスペリエンス企業になるべきだ」と話していました。

Retail-X ダグ・スティーブンス氏
初日のキーノートで講演したダグ・スティーブンス氏
躍進中の「DNVB」とは?

アマゾンや中国のアリババといった大手Eコマース事業者の拡大はご存じの通りですが、米国では「DNVB」が積極的なオフライン展開を進めて急拡大しています。

「DNVB」は「Digital Native Vertical Integrated Brands」の略で、「デジタル・ネイティブを起点に生まれたバーティカル・カテゴリー(ミレニアル世代)に特化したブランド」のことを言い、別名「v-commerce brand」とも言われ、従来のEコマースに乗っかるだけの形態とは区別されています。

「DNVB」の特徴は下記のようになります。

  1. 「製造直販」をテクノロジーで可能にしており、粗利率が高い
  2. インフルエンサーがSNS上でファンに対してブランド体験を拡散
  3. Amazonや各モール、通常のEコマースと競合しない「第3の流通チャネル」である
  4. スタートアップ起業マインドがあり、届けたいアイテムやサービスに対する気持ちが強い
  5. ファンになっている顧客情報をちゃんと保有している

この「DNVB」というキーワードは今回のRetail-Xのいろんなセッションで聞かれました。それもそのはず、この「DNVB」という言葉は、2日目のキーノートで講演したBonobosの創業者Andy Dunn氏の造語なのです。「DNVB」躍進の背景には「2033年にはネットの流通額がリアルの流通額を上回る」と言われていることもあるようです。

「メディア」としての実店舗

米国ではリアル店舗が業績不振や倒産などでどんどん閉店していますが、小売企業やブランド企業はそんな中でもオンラインだけではなく実店舗においても、アマゾンやアリババなどと対抗する必要に迫られています。

今まで小売やブランドはリアル店舗の約割を「商品のマーチャンダイジング」「商品情報の提供」「商品販売」と位置付けていたのですが、これからはリアル店舗を自社で持つ最大の「メディア」として活用する時だとしています。

Retail-Xtrue
costomer
experience
Surprising
Unique
Personalized
Engaging
Repeatable

実際にトラフィックや滞在時間を比較すると、実店舗はどのメディアよりもエンゲージメントが高くなっています。

より実店舗を魅力的な「メディア」にするためには、「驚き(Surprising)」「ユニークさ(Unique)「パーソナライズ化(Personalized)」「エンゲージメント(Engaging)」「リピートしやすさ(Repeatable)」といった要素が必要で、こうした取り組みによって、顧客に素晴らしいカスタマーエクスペリエンスを提供していかなければならないとしています。

「Strategic Guidance for the retail C-Suite」(最高のお客様のための小売の戦略ガイダンス)のセッションでも、Eコマース事業者が今後2年の間に注力するであろうEコマーステクノロジートレンドとして、オムニチャネル強化やデータ分析ツール、店舗のデジタル化などがあげられていました。

その中でも特に、より良いユーザーエクスペリエンスを構築する上では「Personalization(パーソナライズ化)」から「Individualization(インディビジュアル化)」へのシフトが重要になるとしていいました。

3日目のキーノートで講演した「Framebridge」のスーザン・タイナン氏(Susan Tynan)は、顧客体験の改善に注力することによって過去5年間で急成長を遂げてきています。「Framebridge」はフレームを購入し、そこに写真やアートなどをセットするというサービス。「お客様のことを優先的に考えることは当たり前のことですが、それはとても難しいこと」と指摘していました。

顧客ファーストを実現させるためのポイントは、

  1. 会社の利益よりも消費者が求めているものを提供する
  2. 感情を消費者へ伝える
  3. 顧客が求めているものを最優先で取り組むこと
  4. データ上の数字に惑わされずに顧客の声を聞くこと
  5. 業種に関係なく、自社で重視する体験やサービスを得意とする企業をお手本とする

と、語っていました。

Framebridgeのスーザン・タイナン氏
Framebridgeのスーザン・タイナン氏

IRCE@Retail-X全体でもカスタマーエクスペリエンスの大事さを伝えていたと思います。

「EC」というくくりが解けて、リアルの小売業も含めていよいよ「コマース」になるという、今後急展開するイメージを肌で感じたというのが、Retail-Xに参加した私の感想です。

We Shape the future of retail.

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NYのNIKEとハドソンヤードにも行ってきました

いろんな方から「最近のニューヨークは見ておいたほうが良い」と言われ、IRCE@Retail-Xに参加する前にニューヨークにも弾丸で行ってきました。ニューヨークのNIKEや最新ショッピングセンター「ハドソンヤード」は、まさしくメディア化と言っていいスポットです。そういう意味で、ニューヨークの視察とシカゴのカンファレンスはすごくつながった感じを受けました。

ニューヨーク

ニューヨークにオープンしたNIKEの新しい旗艦店は、1階のエントランスも地下1階の倉庫もメディア化をねらった感じに作られています。スタッフは呼ばない限り近寄りもしません。

ナイキ店内
地上5階、地下1階のビルすべてNIKE

各階ともアプリで情報を得たりフィッティングサービスを受けたりできます。商品はアプリで購入してピッキング場所で受け取ります。もちろん配送してもらうことも可能。

ナイキ店内
NIKEビル地下1階にある「スニーカーバー」。在庫ですらショールームのようにかっこいい!

レジで並ぶことなく、ビルのどこででも買えるのでとても便利です。POSレジは1台だけ設置されていて、アプリを使わない人も購入できるようになっています。

ナイキ店内
NIKEの歴史や靴のパーツ、デザイン図、設計図などもストーリーを語るように展示されていました

一方、「ハドソンヤード」は2019年春にできたばかりのショッピングセンター。

ハドソンヤード
日曜日ということもあり、たくさんの人が来ていました
ハドソンヤードのベッセル
「ベッセル」と呼ばれているハドソンヤードのオブジェ(正式名称はまだ決まっていない)。予約すれば登れます

米国では日本と違って基本的に店頭も店内も撮影OKですが、NIKEにもハドソンヤードにもフォトスポットがたくさんあり、撮影してInstagramに投稿したくなるように作られています。

ハドソンヤードフォトスポット
こんな感じでショッピングセンター内(店内にもある)にインスタ映えするフォトスポットがたくさんある

日本でもインスタ映えをねらった店舗作りも多くなっていますが、「メディア化」を最大限に考えてお客様のタッチポイントを見直す必要があると思います。そして、拡散してくれたユーザーの情報もデータ化してパーソナライズ化、インディビジュアル化を進めていくというのが、今後の大きなテーマかと思います。

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川連 一豊
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